if~刹那君は新入生~   作:猫舌

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第6話

セツナサイド

 

 

あれから保健室を出てシズク達と別れる。寮へ戻ろうと思った時、教室へプリントを一枚忘れた事を思い出した。教室へ向かうと、体育館前まで来た所で違和感を感じた。世界と切り離された様な・・・何か何時もと違う感覚がする。

気が付けば僕の周りは電子版の様な模様の結界に覆われていた。そして体育館の中から轟音が聞こえる。僕は扉を少しだけ開いて中を覗く。そこには・・・

 

 

「これでも喰らいなさい!」

 

「・・・」

 

 

クラスメイトの一人が魔法少女な恰好で謎の敵と戦っていた。

・・・何だコレ。

 

 

「くっ!・・・負けられないんだからぁ!」

 

「・・・」

 

「きゃっ!?」

 

 

敵の攻撃にクラスメイトは吹っ飛ばされる。そして敵の刃が彼女の首へ届こうとした瞬間、僕が割って入り、投影した夫婦剣で攻撃を弾く。

敵は顔色を変える事もなく一歩下がる。

 

 

「あ、貴方は・・・」

 

「良いからそこで休んでて」

 

「で、でもアイツは!」

 

「そんな状態で戦ったらそれこそ死ぬよ?」

 

 

僕が言うとクラスメイトは何も言えなくなる。僕は投影武器の強度を魔力で高めてから敵へ斬り掛かる。

 

 

「せいっ!」

 

「っ・・・!」

 

「遅い!」

 

 

敵の隙を突いて刃を振るうと確かな感触を感じた。そして敵は目の前で霧散した。やっぱり人間じゃなかったか・・・なんだったんだアレは?

僕は投影を解除する。すると結界が解除され、クラスメイトが制服姿に戻る。

 

 

「大丈夫?ほら、コレ飲んで」

 

「んく・・・痛くない?」

 

 

王の財宝から飲み薬を渡す。なんでもエリクサーとか言う回復薬の一種で効果は絶大らしい。僕はあまり使わないから宝の持ち腐れ状態だったので、有効活用させてもらった。

クラスメイトに水を渡して落ち付かせる。落ち付くとクラスメイトは僕に聞く。

 

 

「ありがとう。でもなんで此処に?」

 

「教室に忘れ物したから取りに来たら巻き込まれたんだよ。でも君を守れたから良かった」

 

「結界内は私とアイツしか動けない筈なのに・・・」

 

「僕は色んな能力を持った武器とか持ってるからその加護かも」

 

「そっか・・・あの、今日の事は内緒にしてくれないかしら?」

 

「それは構わないけど、まさか毎日一人で戦うの?」

 

「当然よ。これは魔法少女の私に与えられた大切な使命なの」

 

 

そう言って彼女は語り始める。ある日出会った怪我人から魔法を受け継ぎ、魔法少女として生きて来た事。そしてこの学校の裏で起きている謎の人物達の襲撃。

話を聞いた僕は提案した。

 

 

「ねえ、僕も手伝って良いかい?」

 

「そんな事出来ないわ!そもそも貴方は関係無いじゃない」

 

「だとしてもこんな状況放っておけない。それにあの程度にこんなんじゃ何時かきっと命を落とす」

 

「それは今回だけよ。次は負けないわ」

 

「僕はそう言って死んだ人間を見た事がある」

 

 

僕は気を引き締めて彼女を見る。今の話は嘗て戦場で死体を食べて生きていた頃に聞こえた兵士の会話だ。さっきの様な事を言った瞬間、その兵士の頭は銃弾一発で弾け飛んだ。

戦闘で一番してはいけない事は慢心だ。

 

 

「だから僕が援護する。今の君を一人に出来ない」

 

「・・・分かったわよ。その指摘は否定できないし」

 

「うん。えっと・・・名前なんだっけ?」

 

「クラスメイトなのに!?・・・《ハルカ》よ」

 

「僕はセツナ・キサラギ。セツナで良いよ」

 

 

