宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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第19話 『イレギュラー』

 荒くなった息を整える。

 メインモニターに映る機体をジッと観察する。

 胸部には赤い球体が付き、肩は異様なほど鋭く飛び出ている。マントを羽織っている事からバックパックは見えないが粒子を放っている事からGNドライブ搭載機である事は明らかだ。顔には広がったV字アンテナに二つの目。顔と脚部はエクシアのパーツを使用している。

 この世界には無い機体。となれば自分と同じ異世界の住人…

 腕から何かが飛んだのを見て120mmザクマシンガンは連射する。飛ばされたドライブレードが小さな爆発を起こした。

 

 「奴の相手は僕がします。その隙に皆は30バンチへ!!」

 『援護します大佐』

 「駄目だ!!イリアちゃんはヘイズルを探して」

 『ヘイズル?』

 「ここに向かっているガンダムタイプ。敵の主力も来るからガンダムと護衛を任せます!」

 

 返事を聞く事無くヅダをガンダムタイプに向けて加速させる。

 主武装はあの太刀。ガンダムバルバトスの太刀を黒く刃を染め上げた物。他の武装は腰にショートとロングのGNブレイドに左腰にはガーベラストレート、両腕にはドライセンのトライブレードと接近戦メインの機体だ。エクシアの足と言うことはGNビームダガーもあるだろう。

 120mmザクマシンガンを腰に取り付けて肩にかけてあった135mm対艦ライフルで先行した部隊を援護射撃を行なう。

 

 『っか!やるねぇ欠陥機風情が』

 「ヅダは欠陥機じゃない!」

 

 共通の回線で話しかけてきた相手は回避しつつドラッツェを擦れ違い様に真っ二つにしてザクのコクピットに右手を添える。次の瞬間、コクピットから背中まで何かが貫通した。

 パルマフィオキーナ。

 デスティニーガンダムの武器で手の平からビームを放つ事。これであの機体の腕パーツが解った。

 

 『欠陥機じゃないなら…って邪魔すんじゃねぇよ!!』

 「何で前に出たんですか!!」

 

 先行していたのはMS部隊だけでなくやられた部隊を積んでいたムサイもだった。罵声を放ちながら太刀を交互に斜めに振るう。現実ではありえないだろうが斬撃がムサイへと放たれた。コムサイや主砲が破壊され中身がむき出しになる。次に太刀にビームが纏わりつきビームの刃が伸びて急加速しながら側面に回転斬りを喰らわせた。

 スラッシュテンペストにスラッシュペネトレイト。どちらもガンダムブレイカーのEXアクション技。あの機体は100%ガンダムブレイカーで作られた機体。

 

 『そ、総員退艦!!』

 『今更おせぇんだよ雑魚が!!』

 

 見落としていた。あのガンダムの右側の背中にソードストライクの大型対艦刀が装備されていたことに。何の躊躇も無く構えられた大型対艦刀はメインブリッジから先端まで真っ二つにした。

 獲物を狩り尽くしたガンダムの視線はヅダではなく抜けて行く艦隊へ向けられていた。

 

 『どこに行こうってのんかなぁ?』

 

 腕を突き出してトライブレードを放とうとしている。その腕に135mmが直撃する。腕の直撃の反動とトライブレードの爆発で腕が動き、反対の腕から放たれたトライブレードと接触する。その隙を逃さないように頭部に三発、胸部に二発ほどぶち込む。衝撃は伝わっただろうが機体は無傷だった。

 

 『へぇ~おもしれぇ』

 「こっちに来い!ガンダム!!」

 

 弾切れになった135mm対艦ライフルを投げ捨てて120mmザクマシンガンと240mmザクバズーカを装備する。赤い粒子を放ちつつ漆黒のガンダムが接近してくる。目など所々を赤く輝かせて赤い残像を残す。

 肩から飛び出たパーツを外して放ると腰から何かを投げつけてきた。投げつけた物を回避して放られた物に標準をつける。あれがデスティニーならば放られた物はフラッシュエッジ2と予測した。ブーメランのように回転しつつ円弧を描くように接近して来たそれはまさしくそうであった。軌道が分かっているのなら落とすのは簡単だ。一発ずつ120mmと240mmで撃ち落した。

 

 『はっはー♪お前『イレギュラー』か!?』

 「『イレギュラー』?何のこと…だよ!!」

 

 急に加速したガンダムの横薙ぎの一撃を何とか回避してバズーカとマシンガンの雨を喰らわせる。トランザムを使わずであの速度。そしてあれだけの直撃を受けての無傷と言う耐久性。勝ち目は無いが行かせる訳にもいかない。

 

 『言い方を変えてやる。異世界人だろうお前』

 「っ!!」

 『動きが止まってんぜ』

 

 太刀でバズーカを斬られた。手放すだけでなく投げつけて残りの120mmを全段叩き込む。ザクバズーカ内に残っていた残弾の爆発に巻き込まれたガンダムは追っては来ずに太刀を構えていた。

