if~刹那君は新入生~   作:猫舌

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第10話

セツナサイド

 

 

あれから数日、何時も通りリオンを肩に乗せて校門へ向かうとオウガが仁王立ちで立っていた。

 

 

「おはよう、オウガ」

 

「朝から何をしているのだお前は?」

 

「お前等を待ってたんだよ。まあ、ツラかしちゃくれねえか?」

 

「良いけど・・・何で?」

 

「取り敢えず着いて来てくれや」

 

「分かった。行こう、リオン」

 

「良いだろう」

 

 

オウガの後ろを着いて行くと、学園から離れたとある無人島へ辿り着いた。

 

 

「安心しな。人はいねえが、寝床と食いモンには困らねえ島だからよ」

 

「それは良いけど・・・要件は?」

 

「・・・セツナ、リオン。暫くオレの修業に付き合ってくれ」

 

 

そう言ってオウガは僕達に頭を下げた。その目には確かな決意が籠っていた。

 

 

「男にはな、絶対に負けらんねぇ戦いってのがあるんだ。オレには、その戦いがある。・・・あの学校で、近々な」

 

「・・・ヴィルフリート」

 

「察しが早くて助かるぜ」

 

「オウガ。言っておくけど今の君じゃ到底・・・」

 

「分かってらぁ。だから修行すんじゃねえか。あの男を倒したお前とそのパートナーを相手にな」

 

「我はその男と戦った事は無いのだが・・・?」

 

「それでも戦闘能力は凄えだろ。だから頼む。オレに力を貸してくれ!」

 

 

そう言ってオウガは再び深く頭を下げる。正直な話、無理だ。確かにオウガは強い。この世界でもかなりの猛者と言える。だが、上には上がいる。その例が先輩のヴィルフリートだ。

数年前、クエスト中に初めて会い、成り行きでその男と戦闘になった僕は勝利したものの、右腕を持ってかれた。まあ、その傷は完治に二日も掛からなかったけどね。

それでも僕を本気にさせた相手なんて彼くらいしか居なかった。

ぶっちゃけた話、僕で苦戦した相手にオウガが勝てる筈が無い。下手すれば人生からログアウトする事になる。

でも目の前の男はそんな事を気にする様な人物では無い事を知っている僕は深く溜息を吐いた。

 

 

「・・・分かった。ただ、勝てる様にするのは無理。僕に出来るのは、良くて相打ちだ」

 

「おう。それでも構わねえ!感謝するぜ」

 

「はあ・・・リオンも付き合ってね」

 

「了解した。我もオウガの力は気になっていた所だ」

 

 

肩の上でリオンが嬉しそうにしている。なんでこう皆バトルジャンキーなのか・・・。僕もそうか。自分で言ってて悲しくなって来たよ。

心の中で嘆いていると、オウガが声を上げた。

 

 

「おし!そうと決まりゃ、まずは野営の準備だ。着いてきな!」

 

「はいはい。行くよ、リオン」

 

「うむ!」

 

 

こうして僕達の修業が始まった・・・。

 

 

 

 

 

~翌朝~

 

 

「おい、セツナ起きろ。てかオレから離れろ」

 

「んみゅ・・・」

 

 

朝になり、オウガに起こされる。いかんいかん。また何時もの癖で抱き付いてしまった。いい加減この癖治さないとね・・・。

目を擦りながら体を起こす。少しずつ覚めて来た目で目の前を見る。そこには・・・

 

 

「おはよう」

 

「・・・ばいぱー?」

 

「・・・おい。なんでテメーがいるんだ?」

 

「昨日、お前が誘拐事件をやらかしたと聞いてな」

 

「なんだと?」

 

 

突然来たバイパーから告げられた言葉にオウガは珍しくキョトンとなる。・・・誘拐事件?

・・・あっ。(察し)

 

 

「朝早くから校門前で女子生徒に声を掛け、有無も言わさず連れて行ったと聞いて気になったのでな。詳しく話を聞きたかったから、お前達を追跡した」

 

「おい、今女子生徒って言ったな?ソレ何処?何処情報?処すから教えて」

 

「落ち付けセツナちゃん」

 

「ブッ殺されたいか馬鹿蛇」

 

「どうどう」

 

 

腹立つ・・・。無表情で馬鹿にして来るのが尚更腹立つ。・・・後で絶対仕返ししてやる・・・メアに。

 

 

----なんで私!?

