次回は来週内目指して投稿しようと頑張ってます。では本編へどうぞ。
アクシズへ向かうデラーズ・フリート残存部隊副隊長になった加藤 鏡士郎は士官室で徹夜で指示を出していた。それに付き合わされている士官は嫌な表情どころか嬉しそうに手を動かしていた。
「で、ここの兵装なんだけど…」
「しかしそれでは出力が…」
「むう…やっぱり出力は落ちちゃうか…」
「失礼します。こちらに…何をしておられるのですか?」
「はにゃ?」
ノックしてドアを開けたカリウスの前には士官室には10名近くの兵士と鏡士郎が居り、ひとつのパソコンを覗き込んでいた。気になったカリウスも覗き込むと何かの設計図のようだった。
「これはドムの設計図なのでしょうか?しかしドムにしては形が違いますね」
「それもその筈です。これは我々と副隊長のアイデアですから」
「副隊長の?」
「ドムをベースとしてサイコミュ高機動試験用ザクのブースターを流用して機動力を通常のドムより高い物にします」
「そしてサイコミュに連動する有線式5連装メガ粒子砲を装備させるんだけど、これはニュータイプ用ではなくて通常パイロットによる一対多数戦闘を行なう機体なんだ♪出来ればガトー少佐やカリウス兄に乗ってほしいんだけどね」
「おお!自分にでありますか」
「でもフラナガン機関の実験データの動きをオートでさせるプログラムに造れないから稼動データがねぇ…」
「ここでは限界がありますからね。基礎までしか…ですが簡単なシミュレーションではですね」
嬉しそうに説明する士官はデラーズ・フリートでドラッツェの設計に関わっていた人物で他の兵士も整備士やモビルスーツに詳しい連中を集めてきたのだ。
皆、嬉しそうな表情なのだが目の下のクマが気になった。
「まさかとは思いますが徹夜されたんでしょうか?」
「ん~、平気平気。僕、三徹までなら余裕だから」
「いえ、そういう問題では…」
加藤 鏡士郎はパイロットであり指揮官である。何が起こるか分からない状況下では休む時に休んで万全の態勢にしなければいけないと告げようと思ったのだが鏡士郎も設計者と同じ目をしていた。言うに無駄だろうと判断する。
「この後予定していた訓練はどうするのですか?」
「訓練?………あ!!後何分?」
「10分前になりましたね」
「急ごう。じゃあ『ブラオシュネー』は任せたね」
「了解しました副隊長」
カリウスに連れて行かれる形で格納庫へと向かう。
艦隊に合流してから六ヶ月余りが経った。その間に副隊長としてもパイロットとしてもやるべき事が出来たのだ。その一つとしてこの残存部隊のパイロットの育成が増えたのだ。
デラーズ・フリートの兵士は一年戦争から実戦の経験を積んできたジオン兵士であり、一年戦争で三ヶ月前後の戦闘経験を積んでほとんどの者が訓練止まりの連邦兵士とは違う。とは言っても中には上手い・下手な者が居る。全体的に操縦技術を向上させる為カリウスを教官として訓練をしている。鏡士郎とガトーはたまにその訓練に付き合っている。
「そういえばそろそろアクシズに着くんだったよね?」
「はい。そのように聞いてはいますが…」
「楽しみだなぁ…早く合いたいな」
鏡士郎はアクシズに到着するのが待ち遠しくて仕方がなかった。アクシズには提督のマハラジャ・カーンにのちのアクシズを率いるハマーン・カーン、ドズル・ザビ中将のご息女であるミネバ・ラオ・ザビ様。そしてジオンのエースパイロットで『赤い彗星』の名を持つシャア・アズナブル大佐。合って見たい人がこれだけ居るのだ。
鼻歌を歌いつつ格納庫へと急ぐ。ちなみに曲は『サイレント・ヴォイス』である。
格納庫ではすでにガトー少佐を始め何人かのパイロットが待機していた。
「遅いぞカトウ少佐!!」
「ひぃっ!すみません」
「すぐに始められるか?」
「勿論ですよ」
そう言ってヅダに乗り込む。コンソールを操作してシミュレーションを作動させる。
これから行うのは最終訓練として行なう手加減無しの戦闘訓練である。ただモビルスーツを宇宙空間で戦わせるのは時間がかかり、アクシズへの到着が遅れてしまうためにモビルスーツ同士のシミュレーション映像を繋げる事で行なう。