僕達は握手を交わし、二人だけの秘密を共有する事となった。なお、この事を全てのクラスが知っている事に気付くのはそう遠くなかった・・・。

 

 

 

 

 

~翌日~

 

 

「・・・コレはそっちに運んでくれ!」

 

「すまない。油は何処だ?」

 

「こちらです」

 

「ありがとう。セツナ、キャベツの箱を頼む」

 

「はいよ。あ、ツキミ。小麦粉頂戴」

 

「は~い」

 

「ありがと」

 

 

文化祭も近づき、僕達も準備に追われていた。鉄板と火の準備、材料の確認、教室の装飾等を仕上げて行く。そこまで凝った造りではないから結構早く作業は進む。

ぶっちゃけ学際明日だし。気が付けばゲオルグさんが生徒会副会長になっていた時は驚いた。生徒会長が知り合いだった事にも驚いたけど。

生徒会長の《シャルロット・フィリエ》は数年前にギルドの依頼で数日間執事をした事がある。

彼女はその国で特別扱いされており、国民の前では聖人君子。裏では我儘放題の人間だった。偏った食生活だった彼女の食事を作らされたり、風呂で背中を流させられたり、寝る時には毎日抱き枕にされた。

 

 

「さてと、コレで良いかな?」

 

「ああ。これなら明日からの文化祭も安心だ」

 

「俺の料理魂が燃えるぜ!」

 

「はいはい。作るのは明日だからね」

 

「看板出して来たわよ。これなら明日はバッチr!?」

 

 

ハルカが教室に入った瞬間、教室が例の結界に包まれる。周りの時間が止まり、僕とハルカだけになる・・・筈だったが全員無事でなんか独り言を呟くハルカを見て無言になる。僕は取り敢えず全員に向けて静かに、とサインを出すと頷いてくれた。

ハルカの尊厳の為にもちょっと黙っててもらおう。

僕も夫婦剣を投影して向かう。この結界内なら物を壊しても元通りになるから楽で良い。

 

 

「ハルカ!伏せて!」

 

「えっ、ちょっ!?」

 

「行け!《赤原猟犬(フルンディング)》!」

 

 

夫婦剣を解除し、一本の剣を投影して矢として放つ。赤い光がハルカの上を一瞬で通り過ぎ、敵の体に直撃した。赤原猟犬には種類があり、相手の防御を下げる物や攻撃力を下げる物がある。投影による能力付与だ。

因みに今撃ち込んだのは防御低下だ。ハルカの攻撃が全て効いている。そんな中、敵が二人追加で出現する。

 

 

「ハルカそれよろしく!僕は二体をやるから」

 

「分かったわ!無茶しないでね!」

 

「了解したよ!」

 

 

投影した夫婦剣で二体と戦う。オウガや沢山の猛者と戦って来た僕には相手の動きが遅く見えた。敵の攻撃を最低限の動きで躱し、カウンターを入れる。そして二体は限界になり、その身を空に散らして行った。

ハルカの方を振り向くと、まだ戦っていた。アレ?防御下げたよね?なんで手こずってるの君?

そう思っていると、敵が突然謎のビームに包まれて消滅した。発射された元を見ると、そこには大きな兎に乗ったツキミが居た。その顔はお面に覆われている。アレで誤魔化せているつもりか?

 

 

「また、助けられちゃったわね・・・どうして貴女は私に力を貸してくれるの?」

 

「ハルカちゃん。覚えておいて。この学校を大切に思っているのは貴女だけじゃないのよ」

 

「私の名前を・・・?あの人は一体・・・?」

 

「マジかーコイツマジかー」

 

 

気付いてないんかい。しかもツキミさん前も介入してたのかよ!?あ、そろそろ皆が動かないフリするのも限界か。

 

 

「ハルカ、そろそろ」

 

「ええ、そうね」

 

 

ハルカが変身を解除すると結界が同時に解ける。

 

 

「----よし、キャベツ大盛り焼きそば、二人前だ」

 

「わ、わ~い!」

 

「は、ハルカさん、そのケガは・・・」

 

