視える少年と新たに輝く少女たち   作:黒ニャンコ先生

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アニメも始まってないのに誘惑に勝てなかった……恋アクのフルが早く聴きたいです安西先生……!


ちょっと前のお話
寝ている人を死者の目覚めで叩き起こすのはやめろ


 日曜日。世間一般的にいえば休日。

 中には仕事だ社畜だと恨み言をぼやく大人もいるだろうが、そこはそれ。学生のオレには無縁な話だ。

 特に部活動に精を出すわけでもなく、日曜朝の惰眠を満喫する。身体を休める事も大切だ。

 

「…………ん」

 

 故に、誰にもこの惰眠を妨げる権利は無い。

 

 ――もし、もしも、仮にだ。

 

「り……ん……………ちゃん」

 

 この眠りを妨げる奴がいれば。

 

「りょ……!………涼ちゃん!」

 

 必ず報いを受けさせてやる。

 

「起きろー! 涼ちゃぁーん!」

 

 

 

 

 

※

 

 

 

 

 

 カンカンカン! カンカンカン!

 

「おっきーろ! おっきーろ! さっさとおっきーろー!」

 

 目覚まし時計なんて生温い。

 鼓膜が破れるんじゃないかってくらい甲高い上に五月蝿い騒音に叩き起こされる。

 誰だ、どこのバカだオレを叩き起こしたのは。

 毛布をズラし、薄く目を開ける。

 

「あっ、やっと起きた! おはよ! 涼ちゃん!」

 

 真夏の太陽みたいな笑顔がそこにあった。

 その手にはなぜかお玉とフライパン。騒音の原因は間違いなくソレとこのバカだろう。

 

「……おい」

「なに? 涼ちゃ――ひぇっ!?」

 

 低く、ドスを利かせた声で呟く。

 その声にまんまと耳を近づけていたバカへ、素早く毛布を投げつけ視界を塞ぎ、驚いている間に背後へ回り込み膝裏を軽く打って姿勢を崩させてから手早く関節技と締め技をかけた。

 

「いたたたいったぁぁ!? 痛いよ涼ちゃん!」

「五月蝿い黙れバカみかん。無断で家に上がった挙句人の惰眠を妨げやがって」

 

 喚くバカみかんがタップしてくるが、知ったこっちゃない。

 だいたいがあんな物で起こすという考えがおかしいだろう。オレでなくても不機嫌になる。

 

「お、おばさんたちに挨拶したし、涼ちゃんに頼みがあったからいったぁぁぁい!?!?」

「生憎と当方はアポイントメント制となっております。面会を希望の際には前日に取り付けろバカヤロー」

「うわぁーん! ごめんなさいー! チカが悪かったですー!」

 

 泣きながらの謝罪。

 まあ、今回はこの辺で勘弁してやるか。こいつの突発性は今に始まった事じゃない。

 

 ――いい加減学習しろとは常々思っているが。

 

 

 

 

 

※

 

 

 

 

「……んで? 人の安眠を妨害してまで何の用事だ《カンカンみかん》」

「それチカのこと!?」

 

 お前以外誰がいる。そもそも自業自得だろうこんなあだ名。

 変な呼び名でガァンッ! とショックを受けているこいつは、《高海千歌》。残念な事にオレとは腐れ縁で所謂幼馴染みの関係にある。

 明るいブラウンのショートカット。両サイドには左側を三つ編みにしてリボンを結び、右側にはヘアピンをつけている。

 性格は……一言で言うなら『単純バカ』か。真っ直ぐ一直線な奴だ。

 そしてオレは《松浦涼》。特技は元米軍特殊部隊の出身を自称する変なオッサンから教えてもらったCQC。あと公にできない秘密もあったりするが、それはまた別の機会にするとしよう。

 とにかく話を戻して、一体全体朝っぱらからなんの用だコイツは。

 

「実は……涼ちゃんにとても大切なお願いがあるのです……」

 

 かんか……バカみ……じゃない。チカにしては珍しく神妙な表情に、オレもそれとなく居住まいを正す。

 神妙な表情を崩さないまま、チカはゆっくりと口を開いて………………

 

「――――チカに勉強を教えてくださいお願いします!」

「…………………………あ?」

 

