番外編1 《ウサ耳少女と白髪少年》 第1話
セツナサイド
とある日の夜、茶熊学園一年生寮では遅めの新入生の親睦会が開かれていた。
学校側が用意してくれた料理を食べながら各々友好を深めて行く。そんな中、僕はというと・・・。
「リオン、次は魚だ魚」
「待て、その前にあのピザという物をだな」
会話そっちのけで相棒と飯食ってました。他人の作るご飯ってなんでこんなに美味しいのだろうか。
そんな考えもすぐに消え失せ、ひたすらに料理を食べる。何故皆の所に行かないのかって?だってさ・・・
「だから俺は言ってやったんだ・・・粉砕!玉砕!大喝采!ってな・・・ヒック」
「ダハハハハ!良いじゃあねえか!おい、もっと酒持って来い!」
「おしぼりでバナナを作った・・・ヒック」
「あひゃひゃひゃ!もっろさけよこせぇッ!」
「わ、わだじばぁ!びめざまのだめにぃ!ぐしゅっ・・・」
「み、皆さんしっかりしてくださーーーーい!?」
男子は見事に出来あがっちゃってるし・・・。ヨシュア君は犠牲となったのだ。
女子は女子で・・・。
「お団子いかがですか~?」
「はいはーい!エシリア一個食べる~!」
「あ!私も私もー!」
「あひょひょひょ!しずく・えんじゅ、ぬぎぬぎしまーす!」
「し、シズクさんそれはダメです!ああ、ゲオルグも泣かないで・・・」
「お、お兄ちゃん大丈夫!?」
「うわ、これ収集付かなくね?」
「うん。私もそう思う・・・」
「あのバイパーさんまで・・・明日辛そうだな」
「・・・騒がしい人達」
見事にしず姉が全てをかき乱してますね。あとそこのウサ耳。親睦会で団子を売るな。せめてサービスにしなさい。その大きさで一個120円ってちょっとお得かどうか迷うじゃないか。巧妙な手口使いやがって・・・。
「さて、バレない様に食べますか」
「そうだな。ところでだな・・・」
「ん?」
「ガレアがよくコマンド入力とか言っているのだが、なんの事だ?」
「なんだそれ?」
ガレアさんの奇怪な行動に首を傾げながら食べ続ける。気が付けば料理は全て無くなり、酔っ払い勢がオールダウンしていた。女子達とヨシュア君もそれに乗じてドロンした様で、残された僕とリオンは仕方なく二人で片づけを始める。
全てを片づけた後、一人一人を引きずって部屋に放り込む。
バイパーは寝かせる前に体中に落書きしてから写真を撮っておくのがミソ。今度学校中に貼りつけてやる。(ゲス顔)
その後部屋に戻った僕は先にリオンを寝かせて一人寮の屋上で空を見上げていた。眠れない時はよくこうして空を見る。そこには大きな満月が輝いていた。そんな中、屋上の扉が開く。
「セツナ君?」
「ん?どうしたのこんな夜更けに?」
「ちょっと眠れなくて~」
そう言って僕の隣に立ったのはウサ耳の少女《ツキミ・ヨゾラ》だった。暫く無言で月を見る。
するとツキミが口を開いた。
「こうしてるとセツナ君と会った日の事思い出すね~」
「あの時もこんな満月だったっけ・・・」
「そうだね~♪一緒にお風呂入ったり~♪」
「止めて。恥ずかしさで死ねるから」
過去の事を思い出して顔が熱くなる。一人楽しそうに語り出すツキミを見ながら僕も思い出していた。この少女との始まりの物語を・・・。
~数年前[とある村]~
「やっと着いた・・・」
鬼退治の一族の里を追い出され、戦場で死肉漁りをしていた僕は遂にそこを抜けだし、冒険者になる事が出来た。そして路銀を稼ぎながら転生したからの夢であった世界中を周る旅をしていた。
そんな中、休憩に寄る村に着いたのは満月の輝く真夜中だった。宿屋を探していると、夜中であるにも関わらず、村の中心に人達が集まっているのが見えたのでそこへ向かう。
「あの、どうかしたんですか?」
「ん?ああ、旅の子かな?此処は大丈夫だから。宿屋は向こうだよ?」
「僕は冒険者なので、なにか困り事があれば解決しますよ?」
「き、君みたいな小さな女の子が・・・?」
