宇宙世紀を好きなように駆けてみようと思う!!   作:チェリオ

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第38話 『地球へ』

 エゥーゴ降下作戦阻止の指揮を執っているジャマイカンは苛立ちを隠せないでいた。艦隊の数もMSの数も同等だとしてもエゥーゴは降下するために戦力を割いていて全軍を対応させれない。それにこちらはイレギュラーズであるミヨシが居るのに戦況はティターンズが劣勢に立たされていた。

 

 「ええい!何をやっているのだ。何を!」

 「て、敵のMSが強すぎまして突破が出来ず…」

 

 アレキサンドリアのモニターには戦場を駆ける水色のMSが映し出されていた。一年戦争時に欠陥機として知られたヅダだという機体の情報はすぐに検索できた。が、目の前に映る光景はその情報とかけ離れたものだった。

 

 ハイザック隊のマシンガンを容易く避けたと思ったら目が追いつかないような速度で直角に移動し、気がついたら二機を切り裂いていた。残った一機が背後から襲い掛かるとまるで後ろに目でもあるかのような反応で回避して流れるように斬り返していた。

 

 「くそお!!たった一機のMSごときに……ミヨシは何をしている!!」

 「そ、それが…先ほどから反応が無く……」

 「何だと!?MS隊の指揮権を寄越せと言ってこの様か!!奴が言っていた援軍はまだか?」

 「はっ、もうすぐ到着予定です」

 

 ジャマイカンはミヨシの事を好いてはいないが今回は準備の良さに奴の手腕を認めざる得ない。ブライト・ノアのテンプテーションを使った罠を張り、時間を稼ぐ事で援軍の到着を間に合わせた。そして間に合わなくとも艦隊だけでも潰そうと旧型のサラミス級三隻とジム・キャノンを積み込んだアレキサンドリア級ハリオがこちらに向かって来ている。すでに降下部隊を大気圏に突入させ、防衛にまわしていたMS隊は損傷、もしくは疲弊している。

 

 「これでハリオが合流すればエゥーゴの艦隊は壊滅させれるな」

 

 MS隊を逃した事は痛いが、すでにジャブローには仕掛けが施されている。引越しの終えた基地の一部を核爆発させるという…。これによりエゥーゴの降下部隊は壊滅。宇宙艦隊は自分の指揮の下で殲滅。ジャブローを核攻撃したという情報を流して信用を落とせばブレックス・フォーラひとりでは何も出来まい。後はカラバさえ叩いてしまえば主立って反抗活動をするものはいなくなる。

 

 「ジャマイカン少佐!艦隊を確認しました」

 「やっと来たか。これでエゥーゴの宇宙艦隊は終わったな」

 「しかし妙です。数が合いません」

 「なに?何隻だ?」

 「四…いえ、六……十五隻!?」

 「多すぎるな。モニターに映せ」

 「距離があって荒れますが」

 「かまわん」

 

 戦場を映していたモニターが真っ暗な宇宙空間を映し、ハリオを含めたサラミス級三隻が映っていた。味方の艦隊にホッと安堵するとモニターが光に包まれた。何事かと険しい顔つきで睨みつけるとサラミス級の一隻が大爆発を起こした。背後より戦艦の主砲らしきビームが飛び、ハリオがMS隊を発進して迎撃させようとしていた。

 

 「こ、後方を映せ!!」

 

 席を立ち上がり怒鳴りつけたジャマイカンの指示に従いさらに奥を映し出す。そこにはグワジン級を中心としたジオン艦隊の姿があった。

 

 「後方の艦隊はジオン艦です!!」

 「見れば分かる!」

 「ハリオより助けを求められております!」

 

 ジャマイカンは指示を飛ばすことよりも目の前の現実に呆然とした。何故こうなったのか?何故奴らは…と。

 

 

 

 

 

 グワジン級大型戦艦『グワリブⅡ』の艦橋からアナベル・ガトー中佐はエゥーゴとティターンズの戦闘宙域である地球降下ラインを睨みつける。

 

 「よもや再びここに来るとは…」

 「何か?」

 

 デラーズ・フリートの時に行なった星の屑を思い出して呟いた独り言に艦長のエイワン・ベリーニ少佐が反応した。少し困ったような表情をして答える。

 

 「いや、星の屑を思い出してな」

 「それは…」

 「感傷に浸っている場合ではないか。攻撃開始を」

 「ハッ!全艦対艦砲撃戦よぉい!!」

 「くれぐれもエゥーゴの艦隊には当てるなよ。掠めるぐらいでいいんだ」

 「了解です。撃ち方始め!!」

 

