セツナサイド
ロアさんとの戦闘が開始され、各々が魔法を放つ。だが、全て魔法の盾に防がれる。流石昔はブイブイ言わせていただけの事はある。一度距離を取ろうとした瞬間、エリスが肉薄し、箱から拘束魔法を発動させる。
「貴様は・・・貴様だけはぁ!」
「ふん。怒り任せに来ようが無駄だ小娘。その血統に終わりをくれてやる。そら!」
「きゃあっ!?」
ロアさんはそれに対し、ふっと笑いながら防ぎ、攻撃魔法をエリスに叩き込む。僕はその場から跳んで、空中に飛ばされたエリスを抱える。すると寒気を感じて視線を真下へ向ける。予想通り、ロアさんが魔法陣を此方へと向けていた。それに気付いたアリエッタ達が攻撃をするが、全て防がれてしまっている。
僕は急速で魔力を練り上げる。
「----《ランド》!」
戦闘服が今度は黄色の装飾になり、右手に魔力を込める。そしてロアさんへと放った。
「《バインド》!」
「むっ!?」
「ぐっ・・・!」
ロアさんの足元から土の鎖が飛び出し、ロアさんを縛り上げる。すると魔法陣が傾き、僕達の横を通過する。エリスには当たらなかったが、僕の肩を少し抉った。鋭い痛みに顔を顰めながら着地する。
「あなた・・・なんで・・・」
「エリスが危なかったからに決まってるでしょ」
「だからって、下手をすればあなたが死んでいたのよ!?」
エリスが僕の腕の中で叫ぶ。向こうの世界でも似た様な事を色んな人達に言われていた事を思い出しながらエリスを降ろす。すぐにアリエッタ達が駆け付けてエリスに寄る。僕は彼女達の前に立って剣を構えた。
「生憎と僕は無駄に死ににくい体質でね。それに・・・友達傷付けられて平然としてられないよ」
「そう・・・あなた、やっぱり馬鹿ね」
「男は皆馬鹿さ。でも、僕はこの馬鹿さに誇りを持ってる」
「変な誇りね。・・・ごめんなさい、頭に血が昇っていたわ」
「誰だってそうなるさ。それより、今は向こうだ」
エリスは笑顔を浮かべる。どうやら先程の様な焦りは無いみたいだ。そして僕は改めてロアさんへ視線を向ける。ロアさんは余裕綽々とでも言いたげな表情をしていた。
「話し合いは終わったか?」
「随分と自信ありげじゃないか、ポンコツ」
「貴様・・・我を愚弄するか」
「事実を言ったまでさ。自分だけじゃ何も出来ないのに他人の体を乗っ取って如何にも自分の力みたいな事言っちゃって・・・惨めったらないよ、魔杖さん」
「小僧ォ!貴様から嬲り殺してくれるわぁ!」
僕の挑発にまんまと引っ掛かったロアさんは大量の魔法陣を出現させる。それに合わせて僕も左手の指輪に魔力を込める。
指輪はフレイムと同じ赤に染まり、更に龍を模した装飾が施される。
「----《フレイムドラゴン》」
次の瞬間、ロアさんの攻撃が放たれた・・・。
セツナサイド終了
三人称サイド
魔杖エターナル・ロアは目の前に広がった爆発を見て勝利を確信していた。出会った時から大きな違和感を感じていた少年《セツナ・キサラギ》。予想通りあのレナ・イラプションを打倒するだけでなく、まだ伸び白があった。
そんな危険分子を先に叩けた事を幸運と考えながら念を押す為、もう一度魔法を発動させる。だが・・・
「《スラッシュストライク》!」
「なにっ!?ぐあっ!」
黒煙から今までとは桁違いの威力の炎の斬撃が飛び出し、ロアの魔法陣が両断される。ロアは突然の事態を飲み込めずその場から下がる。やがて黒煙が晴れると、そこには先程魔法が直撃した筈の少年が新たな姿となっていた。その後ろには、少年と共にいた少女達の姿もある。
そして彼の黒が主体だった戦闘服は、赤を前面に押し出したカラーリングに変わり、胸元には龍の顔を模した装飾があった。少年、セツナ・キサラギは手にある剣を曲芸師の様に弄び、数刻前の自分の様に余裕の表情で微笑んだ。
「さあ、ショータイムだ」
「小僧・・・その姿はなんだ」
「フレイムドラゴン。フレイムの上位形態さ」
そう言ってセツナは剣を銃の形へと変形させて火球をロアへと撃ち込む。ロアは防御魔法を使うが、押され始めた。
「馬鹿な・・・我は魔杖エターナル・ロアだぞ!」
「たかが杖が僕に勝てると思うな!」
「ふっ・・・だがこの体はこの街の人間の物だ!そう簡単に攻撃を当てられまい!」
最終手段に出るロア。傍から見ればただの小者の台詞である。それに気付かず高笑いを続ける魔杖へセツナが真顔で右手を向ける。
「----《投影開始》」