「僕は男です!」
「えっ!?」
「んんっ!・・・で、何があったんですか?」
「実はそれが・・・」
その人の話によると、最近この村の森の奥に巨大な魔物が棲み着いた所為で、他の魔物が人里へ降りて来たらしい。
それを通りがかった魔法使いの女の子が退治しに行ってくれたらしいのだが・・・なんと宿屋に自分の武器を置いて行ってしまったらしく、しかも昼に出て行ったきり戻って来ていないそうだ。
「なら僕が行きましょうか?」
「で、出来るのかい!?」
「それくらいなら。戦闘と索的は僕の得意分野なので」
「ならお願い出来るかい?何も出来ない私達をどうか許してくれ」
「お気になさらず。人間、助けあいでしょう?」
僕は森への道を教えてもらい、道を進む。暫く行くと、分かれ道に着いた。片膝を地面に着いて魔力を流し込む。
「----《索的開始(トレース・オン)」
投影の応用で魔力探知を使い、人間の気配を探す。此処から数㎞に一人反応があった。普通の人より魔力がある事を考えるとこの反応の人が魔法使いで間違いないだろう。僕は月が照らす道を魔力強化した足で駆ける。
嫌に静かな森だ。デカイのが棲み付いたとはいえ、流石に可笑しくないかなコレ・・・。走っていると、無駄に目が良い所為か最悪な物が見えてしまった。さっきから茂みの中や周りに何かが食い荒らされた跡が見えた。
僕の予想が正しければ皆食われたな。そう考えていると、魔法使いの反応ともう一つ。出来れば遭遇したくなかった反応があった。
「よりにもよって《竜種》か・・・!」
竜種。簡単に言えばドラゴンの種族だ。知能が高く、その力は強大だ。子供の状態でも国を一つ滅ぼせる戦闘力で、この世界でも倒せる人間はほんの僅かだろう。僕も竜殺しの宝具やスキルがあるからこそ倒せるのであって、純粋な身体能力じゃ・・・行けるな、多分。
そんな事を考えながら道を進むと、反応のあった場所へと着く。そこは大きな樹が一本生えており、その根元で一人の少女が所々に切り傷や土ぼこりを作って眠っていた。
僕は急いで近付き、少女に声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
「ふえ・・・?だ、誰ですか?」
「僕は村の人達に貴女の捜索を任されて来た者です。此処は危険なので早く行きましょう」
「う、うん・・・」
少女を立ち上がらせ、その場を走って逃げる。すると、先程まで僕達の居た所から轟音と雄叫びが聞こえた。
「急いで!」
僕は少女を必死に走らせる。やがて森を抜けて村の前まで着いた。だが竜種の反応は此方へと向かって来ている。僕は溜息を一つ吐くと、少女に言う。
「君は急いで村へ行って。村の人達になるべく森の被害は抑えるって言っておいて」
「え、き、君はどうするの?あんな大きなドラゴン無理だよ!」
「大丈夫。だから君は村へ戻って皆によろしく」
僕は返事も聞かずに走って森の中へと引き返す。段々奥へと進む内、暗闇の向こうに竜の影が見えた。僕は走り、全力で・・・
「そりゃぁっ!」
『グギャア!?』
殴り飛ばした。竜は地面をバウンドしてさっきの巨木の前まで吹っ飛ばされた。僕は一気に詰め寄って右手に魔力を集中させる。
イメージするのは竜殺しの宝具の一つ。イメージ、構成を続ける。そして、
「----投影開始」
右手に握られたのは一振りの剣。一見なんの変哲も無い様に見えるその剣からは、異常なまでのナニカが滲み出ていた。
僕はその剣で敵を何度も斬り付ける。
「----これこそが《力屠る祝福の剣(アスカロン)》の真実」
斬り裂いた傷口から眩しい光が発され、竜は苦しみ悶えるそして僕は最後に十字に斬撃を入れた。
「----汝は竜。罪ありき!力屠る祝福の剣!」
竜は断末魔の様な叫び声を上げながらその体を粒子に変え、消滅した。それを見た僕は投影を解除して村へと歩き出す。
ああ、疲れた・・・。
セツナサイド終了