if~刹那君は新入生~   作:猫舌

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第8話

セツナサイド

 

 

「----みなさん、楽しんでますかー!」

 

 

カムイ学園長の言葉に再び大歓声が上がる。それを聞いて、学園長は満足そうな表情で続けた。

 

 

「ハイ、大好評いただいております、茶熊学園文化祭の・・・」

 

 

数秒溜め、カッと目を見開いて叫ぶ。

 

 

「二日目を!開催いたしまーす!」

 

 

瞬間、さっきよりも大きい歓声。そして・・・

 

 

「ちょ!?ま、またですか!?」

 

 

獣人兄弟の猛襲。学園長が物凄い勢いでもみくちゃにされる。

 

 

「くぅ、またしても・・・!獣人兄弟、恐るべし・・・!」

 

 

そして学園長に最後の審判が下される。獣人兄弟で一斉攻撃!

 

 

「ぎゃああああ~~~!!」

 

 

こうして再び学園長の断末魔を合図に文化祭二日目が始まった!

最終日である今日は、中庭がメイン会場だ。沢山の生徒達が出店を出して賑わっている。

そんな中、僕達は・・・

 

 

「な、なんだって!?」

 

「・・・マジか」

 

「我は知らんぞ」

 

「いったいどういう事だ?山ほどあった筈じゃないか?」

 

「・・・」

 

 

ゲオルグさんの言葉にバイパーが困った顔をする。その原因は、僕達の屋台で使う筈のある物にあった。

お好み焼きに使う予定であった大量のキャベツが無くなってしまったのだ。この状況にマールが遠慮がちに聞く。

 

 

「バイパーさんが、焼きそばに使っちゃったから・・・?」

 

「それは無いよ。それで無くなる量じゃないし、なによりバイパーはそんな初歩的なミスは絶対にしない。それは保障する」

 

「セツナ・・・」

 

「じゃあ、どうして・・・痛ぅっ!」

 

「ハルカ様、大丈夫ですか?」

 

「あ、ううん、なんでもないの!何時の間にかケガとか、してないわよ!」

 

「・・・そうですな」

 

 

ハルカ、お前は後で傷口にカラシ塗りたくってやる。これ以上場を引っかき回さないでくれ。そう思っていると、騒ぎを聞きつけたのかメアとガレアさんが来た。

 

 

「どうしたんですか、バイパーさん?」

 

「何か困り事か?ブロウ?」

 

「あ、ガレアにメアさんも・・・」

 

 

皆にバイパーが事の事情を話す。そして次に頭を下げた。

 

 

「・・・皆、すまん、俺の責任だ。俺が、目を離しさえしなければ・・・」

 

「む・・・目を離した、というのは?」

 

「コレを見てくれ」

 

「え・・・?あ、なんかその辺、穴掘って埋めた形跡だね」

 

「やらかしたかリオン」

 

「我ではない!それにキャベツのまま食べる位ならお好み焼きにした物を食べる!」

 

「そっか。ごめん」

 

 

そんな僕達を余所に、バイパーが少し土を掘り起こす。そしてそれを見て、しず姉が驚愕する。

 

 

「!?その白い物は・・・!」

 

「芯ではありませんか?」

 

「そう。犯人は、葉っぱだけ食べ、芯を残した。つまり・・・」

 

「ブーブー!」

 

 

突如鳴き声が聞こえ、その方向を見ると・・・

 

 

「《ドロちゃん》待ってよー!この世からお野菜が無くなっちゃうよー!」

 

「・・・大量のキャベツを消した犯人は、アイツだ!」

 

「えぇ~!?ドロちゃんが全部食べちゃったって事~!?」

 

「って兎かい!?」

 

 

なんかドでかい兎がツキミに追い駆けられながら不機嫌そうに鳴いていた。どうやら皆は心辺りがある様で、メアが何かを思い出した様に話す。

 

 

「たしかあの子、いっつも何かをガリガリ食べてたわね」

 

「冷静に言わないでよ!これじゃあ、ウチのクラスのお好み焼き屋が・・・痛ぅ!」

 

「大声は体に響きますよ?」

 

「どうしましょうか・・・キャベツがなくちゃ、お店が・・・」

 

 

