東方呉服屋Project 作:手巻きおにぎり
──カタカタカタ、カタカタカタ
カタカタカタカタ──
・・・どなたかしら?
うちは日が落ちたら店じまいなのだけれど。
「まあまあ少しぐらいいいじゃないか。どうせ知らない仲でもあるまいし」
そりゃあ、確かに貴女の事は知ってるけど。
幻想郷二大健康オタクの片割れ。
通称『う詐欺』、因幡てゐ。
こんなしがない呉服屋に何の用かしら?
服をお求めなら昼間に来て頂戴。
「あっはは、まぁそう警戒しないでちょうだいな。いくら私でも、ここを騙して金せびろうなんてことは考えないからさ。ちょいとお話ししようや」
断る。
あんたは人妖をたぶらかす妖怪だからね。
会話を成立させてはいけないって言われてるのよ?
知ってた?
「酷い話だこと。でもね、今回はちょっと真面目な話だから、ちゃんと聞いてほしいなー」
・・・真面目な話、ね。
どういった?
「・・・私は、まぁ知っての通り長生きだ。昔この辺りに引っ越してきてからずっと、近くの人里を見守ってきた」
どんな話かって聞いてんのよ。
関係ない話はしないで。
「私が見守りはじめてから何年後だったか、人里に奇妙な『人外』が住み着いた。『高名羽織』っていってねぇ。不思議な、不可思議なほど住民に受け入れられていた」
黙れって言ってるでしょ!!
その頭の耳は飾りか!?
「何をやったかは知らないけど、『上手く』行き過ぎた話だとは思わんかね?私はとてもそう思うけれど」
っ!?
・・・そうね、言われてみれば。
確かにその『高名羽織』という妖怪、『上手くいきすぎて』いた。
それで?だからいったいなんだというの。
「いんや?私はだからどうしようとかは考えてないね。ただの知的好奇心さ」
あら、そう。
喧嘩だったら受けてあげたのに。
「私の能力を知ってるかい?『人に幸せを与える能力』さ。これがまた応用性が高くてねぇ、人のみならず生物非生物の『幸』を見ることが出来るのさ。・・・あんたの幸はからっきしだ。生き物としてあり得ないほどにゼロなんだよ」
あらそれは。
なるほど、それはそれは。
ここ数年の不運の原因がはっきりしましたわ。
ありがとうございました。
「そういう話をしてるんじゃないんだよ。私が聞きたいのはなぜ『幸が無い状態であそこまで上手く行っていたのか』だよ。話術か、妖術か、あるいは能力か。何にせよなにか細工をかけないと不可能なことだ。私はそれが知りたい、ただそれだけだよ」
さあ、どうなんでしょう?
話術かもしれない。
妖術かもしれない。
能力かもしれない。
ただ言えることは、何にせよ私はそれを可能にできる、ということ。
貴女の思った選択肢が、正解なのではないのかしら?
「・・・・・・はぁ、暖簾に腕押し糠に釘、こりゃどうも駄目みたいだね。仕方ない、今日は帰るよ。また今度、できたら教えてほしいなー?」
何か買ってくれるなら考えないでもなくはないけど。
「そうかい、そりゃ残念だ。んじゃ、失礼するよ」
二度と来ないでちょうだいな。
・・・ふぅ、どうにか上手く撒けたかしら?
「あら。何を撒いたんでして?」
!?