「あっ!?えっ!?な、なんのこと!?」

 

 

まるで時間が止まっていた動き出したかの様にバイパー達が滑らかに動く。いや、本当にお疲れ様でした。ハルカの死角から皆に頭を下げる。

皆何も言わずに後で頭を撫でてくれた。涙が止まらなかった。ああ、変な事に首突っ込んだな僕。

作業も終わり、他のクラスの様子を見ていると生徒会室の前へ着いた。ゲオルグさんが生徒会の仕事に戻っており、指示を出していた。

すると、生徒会室にカモメが駆けこんで来た。スク水にパーカーという格好にゲオルグさんは顔を逸らしながら受け答えをする。

思春期だね。僕?カモメと一緒に風呂入った事あるし、フローリアとかとは何時もの事だし慣れたよ。

ゲオルグさんが突如窓を開けてカグツチに乗って飛んで行った。どうやらモンスター発生の報告だった様だ。

 

 

「あ、隊長殿!」

 

「ん。そっちも大変そうだね」

 

「いえ!一段落したから大丈夫であります!」

 

「そっか」

 

「あ、セツナだ」

 

「キャトラ。どしたの?」

 

「実は知り合いを探しててね。セツナみたいな髪した男の子知らない?」

 

「ああ、さっき資材の申請に来て出てったよ」

 

「あちゃ~、入れ違いか。ありがとね、セツナ」

 

「はいよ。んで、後ろにいるソレは?」

 

 

キャトラさんの後ろ。つまりは生徒会室のドアからヒョコッと姿を現したのは生徒会長であるシャルロットだった。僕はシャルと呼んでいる。

 

 

「・・・よっす」

 

「久しぶり。見た所何かやらかしたな」

 

「何で分かるんだし」

 

「少しだけだったけど君の隣に居たんだ。それ位分かって当然だよ」

 

「相変わらずのド直球だな・・・」

 

「回りくどい事は好きじゃないでしょ?」

 

「まあ、そうだけどさ。アンタはホントに正直すぎるんだよ・・・」

 

「しゃ、シャルのあんな態度初めて見た・・・!」

 

 

シャルを見てキャトラが驚く。何時の間にかアイリス先輩とシロ先輩も居て、シャルを見て驚いていた。

シャルから話を聞くと、生徒会長の立場を盾にクラスの出し物を勝手に変えたらしい。それで気まずくてクラスに戻れないと・・・。

 

 

「うん、馬鹿だね」

 

「ぐぬっ・・・言い返せねえ」

 

 

僕の言葉にシャルは何も言えなくなる。彼女は何時もこうだ。結局僕が尻拭いさせられて、全ての皺寄せが僕に来る。結局王宮の人に言われて追い出されて依頼達成できなかったし。

 

 

「だから偉い立場の人間のミスは下に皺寄せが来るの。そこの所気を付けてね?」

 

「あ・・・ごめん。セツナがその被害者だもんな・・・」

 

「お、落ち込まないでよ」

 

 

さっきよりも落ち込むシャルを何とか慰める。どうすれば良いんだろう・・・。落ち付かせるのに結構掛かった。やがてシャルは生徒会室を出て何処かへ行ってしまった。

僕達も解散して、自室へ向かう。外を歩いていると、知り合いを見つけたので声を掛ける。

 

 

「カスミ、何してるの?」

 

「あ、セツナ。ちょっと探し物をね」

 

「探し物?手伝おうか?」

 

「助かるわ。実は栞を失くしちゃって」

 

「栞?もしかして押し花の?」

 

「ええ。知ってるの?」

 

「ごめん!初日に落ちてたの拾って部屋にあるんだ」

 

 

僕はカスミに謝る。結局忙しくて届ける暇も無かった。カスミは安心した顔で僕を許してくれた。

 

 

「待ってて。すぐに持って来るから」

 

「ええ。此処で待ってるからお願いするわ」

 

「うん!すぐ戻るから!」

 

 

僕は空間転移のスキルを使って十秒も掛からずにカスミへ栞を渡した。カスミは僕に驚いていたが、すぐに栞を見てホッとしていた。

 

 

「これは親友に貰った大切な栞なの。ありがとう」

 

「いや、僕も早く届けなくてごめんね。でも渡せて良かった」

 

「っ!・・・コレか」

 

「何が?」

 

 

僕も栞を渡せた安心感に頬を緩ませるとカスミが顔を紅くして目を逸らした。コレってなんだろうか?