 グワリブⅡを中心にザンジバル級機動巡洋艦2、チベ級重巡洋艦1、ムサイ級巡洋艦後期生産型3、パプア級補給艦2、ムサイ級軽巡洋艦2のカトウフリートの艦のほとんどが主砲を眼前の援軍らしき艦隊に砲撃を開始した。

 

 カトウフリートは徐々に勢力を拡大して大規模なMS隊を手にする事も出来たが未だ物資不足なのは変わりない。今回の作戦はカトウフリートの力を見せつけティターンズの行動を制限する目的もある。こちらがこれだけの戦力を持っていると知れば早々手は出せないし、エゥーゴの件もあり宇宙軍は動き辛くなるだろう。

 

 「続いてMS隊発進!!」

 『リリア隊発進します』

 『マルコシアス隊出ます』

 

 各部隊が発進する掛け声を耳にしながら戦況を見つめる。『頭でっかち』より発進されたジム・キャノンをマルコシアス隊のアンネローゼ・ローゼンハイン准尉が乗るサイコミュ試験用ザク『ビショップ』と元マレット隊のリリア達ベテラン勢に瞬殺される。

 

 カトウフリートのMS隊にはリック・ドムⅡや高機動型ゲルググなども見受けられるが大半がザクかドラッツェである。これはMS建造の物資不足が原因である。ただドラッツェに関してはキョウシロウの指示で従来のバルカン砲からガトリングガンに変更されて火力と射程の強化を計られている。最新鋭気と言えばアクシズより贈られたイリア少尉のアクシズの最新技術で改修されたリゲルグとこのグワリブⅡぐらいなものだ。

 

 「ガトー中佐!大佐より通信が」 

 「繋いでくれ」

 『お久しぶりですガトー中佐』

 「ご無事で何よりです大佐。久しぶりのヅダはどうですか?」

 『もう最っ高だよ。手足より馴染む感じ』

 「それは何よりです。で、これからの指示を頂きたいのですが」

 『うん。艦隊はその場でエゥーゴ艦隊の撤退援護を。任務完了後撤退。道中で別ルートで帰るフィーリウス少尉達と合流してね……ってちょっと待って』

 

 通信が切られると望遠で映した映像には襲い掛かったジムⅡ隊の相手をしていた。その動きに見惚れてしまう。人とは思えない超反応にスラスターの光が伸びて宇宙空間に線を引くような加速。決して他のパイロット、機体では再現しようのない動き…。見とれているのは何もガトーだけではない。この場に居るほとんどの者がそうだろう。

 

 しかしそのヅダが妙な動きを開始した。何故かエゥーゴ艦隊の横を通り過ぎて降下ポイントに向かって行く。

 

 「大佐。キョウシロウ大佐。応答してください」

 『あ、ガトー少佐。行って来ます』

 「まさかとは思いますが地球へですか?大気圏突入装備も無しに無理です」

 『大丈夫ですよ。時間経過で回復しますし、装甲だって厚過ぎですから。それにヅダも行けるって言ってくれてますし』

 「…………」

 『行って来ます』

 「本当に出来るんでしょうね」

 『うん。僕はまだ死ぬきないよ。まだまだやりたい事いっぱいあるんだから…その為に降りてくるよ』

 「……分かりました。留守の間は私がなんとしても守りましょう。ですから地上はお任せします」

 『じゃあ、行って来るよ』

 

 気軽に出かけるような感じで言っていた感じから自信に満ちた言葉に変わった事でガトーは諦めた。どうせ止めてもやるだろう。ヅダの大気圏突入時のデータ収集だけを命じてヅダを見つめる。

 

 大気圏に突入して赤く染まって行く機体を見つめるが問題ないと確信する。なにせあの機体は自分達の常識を外れた機体なのだから。また大佐のむちゃが始まったかと微笑む艦橋内で通信士だけが緊張の色を濃くした。

 

 「キョウシロウ大佐はどちらに向かって降りられるので?」

 『んー…ジャブローかな』

 「だとしたら大分ずれていますよ!?」

 『え、どっち!?』

 「え!?どっちとも言われても降下時の軌道計算は…」

 『大まかで良いから教えてぇ!』

 「ひ、左です!!」

 『こっちだね』

 「そっちは右です!あ…」

 

 方向を間違えて降下している大佐との通信が切れて、顔を青くする通信士はどうガトー少佐に報告しようか頭を痛めた…。




 
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