不安そうに、クラスメイトである・・・エグゾディアさん?だった気がする人が言った。そんな中、マールが提案する。

 

 

「そうだ!何処かでね、キャベツ育ててる人いたよ!」

 

「そこも全部やられてた」

 

「おおぅ!?」

 

「ねえ、いっその事兎の丸焼きってのはどう?ちょうどそこにブクブクと肥えた材料が居るじゃないか。いっちょ宝具で焼いてあげるよ」

 

「ストップだセツナ!気持ちは分かるが落ちつけ!」

 

「そ、そうだぞ!きっと何か策がある筈だ!」

 

 

僕をバイパーといさ兄が取り押さえる。おい、其処の兎。なに僕見て震えてるんだよ・・・刻むぞ。

 

 

「ど、ドロちゃん謝って!セツナ君を食べ物の事で怒らせるのはダメだよー!」

 

「ブー!」

 

「ドロちゃーん!?」

 

 

この兎・・・そっぽ向くとかマジで細切れにしてやろうか。ロンドンの斬り裂き魔の宝具でミンチにしてやる。

怒り狂う僕を宥めながらしず姉が現状を嘆く。

 

 

「現状、打つ手は無い様ですね・・・材料不足とは、単純ですが飲食店の致命傷です」

 

「・・・」

 

「仕方ない、ブロウ」

 

「?」

 

「乗れよ」

 

 

そう言ってガレアさんがバイパーの前でいきなり出て来たバイクに跨った。バイクは大きなエンジン音を上げて、走り出す時を今か今かと待ちわびている。

 

 

「ガレア・・・!」

 

「ひとっ走り、他の島まで買い付けに行くぞ」

 

「他の島まで・・・って、そのバイク、空も飛べるの!?」

 

「空は自力で飛ぶ」

 

「んな無茶な・・・」

 

「だが海以外はそのばいく?とやらの方が速そうだぞ?」

 

「良いのか・・・?」

 

「早くしろ。俺の気が変わらないうちにな」

 

「・・・頼む・・・!」

 

 

そう言ってバイパーはバイクの後ろへ跨る。そんな二人にゲオルグさんが注意する。

 

 

「おい待て!二人乗りはならん!それにそもそも、そのバイクm「《ラッキープレゼント》!」ぬうっ!?何処からか大量のタライがっ!?」

 

 

マールがカットインして、ゲオルグさんの頭上にタライを落とす。その隙に、ガレアさん達を乗せたバイクが走り出した。

 

 

「センキューマール!」

 

「へへ~ん♪今の内だよ!」

 

「皆!買い出しに行って来る!それまで店は頼んだぞ!俺達が、必ずキャベツを持って帰って来る!」

 

「飛ばすぜ、ブロウ!」

 

「ガレアさん!コレを!」

 

「ん?コレは・・・靴?」

 

「《ヘルメスの長靴》です!それを履けば空を飛ぶ負担を軽減出来ます!」

 

「ふっ・・・センキューブロウ!」

 

「ぶ、ぶろう?」

 

 

僕の投影品を履いたガレアさん達は走り去って行った・・・。

 

 

「あっ・・・行ってしまいましたね・・・」

 

「くっ・・・!副会長である自分の目の前で・・・!」

 

「・・・今回は、見逃してあげて、ね?」

 

「姫様・・・!・・・失礼する!」

 

 

エグゾディアさんの言葉を聞いてゲオルグさんが早足で何処かへ行ってしまった。まあ、大体予想は付くけどね。

 

 

「あっ!もう!ゲオルグの分からずやっ!」

 

「大丈夫だと思いますよ。大方カグツチに乗って追い駆けに行ったんでしょう。手伝いにね」

 

「えっと、セツナさん?」

 

「そうですよ。僕はセツナ・キサラギ。よろしく、エグゾディアさん」

 

「《エクセリア》です!なんですかその体中封印されてそうな名前は!?」

 

「えっ違うの?・・・てか長い。《セリア》で良い?僕もセツナで良いから」

 

「は、はい・・・」

 

 

そんな事を話していると、目の前にシャルと見学生である確か・・・《マリ》とか言う人だった筈だ。その二人が口の端を引き攣らせながら立っていた。

 

 

「・・・何だコレ。何なんだ、このアホッぽい盛り上がりは・・・」

 

