雨が降り続く歌舞伎町に揺れる傘が二つ。
「新八!まずは酢昆布買うネ!あとはブラックサンダーと、あとは混ぜ込みご飯に挑戦したいアル!!」
「神楽ちゃん。そんなに買えないよ。500円しかないんだから。」
「そんなはずないネ!だって500円アルよ?銀ちゃんいつも300円しかくれないネ!」
「確かに銀さんにもらうより200円多いけど・・・だからってそんなに買ったら僕の分変えないじゃん!」
「はあ~。だからお前は『八』アルネ。そんなんじゃいつまでたっても『一』にはなれないヨ。残念だったナ。」
ギャーギャーと騒ぎながら万事屋近くのスーパーへと向かう二人は、雨のせいか、後ろからつけてくる足音に気付かなかった。
「おい、ガキども。」
「!?」
「だれアルカ!?」
「ふんッ。威勢のいいガキだな。まあいい。大人しくついて来てもらう。」
がたいの良い男たちに囲まれてしまったため、周りからは二人の子供の姿は見えない。
「誰が大人しくついて行くアルカ!!!離すアル!」
「こいつ、天人か。」
神楽が持ち前のバカ力で掴まれた腕を離し、敵がひるんでいる隙に新八を助けに行く。
すると頭角の男が二人の間を遮った。
「退くネ!!!」
「調子に乗るなよ。ガキが。」
一瞬であたりは殺気にあふれた。しかもそのさっきはすべて神楽に注がれた。神楽の額には冷や汗が垂れる。乾いた口のつばを飲み込もうとした瞬間。
男は片手を振り上げ、そのまま神楽に叩きつけた。その威力は凄まじく、神楽は意識を手放した。
「神楽ちゃん!」
「お前も寝てろ。」
慌てて神楽に近づこうとするものの、腕を掴まれてそれは叶わない。そんな新八の意識もすぐに途切れた。
一方、桂が帰ってから一人ぼっちになった銀時は、することがなくダラダラとしていた。
「あ~暇だ~。あいつら遅ェな。どこほっつき歩いてんだァ?ったく。」
なかなか帰ってこない子供たちに少し心配になるものの、この雨の中探しに行く気にもなれず、そのうち帰ってくるだろう、と決め込み再びジャンプに目を移そうとした時、
プルルルルル、プルルルルル
と、電話が鳴った。
こんな日に依頼だろうか、と憂鬱に思いながら重い腰を上げる銀時。
「はい、どうも~万事屋銀ちゃんで―す。」
相手の声が聞こえた瞬間、銀時の眉間に険しく皺がよった。
―ピタッ
―――ピタッ
雫が落ちる音が何度も木霊す。
そんな場所に少年が横たわっていた。
ここはどこだろうか。
ふと頬に雫を感じ、重い目蓋を開く。すると目の前に現れたのはピンク色。
そこで少年―――新八は自分に起きたことを思い出し、飛び起きた。
「ここ、どこ・・・?」
声を発するとその声が先程の雫のように木霊す。
あたりを見渡すと、なかなか広いが、何にしても薄暗くてあまりよく見えない。
今はとにかく隣で目を閉じている少女の容態を確かめよう。そう思い、新八は神楽にち近づいた。
そこでようやく自分の手が縄で縛られていることに気付いた。
しかし、幸運なことに、足は自由だ。
新八はなんとか立ちあがって神楽のもとへ行くと屈んで声をかける。
「・・・らち・・・・か・らちゃ・・・」
だ、れアル、カ・・・。
あれ、そう言えばなんで寝てるんだっけ・・・?
そうだ!突然男たちに囲まれてッ・・・ッ!!新八は!?
「・・・らちゃ・・・かぐ・・・ゃん・・・」
たぶんもう新八はダメアルッ・・・。
あの男たちに踏みつけられてズタズタヨ。
ごめんナ、新八ッ。私がもっと強ければ、新八を守れたのにッ。
でもね、新八が残してくれた眼鏡掛け機だけはちゃんと万事屋に連れて帰ってあげるヨ!
だから、
ばいば「神楽ちゃーーーーーーーーーーーーーーん!!!?!?!」
なにやら苦痛の顔を浮かべながら涙をためる神楽の心中を察した新八は全力で突っ込んだ。
「ん~、何アルカァ。」
「何じゃなァァァアアアアい!!!!なんで眼鏡が本体なんだよ!僕だよ!神楽ちゃんが眼鏡掛け機と称していたのが新八だよ!!!あ、なんか言ってて悲しくなってきた。泣いてイイ?ねえ僕は泣いてもいいですかァァアア!?」
「うっさいアル。なんだ、新八生きてたのかヨ。」
「生きてちゃ悪いのか!」
「あら?その声は新ちゃん?」
「ッ!?あ、姉上!?」
自分たち以外に人がいるとは思っていなかった二人は、突然聞こえた馴染みのある声に二人は驚くとともに、ほっと胸をなでおろした。
「どうして姉上が?」
「あら、私だけじゃないわよ?」
「え?」「どういうことアルカ?姉御。」
「なんだい。あんたたちも掴まってんのかい?」
「お登勢さん!キャサリンさんにタマさんも!」
「俺もいるぜ~。」
「マダオ!」
「あたし達だけじゃないよ。ほらこっちに来て観てみな。」
お登勢に言われたとおりに進んでみると、薄暗い中にもたくさんの人影が見えた。
しかも、ただの人々ではない。これは・・・
「これは・・・。」「なんで、アルカ・・・?」
「なぜだか知らないけれど、歌舞伎町の人だけ連れてこられたみたいね。」
スナックお登勢に近所の八百屋のオヤジ、団子屋、便利屋など、とにかく狭くもなく広くもない、歌舞伎町住人達が、集められていたのだ。
「どういうことなんだ・・・これは。」
「そう言えば、あんた達銀時とは一緒じゃなかったのかい?」
「銀ちゃん!銀ちゃんはいるアルか!?」
「いや、いないよ。なんだい、あんた達と一緒じゃないのかい。」
「今日は朝からかつ・・・銀さんの友達が来てて、それで僕達追い出されたんです。」
「そうなの、でも、どうしましょう。こんなところにいつまで捕えられるのかしら」
「・・・。」
不安そうな顔の妙に、新八まで不安になってきた。
新八達の会話を聞いていた人々もまた、不安が募るばかりであった。
「大丈夫ネ!みんな安心するヨロシ!」
「神楽ちゃん?」
「わたし達にはまだあいつがいるアル!甘党の天パが!」
「そうか!銀さんならすぐに助けに来てくれる!」
「その通りある!だから、みんな安心してここで待つネ!」
万事屋、坂田銀時
この男は突然この町に現れ、四天王であるお登勢のうちに転がり込んだ。
最初はどこの馬とも知れぬ男、住人は気を抜いているお登勢の代わりとばかりに男に警戒を張っていた。
しかし、自分の身を盾にしながら戦う男の姿に、そんなものはすぐに消えてなくなった。
今では誰よりも頼りになる歌舞伎町の守護神。そして歌舞伎町の王、お登勢の息子は住人達の息子、そして子供たちの兄貴にもなった。
「そうだ!銀さんなら、きっと・・・、僕らを、歌舞伎町を助けてくれる!」