 パンッと両手を合わせて拝み倒してきたチカに、たっぷり間を空け呆けるオレ。

 

「明日提出する課題があったの、すっかり忘れてて……あはは」

「……オレじゃなくて他に頼めば良いだろう。ヨーソローやねーちゃんはどうした」

「曜ちゃんは練習、果南ちゃんも手伝いがあるからって……」

「じゃあお前んとこのねーちゃんに……いや頼んでいたらそもそもオレんとこにこねーわな」

 

 言いかけた言葉を飲み込む。

 どうせ自分でやれとかそんな事を言われて、だからと言って自力じゃできないからオレに助けを求めてきたって所か。

 

「助けてよ涼ちゃん~! このままだとチカ、1週間補習なんだよ!」

「自業自得じゃねーか。つかなんでオレなんだ? オレ別段頭良くねーぞ」

「チカよりは頭良いよ!」

 

 返す言葉もねーなぁそれ……。

 さてどうするか……朝っぱらから叩き起こされていきなり今日の予定が狂ったが、かといって特に予定らしい予定は立ててない。だからコイツの勉強を見てやることもできる……が。

 そもそもさっき口にした通り完全にコイツの自業自得なワケで、おまけに学校が違う(チカは浦の星女学院という女子校に通ってる)から関係ないと突き放す事もできる。……そうなるとそれはそれでもう1人の幼馴染みとねーちゃんがなんか言うだろうからなぁ……2人揃って甘いだろチカに。オレも人のことは言えねーんだけど。

 

「…………はぁ」

 

 軽く嘆息し、チラっとチカを見る。そんな子犬みたいな目で俺を見るな。

 

「――わーったよ、やりゃぁいいんだろ、やりゃぁ」

「ホントに!?」

「けど先に朝飯食わせろ。その間できる所まで自分でやってろ」

「ありがとー涼ちゃ――きゃいんっ!?」

 

 感激のあまり飛びついてこようとしたチカ。

 が、さっき紹介したとおりオレはCQCが使えるわけで、おまけにそんな突発的に来ると条件反射的に身体が動いてしまう。

 長年染み付いた習慣は恐ろしいと言うべきか、あっさりとチカをいなして床に叩き伏せてしまうとそのまま腕を捻り背中に押さえてしまっていた。

 

「いったああああああ!?」

 

 近所一帯に聞こえるんじゃないかってくらいチカの絶叫が響く。ただご近所さんは一種の日常的な光景と認識してくれているのは有り難い。オバチャンが「あらーまたチカちゃんが涼ちゃんに投げ飛ばされたのかしらねー」なんて天気の話をするみたいに気軽に出てくるくらいには。

 はっと我に返って技を解くと、チカはグロッキー状態になって今にも口から魂が抜け出ていきそうになってる。

 しまった、やりすぎた……意識しているならまだしも無意識の反射だと加減できないんだよ。

 

「あー……ワリィ。つい反射的だったから加減できなかったわ」

「涼ちゃんの……お、に……ガクッ」

 

 さすがに罪悪感も湧いて謝罪する。

 チカは恨み言を吐いてダウンしてしまい、暫く起きそうにない。

 ……朝飯食い終わるまでこのままにしておくことにして、床で寝かせるのは忍びないのでチカを抱えるとベッドに寝かせる。

 さて、朝飯食いに行くか……ってかあるかな。なけりゃ自分で用意しなきゃいけないんだけど。簡単なものならオレでも出来るし問題はないけどな。

 

 

 

 

 

※

 

 

 

 

 

 幸い朝飯は残っていて、適当に残り物で済ませて部屋に戻るとチカはまだ寝ていた。

 ノックダウンさせた罪悪感から少し寝かせておいてやろうと比較的ゆっくり食べてきたつもりなんだが……いい加減起こしてやんなきゃいけないよなぁ。

 

「だからって普通に起こしても起きないんだよな、コイツ」

 

 ならどうやって起こすか……と考えようとした時に足に何かが当たって、目を落とすとフライパンとお玉が転がっていた。

 そう言えば母ちゃんが「千歌ちゃんがお玉とフライパン持って行った」って言ってたから、これは家のなんだろう。

 

「……うし」

 

 どうしてやるかを決め、落ちてるフライパンとお玉を拾い上げる。

 標的確認、距離算出――攻撃、開始!