「・・・!」

 

「・・・」

 

「・・・いいなぁ・・・!」

 

「「・・・そうか?」」

 

 

つい僕とシャルは同時に首を傾げる。正直僕は着いて行けなかったぞ。最後にようやくヘルメスの長靴渡せた位だったし・・・。

 

 

「あ、セツナにーちゃん!」

 

「おっと・・・おはよう、エシリア」

 

「うん!・・・ん!」

 

「あ、はいはい」

 

「えへへ・・・♪」

 

「・・・良いなぁ」

 

 

僕達を見つけて走って来たエシリアが僕に飛び込んできた。それをキャッチして、差し出された頭を撫でる。嬉しそうな顔をしてくれるからこっちも撫で甲斐がある。それを見て、シャルが何か呟いていた。

エシリアを撫でていると、僕はある事を思い付いた。

気分はさながら某ロボット司令官だ。僕に良い作戦がある!

 

 

「エシリア、僕達に力を貸してくれない?」

 

「ふえ?・・・そしたら、にーちゃん嬉しい?」

 

「うん、そりゃもう凄く嬉しいよ。・・・ダメ、かな?」

 

「良いよ!その代わり・・・今度エシリアとでーとして!」

 

「デート?うん、良いよ」

 

「「「「ファッ!?」」」」

 

「エシリアちゃん大人~」

 

 

女子数人が何故か驚いているが、どうしたのだろうか?だってデートって異性と遊ぶだけでしょ?フローリアが言ってた。普通の男女は週に二、三回はデートをするのだそうだ。前世含めて異性との関わりなんて無かった僕には初めての知識だった。

取り敢えず約束して、僕はエシリアに本題を話す。

 

 

「昨日バイパーから聞いたけど、君って《扉のルーン》を持ってるんだよね?」

 

「うん!コレがあればどんなとこもいっしゅんだもんね~♪」

 

「お願いだ!ソレで僕を近くの島まで送ってくれないかな?」

 

「そんなので良いの?」

 

「うん。今は君の力がどうしても必要なんだ!」

 

「そっかそっか~。良いよ~♪」

 

「ありがとう!約束は必ず守るよ」

 

 

こうして僕はエシリアに送ってもらってすぐに大量のキャベツを買い込んで学園へ戻った。そしてバイパーの代わりにいさ兄が調理に入り、僕達はそれをお客様に渡したり、お客の呼び込みなどをした・・・。

 

 

 

 

 

~数時間後~

 

 

「うおおおおおおおおお!着いたぞ!」

 

「皆!待たせたな!キャベツを、買って来たぞ!」

 

「近隣の島にあったぶん、買えるだけ買って来たぞ」

 

「誰の金かって?こう見えても蓄えていてな」

 

「「「・・・ん?」」」

 

「ん、おかえり四人共。あ、いらっしゃいませ!」

 

 

バイパー達は僕達を見てポカンとする。それもそうだろう。なにせ・・・

 

 

「いらっしゃ~い♪おいしいおいしいお好み焼きだよ~♪」

 

「はい、そちらさん三人前ね!シズク、リオン!」

 

「応!・・・こちらでございます。どうぞ、ご賞味くださいませ」

 

「落とすなよ。勿体ないからな」

 

 

お好み焼き屋が普通に機能しているのだから・・・。

いさ兄が注文を聞き、調理した物をしず姉とぱたぱたと飛びながらリオンが渡す。

ゲオルグさんが困惑の声を上げた。

 

 

「こ、これは・・・?」

 

「あっ、ゲオルグ。遅かったわね」

 

「ひ、姫様・・・自分はカグツチを駆り、最速で戻ったつもりでしたが・・・」

 

「お好み焼きが作れているな・・・どういう事だ?」

 

「あ、ガレア~。実はね・・・」

 

「えっへへ~♪エシリアが、にーちゃん達ために人肌脱いだんだよ~♪」

 

「なに?」

 

 

首を傾げるガレアさんにハルカとメアが答えた。

 

 

「貴方達が出て行ってすぐにね、エシリアが通りかかったの」

 

「でね、エシリアったら、持ってるじゃない?アレを」

 

「へへ~ん♪扉のルーンだ~♪コレでいっしゅんで行ってにーちゃんが買って来たんだ~♪」

 