 

 

・・・今何か電波を受信した気がした。

そんな事を考えている僕を余所にオウガがバイパーと話を続ける。

 

 

「で、目的はなんだ?身代金か?痴情のもつれか?セツナの可愛さに我慢が天元突破したか?」

 

「知ってどうするつもりだ?」

 

「良い感じに脚色して一面に載せたい」

 

「・・・ブッ飛ばされてえのかコラ」

 

 

オウガさん軽くマジギレモード入りましたー。(適当)

週刊誌レベルに酷い事をサラッとしようとするバイパーに僕は何も言えなかった・・・。

僕は立ち上がって、オウガの目的を話す事にした。今の二人に会話させると碌な事にならない。

 

 

「・・・って訳だよ」

 

「なんだ、そう言う事だったのか」

 

「理解したか?なら、とっとと帰れや」

 

「いや・・・まだネタはある。その修業、俺も付き合おう」

 

「あぁ?」

 

 

バイパーの提案にオウガが額に青筋を浮かべた。今にも殴り掛かりそうなオウガを僕は止める。

 

 

「[知られざる金獅子の生態!その強さの秘訣に迫る!]・・・見出しはコレで決定だ・・・!」

 

「お前マジd「待ったオウガ」・・・なんだよ」

 

「バイパー。取材する代わりに此方からも条件がある」

 

「なんだ?」

 

「《退魔士》のトップだった君に頼みたい。オウガに格闘術を教えて欲しい」

 

「お、おいセツナ!?」

 

 

オウガは僕を驚愕した目で見る。オウガを落ち着かせてから話を続ける。

 

 

「オウガ。確かに君の身体能力を考えると心配する程の事では無いよ。でもそれは普通の相手ならの話だ。今回は対人戦。しかも相手は学園最強と来た」

 

「だったらぶん殴れば良いだけだろうが」

 

「君は"一発も殴られずに"勝つつもりなの?僕が苦戦したあの男を?」

 

「そ、それはそうだけどよ・・・」

 

「殴る分なら問題は何一つ無いさ。でも相手だって反撃しない訳じゃない。何時もの突撃思考じゃ勝てる相手じゃない。しかも即興で覚える防御なんて意味を成さない」

 

「じゃあする意味ねえじゃねえか」

 

「オウガ。君は防御ではなく受け流しを覚えるんだ」

 

「受け流し?」

 

 

オウガの声に僕は頷く。防御なんてした日にはオウガの腕が粉々になるって。だから相手の勢いを利用して0ダメージで躱す受け流しが最適なのだ。

受け流しの練習は退魔士の里でも何度か練習した。途中で里を出た僕よりも、現役のバイパーに頼んだ方が良いと思ったのだ。

 

 

「って交換条件なら良いよ?」

 

「・・・分かった」

 

「よし。やっぱり現役の退魔士に任せた方が安心だからさ」

 

「俺達はもう退魔士を辞めたぞ?」

 

「・・・はい?」

 

 

バイパーの言葉に僕は一瞬頭の中が空になる。

 

 

「あのバイパーとメアが退魔士辞めた!?」

 

「色々あったんだ。・・・今度話すさ」

 

「ま、まあ分かったよ」

 

「だが今までの修業の内容は身に沁みこんでいる。教える位なら造作も無い」

 

「そっか。んじゃよろしくね」

 

「任せろ。それと、セツナに届け物だ」

 

「ん?」

 

 

そう言ってバイパーはずっと背中に背負っていたリュックを僕に渡して来た。中身を開けると、食べ物を主に、寝袋や折り畳み式の椅子等が入れられていた。

 

 

「あの、コレなんすか?」

 

「・・・女子達からの差し入れだそうだ」

 

「嬉しいけどさ・・・オウガの分無いよね?」

 

「女子達曰く、誘拐犯は反省しろだそうだ」

 

