宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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第34話 『マクダニエル』

 グリーン・ノアからの追跡してきた艦隊を退けたエゥーゴ艦隊は月の支援者達との会合の為に入港していた。勿論カトウフリートのサラミス改級宇宙巡洋艦『ポッペンブルク』と『ニュルンベルク』も同様に入港していた。

 

 エゥーゴのアーガマ内は大変な忙しさを見せていた。この間救出したシャトル『テンプテーション』のキャプテンであるブライト・ノアにアーガマの艦長を頼んだり、ブレックス准将はグラナダに向かったり、カミーユのガールフレンドであるファ・ユイリはカミーユと一緒に居ると言い出したのでどうするかを悩んだりといろんな事が立て込んで起こり、その処理に追われている。一番忙しいのはエゥーゴの整備士たちだろう。テンプテーション救出での戦いでMS隊の大半が損傷しており、その修理に追われているが人数が足りずに働き続けている。

 

 対して大きな損害を被らなかったカトウフリートは通常通りの仕事をこなしていた。加東 鏡士郎は除いてだが…。

 

 「えっと何処だっけ?」

 「確かマクダニエルっていうハンバーガーショップだったと思いますよ」

 

 エゥーゴの出資者であるウォン・リーより次の作戦の打ち合わせを行なうとの事で指定された店に向かっているのだ。ちなみに一緒に居るのはカミーユである。彼は民間人でいきなりエゥーゴに参加するようになって心の整理が追いついてない。それに両親の死もあったら余計にだ。だから息抜きになるかなと思って連れて来たのだ。本当はファも連れて来ようと思ったのだが彼女はアーガマ内での仕事をエマ達より教わっていたので誘えなかったのだ。

 

 背中の阿頼耶識システムを隠す大きめのコートを着た鏡士郎は英語でマクダニエルと書かれたハンバーガーショップに着いた。店内には誰も居らず、眼つきの怖い店員一人だった。何の迷いもなくレジに向かい口を開いた。

 

 「店員さん、スマイル下さい」

 

 黄土色の制服を着ている店員……ヘンケン艦長は苦笑いを返し、隣でそれを聞いたカミーユは思わず噴出してしまった。

 

 「そんな怖い顔していたらお客さん逃げちゃいますよ」

 「逆に居ない方が良いでしょうが」

 「僕達的には良いですけど店の売り上げが底についちゃいますよ」

 「なら、貢献しますか?」

 

 軽口だった一言だが鏡士郎はそれもそうだとメニュー表を見つめ考え出す。その動作に「え?」と声を漏らしたのはカミーユとヘンケン両者同時だった。何しろここには打ち合わせで来ているのに本当に食事を取る気でいる。

 

 「大佐、良いんですか?」

 「今は大佐じゃなくてキョウシロウで良いよ。まだ赤いの着てないんでしょ?」

 「確かに着てないがですが…」

 「だったら僕はバーガー2つとオレンジジュース。ポテトは一番大きなやつで」

 

 注文して品を待つ間はカミーユと他愛もない話をしつつ、本当に作る破目になったヘンケンは大慌てで慣れない作業に従事していた…。

 

 

 

 クワトロ・バジーナを名乗っているシャア・アズナブルはウォン・リーの指定された場所に向かっていた。自分用の赤いエゥーゴの制服ではなく黒いコートに愛用のサングラス姿でマクダニエルに入ったシャアは店内で食事を行なっているキョウシロウを見つめた。あちらもこちらを見つけて見つめ返してくる。加えていたバーガーを口に含んでジュースで流し込む。

 

 「ほう、カミーユと一緒だったか」

 「ンクッ!…プハァ。そりゃどこかの大佐と違って放任主義ではないですからね」

 「…それはさておきカミーユ君も参加するのかね?」

 「どうする?この辺りで時間潰してても良いけど」

 「参加しても良いんですよね?なら参加します」

 「じゃあ行きましょうか」

 

 レジに居るヘンケンの元へ向かうと「まさか大尉も注文する気じゃないでしょうね?」と問われ、口元にケチャップをつけたままのキョウシロウを見て「ああ…」と声を漏らして納得した。

 

 「では、バーガーとコーヒーをお持ち帰りするとしようかな」

 

 困ったような表情でため息をついてレジから奥の扉へ誘導する。扉を開けて中に入るとウォン・リーを中心に出資者四名がテーブルを挟んで座っていた。

 