「あ、お金は心配しないで。僕も蓄えはあるから」

 

「そ、そうなのか・・・」

 

「うん。エシリアちゃんとセツナ君がぱっと行ってぽっとキャベツ買って来てくれたんだ」

 

「それに・・・こんなにたくさん」

 

 

そう言ったセリアの視線の先にはキャベツの小山が出来ている・・・。

全て僕が払いました。最初はエシリアが自分はお金持ちだから払うと行っていたが、こんな小さな子に払わせる訳にもいかないし、なにより小さい内からお金の使い方を間違えると後々後悔する。

だから今回は僕が全額支払いました。宝物庫の中には金銀財宝とか、僕の全財産が入ってるからね。転生特典様々ですよ。

 

 

「「「・・・」」」

 

「あっ、あっ、みんな、落ち込まないで~・・・」

 

「・・・いや、落ち込んじゃいないさ。少し疲れが出ただけだ。そうだブロウ。コレを返す。助かった」

 

「あ、どうも」

 

 

返してもらったヘルメスの長靴を解除する。悲壮感漂う三人にセリアが声を掛ける。

 

 

「あの、皆様!キャベツ、どうもありがとうございました!あればあるだけたくさん作れますもんね、ね!?」

 

「・・・そうは申しますが、姫様・・・」

 

「・・・貴様等。早く背から荷物を降ろせ」

 

「・・・ああ・・・」

 

「カグツチ、お疲れ様」

 

「ふん。・・・貴様もライダーになったのだな」

 

「登録はまだだけどね」

 

「そうか・・・」

 

 

カグツチと会話を終えた僕はゲオルグ達が運んで来たキャベツによって二つになった小山を見る。

そんな所にしず姉達が来た。

 

 

「皆様、戻られて・・・!?こ、この量は・・・」

 

「さすが、歴戦の皆様・・・またとんでもない量の春キャベツですね・・・」

 

「これ・・・どうする・・・?」

 

「どうしたもんかな・・・」

 

「・・・アレ、やっておくか?」

 

「お前と俺でか?まあ、いいが・・・」

 

「「もうキャベツなんてコリゴリだよぉ!」」

 

「・・・」

 

「あ、混ざりたかったのか?」

 

「・・・疲れた。規則を破ってまで、自分は一体何を・・・」

 

「気にしない気にしな~い♪えへへへへ~♪」

 

 

バイパーとガレアさんのノリに着いて行けずに溜息を吐くゲオルグさんへエシリアの気にしない発言。三人共疲労はピークだった。だがそこは腐っても戦士。バイパーが気を取り直してマールと僕に聞いた。

 

 

「・・・それにしても、これだけの大量だと、俺抜きでキャベツを切るのは大変だったんじゃないか?」

 

「あっそれはね~・・・♪」

 

「まあ、心強い助っ人が居たって事で」

 

「「「?」」」

 

 

マールと僕の言葉に三人は首を傾げた。この事実を聞くと驚くだろうなと思いながら僕達は本人の意思を尊重して内緒にした・・・。

 

 

セツナサイド終了

 

 

三人称サイド

 

 

「・・・はぁ・・・疲れた・・・もう、手が棒みたいだ・・・」

 

「そういう言い方はしないと思うけど・・・」

 

「あ~、今日一日で、一生分のキャベツを刻んだわ~・・・」

 

「でも殆どセツナ君がやってくれたじゃない」

 

「そうだけどさ~・・・あの量はおかしいでしょ?」

 

「・・・それは、そうね」

 

 

シャルロットとマリはセツナ達のキャベツを刻む作業をコッソリと手伝っていた。迷惑を掛けてしまったゲオルグ等への償いのつもりもあった。

その時の事を思い出しながら二人で笑い合う。

そしてマリがシャルロットに聞いた。

 

 

「ねえ、別にさ、立ち去らなくても良くなかった?」

 

「良かった良かった、なんでだろね?」

 

「慣れてないからかな?」

 

「あー、慣れてないわー、なんか、輪の中にいるのって~・・・」

 

「あははは・・・」

 

「・・・あら?ふふ、仲が良いのね?」

 

 

話し合いながら笑う二人に声を掛けたのはカスミだった。カスミを見て、最近なにかと関わりがあったマリは驚く。

 