データ化された機体を選び操縦桿を握り締める。モニターの景色が格納庫から宇宙空間へと変わる。
辺りには広い宇宙空間以外にはデブリが少し見えるぐらいである。いや、青く塗られたゲルググが見える。
「ガトー少佐!」
名を呼ぶと機体を寄せる。気付いたようにモノアイがこちらをちらりと見た。
「やはりカトウ少佐はその機体を選んだか」
「何処か変でしたか?」
「いや、らしいなと思っただけだ」
「ふふーん♪お気に入りですからね」
嬉しそうに笑う鏡士郎の機体はヅダであった。
このデータのヅダは元々無かったのだが無理を言ってプログラムしてもらったのだ。と言っても改造してあるヅダではなく、そのヅダに入っていたヅダの基本データを基にしてあるから通常の機体の数値である。
下手をすれば空中分解も起きるんだけど実機なら兎も角、ヅダ以外の選択肢は無かった。
《模擬戦を開始します》
モニターに文字とスピーカーからの音声で模擬戦が始まった事を知らされる。
速度を合わせて周辺索敵を開始する。模擬戦の相手は15機。2対15では数は圧倒的に負けている。ならば腕で押し返すのみだ。
『上から来ます』
脳内で声がした気がした。慌てて回避行動を取ろうとすると少し遅れてゲルググも回避行動に入る。二人の間を大型のバズーカの弾が通過した。大きさからしてジャイアント・バズーカの弾だろう。
思ったとおり二機のリック・ドムⅡが頭上から迫ってくる。しかし当てようとする訳ではなくヅダとゲルググをバラバラにしようとしている。
「援護します」
「では行くか!!」
対艦ライフルを構えると何の疑いも無く二機へと突っ込んでゆく。二機のドムは二手に分かれてゲルググを挟み撃ちにするつもりだろう。
「まず一機!!」
放った弾丸は吸い込まれるようにコクピットを打ち抜く。爆発が起こったが目もくれずにもう一機にビームを叩き込み二機があっという間に落ちた。
コクピットの外からこの模擬戦の映像を見ている兵士達の歓声が上がったのが分かった。
「にゃはは♪さっすがソロモンの悪夢ですね」
「それを言うならばカトウ少佐もではないか」
「ニヒヒ、それほどで『左から』もっと!!」
モニターで確認するよりも早くペダルを踏み、その場を離れる。と同時に弾幕の嵐が通り過ぎた。
ザクⅡが一機、ゲルググが二機迫ってきていた。対艦ライフルを構えずにとりあえず回避に専念する。
「こっちに三機来ました」
「そっちもか!?こちらも三機だな」
モニターにはリック・ドムⅡ3機に追われるゲルググが見えた。
彼らの作戦に嵌ってしまったらしい。しかし回避に専念したヅダには当たらなかった。でたらめのような回避は先読みしたかのように弾丸から避けて進む。三機が逃すまいと追いかける。
「付いて来たな。では反撃開始と行きますか!!」
進む方向へと対艦ライフルを構えたヅダはあまりにも無防備だった。だからこそザクのパイロットは気付いたのだろう。
「もらった!!」
「散開!!」
「なにを?うわー!!」
ヅダに標準を合わせていたゲルググが爆発した。攻撃したのはヅダではなくこちらに向かって来ていたガトー少佐のゲルググだった。同じようにガトー少佐を追い回していたリック・ドムⅡを弾丸が次々と打ち抜いていた。そんな光景を見ているうちにヅダを追撃していたもう一機のゲルググが撃墜された。
「馬鹿者共目!!言わんこっちゃない。あの少佐方は俺達が想像していたよりも強いんだ。その事を理解せずに突っ込みやがって…」
追撃していた合計4機がやられた瞬間にザクⅡは残りの仲間と合流する為に逃げ出した。
「もう一機は任せます!ザクは僕が」
「あい分かった」
ザクに狙いを定める。すでに射撃範囲ギリギリであったが焦りは無い。何故ならば…
「ここは・・・俺の距離だ!」
何も根拠は無かった。多分台詞も言いたかっただけなのだろう。しかしその弾は逸れることなくザクを貫いた。
軽く息を吐き出した頃にはビームナギナタで残りの一機も仕留めた後だった。これで残りは7機。一番手ごわそうな人も残っている。
案の定デブリ帯より隠れていたザク・ドム・ゲルググを含んだ7機が現れた。その内、リック・ドムⅡが前に出てきた。