瞬間、セツナの手に魔力が電撃の様に走り出す。そして一本のナイフが構成された。その形は歪で、見る者に何かしらの畏怖を与えるものがあった。セツナはそれを一瞬の内にロアの腹部へと投げ付ける。ナイフはロアの腹部に確実に刺さった。
ロアは思わず顔を歪める。だがそれだけでは終わらない。セツナは更に言霊を紡いだ。
「----《破戒すべき全ての符[ルールブレイカー]》」
「お、おぁぁぁ!?」
するとロアに違和感が生じ始める。体が震えだし、痙攣する。そしてロアは二つへと別れた。内の一つは気を失ってその場に倒れ込む。
それをセツナが空かさずコネクトを使って回収する。ロアは息を切らしながらセツナに問う。
「何をした・・・」
「ロアさんが憑依している状態を無理やり解除したのさ。そのナイフでね」
セツナの言葉の後、ロアの腹部へ刺さっていたナイフがガラスの様に音を立てて砕け散った。
本来ならば使いたくなかった投影をセツナは使い、あらゆる契約、呪いを解除する宝具でロアと憑依された男性と分けたのだ。今のロアはただの魔力の塊であり、補給する手立ては無い。全身から冷や汗を流しながらロアは下がる。
「さて、そろそろフィナーレ・・・と行きたいけど」
「・・・ま、待て!待て待て待て!」
苦笑いをしながらセツナは指を後ろに向ける。それを見てロアは叫んだ。何故ならそこには・・・。
「「「「「逃がさないよ♪」」」」」
「こればっかりは止められないよ・・・」
なんとも良い笑顔で立っている魔法少女達がいたのだから・・・。
ここから彼女達の蹂躙劇が始まる。
「ま、待て待て待て!ほら、我もうただの魔力の塊だから。いずれ消えちゃうから!」
「リルム式ロロット砲!」
「ま、待て小むsギャースッ!」
「ロアちゃん覚悟ー!」
「た、タイmあぎゃぁ!」
「私もどーんっ!」
「そっちは関係nぐぼはっ!」
リルム、ソフィ、レナによる絨毯爆撃レベルの魔法がロアを襲う。その間にエリスは封印の魔法を準備し始める。
「必ず封印してみせる・・・!」
「よっし!それじゃあ・・・出てこい、本!」
エリスと共にいたアリエッタも動いた。彼女の手には分厚い魔術書が現れる。
「またあの本にゃ!」
「こ、今度はどんな魔法が出るの!?」
「・・・!」
構えるアリエッタにウィズ達はアリエッタの魔法に希望を持つ。だが・・・、
「く、ぬおおおお!この程度で負けてなるものかああああ!」
ダメージを受けても尚、ロアは立ち上がる。そして再び魔力を練り始めた。それに合わせてアリエッタも魔法を発動する。それを見て、セツナとクロは思い当たる。
「そうか、あの時の防御魔法!」
「・・・!」
「これを見越してアリエッタは準備したのかにゃ!」
「凄いじゃないアリエッタ!」
そしてアリエッタの口から魔法の名が紡がれる。
「《攻めの型》・・・・《鈍器》!」
「げぶぼはぁッ!?」
「「「ファッ!?」」」
飛び出したのは防御魔法では無く攻撃魔法。尋常ではない速度で飛ばされた巨大な本が、ロアに直撃した。
「もはや魔法なのか何なのか・・・わからないにゃ」
「ハルカ・・・魔法ってなんですか(哲学)」
「ええ・・・痛い。我、すごく痛い・・・」
ポカンとした表情で患部を抑えるロアに対し、準備を終えた者がもう一人・・・
「出てこい・・・私の贄よ!」
叫ぶエリスの箱から飛び出て来た"ソレ"は、言葉に出来ない偉業の何かだった。それを見て、レナが思わず口に出す。
「げっなんかやば・・・」
出て来た"ソレ"に包まれ、ロアは苦悶の表情を浮かべる。
「ぐッ、くぅッ・・・よもや我が力が・・・封じられるというのかッ!」
「セツナがあそこまでお膳立てしてくれなかったら此処まで上手く行かなかったわ・・・大人しく封じられなさい!」
「がっ・・・があああああああああ!?」
ロアが絶叫して数秒と待たず・・・ロアの体は消えて杖がカラン、と音を立てて落ちた。
「う、うわぁ・・・」
ロアの持ち主であるリルムは困惑を隠しきれなかった。そしてそれは周りの者も同じである。
そんな中、エリスは一人やりきった表情をしていた。
「ふぅ、終わりね。"繋がっていた"部分だけ封印したわ」
「・・・」
「どうしたの?みんな、そんな顔して」
「・・・エリス"さん"」
「な、何よ急に・・・」
突如さん付けで呼び出したセツナにエリスは狼狽する。そしてセツナは流れる様な動きで深くお辞儀した。
「御勤め、御苦労様です!」
「ちょっ、なんで頭下げるのよ!?」