 

「・・・!」

 

「ん~、まあ、マリはさ、なんか話せるし。仲良いほーかもね」

 

「・・・」

 

「それは良かった。・・・貴女を、探していたの」

 

 

シャルロットの言葉に感動していたマリにカスミが話し掛けた。彼女はマリに用があったらしい。

突然の指名にマリは困惑する。

 

 

「私を・・・?」

 

「そう」

 

 

カスミは一枚の紙をマリに渡した。それは、この学園の図書館の図書カードだった。それを見てマリは目を見開く。

 

 

「・・・これ・・・?」

 

「あの時はごめんなさい。これが貴女の図書カードよ。・・・マリさん」

 

「・・・!!!」

 

「ふふ」

 

 

この学園に見学に来て、少しギクシャクとした関係しか築けていなかったマリはカスミに名前で呼ばれた事に更なる感動を覚えていた。

此処へ見学へ来る前の、自分の学校では決して無かった事。初めて感じた友と呼べる存在が出来た事に感動していた。

そんな彼女にニヤニヤしながらシャルロットが言う。

 

 

「お~?何感動してんの~?名前だったら、あたしもずっと呼んでるっしょ?」

 

「・・・文字で見るのは別なの!・・・ううん、ごめん、シャル。本当は、ずっと嬉しかった」

 

 

言い訳を言ったが、心の抑えが利かずにマリは自分の本音を語り出した・・・。

 

 

「名前を呼ばれて・・・なんか、私、ずっとその他大勢だったから・・・だから、嬉しくって・・・大袈裟とか思わないで、ほんとにそうだから・・・」

 

「マリ・・・」

 

「ありがとう、シャル・・・ありがとう・・・カスミ、さん・・・」

 

「・・・ううん。良いのよ」

 

「・・・これは、アレだな!あたしがさ、紹介してやるよ!マリの事、もっとさ、全校生徒に!見学生なんかじゃない。マリも、この学園の立派な一員だって!」

 

「シャル・・・」

 

 

マリがシャルロットの言葉にまたも感動を覚えた次の瞬間、突如大きな揺れが発生した。突然の事にシャルロットが慌てる。

 

 

「お、お、わわわっ!?」

 

「これは・・・!?それに、この気配は・・・!?」

 

「え・・・?」

 

 

マリは上空に気配を感じて見上げると、そこには巨大な影があった・・・。

 

 

~数刻前[アラマキ島近海]~

 

 

穏やかに風が吹く、アラマキ島近海。

しかし、、今そこに巨大な《何か》がいる!

それを目にしたシロ達は驚愕してした。

 

 

「な、なによあのでっかいの・・・!」

 

「なんと嘆かわしい・・・あれが《智の民》の末路だというのですか・・・」

 

「「「?」」」

 

 

カムイの言葉にシロ達が首を傾げ、キャトラが聞いた。

 

 

「カムイ?何か知ってるの?智の民って?」

 

「・・・現在《アラマキ島》と呼ばれているこの島には、かつて古代人が暮らしていました」

 

 

カムイの言葉にシロ達は困惑する。そんな中カムイは話を続けた。

 

 

「博識で思慮深い彼らは、《智の民》といいました。高度に文明を発展させた智の民は、しかし際限のない智の追及が、滅びに繋がる事を見抜き・・・一族皆、知恵の象徴たるシャケを口にし、魚となって海の底に沈んだそうなのです」

 

 

次々と語るカムイの目には悲しみの色に染まっていた。そして続きを語り出す。

 

 

「----はるか未来の希望を信じ、眠りについた彼らの選択は間違ってはいませんでした。ですが・・・」

 

「・・・《闇》ですね・・・!」

 

「ハイ・・・!近年の闇の勢力の増大は、彼らにも読めなかったのでしょう」

 

 

《闇》。それは現在、この世界に蔓延っている最悪な存在である。それはあらゆる生命を死滅させたり、モンスターの発生率の増加、凶暴化等の甚大な被害を及ぼしていた。シロ達はその闇のボスである王を倒す為に旅をしている。時々こういった事には顔を出している様だが・・・。

実はこの学園は冒険者を育成する為だけでなく、《闇》に対抗する勢力を作る目的もあった。

闇の件を踏まえて、カムイは話を再開した。

 