 

 『おらおらどうした?射撃兵装はもう終わりか?』

 「ひとつ聞きたい…」

 『ああ?』

 「これから何が起ころうとしているのか知っているんですか?」

 『毒ガスでコロニー内の人間の殺害。いんや、虐殺か。それがどうした?』

 「解っているのに何故!!」

 『それが元でエゥーゴは躍起になってティターンズと争う。良いじゃねぇか。また大きな大きな戦争の時代が来るんだ』

 「貴方は…」

 『一年戦争時はMSの性能差がありすぎて勝負にならなかったけど今回は多少は楽しめんだろ』

 「僕は…」

 『あん?』

 「僕は貴方を討つ!!」

 

 ヒートホークとシールドの白兵戦用ピックを展開してガンダムに突っ込む。

 

 『上等じゃねぇか!!欠陥品の13番目!!』

 

 二機のMSは斬り合う。一方は怒りに身を任せて、もう一方はただ楽しんで…

 

 

 

 『そんな事が…』

 「これが事実です!早く住民を避難させてください!!コロニー内のシャトルでも何でも良い!!」

 『しかし当コロニーのシャトルなどだけでは…』

 「パプア補給艦を二隻連れて来ているんだ!!それに出来るだけ乗せろ!!」

 

 アルト・ハイデルベルク艦長をしているエイワン・ベリーニ少佐はブリッジで怒鳴り声を上げながらコロニーの上層部に事態を伝えていた。向こうも半信半疑だがもしもの事を考えて動くそうだ。

 通信を切ったエイワンは手で顔を覆う。

 

 「情けない…目の前にあるというに全員を助けてやれると言えないなんて…」

 

 自身の無力感に苛まれている場合では無いのは分かっている。だが言わずに、思わずには居られなかった。ブリッジ内の兵士が心配そうな視線を向けているのを感じて顔を上げる。

 

 「これより救出作戦を開始する。『ヘンゼル』は近場のコロニードックへ。『グレーテル』は第二へ。『アルト・ハイデルベルク』『パルジファル』『モルゲンローテ』で護衛を行なう」

 「艦長。イリア少尉よりカトウ大佐の援護に向かわせてくれと言ってきてますが」

 「却下だ。あのニュータイプである大佐がガンダムタイプが来ると言っているんだぞ」

 

 こちらの手札は少ない。エースである大佐はガンダムタイプとの死闘で手が離せない。後はイリア少尉のみ。それにムサイとパプア合計5隻を守るのに合計7機のリック・ドムⅡと四機のザクⅠだけでは心もとない。そもそもザクⅠは収容の作業用として持ってきた為に戦闘用として数に入れてない。

 すでにパプアには話を聞いた人々が駆け込んでいる。ザクⅠはコロニー内で人々を運んでいる。作業終了までどれぐらいかかるのだろう。時計を見るとまだ20分しか経過していない。

 敵が来たら撤退を第一に考えねばならない。これから相手は公に出来ない事をやる為に少数精鋭部隊で事に挑むのだろう。

 

 「エリート部隊の中での精鋭って冗談でも笑えんな」

 「レーダーに感!!木馬?いえ、もっと大きい!!」

 「大佐が言っていた『頭でっかち』か?」

 「―っ!!恐らく」

 「了解した。レーダーに映った艦を『アレキサンドリア級』と推測する。イリア少尉に連絡」

 「なんと?」

 「『アレキサンドリア級』より発進したMS隊の足止め、出来れば迎撃だ!!あのザンジバル級も向かわせろ!!」

 「宜しいので?」

 「宜しいも宜しくないも無い。疑っている状況では無くなったのだ。信じるしかないだろうが!!」

 「なおもレーダーに感!!同じく『頭でっかち』です!護衛艦確認!!」

 「数が多いな…イリア少尉には護衛付きの方へ行かせろ!!艦隊の護衛にザクⅠ二機を戻してドムは全機イリア少尉と共に二つ目の『アレキサンドリア級』の方へ向かわせろ!!」

 「りょ、了解!!」

 

 何も出来ず命令しか出す事の出来ないエイワンはイライラを募らせる。

 MS隊同士の戦闘が開始されて30分が経過した。こちらは足止めと迎撃の為に攻めに転じれず、向こうは向こうで突破し辛いのだろう。どうやら地球育ちのエリートさん達は模擬戦ばかりで実戦経験が浅いようだ。最初に現れた『頭でっかち』の方はそうでもなかったが。

 

 「さすがはガンダムを運用しているチームと言う訳か…」

 

 ザンジバルの部隊は優秀な奴らだったらしく戦況はガンダムが居るにも関わらずやや優勢だった。どちらかと言えば数で押されるイリア達の方が問題だった。

 片腕を破損したリック・ドムⅡがこちらへと帰ってきた。

 