 

 カンカンカンカンカンカンッ!

 

「わっひゃぁ!?」

 

 耳元で甲高い騒音が鳴り響き、眠っていたチカは一瞬で覚醒して跳ね起きる。

 

「はっ? えっ? ここどこ? 涼ちゃん?」

「さっさと起きて準備しろ。勉強教えてもらいに来たんだろ」

「勉強……はっ! そうだった!!」

 

 起きたばっかりで状況が掴めていなかったチカだったが、オレの一言でようやく来た目的を思い出す。

 ベッドから飛び降り、バッグから教科書とノートを出してテーブルに広げ、あと思い出したように棚の上に飾っていた黒いブタネコみたいなぬいぐるみも持ってきて膝に乗せた。

 

「好きだよなぁ、お前。そのぬいぐるみ」

「えへへ……だってかわいいもん」

「そんなに好きならやるって言ってるのに……」

 

 このぬいぐるみはかつてゲーセンでオレが獲ったもので、俺も持っている漫画に登場するマスコット……? みたいな奴だ。正確に言えば少々違うが。

 それでこれを見たチカがなんだか気に入ってしまい、以来家に来たときは大抵この黒ニャンコを抱えている。

 

「いいよ~、涼ちゃんが獲ったものなのにチカが貰っちゃ悪いもん。それにチカの部屋にあったらいっつも持ってそうだし」

「さいで。んじゃちゃっちゃと課題片付けるぞ。課題なんかに1日潰したくない」

「ヨーソロー!」

 

 それ曜の口癖だろ……まあオレたちにも伝染しているんだけど。

 さて……果たしてチカの持ってきた課題が俺でも対処できる奴なのか。ダメなら……諦めるっきゃねぇか。親友のよしみで骨は拾ってやるよチカ。




・松浦涼(まつうら りょう)

主人公。松浦果南の弟で千歌とは同い年にして幼馴染みにしてもう1人も含め幼稚園から中学卒業に至るまで同じクラスだった腐れ縁。人相が悪く口も悪いため不良と誤解されるが、本人は善良な一般人を自称している。

幼い頃に出会った人物からCQCを教わっており、腕っ節は強い。上述の特徴のため不良グループからケンカを吹っ掛けられるも悉く返り討ちにして壊滅させた事があり、余計誤解に拍車を掛けている。

とある秘密を隠しているらしいが……あらすじでネタバレしてるため秘密になってない。


・涼がCQCを教わった人

涼曰く「元米軍特殊部隊の出身を自称する変なオッサン」。現在は除隊しているらしい。

幼い頃に出会った涼にCQCを教えて以来、涼は鍛錬を欠かしていない。

ちなみにCQCとはClose Quarters Combatの略称で、日本語で近接格闘を意味する。

元(略)変なオッサン曰く、「いいセンスだ」との事。

元ネタは言わずもがなスニーキングアクションゲームの主人公から。


・高海千歌(たかみ ちか)

涼の幼馴染み。

曰く「アホの子」とかみかんが好きなことから「バカみかん」とも呼ばれる。今回新たなあだ名が加わった。

勉強は涼よりもできないらしい。


・千歌のあだ名

基本的に「チカ」や「チカっち」と呼ばれる事が多いが、涼にはみかん好きなことから「バカみかん」と呼ばれる事がある。今回新たに「カンカンみかん」がめでたく追加された。やったね!

なお「カンカンみかん」はニコ生の2度目の2年生回のコーナーで追加された称号から。


・ぬいぐるみ

涼の部屋に飾られているぬいぐるみ。2種類ありどちらもゲーセンのクレーンゲームで手に入れた。

千歌のお気に入りは背中が茶と灰色であとは真っ黒な顔がでかいブタネコ(千歌は「ラブリィな黒ニャンコ!」と主張している)

涼が愛読している漫画に登場するマスコット……に色以外そっくりなキャラクターが成っていた仮の姿で、本家マスコットに劣らぬ人気を博している。

元ネタは夏目友人帳に登場する黒ニャンコ。
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