 

「じわじわと闇に浸食され、変わり果てた智の民は、魔物そのものになってしまった様です・・・!」

 

「そんな・・・!」

 

「それがどうしてこのタイミングで現れたの!?」

 

「・・・緑の春の訪れです」

 

「・・・みどりのはる?ハルカの敵も言ってたけど、それって一体なんの事なの?」

 

 

キャトラの疑問にカムイはある方向へ指差した。

そこには、山の様に積まれた大量の"春キャベツ"が・・・。

 

 

「え~~~!!キャベツ~~~!?そんなんで良いの~!?」

 

「だってそれしか心当たりがないんですもん!ちゃんとした関係性なんかは、おいおい調査していくにしても!まずは現実問題、あの巨大な魔物をどうにかしませんと!」

 

「魔物・・・ですけど・・・!」

 

「分かっていますとも!ですが、我々がやられる訳にはいかないんです!」

 

 

カムイの言う事は最もであった。既に闇に完全に取り込まれてしまった彼らはもう戻れない。理性すらも食い荒らされ、ただ本能のままに暴れ狂う魔物と化していた。

こうなったら最後、智の民を殺さなければならないのだ。此処で躊躇えば、この学園に居る生徒達が危険な目に会うのだ。

 

 

「・・・!」

 

 

シロが気付いた瞬間、魔物の背から放たれた魔弾が、中庭に降り注ぐ。

 

 

「うぎにゃー!」

 

「・・・憎むべきは闇です・・・!叡智を暴走させるなど、許される事ではありません・・・彼らを救う為にも!戦わなくてはならないのです!」

 

「・・・!」

 

 

海面を、大地を振るわせ、巨大な魔物が空中へと浮かびあがって行く。

 

 

「来る・・・!」

 

 

アイリスが警戒した瞬間、魔物は巨体を雄大にくねらせながら、ことらへ向かって来る。

だが、アイリス達には恐れ等無かった。何故なら・・・

 

 

「ふん・・・図体だけは立派な野郎のおでましか」

 

「気を付けて!あいつからは・・・闇を感じる・・・!」

 

「悪しき気配・・・!討ち取らねばなりません!」

 

「皆!」

 

 

オウガ、メア、シズクを皮切りに茶熊学園の新入生達が駆け付ける。何も恐れる事は無い。此処には心強い新入生達が・・・仲間がいる!

 

 

「僕も戦います!」

 

「あの敵は・・・手強そうね・・・」

 

「此処は冒険者の為の学校だ。戦力には事欠かない」

 

「そうね、力を合わせれば・・・!」

 

 

セツナの隣のクラスの《ヨシュア》、カスミ、バイパーが構え、キャトラがその頼もしさを実感する。だが、頼りになるのは彼らだけではない。

 

 

「空の相手ならば!」

 

「行けるね、《ラピュセル》?」

 

「ドロちゃん・・・責任とろ?」

 

「負ける気がしなくなって来た!」

 

 

ドラゴンライダーのゲオルグ、エクセリア、そしてツキミが各々の相棒を従えて上空を睨みつける。その姿にキャトラは更に元気を取り戻した。

 

 

「よぉ~し、《ぽっぽ》、行くよー!」

 

「私が守る!」

 

「ふん・・・どうやら、あいつに《運》の概念は通用しない様だな」

 

「お客様達の避難は完了しました!」

 

「おっき~い♪すっご~い♪」

 

「不思議ですな。皆といると、心が落ち着いて参ります」

 

「よぉ~し!やっちゃえ~!」

 

「智の民の皆さんを、闇から解放しましょう!」

 

 

更にはマール、ハルカ、ガレア、ヨシュアの妹である《ミレイユ》、エシリア、イサミも駆け付ける。この学園の戦力が揃い始めて来た・・・。

キャトラとアイリスが全員を鼓舞する。

そんな全員に、巨大な魔物が突如急降下を始めた。

地面すれすれに舞うと、遅れて暴風が吹きつける。

 

 

「わぁ~♪ふっとばされるぅ~♪」

 

「あぁっ!?ラピュセル、大丈夫!?」

 

「痛ぅっ・・・!」

 

 

そして次の瞬間には、またはるか天空を悠々と泳ぎまわる・・・。

 