 「補給を終えたドムを入れ替わりに向かわせろ」

 

 素早く指示して戦況に食い入る。パプア級の物資エリアのみならずMSエリアにまで人を収容するように支持を出している。それに各ムサイからコムサイをコロニードックへ向かわせて出来るだけ人を詰め込んでいる。

 もう少しで一時間が経とうとしていた。外の戦闘で半信半疑だった住民も押し寄せて収容人数は跳ね上がった。しかし収容するにも1500万人は多過ぎる。

 何とかかれこれ一時間以上ガンダムとの戦闘を続けている大佐の援護、もしくは補給も行ないたい。機体も肉体もぼろぼろだろうと推測できる。

 ふと、戦列を離れている船を見つけた。こちらからコロニー影に隠れている。そこにザクモドキがMSが入りそうなタンクを…

 

 「―っ!!パプア級やコムサイをコロニーより出せ!!毒ガスが注入される!!」

 「え、は?…え?」

 「馬鹿者早く打電しろ!!」

 

 急な事に対応できない兵を動かさせ船を睨みつける。もう少し早く気付いていたらと後悔が襲ってくる。

 閃光が横切った。

 イリア少尉達の部隊の限界が来たのだろう。敵が徐々に突破しつつあった。余裕を持った戦艦がこちらに砲撃を開始したのだ。再び閃光が近付き着弾した。

 

 「『モルゲンローテ』の主砲ニ門大破!」

 「これ以上は危険か…」

 

 舌打ちを打ちつつパプア級の『ヘンゼル』と『グレーテル』が出てきたのを確認する。

 

 「『モルゲンローテ』に『ヘンゼル』と『グレーテル』は先行して当宙域を離脱!『アルト・ハイデルベルク』と『パルジファル』は残存MS隊を収容後撤退!それまで主砲で援護するんだ!!ザンジバルにも伝えろ!!」

 

 七機居たリック・ドムⅡは四機まで減らされケンプファーも満身創痍だった。相手は模擬戦のみの戦場の素人とは言えMS21対8でよく持ち応えたと思う。普通なら全滅しててもおかしくないだろう。

 『アルト・ハイデルベルク』も急いでこの場を離れる。大佐を収容する為にも。

 

 

 

 一時間も戦闘をしているとパイロットは疲弊する。ただあのヅダに乗れるように身体が変化した鏡士郎は例外であった。恐らく目の前のガンダムのパイロットも。パイロットは良くてもすでにヅダは悲鳴を上げていた。鏡士郎の反応に元々追いついてなかった事もあり機器がオーバーロードを始めていた。

 迫り来る太刀を受け止めることは出来ない為にヒートホークで受け流す。少しでも触れている時間が長引けば肩ごと持っていかれる。そんな気がしていた。何かが来ると勘で解ったが機体が動かなかった。左腕の殴りが右肩にヒットしたのだ。文字通り砕けた肩のパーツが散乱する。

 距離を開けようとブースターを噴かす。

 

 『誰か助けて…』

 

 声が聞こえた。恐怖を感じている声が。それもひとつやふたつではない。

 十…百…千…万…十万…百万…壱千万もの嘆きと悲しみと恐怖の感情が流れ込んできた。

 

 「ああ…あああ…ああああああああああ!!」

 

 心が締め付けられ頭が割れそうに痛い。

 手が操縦桿から離れた。動きが止まった敵を見逃すわけも無く、高速接近からの回転斬りのスラッシュペネトレイトが決まり、胴体より脚部が離れたヅダをバックに立ち止まる。

 

 『はぁ…呆気ねぇ…もうちっと楽しめると』

 

 残念そうに呟いた瞬間、背中から衝撃が響いた。後ろのカメラで確認すると盾の先端がこちらに向けられていた。

 

 「スラッシュペネトレイトは…使用後…立ち…止まる…」

 

 鏡士郎はあまりのショックに胃の内容物をぶちまけて意識を失った。

 

 『ハ…アハハハハ!!やってくれたなぁおい!』

 

 止めとばかりに太刀を振り上げたガンダムにビームが直撃する。避ける事もせずに見上げると青いゲルググにリック・ドムⅡ、そして後期生産型ザクⅡが三機ほど乱射しながら突っ込んでくる。

 

 『―っ!!』

 

 機体性能と腕で圧倒出来る筈の相手なのにミヨシは距離をとった。

 ほとんど胴体だけとなったヅダを守るかのように立ち塞がったゲルググの気迫に押されたのだ。

 

 『へっ、お楽しみはとっとくもんだよなぁ。作戦も終わったみてぇだしな』

 

 撤退したガンダムを追撃する事無くヅダを乗艦であるザンジバルに運び、鏡士郎は急ぎ医務室へ搬送されたのであった。




 わずかではあるが助けれた命と共に負傷した鏡士郎を乗せた艦隊は茨の園へ向けて進路をとる。

 次回『新たな仲間とこれからの作戦』
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