「やはりお二人には小細工は通用しませんか」
声しか入らないが向こう側で苦笑いをしているカリウス軍曹の顔が思い浮かぶ。
「ふっ。二機で撹乱して六機で各個撃破。もしくはデブリ帯に誘い込んで集中砲火と言った所か」
「ええ、作戦ではそうでしたがこうも簡単に壊されるとは思いませんでした。ですので…」
「正面からと言う訳か?」
「小細工が通用しないなら正面より挑ませてもらいます!!」
「良いだろう。カトウ少佐」
「カリウス兄は任せました。残りの六機はこっちで?」
「4機は任せた」
「了解しました!」
「全機散開!!」
バラバラに散らばり四方八方から攻撃してくるモビルスーツを相手にこちらも反撃する。さっきは一対一の状況や互いに相手を奇襲する事で隙が出来ていた為に簡単に勝てる事が出来たが今の彼らは隙も無く、全身全霊を持って挑んでくる。さすがのガトー少佐も鏡士郎も手強い部下達に手を焼いている。それでも二人は他者を圧倒して行く。
中距離過ぎて使い辛い対艦ライフルを迷う事無く投げ捨てて、シールドに取り付けられたシュツルムファウストを放って近くに居たゲルググを巻き込み爆発する。足に取り付けられていたヒートホークを握ると身体を軸にしてドムⅡのコクピット目掛け投げつける。最後に二機の弾幕を右に左へと回避行動を取り、シールドに備えられている打突用のピックを展開しながら突撃をかける。
弾幕を回避して接近するヅダに対してマシンガンを投げ捨てヒートホークを手に取ろうとしたがすでに懐まで接近されてしまい打突用のピックがコクピットへ――――突き刺さらなかった。それどころか動きが完全に止まったのだ。マシントラブルかと周りが思い始めた頃に一言だけ呟いた。
「何かが来る…」
艦内に警報が鳴り響いた…
鏡士郎が搭乗している『アルト・ハイデルベルク』の艦橋では大騒ぎになっていた。
今日も今日とてアクシズへと誘導してくれるムサイ級に続いて進路を取っていた。あと一週間以内にはアクシズ入り出来ると予想され、ここまで地球圏から離れれば連邦軍に襲われる心配も無いと多少ながら油断していた。
艦長であるエイワン・ベリーニ大尉はモニターを睨みつつ怒号を上げていた。
「索敵班何をしていた!!」
「す、すみません。ミノフスキー粒子の影響で…」
「いい訳はいらない!照合まだか!?」
「現在最大望遠ですが距離が…あと30秒お待ちください」
「待てるかっ!!モビルスーツ隊にスクランブル!発進準備急がせろ!!」
苦虫を潰したような顔で大型モニターを睨み付ける。確かに戦艦が居るらしき所はミノフスキー粒子が濃く、レーダーによる発見は無理だっただろう。ならばこそ熱源探知や目視での索敵、艦長に進言するなりすべきだ。今回発見できたのは向こうが移動中だった為にメイン・ノズルの噴射により発せられた光を偶然捉えることが出来て発見できたのだ。これが移動中ではなく待ち伏せだったらと思うとゾッとする。
「全艦第一種戦闘態勢!!」
「艦長!カトウ副隊長が攻撃するなと」
「攻撃するな?どういう事だ」
「いえ、そこまでは…!?アンノウン艦より通信!これはジオンの通信コードです!!」
「ジオンのだと!?」
「映像解析終了しました。アンノウン艦は『グワンバン級大型戦艦グワンザン』です!!」
「そのグワンザンより『我々アクシズは諸君らを歓迎す』との事です」
「そうか…ハハ…そうか!第一種戦闘態勢解除。モビルスーツ隊の発進もだ」
新たな命令をオペレーターが伝える中、エイワン大尉は艦橋のガラス越しにグワンザンが居るであろう宙域を見つめる。
「やっとここまで来たんだな…」
この二時間後、ムサイ級後期型軽巡洋艦『アルト・ハイデルベルク』を始めとしたデラーズ・フリート残存部隊はグワンザンと複数のムサイ級に守られるようにアクシズに入港したのであった。
フラナガン機関のデータとモビルスーツ、そして独自の設計図を持ってアクシズへと合流を果たした鏡士郎達デラーズ・フリート残存兵力を待ち受けていたものとは!?
次回『小惑星アクシズ』
『暑っ苦しいなぁ…ここ。出られないのかな?おーい、出して下さいよ。ねえ』
ではまたお会いしましょう。