 

「チッ・・・!降りてきやがれ!ぶん殴らせろ!」

 

「元々は智の民か・・・迂闊な事はしないだろうな・・・」

 

「じゃあ、どうやって戦えば・・・?」

 

「・・・」

 

「おっ!待っていましたよソウマさん!」

 

「待っていた・・・?」

 

 

全員が苦戦する中、カムイの元へとソウマが申し訳なさそうな顔でやって来た。カムイは嬉しそうにソウマへ叫ぶ。

アイリスは突然の事に動揺していた。

そんなアイリスにカムイが説明する。

 

 

「智の民は遺していたのですよ。もしも暴走した時の、己に対する抑止力を。それこそ古代兵器、《ルーンバリスタ》!」

 

「ルーンバリスタ・・・?」

 

「古文書で知ってから、ずっと探していたのです。そして、ドロさんのおかげでそのありかを突き止めました。さあ、ドロさんが掘った穴の中にあった筈です!見せてください、ソウマさん!」

 

 

ドロちゃんが掘り出した事には全員が驚愕したが、新たな希望が見えて来た事に全員が笑顔になった。

視線は当然の如くソウマへと向かう。

 

 

「・・・あるにはあったんだが・・・」

 

 

気まずそうに言うソウマが指名した古代兵器には、所々"齧られた形跡"があった・・・。

 

 

「齧られちまって・・・その、兎にな・・・」

 

「えぇぇぇ~~~!?」

 

「ごめんなさいぃ~・・・ほら、ドロちゃんも、ごめんしよ?」

 

「ブー!」

 

 

ツキミの言葉にドロはドダンドダンと地面を踏みならしている・・・。とんだ暴君だった・・・。

 

 

「アンタ・・・!このアタシもまっつぁおの大暴れっぷリだわね・・・」

 

「・・・(汗」

 

「ちょっとどうするんですか!?僕、てっきりアレがあるから大丈夫だろ~って、タカをくくってましたよ!」

 

「俺に言わないでくれよ!」

 

 

カムイとソウマが言い合いを始めたその時、双剣を携えたシャルロットが腕を組みながら高らかに叫ぶ。

 

 

「諸君!お聞きなさい!」

 

「シャル・・・?」

 

「何を悲観する事がありましょう!壊れた物は・・・直せばいいのです!」

 

「避難なんかしてらんないよ!」

 

「手伝わせろやコラァ!」

 

 

シャルの言葉と共に、整備士である《グリーズ》と《テツヤ》が修理に取り掛かる。

 

 

「テツヤ、グリーズ!?」

 

「彼らだけではありません。この学園には、様々な人材が集っています。それぞれの得意分野を活かし合えば、乗り越えられぬ困難はありません!」

 

「・・・会長・・・!」

 

「さあ皆さん!お願いします!」

 

「っても、こんな兵器見た事もないねぇ」

 

「仕組みが分かんなきゃ直しようがねぇぜ!」

 

「えぇ~っ!?ちょっと、それはないでしょ!?」

 

「・・・チッ。お手上げか・・・」

 

 

皆が諦め掛けたその時、シャルロットが笑みを深めた。

 

 

「いいえ。いるのです、此処に。それが出来る者が。----マリ!」

 

「私に、任せてください」

 

 

マリの登場に全員が目を見開く。前に見た時と雰囲気がかなり変わり、頼もしい顔つきになったマリが言う。

 

 

「前の学校で・・・兵器学科でしたから・・・!」

 

 

力強く、宣言するマリに新たな希望が復活したその時・・・魔物が再び背中から複数の魔弾を射出した。それも先程よりも威力があり、数もある。

突然の行動に誰ひとり行動できる者はいなかった。最悪な事に、その爆心地は"マリと整備士"である。

シャルロットも叫ぶ事しか出来ず、魔弾は無慈悲にもマリ達を消し飛ばす・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「----投影開始《熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)》」

 

 

事は無かった。

マリ達の上空に現れた人影の手から展開された七枚の巨大な花弁が魔弾を全て防ぎ、完全に無力化した。

その光景に全員が目を奪われ、誰かが言った。

 

 

「・・・遅いよ、《セツナ》」

 

「待たせてごめん」

 

 