そう思っていると、林の中からまたモンスターが出て来る。今度は巨大な剣道着を着たモンスターだった。初めて見るが、動きは若干《武者種》に似ている。

 

 

「カスミ、下がって」

 

 

カスミを後ろへ下がらせ、構える。夫婦剣を投影し、斬り掛かる。モンスターも負けじと竹刀を振るう。

 

 

「----投影開始、《天の鎖(エンキドゥ)》」

 

 

僕の周りから黄金の鎖が現れ、モンスターの動きを封じる。そして弓と螺旋剣を投影して放つ。モンスターは一撃で倒れた。

投影を解除すると、僕の体を虚脱感が襲う。調子乗りすぎた・・・。空腹になり掛けてたタイミングだったからキツイ。しかも空腹の前に気絶しそうだ。

 

 

「セツナ、大丈夫!?」

 

「あ、うん。ちょっと眠いから放っておいて良いよ」

 

「出来る訳無いでしょ?全く・・・ほら」

 

「あ、ごめん」

 

 

カスミが近くのベンチまで僕を連れて行き、僕を膝枕してくれた。そのまま頭を撫でられる。

 

 

「どうしてそんなに無茶するのよ。私も戦えるのに」

 

「いやぁ・・・女の子の前じゃカッコつけたいんだよ」

 

「男って馬鹿ね」

 

「ははは・・・ぅん、おとこは・・・ばか・・・」

 

 

僕の意識は話している間に暗闇へと沈んで行った・・・。

 

 

セツナサイド終了

 

 

カスミサイド

 

 

私と話しながらセツナは眠ってしまった。可愛らしい寝顔を見ながら頭を撫でる。セツナの戦闘を見るのは二回目で、相変わらずの馬鹿魔力だと思った。

でもどれだけの修業をすれば此処まで使いこなせるのだろうか?自分が思っているよりもセツナは修羅場を生きて来たのかもしれない。

そんな事を考えていると、後ろに気配を感じた。

 

 

「誰かしら?」

 

「・・・驚かせたか、すまない」

 

「貴方確か隣のクラスの・・・」

 

「バイパーだ。セツナは俺が寮へ連れて行こう」

 

「そう。ならお願いするわね・・・あら」

 

「ふみゅ・・・」

 

 

バイパーさんにセツナを預けようとした瞬間、刹那が服を掴んで離さない。それを見てバイパーさんが少し悲しそうな顔をした。

 

 

「セツナと知り合いか何か?」

 

「・・・同郷だ。セツナは十年近く前に追い出されたがな」

 

「どうして?こんなに良い子じゃない」

 

「セツナの力に里の連中が恐れをなしたんだ。それでまだ幼かったセツナを何も持たせずに追い出したんだ」

 

「そんな・・・」

 

 

その後、私はセツナの過去を聞いた。親は早くに死に、親を・・・家族の温もりを感じる事なく生きて来た彼の人生は間違いなく壮絶の一言に尽きた。

バイパーさんが知っている過去の他にもきっと沢山の経験をしてきたのだろう。だとしても彼の精神は正常すぎる。正常すぎて異常だ。

暫く撫でていると、セツナはその手を離した。そしてバイパーさんが抱えてセツナを連れて行く。

それを見送ってから私は一人呆然と空を見上げる。私自身、そう言う人間に一切会わなかった訳ではない。でも、目の前で聞くとやはりその衝撃は強い。

フローリアはそれを知って尚更セツナを家に居させたのかもしれない。確かに彼の背中は何時か消えてしまうのではないかと思う程悲しく見えた。

ほんの少し、フローリアの気持ちが分かった気がした・・・。

 

 

カスミサイド終了

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