if~刹那君は新入生~   作:猫舌

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第4話

セツナサイド

 

 

あれから翌日、何時も通りに学校へ行った。そして昼休みを終え、教室で午後の授業を受ける。そんな中、突然教室のドアが開けられた。その正体はオウガだった。

 

 

「おいセツナ!」

 

「どうしたのさ?授業中だよ」

 

「よくもまあ、ぬけぬけと言えるな・・・コレを見やがれ!」

 

 

そう言ってオウガは上の制服を見て鍛え上げた上半身を見せて来る。女子の大半が顔を紅くして目元を塞ぐ中、"ソレ"を見た者達はブッと吹き出した。

オウガの左右の胸筋にはそれぞれ《あんでぃ》、《ふらんく》とご丁寧に名前と顔の落書き済みでペイントされていた。

オウガは怒り心頭な顔で僕を見る。

 

 

「上等だ・・・!次の時間の合同体育、俺と勝負しやがれ!」

 

「それはいいけど・・・犯人を僕と決めつけるのは如何なものかと思うよ?」

 

「・・・」

 

 

僕の言葉にオウガはハッとした顔をする。人を疑うのは良くない。オウガは申し訳なさそうな顔で僕に謝る。

 

 

「勘ぐって悪かった。つい頭に血が上っちまってな」

 

「気にしなくて良いよ。犯人僕だし」

 

「やっぱりテメエじゃねえか!?なんの恨みがあってすんだよ!」

 

「なんの恨みだ!?さっき僕のパン食べたでしょうが!」

 

「その程度でそこまですんじゃねえよ!」

 

「午後が持たないの!君も勝手に人の食べ物を食べるな!」

 

 

オウガに持ち上げられながら僕は文句を言う。ただでさえ燃費の悪い人間だ。一つでも食料が減れば、大打撃だ。僕の胃に。

 

 

「なんだよあの《あんでぃ》と《ふらんく》って!筋肉に名前を付けんじゃねえ!」

 

「人が折角そのゴツイだけの肉塊に可愛さをプラスしてやったのになんて言い草だ!もうコレは戦争だね!食べ物の恨み、投影をもって思い知らせてやる!」

 

「ハッ!テメエの鉄屑なんてすぐに砕いてやるよ!」

 

「よし、なら体育の授業楽しみにしてるから」

 

「俺もだぜ。あばよ」

 

 

そう言ってオウガはズシズシと教室を出て行く。

 

 

「あ、オウガ!それ水で落ちるやつ!」

 

「おう!」

 

 

オウガの姿が消えると僕は再び前を向く。その瞬間、ソウマ先輩に無言で拳骨を喰らった。解せぬ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~茶熊学園[グラウンド]~

 

 

「よし、全員揃ったな。それじゃあ始めるぜ!」

 

 

そう言って銀髪の生徒が僕達を整列させて合図する。彼はソウマ先輩の同級生の《ザック》先輩だ。実はとある島で革命軍の一員としているのだが、それは気にしない方向でと言われたので何も言わない。

 

 

「んじゃ、まずは準備運動でグラウンド50周行くぞ!」

 

 

ザック先輩の合図で全員が走り出す。隣のクラスの《ヨシュア》と言う少年は息を切らし始めていたが、鍛えている他の男は涼しい顔で走っている。かと言う僕もだけど。

走り終わり、準備体操を終えるとオウガが僕の前に立つ。

 

 

「そんじゃあ、やるか」

 

「良いよ。ルールは相手が気絶、降参のどちらかで武器はアリね。なんだったら素手で相手しても良いけど?」

 

「ハンデなんざいらねえ。全力で来いよ」

 

「それじゃあ遠慮なく」

 

「ちょっと待てお前等!授業中に決闘すんな!」

 

「「ちょっと黙ってろ/黙っててください」」

 

「アッハイ」

 

 

先輩は僕達から距離を取る。周りの皆も察してくれたのか僕達から離れる。オウガも武器を構え、僕も投影を開始する。

 

 

「・・・投影開始」

 

 

手に握られたのは黒と白の一対の夫婦剣。古代中国で造られたと言われる夫婦剣《干将・莫耶》だ。周りから見ればただのダブルセイバーにしか見えないだろうが、それを逆手に持たず、普通に構える。

何故か周りから変な目で見られるが気にしている余裕は無い。

相手はあのオウガだ。あいつの馬鹿力は異常だ。初めて会った時の戦闘では、僕の投影した特殊な武器である《宝具》が拳一発で破られた。あの時は下級の宝具だったとは言え、人間一人で抑えきれる筈が無い。