長い白髪を風に靡かせ、見た事もないドラゴンに乗った少年が下にいる仲間達に申し訳なさそうな顔をする。

防御の為に突き出した左手の反対である右手には、穂先に槍の刃が取り付けられた戦旗を握りしめており、その戦旗にはドラゴンのエンブレムが刻まれた旗が風に舞っていた。

少年《セツナ・キサラギ》は深呼吸をして、叫んだ。

 

 

「----聞け、我が同胞達よ!」

 

 

その声に全員が意識を傾ける。その少年の気迫に、魔物も迂闊に動けなくなっていた。セツナは全力で叫ぶ。

 

 

「僕達は今、絶望的な状況に立たされている!闇を取りこんだ智の民、破壊された古代兵器・・・だが!まだ全ての希望が潰えた訳ではない!今の攻撃を思い出せ!」

 

 

セツナの言葉に誰かが気付く。魔物の攻撃は明らかにマリ達を狙った者であった。智の民は決して迂闊な行動はしない。つまり、あらゆる行動に必ず大きな意味がある筈だ。

 

 

「智の民はマリ達整備士を優先的に狙った。それは彼女達がこの戦いの鍵を握っているという事!まだ希望は生きている!この地に集った同胞達よ!僕達の成すべき事が見えたな!」

 

 

セツナの声に全員が頷く。そしてセツナは高らかに戦旗を振り上げた。

 

 

「ならば成すべき事はただ一つ!希望を信じて少しでも相手の防御を減らし、彼女達の道を造る事にある!」

 

 

セツナの叫びに全員が腕を振り上げる。さながらその光景は部下を鼓舞する王の様だった。その行動と共に、セツナを乗せたドラゴンも雄叫びを上げる。

 

 

「だが、奴らも一筋縄では行かない!僕達ドラゴンライダーは空から相手を翻弄しつつ弱点を探す!」

 

「「「「おう!/はい!/かしこまり~♪/良いぜブロウ」」」」

 

「アーチャーは援護しつつ、常にマリ達を警戒!」

 

「「分かった/はい!」」

 

「魔道士は回復を主体に地上の人達のカバー!」

 

「「応!/ええ!」」

 

「恐らく雑魚モンスターの発生もありえる!武闘家、クロスセイバー、ランサーは雑魚を絶対にマリ達へ近付けるな!」

 

「「「「は~い!/はいよ!/分かったわ!/分かりました!」」」」

 

「剣士、ウォリアーは大物メイン!遠慮なく叩きこめ!」

 

「「「了解よ!/承知!/はいは~い♪」」」

 

 

各々の役割を指示し、最後にセツナが叫んだ。

 

 

「行こう、未来をこの手に!喝采を!我等の希望に喝采を!」

 

 

今、この学園最大規模の戦いが幕を開けた・・・!

 

 

三人称サイド終了




~教えて!ソウマ先輩![二限目]~


ソウマ「この時間は茶熊学園の授業内容について教えて行こう」

セツナ「よろしくおねがいします」

リオン「うむ、よろしく頼む」

ツキミ「お願いしま~す」

ソウマ「お、今日は一人増えたな。じゃあ、説明するぞ。基本的な授業内容は何処の学校とも変わりない。ただし、茶熊学園では冒険学がある」

ツキミ「ぼーけんがく、ですか~?」

ソウマ「簡単に言えば冒険家の基礎知識やその応用の実技を行う授業だな」

リオン「具体的には何をするのだ?」

ソウマ「基礎知識は、野宿する場合の警戒法や食べられる植物等の見分け方。実技はそれを応用して実際にダンジョンに潜ったりとかだな。この学園のあるアラマキ島には殆どの場が揃っている」

ツキミ「場ってどんな所があるんですか~?」

ソウマ「ちょうど良い・・・セツナ、答えてみろ」

セツナ「えっと、浜辺や森林、岩山とか洞窟に遺跡・・・まだありますね」

ソウマ「そうだ。他には砂漠や工場、雪山もある」

ツキミ「いっぱいあるね~」

ソウマ「そうだな。次回はその場の特徴について説明しよう。今日は此処まで!」

セツナ「起立!礼!」

三人&一匹「「「「ありがとうございました!」」」」


[三限目]へ続く・・・。
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