「まあ、もう少し頼み方あったよね」

 

 

僕達の指摘にオウガは何も言えなくなる。不器用なんだから・・・。リュックの中身から食べ物を出していると、向こうの方からリオンが何匹か魚を抱えて飛んで来た。

 

 

「む、バイパーではないか。来ていたのか?」

 

「ああ。スクープをゲットしにな」

 

「そうか。丁度採り過ぎた所なのだ。一緒に食べて行け」

 

「ありがたく頂こう」

 

 

リオンはバイパーに魚を渡すと、焚き木に小さな雷で火を付ける。そこへ、バイパーが内蔵を取り出して、串を刺した魚を焼く。暫くすると、良い匂いが鼻に通り抜ける。

焼けた魚を皆で分けて食べた。ああ、こんなの何時ぶりかな。旅をしていた時代が懐かしい。

今度フローリアと世界を旅するのも悪く無いな。この前知り合いのピアニストからコンサートのチケット貰ったし、聴きに行くがてら旅行しよう。リオンって言う移動手段もあるしね。

その後朝食を摂り終えた僕達は準備運動をしてから修業に入る・・・前にオウガが言った。

 

 

「オレはこの修業でもう一つ身につけたいモノがあんだよ」

 

「なんだソレは?」

 

「《覚悟》だ」

 

「ああ・・・メンタルね」

 

「結構重要だからな。そこは自分でなんとかするぜ」

 

「はいよ。んじゃあ、バイパー先生よろしく。僕も僕でオウガ専用メニュー組むから」

 

「了解した」

 

 

バイパー達と別れて僕は木陰でリオンと話し合う。と言ってもオウガの修業メニューなんて単純でも構わないのだけれど・・・。

 

 

「ま、午前はバイパーのレッスン。午後は僕とその成果の発表会で良いかな。んで、息抜きがてらにリオンと模擬戦ね。リオンは技禁止」

 

「良いだろう」

 

「いよいよオウガが勝負仕掛ける時が来たか・・・思ってたより早かったなぁ」

 

「そうだな。我等の予想ではあと一ヶ月程先だと思っていたが」

 

「ま、猪突猛進を擬人化した様なオウガらしいね。僕達も最大限のバックアップをしよう。主にオウガが死なない為にも」

 

 

僕はリオンと暫くそんな事や世界を周っていた頃に経験した事を話していた。昼になり、バイパー達と一旦練習を中断して昼食の調達の為に海で釣りをする。

貰った食べ物?一緒に食べるから問題無い。アレだけじゃ足りないし。

岩場に座りながら全員で釣り糸を垂らす。リオンは僕の膝で寝息を立てていた。そんな中、オウガがバイパーに話し掛ける。勿論小声で・・・。

 

 

「・・・なあ、ヘビの。あの学校、どう思うよ」

 

「どうって、どうなんだ」

 

「・・・」

 

「・・・飽きない場所、だな。あそこの連中はなにかと面白い。お前も含めてな」

 

「ケッ、面白れぇ、か・・・」

 

「それがどうした?」

 

「・・・ちょいと聞いてみただけだ」

 

「そうか。・・・場所を変える。また後でな」

 

「おう」

 

「気を付けてね」

 

「ああ。では、行って来る」

 

 

そう言ってバイパーは去って行った。ふとオウガを見ると、何かを考えている様だった。

 

 

「大丈夫?」

 

「ん?ああ、ヘビのについてな。あの野郎、相当やりやがるな」

 

「まあ、退魔士だもん。・・・元だったっけ?」

 

「ふざけた野郎だが、あの目・・・一度や二度は地獄を見てる目だ」

 

「退魔士は仕事柄、人の命を手に掛ける事もあるからね」

 

「お前もそんな目してる時あるぜ」

 

「そりゃそうだ。僕だって何百人と殺して来たからね」

 

 

僕の言葉にオウガが目を見開く。僕だってなにも平穏無事に世界を旅して来た訳じゃない。時には戦争に巻き込まれた事もあるし、闇に取り込まれた人間達を相手にして来た。

闇に取りつかれたばかりならばまだ手はあるが、時間が経つと闇はその魂に食い込む。そうなると僕には何も出来ない。出来る事は特典を使って作った僕専用の退魔士の武器か宝具で人間ごと闇を断つ事だけだ。