僕の中の戦いたくない男第一位である。

 

 

「行くぜ・・・セツナ」

 

「こっちだって・・・」

 

 

僕達は戦闘態勢に入り、互いに視線を逸らさない。場が静まり返る。そして誰かの砂を踏む音が鳴った瞬間、

 

 

「オラァ!」

 

「セイッ!」

 

 

互いの得物をぶつけ合う。鍔迫り合い、火花が激しく舞う。僕がなんとか押し勝つが、距離を取られる。僕も投影した夫婦剣には皹が入っていた。

魔力を流し込むと、夫婦剣は修復される。

 

 

「まさか一発で皹が入るなんてね。でもオウガが退がるなんて珍しいね」

 

「お前相手に深追いは自爆の元だ。この闘いだけは手を抜けねえよ」

 

「賢明な判断だよ!」

 

「相変わらずすばしっこい奴だ!だが遅え!」

 

「残念でした♪」

 

 

オウガに素早く近づく。夫婦剣で攻撃するが止められる。その瞬間、僕の夫婦剣が突如爆ぜた。オウガは突然の事に焦る。その隙を突いて懐に入り込み、鳩尾に拳を叩き込む。勿論魔力強化バージョンだ。

 

 

「ガハッ・・・なんだ今のは」

 

「《壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)》。投影品を爆破させる能力さ。不意打ちには丁度良いでしょ?」

 

「お前もお前で結構小ズルイのな・・・」

 

「正攻法とか柄じゃない。昔から小手先技だけは多かったんでね」

 

「やっぱりお前は面白えな!セツナァ!」

 

「君もね、オウガ!」

 

 

再び夫婦剣を投影して斬り掛かる。オウガも負けじと拳を撃ちこんで来るが、全て受け流す。何も考えずただただ斬って斬って斬って斬って、受け流し受け流し受け流し、ひたすらにぶつかり合う。もはや決闘の理由などどうでも良い。今はただ、目の前の男との戦いを楽しみたい!

衝撃が響く度に血が滾る。相手に攻撃が入る感覚に心が躍る。カウンターを喰らった激痛でさえ、楽しさを募らせる糧となる。

ああ、忘れていた!僕の唯一の生き方を!平和でも無い。だからと言っていたずらに戦う訳でも無い。共に切磋琢磨し合うライバルとの本気の勝負。これこそが僕の生き甲斐!

ああ、最高に面白い!

 

 

「さあ!もっと派手に暴れようか!金獅子ィ!」

 

「当然だ贋作者ァ!」

 

「「勝つのは僕/俺だ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・どれだけの時間戦っていただろうか。気が付けば空は紅く染まり、僕もオウガも傷だらけだった。オウガも武器も所々が破損しており、僕の夫婦剣も再び粉々に砕け散った。

だが、お互いから闘志は消えない。目の前のライバルを超えたい。この勝負に勝ちたい。そんなひたむきな思いだけが僕達を何処までも、何時までも突き動かす。

 

 

「・・・投影開始」

 

「・・・決めるぜ」

 

 

僕は再び投影する。その手に握られたのは一振りの剣。それを構え、魔力を高める。

僕の特典《無限の剣製》の特徴である投影。それはただの武器以外にも、投影出来る。その中でも特別な物が、嘗て僕の居た前世の世界で数々の英雄が使っていたとされる武器やその偉業が形を成した物。その名は《宝具》。

僕の手に握られた剣もその一つだ。一応《王の財宝》の宝物庫と呼ばれる異次元空間の中には、本物の宝具全てが入っているらしく、武器の名を言霊にして紡ぐ事でその性能を100%引き出す《真名解放》が可能らしい。

だが、大いなる力には大いなる代償が待っているものだ。本物を使った反動は凄まじく、昔にとある国の王が使用していた聖剣を使ったら一カ月程昏睡状態になった。

だから僕はなるべく本物、つまり《真作》を使う事無く、《贋作》にする事で威力と負担を減らす。

互いに武器を構え、最後の攻撃へ出る。同時に踏み出し、その宝具の名を紡いだ。

 

 

「----《予言殺めし神の炎(レーヴァテイン)》!」

 

「----《ロア・アンリーシュド》!」

 

 

オウガから炎の獅子が放たれ、僕の剣からは巨大な炎の斬撃が放たれる。互いの攻撃はぶつかり合い、熱風と衝撃が駆け抜ける。グラウンドは地割れの様に罅割れ、そこから炎が溢れ出す。

