東方呉服屋Project 作:手巻きおにぎり
──カタカタカタ、カタカタカタ
カタカタカタカタ──
「こんにちは。少しお時間いいですか?」
いらっしゃい。
あら、阿求ちゃん。
貴女が外に出てくるなんて・・・最近は割と多いわね。
どうしたの?
「一つお頼みしたいことが有りまして。それと普通に買い物ですね」
あらそう。
買い物客なら遠慮は要らないわ、ゆっくり見ていってちょうだい。
「いえ、もう決めているので大丈夫です。あれ、あそこに掛けられてるやつをください」
はいはい、って。
・・・子供用の割烹着なんて買って、一体何に使うのよ。
「自分でも用途の分からないものを店に置くのもどうかと思いますが。友人へのプレゼントですよ、似合いそうなので」
阿求ちゃんの友人というと・・・、鈴奈の店主ちゃんかしら。
確かに似合いそうではあるけれど・・・。
「彼女、あれでいて料理もとても上手なんですよ」
あら、そうなの。
なら今度押し掛けてみようかしら。
「程々にしてあげてくださいね」
止めなさいよ、薄情な子ね。
それで、頼みって何かしら?
「歴代阿礼乙女がなし得なかった、幻想郷縁起への貴女の項目の追加」
・・・断るわ。
貴女だって、覚えてるでしょう?
都度八回、私は貴女のその頼みを断っている。
いい加減諦めなさい。
「何故、断るのですか!任意とはいえ、不利益は貴方には無いんですよ?」
・・・まぁそれはそうね。
けれどね、私は私の存在を実体あるものに残したくないのよ。
「・・・貴女ほどの妖怪ならば、既に幾つか文献に残ってると思いますが」
全部消したわ。
持ち主を襲って、略奪して、燃やして。
それを最後に、すっぱり。
そうなりたくなければ、止めておきなさい。
「分かりません、全くです。どうしてそこまで、自分を嫌うのですか?」
別に、嫌ってるわけじゃないのよねぇ。
まぁ、その、あれよ。
貴女には分からないかしら。
・・・恥ずかしいのよ、あれ。
「・・・・恥ずかしい、ですか?」
そう。
外の人風に言うのなら、『黒歴史』ってやつよ。
ほんっと、思い出すだけで死にたくなるのよ、あれ・・・!!
「そんな、ことで。今まで八回、断ってきて・・・?」
そうよ!
悪いかしら!?
あぁ、恥ずかしい・・・!
「・・・でしたら、その黒歴史後からでもいいです。それでは、いけませんか?」
・・・まぁ、それなら。
もう踏ん切りはついたから。
「・・・はぁ、まさかそんなことで人生何回も棒に振っていたなんて」
あ、貴女ねぇ!
くそっ、もうどうでもいいわよ!
今日は店じまい!
私は寝る!
「あ、ちょっと高名さん!・・・行っちゃった」
「また後日伺いますねー!」
あぁ、恥ずかしい恥ずかしい!
どうしてこうも上手く行かないのかしらほんっと!
あぁ、恥ずかしい恥ずかしい──