こう言った家系では良くある事だ。世知辛いったらありゃしない。

 

 

「お前も色々あったんだな・・・」

 

「ま、僕の事は放っておいて。バイパーは凄いって事でしょ?」

 

「ヤツだけじゃねえ。鬼殺しの女に竜使いの戦士・・・ククク、血が滾って仕方ねぇ」

 

「でもやっぱりヴィルフリートが格上すぎるよ」

 

「・・・《不死者の帝王》・・・あれこそ本物のバケモンってやつだぜ」

 

「そうだね」

 

「・・・セツナ、オレはヤツと殺し合いになるかもしれん」

 

 

オウガの言葉に世界が静寂に包まれる。風と波の音以外何も聞こえない。僕は自分でも驚く程低い声で聞く。

 

 

「・・・理由は?」

 

「そういう次元の話じゃねぇんだ。オレとヤツは"そうなるべくして出会った"んだ。所謂宿命ってやつだ」

 

「随分と物騒な宿命だね」

 

「だな。知ってるか?真の勝者ってのは、戦う前から勝利の未来が見えるんだとよ」

 

「まあ、良く聞くよね。テンプレって言うか・・・」

 

「オレもそうだった。どんな戦いだろうと、オレには勝利しか見えてなかった」

 

 

そう言うオウガの目には自虐的な何かが混ざっていた。そんな寂しい目で話を続ける。

 

 

「・・・だってのによ。野郎の前じゃそれがまったく見えて来ねぇ」

 

「実力差だよ実力差」

 

「----クソがッ!」

 

「静かにしてよ。リオンが起きる」

 

「悪い・・・でもよ。オレの獅子の魂は、この程度だったってのかよ・・・!」

 

 

オウガは悔しそうな声で釣竿を握る力を強める。僕の魔力で投影した釣竿から軋む様な音が鳴る。まるでオウガの心の弱さを体現するかの様な音だった。

 

 

「・・・オレは勝利の確信が欲しい。その為に《覚悟》を決める。オマエには、その見届け人になってもらいてえんだよ。・・・同じ"獅子の魂"を持つ、オマエにしか頼めねぇ事だ」

 

「・・・分かったからそんな目で見ないでよ。その戦い、最後まで見届けよう」

 

「頼むぜ、親友」

 

「任せろ親友。君のボコボコになる様をしっかりと焼き付けてあげるよ」

 

「へっ、言ってくれるじゃねえか。アイツを倒したら今度はお前へのリベンジだ」

 

「期待せずに待ってるよ~♪」

 

 

そう言って僕は再び釣りに集中する。この修業で仮にオウガに爆発的な成長が見られたとしても勝つ事は難しいだろう。なら僕は精いっぱいに出来る事をしよう。それが金獅子の親友の仕事でしょ?

そんな事を考えながら、僕は手応えのあった釣竿を引いた・・・。

 

 

セツナサイド終了




教えて!ソウマ先輩!~4時限目~


~学校近くの海岸~


ソウマ「では、実際に進んで行きたいと思う。行くぞ」

セツナ「はい」

リオン「了解した」

ソウマ「あれ?ツキミはどうした?」

セツナ「あの駄兎がまたやらかしたから各方面への謝罪と後片付けです」

ソウマ「そ、そうか・・・ツキミも大変だな」

セツナ「と、言う訳で此処に居るメンバーで行きましょう」

ソウマ「分かった。それじゃあ行くぞ」

リオン「・・・む。アレがスイッチか」

ソウマ「そうだ。ダンジョンを進むと出て来るから、先へ行きたければアレを起動させるんだ」

セツナ「えいっ」(戦旗ビシッ!)


----扉の開く音がしました。


ソウマ「よし、此処から先は《ボス戦》だ。次回は戦闘についても教えて行こう」

リオン「では、起立!礼!」

二人&一匹「「「ありがとうございました!」」」
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