普段なら火傷の恐れがある為、すぐに避難する。でも今は一歩も引く気がなかった。それどころか僕とオウガは技を出し続けながら一歩、また一歩と前進して行く。火傷?知った事か。退いたら負けだ。

相手の目から闘志は消えちゃいない。

 

 

「勝つのは・・・僕だ!」

 

「いいや・・・俺だ!」

 

「「ブチ抜けええええええええっ!!」」

 

 

もう感覚なんて無い。限界まで魔力を引き出して叫ぶ。そして次の瞬間、大爆発が起こった。

薄れ行く意識の中、ナイフを投影して足に刺す。僅かに感じる痛みが僕の意識を繋ぎとめる。

爆煙の先に見えたものは・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「いたたたたたたたたたた!?」」

 

「もう!入学早々に何してるのかな君達は!?」

 

 

あの後、僕とオウガは保健室で治療を受けていた。僕はすぐに治るから良いと断ったのだが、その考えは良くないと無理やり連れて来られた。

誰にかって?ツキミとカスミだよ。なんでも僕達の決闘は全校生徒に見られていたそうだ。先輩方でも止められない気迫だったって言われた。

 

 

「はい、これでよし!」

 

「うぅ・・・楽じゃない」

 

「コレ治るまでどんぐらいかかんだよ」

 

「君達の回復力を考えると明日一杯って所かな?」

 

「あ、意外と早い」

 

「文化祭の準備もあっから助かったぜ」

 

 

僕とオウガが笑い合うと、先生が額に青筋を浮かべて引き攣った笑いをしながら言う。

 

 

「君達が決闘なんてしなければ良いんだけどねぇ?」

 

「「すみませんでした」」

 

「・・・うん。反省したならよし!さ、今日はもう帰りなさい」

 

 

先生の言葉に僕達は挨拶をしてから保健室を出る。廊下を歩いていると、僕達のお腹から大きな音が鳴った。この時間帯は既に購買も食堂も閉まっている。

僕は一つ思いつくと、オウガと一緒に外へ出る。

グラウンドの端で高さが同じの大きな石を二つ広い、その上に投影した先程の剣を置く。魔力?もう回復したよ。

 

 

「行くよ、《予言殺めし神の炎》」

 

 

剣から少量の火が出始め、それを更に調整する。そしてある程度の温度になった所で先日のクエストで手に入れたお土産の肉を王の財宝の宝物庫の中から取り出した。

 

 

「さあ、焼き肉の開始だ!」

 

「おお!動いたら腹減っちまったぜ!」

 

「じゃんじゃん焼くよ~♪」

 

 

熱された剣を鉄板代わりに焼き肉を開始する。すると、オウガが複雑そうな表情をしていた。

僕は肉を裏返したり、オウガの皿に盛ったりしながら聞く。

 

 

「どったのオウガ?」

 

「いや・・・俺を倒した魔剣を焼き肉の鉄板に使うってのがな。しかも絶妙な焼き加減だしよ・・・」

 

「だって後処理楽だし。洗い物減るんだよ?しかも火加減も自由自在だしね。そのお皿も投影した物だよ」

 

 

そう、僕は決闘に買った。あの爆風が晴れると、オウガは立ったまま気絶していた。結局僕が保健室まで運んだのだ。

そして僕は剣以外にも、解析した物をある程度なら投影できる。僕の投影は特殊で、本来魔力で構成した物は、いずれ消滅するらしいが僕のは壊すか自分で解除しない限り永久的に消えない。

 

 

「お前、能力をなんだと思ってるんだ?」

 

「日常生活の必需品」

 

「一家に一台欲しくなるなソレ」

 

「残念ながら予約済みの一点限りとなっております」

 

 

フローリアの家の主夫ですから。洗濯、炊事、掃除、裁縫もお茶の子さいさいですよ。

 

 

「チッ・・・俺の部族に誘おうと思ったのに先越されちまったな」

 

「あはは・・・オウガの部族か。毎日が騒がしそうだ」

 

「まあな。だが楽しい所だ。何かあったら来な。力になるぜ」

 

「ありがと」

 

 

オウガが僕に二カッと笑う。カッコいいなやっぱ。僕みたいな貧相な体とは違う。・・・ちょっとだけ筋トレの量増やそうかな。

 

 

「ああ、一つ聞いても良いか?」

 

「ん?なに?」

 

「お前・・・"何処からが本気"だ?」

 

「・・・」

 

 

オウガの言葉に僕は無言になる。そんな僕を見ながらオウガは話を続けた。

 

 

