ピンポーン
と客を伝える合図。
顔を見合わせて玄関へ行くと、そこには笹を被った人の姿。
疑いながらも声をかけてみる。
「ど、どなたですか・・・?」
客に対して、しかもこんな雨の日に外で待たせるなど無礼だ、とは思ったが、聞いてみた。
「・・・・・。」
返事はない。聞こえなかったのだろうか。もう一度、今度はもっと大きな声で聞く。
「すみません!どちら様でしょうか!」
声に気付いたらしい、人影は、一歩前へ踏み出すと答えた。
「すみません。桂です。銀時くんはいますか!」
横で黙っていた神楽が飛びながら玄関の引き戸に向かうのが見えた。が、放って置くことにした。
騒がしい江戸に断末叫が響き渡った。
仕方なく桂を中に入れ、お茶を出した。
そこでタイミングよく風呂から上がった銀時が髪の毛をふきながら入ってきた。
「あれ?なんでお前が居んの?ってか、なんでそんな血だらけなの?」
「銀さん。そこには触れないでください。ただイラッとして八つ当たりしちゃっただけなんで。」
「今日は一段とウザかったネ。仕方ないアル。」
「じぶんで言ーな。まあこいつがウザいのは分かるからな。いいんじゃね?」
「ひどいぞ銀時!というか、あれは八つ当たりだったのかリーダー!」
「うるさいアル。黙るネヅラ!」
「ヅラじゃない!桂だ!」
「はいはい。お決まりのパターンはもういいから。もう飽きたから。むしろもうウザいからそのくだり。」
「なんだと!そもそも人の名前を間違える方がいけないのだぞ!名というものはだなぁ!
「だああああああ!!!!うるせぇ!ってかお前何しに来たんだよ!真選組に追われてきたわけでもなさそうだし、ただ遊びに来たとか言ったらそのヅラはぎ取るぞ!」
「ヅラじゃない地毛だ!それに、あんな駒共などに嗅ぎつけられる訳なかろう。」
「いや。いつも嗅ぎつけられて追われてまくってる奴が言うか?」
「実はだな、」
「おい、無視かよ。」
いつになく真顔な桂に観念した銀時は反対側のソファーに座った。
しかし、なかなか話しだそうとしない桂に何かを察した銀時は二人に席を外すように言った。
二人はしぶしぶといったように、桂にもらった500円を手に傘を持って出ていった。
「で、なんなわけ?二人に聞かせらんない話って。」
「うむ。実はだな、最近ある名が攘夷浪士の間で上がっているのだ。」
「名?誰の?」
「・・・貴様だ、銀時。いや、『白夜叉』といった方がよいか。」
「・・・!?」
「なぜ?という顔だな。」
「・・・ッんで今更・・・?」
雨の音が一段と大きくなる。電気がついていても夜のように薄暗い。
ギラリと光る桂の目に銀時は息をのみながら、疑問を口にした。
「分からん。」
「・・・はい?」
「俺も疑問なのだ。なぜ今更貴様の。しかも、二つ名で騒がれているのか、な。」
「なんだよ、それ?お前仮にも攘夷党二大勢力の頭だろ?」
「仮にもは余計だ。しかし、分からんものは分からん。銀時。貴様最近目立つようなことしてないだろうな?ただでさえその姿が目立つのだから、気をつけろと言っていただろう。」
『目立つようなこと』と言われ、最初は否定する気であったが、思い当たる節がありすぎてなにも言えず、黙りこんでしまう。
「~~~~~。」
「はあ。やはりな。今回は攘夷浪士であったからまだよいものを。これが幕府だったらどうするのだ!大変な騒ぎになっているところだぞ!」
いつになく正論ばかりを突きつける桂に銀時はなにも言えずに、そっぽを向きながらいじけて見せた。
「とにかく!銀時。」
「なんだよ。」
「気をつけろ。」
このことを言うためだけにこんな雨の中こいつは来たのか。と思いながらも、心配してくれていることがむずがゆい程伝わってくるため、どんな顔をしていいのか分からない銀時。それが分かっている桂は一つ微笑むとゆっくりと席を立つ。
「まあお前の事だから大丈夫だと思っているがな。念のためだ。しかし、奴らは攘夷浪士だ。俺が言うのもなんだが、どんな手段を使ってくるかも知れぬ。リーダーや新八君の事、しっかり気にかけておくのだぞ。」
「おう。」
頭の後ろを掻きながらめんどくさそうに立つ。桂を見送るためだ。
それを横目で見ながら桂は、相変わらずだな、と呆れながらも変わらぬ幼馴染に嬉しくも感じた。
「じゃあな。銀時。」
『さて、始めようか。』『ああ、行くぞ。ヤロー共。』
路地裏に集う数多の人影。
その目に映るのは、楽しそうに買い物をする、
二人の子供