「ひっ!?あ、アレだけは勘弁してください!」
「別に掛けないわよ!?」
セツナだけでない、その場の全員が明らかに"引いている"事にエリスは気付いていない。
「今の何にゃ?」
「・・・シャルム家に伝わる"封印の魔法"です。曰く、禍事を喰らうものらしいですが詳しくは・・・」
ウィズにソフィが耳打ちする。どちらもエリスと目を合わせようとせず、足は震えていた。生まれたての小鹿状態だ。
そんな中、アリエッタが呑気に叫ぶ。
「はー、終わった終わった。もう帰ろー」
「・・・本当に終わったのかにゃ?」
「多分ね」
「・・・(汗」
その後、セツナ達は街の外れまで歩き、そこで一息つく事にした。
「助かったわ。あなた達のおかげで、エターナル・ロアを封じる事が出来た」
「僕じゃなくて皆のおかげだよ」
「・・・!」b
「キミは特別何もしてないけどにゃ~」
僕とクロはエリスの言葉にそう返す。そんな中、レナが口を開いた。
「乗っ取った瞬間に、顔も体つきも何もかも変っちゃうのね」
そう言うレナに全員が頷く。幸い、ロアに乗っ取られた人に怪我はなかった。ただ、魔杖が離れた瞬間にまるで別人に戻っていたのには全員が驚愕した。
呪いの様な形で体を奪い取り、顔も体も・・・全部が全部、別人になったようだ。
「エリス、ロアさん自体を封印しなくて良かったの?」
「ええ。リルムが上手く扱うと約束してくれたから」
リルムとロアが「あばばばば・・・」と言って倒れたのは言うまでもないが、今後、この様な事が無い様にする、と約束してくれた様だ。
「セツナ君達、もう帰るの?」
「もうちょっと此処にいませんか?」
「どうするにゃ?」
「セツナ、どうする?」
「大会のあとは、お祭りが一週間くらい続くし、せっかくだから遊ぼ!」
セツナ達はどうするか悩みだす。できれば早く帰りたいが、帰る手段がない限りどうしようもない。悩むセツナ達を見てから、アリエッタが言う。
「優勝は逃したけど、まあ仕方ない!ごめんね、エリス!」
「どうして謝るの?」
「優勝してお金をもらって、エリスにあげたかったんだけど、ダメだった!あはは!」
「・・・馬鹿ね。いいのよ、そんなこと」
エリスがアリエッタの頭を撫でる。
気が付けば大会は終わっていたし、優勝者は何処かの魔動師に決まっていた。ロアを止めるために動いていたセツナ達は、何時の間にか失格扱いになっていた。だが皆・・・特にアリエッタなんかは特に、晴れやかな表情を浮かべている。
「災害だとか言われてるけど、この子、意外と世界の為に貢献してるのよ」
「やる事は滅茶苦茶だけど、分からなくはないかな・・・」
「あうっ・・・えへへ♪」
セツナはエリスの話を聞きながらアリエッタを自然な手つきで撫でる。自分のいた世界でよくして来た行為である所為か妙に慣れた手付きだ。あのアリエッタ・トワを片手で止める魔道士なんて見出しが張られそうな構図だった。
アリエッタを撫でながらセツナは思い出す。魔法障壁を作ったのも彼女だと言っていた事を・・・。
「自分で作って壊すなんて、意味が分からないにゃ」
「でもアリエッタちゃんのおかげで、生活が豊かになったっていうのも、事実ですよ」
「とんだ大魔道師にゃ・・・」
「それでどうするの?セツナ君と黒猫の魔道士さん、ちょっとくらいいられないの?」
レナの問いに、セツナとクロは顔を見合わせて答える。
「それじゃあ、少しだけお世話になろうかな」
「・・・!」b
「それじゃあ、行きましょう」
「あーっ!エリスなにしてんの!?」
セツナの答えを聞くと、エリスは自然な動きでセツナと腕を組む。それを見てアリエッタは思わず声を上げた。それと同時に、魔法少女達の間に雷が落ちた。
「別に・・・私はただ今回のお礼がしたいだけよ。さ、行きましょ」
「う、うん・・・」
「あ、私反対もらった~♪」
エリスの反対の位置にレナが並んで腕を組む。両手に花状態である。その後ろをアリエッタ達が追いかける。
かくして、一人の少年の異世界での大きな戦いは一つの終わりを迎えた。その後、再びこの世界に迷い込み、魔法少女達との修羅場になるが、それはまた別のお話・・・。
三人称サイド終了
今回で番外編2は終了です!
想像以上に時間掛かった・・・。
次回から日常編に入ります。セツナが学校でやらかしたり、遂に飛行島へ招待されます!
そして彼女との再開も・・・!?
取り敢えず次回は、戦隊物やるよ!(ネタバレ)
では、次回もデュエルスタンバイ(大嘘)