「俺との決闘中。お前の力と闘志は十分すぎる位感じた。だが、お前は本気じゃなかった。まるで自分を何かで縛りつけてる感じだ」

 

「・・・流石、オウガだね」

 

「おう。金獅子の名は伊達じゃねえ」

 

「悪いとは思ってる・・・僕は、自分に枷を付けて戦っていた」

 

「やっぱりな。ま、大方あの剣とかの威力調整だろ?」

 

 

オウガの言葉に僕は頷く。オウガは少し上に広がる星空を眺めた後、苦笑した。

 

 

「んな状態のお前に互角って事は俺はまだアイツには勝てねぇ」

 

「《ヴィルフリート》、かな?」

 

「知ってたのか?」

 

「有名だよ。僕達の先輩にして不死者の帝王。昔、一度だけ戦った事がある。枷を付けた状態でね」

 

「・・・どうなった?」

 

「なんとか勝ったよ。ただ、右腕が完全に持ってかれた」

 

「お前ですらか・・・」

 

 

僕の言葉にオウガは考え込む。やっぱり目的はソレか。日夜強い奴を求めるバトルジャンキーなオウガは本来行こうとも考えない学校にただ招かれる筈がない。

そんなオウガが来ると言う事は間違いなく強い誰かが絡んでいると言う事だ。パンフレットに映っていたヴィルフリートを見て、僕はオウガの目的を察した。

 

 

「ま、頑張りなよ。腕持ってかれない様にね」

 

「説得力ありすぎだろソレ」

 

「体験談だから。あまり気張りすぎず、だよ」

 

「ああ。・・・そろそろ帰っか」

 

「そだね・・・僕も・・・眠く・・・」

 

「おいおい。・・・ほれ、俺の部屋泊まってけ」

 

「うん・・・」

 

 

投影していた物を全て消して後処理した僕はオウガの背中に乗せてもらい、一番近場で会ったオウガの部屋へお邪魔する。

オウガは意外と丁寧に制服をハンガーに掛けて部屋着になっていた。

 

 

「ほれ、お前のも貸しな。皺になるぞ」

 

「うん・・・」

 

「おい、寝惚けてんな。仕方ねえ」

 

「ありがと・・・」

 

 

オウガにボタンを外してもらった僕は制服を掛けてもらい、オウガの部屋着の上を借りる。僕の身長は150センチ程しか無く、オウガの上着一枚で全身が覆われる。

シャワーと歯磨きを終えた僕達はベッドへ寝転ぶ。

あっと言う間に睡魔に負けた僕達は意識を落とした・・・。

 

 

セツナサイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

~翌日~

 

 

茶熊学園《カズノコ組》。セツナ達の隣のクラスでは、席に座っているオウガに視線が注がれていた。正確には"オウガの背中で眠っているセツナ"だが・・・。

セツナは投影とは言え、宝具の反動でかなりの体力を消耗していた。食事の方は焼き肉で補えてはいたが、眠気には勝てず、ベッドで寝ていた時からオウガの背中にしがみ付いたままだった。

セツナは眠る時、抱き付き癖がある為にオウガから離れない。オウガ曰く、昨日の決闘より力が入っていたそうだ。

イクラ組の担任のソウマは早々に諦めた。言うなれば丸投げである。

代わりにこのクラスの担任である《クライヴ》はセツナに何度かアプローチを掛けるが全て失敗。ショックにより授業もままならず、自習になった。

故にクラス全員がセツナへ注目を注いでいた。

 

 

「・・・おいセツナ。いい加減起きろ」

 

「ふみゅ・・・うみゅ~♪」

 

「ダメか・・・まだ夢の中だ」

 

 

オウガの背中の広さが丁度良いのか、抱きしめる力を強めて顔を埋める。その時、セツナの髪が風に靡き、オウガや近くの席に座っていた《カスミ》の鼻孔を擽る。オウガは同性とは思えないどう考えても女性そのものな香りに困惑し、カスミは陰で自信を持っていた髪の毛に敗北感を感じていた。

その日は放課後になるまでセツナはオウガの背中から離れる事はなく、校内の各所で、白い猫を背負った金獅子の悶々とした姿が目撃されていたと言う。

 

 

三人称サイド終了




~おまけ~


~茶熊学園[別教室にて]~


「・・・ハッ!?」

「どうしたの《キャトラ》?」

「今、私以外の白猫が来た気がするわ!」

「急にどうしたの?君はどう思う?」

「・・・?」

「ふふっ。そうよね。でもキャトラらしいかも」

「・・・♪」

「このままじゃ私のポジションが・・・ぎにゃーーーー!?」
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