 「待っていたよクワトロ大尉。それとキョウシロウ大佐ですな。随分とお若いのですな」

 「お初にお目にかかりますウォンさん」

 

 握手を交わして席に付くとキョウシロウ大佐にヘンケン、そして私も腰をかける。カミーユは元より来る予定になかったので大佐の斜め後ろで待機している。

 

 「では早速だが次の作戦について説明を」

 「ハッ!次のエゥーゴの攻略目標は地球連邦軍総司令部でもある南米ジャブローです」

 「ジャブロー…」

 

 その名を聞けば嫌でもあの一年戦争の記憶を思い出してしまう。地球連邦の本拠に対して55機前後のMS隊で行ったジャブロー攻略戦。地球最大のジオンの鉱山基地オデッサを失って士気も低下していたジオン公国が行なった一種の起死回生の作戦。ジャブローの制圧・攻略は無理でも戦艦の建造ドックや宇宙ドックさえ破壊できれば、連邦の宇宙に対する攻略作戦も遅延させられ軍の再編を図ることだって出来ただろう。自身も二度に渡り潜ったが結果は失敗。オデッサに続く大敗北に地上戦力の多大な被害により士気は悪化の一途を辿った。

 

 これからエゥーゴはそこに向けて攻撃をする。あの時の二の舞にならなければ良いが…。もし同じく敗退すればティターンズに対抗する戦力はカラバのみになってしまう。カラバだけの戦力だけではティターンズに対抗するのは到底不可能。頼みの綱になるのはキョウシロウ大佐のカトウフリートだが、彼らがどう出るかは本当に不明。

 

 『地球圏に降りる時には艦隊規模で撤収を援護するそうだ』

 

 あのアナベル・ガトーより伝えられた伝言は確実に我々がジャブローを狙う事を知っていたようじゃないか。あの時にはまだジャブロー降下作戦の話などは一切出ていない。なのに何故?疑問と意も知れない不安を感じながら話を聞く。

 

 「ここからアーガマを除いた二隻とグラナダより六隻の計八隻が出る。MS隊は八十機に及ぶ」

 「かなりの大部隊ですね」

 「カトウフリートにもこの降下作戦に是非参加して欲しいのだが」

 「参加はしますが、MS隊の降下はしません。カトウフリートは地球に基地を持たないので」

 「何ならカラバに連絡して打ち上げてもらう手筈を整えるが?」

 「ジオン製のMS隊の参加は両者にとってデメリットしかないでしょう」

 「という事は参加できるのは現在入港中の部隊のみですか」

 「大気圏突入時のみの支援はそれだけですね」

 「大気圏突入時のみと言う事は他の支援がある?」

 「MS隊を全部出した艦隊の撤退援護は別艦隊で行ないます」

 「数は?」

 「八隻以上の艦隊と詰めるだけのMS隊」

 「ほう!そんなに戦力を出して頂けるのなら帰りは安心ですな」

 

 シャアは疑いの眼差しを向ける。MS隊を出払った艦隊を守る為の戦力はありがたい。しかしティターンズの戦力は現在追撃している艦隊、もしくは地球衛星軌道に近い艦が数隻程度だろう。それに対して大艦隊とは戦力の過多ではないか?何かカトウフリートには別の目的があるのではないか?そんな疑いを込めた視線に気付いたキョウシロウは振り返り笑みを向けた。

 

 「ジオン残党狩りを謳っているティターンズを僕たちは敵対関係。同じ敵を見ているのに背後から撃ったりはしませんよ」

 「ああ、そう信じたいな」

 「クワトロ大尉。さすがに失礼だろう」

 「いえ、このぐらいの距離感のほうが良いですよ」

 

 言われた本人はニッコリと笑っているから良いもののカミーユ君のほうがこちらに嫌な顔を向けてきた。大佐は本当に気にしてないのは雰囲気で分かるがカミーユ君の反応はあまり良くないか。少し気にかける必要があるか…。

 

 降下作戦の話はその後無事に終了したが帰り際に『グリプスを叩きたいのは我慢してくださいね』と告げられたのは本当に驚いた。確かにジャブローを叩くよりはグリプスを潰す事を考えていた。しかしそれは自分の胸中のみの話でまだ誰にも話していないものだ。彼は何処まで見えているのか…。私は彼が本当に恐ろしく感じる。

 

 まぁ、本人は原作を知っているから出資者のジャブロー攻めよりグリプス攻めを押していた事を思い出して言っただけなのだが。

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