千日紅   作:夏(。・ω・。)

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遠水は近火を救わず

 

闇が際立つ深夜1時。

一人の男がフラフラと頼りなく足を進めていた。

 

銀色の髪に紅い目をしたその男は顔や首、手にまで紅い反転が散らばっていた。

 

そしてその顔色は青白く、その目はかすみ、頭はゆらゆらと今にも倒れそうに揺れていた。

 

しかし、長い前髪に隠れて表情は見えない。

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ること一週間前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~暇だ~。あいつら遅ェな。どこほっつき歩いてんだァ?ったく。」

 

 

ちょうどこの日、桂の急な来訪と凶報を受けた日。

子供たち二人を追い出したはいいが、今度はなかなか帰ってこない二人を心配し始めた時、めったに鳴ることがない電話が鳴った。

気がすすまない中受話器を取ると、その相手は四天王が一人、かまッ子倶楽部を営む西郷であった。

依頼をしたいと言う西郷に、断ることはできるのだが、そのあとがとても恐ろしいため、子供たちへの書置きを残して重たい脚をかまッ子倶楽部へと運んだ。

 

かまッ子倶楽部とは肉体的にはもちろんの事、精神的にもかなりキツイ仕事だ。

銀時はその日一日こき使われへとへとだった。

万事屋への帰路に就こうとしていた時、魔の手はやってきた。

 

「パー子ォ~?なぁにやってるのかしら?」

 

 

「ああ?帰んだよ。もう終わったろ。」

 

 

「何言ってんだいお前は。あたしは1週間って言ったはずだよ!」

 

 

「ああ?んなことちゃんと銀さん分かってますー。明日もちゃんとくるって。ここ給料いいしィ。」

 

 

「だから、何言ってんだいパー子。あんたは今日から一週間住み込みで働くんだよ。」

 

 

「・・・・・・はいィィイイイイイイ!!!!???」

 

 

「ほらッ、さっさとこっち来な!」

 

 

「えッ!?ちょッ、マジ!ちょっ、いィィィィィやァァァァァァアアアア!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、この哀れな銀色は一週間、地獄の監獄で身も心もずたずたにされたのであった。

しかも帰り際、オカマという名の怪物たちに囲まれ、アツ~イ抱擁を受けたのであった。

 

そんなこんなで、この冒頭の銀色の男、もとい坂田銀時は監獄から抜け出した囚人のごとくフラフラと帰路についているのだ。

 

 

 

やっとのことで万事屋にたどりついた銀時。

 

家に入ると暗闇。

それも当たり前だ。神楽はもう寝ているだろう、いや、もしかしたら新八の家にでも泊まっているのかもしれない。

だが、今はそんなことに構っていられない。なに分疲れているのだ。

あの監獄で死ぬほどこき使われ、悪趣味な男たちの相手をし、夜も化け物に囲まれおちおち眠れず一週間。

その言葉通り『身を粉にして』働いたのだ。

銀時は布団を敷く余力もなく、倒れるようにソファーに沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

 

日ごろの銀時にしては珍しく、朝日を浴びながらの起床となった。

まだ身体の疲れは残っているが、目がはっきりと覚めてしまっているため再び寝る気にはなれず、仕方なく起きることにした。

新八はさすがに来ていないだろうと言う時間、6時30分。

神楽もまだ寝ているだろうと思うが、そう言えば自分は一週間も音沙汰なしだったのだから、新八の家に泊まっているかもしれない。と昨日の夜、正確には今日の深夜にも考えたことを思い出して、念のため押入れの気配を探ってみる。

 

 

そこで何か変だと気付いた。

 

 

 

 

人の気配がしない

 

 

 

 

戦場で培われた『気配を読む』能力に自分は長けていると自負していたが、そんな銀時でもなにも感じ取ることができなかった。

 

 

急いで下のお登勢のもとへ向かう。

準備中の札が出されている戸を勢いよく開ける。

 

 

「おい!ばあさん!」

 

 

返事はない。

隣の八百屋に飛び込む。

 

 

「おっちゃん!いねーのか!」

 

 

銀時の声がさびしく響く。

あまり気は乗らなかったが、お向いさんのヘドロ家へと向かう。

しかし、やはり返事はない。

 

万事屋の周りの住人が誰一人としていなくなったのだ。

 

 

「どういうこった・・・。」

 

 

道の真ん中で途方に暮れて立ちすくむ銀時。

ふっと幼き日の記憶と重なる。

 

 

「また、ひとり・・・。」

 

 

 

 

 

そこでふっと笑う。

 

 

「らしくねーらしくねー。」

 

 

いま分かっていることを考える。

おそらくこのあたりの人々は連れ去られた。

しかし、なぜ?

 

そこである事を思い出した。

 

『最近ある名が攘夷浪士の間で上がっているのだ。』

 

   『貴様だ、銀時。いや、〈白夜叉〉と言った方がよいか。』

 

『銀時、気をつけろよ。』

 

 

 

「まさか、早速かよ・・・」

 

 

もしこれが本当に桂が言っていた奴らならヤバい。

奴らは確実に俺をさがしてやがる。そのせいで町の奴らがどんどんさらわれてるってのか。

 

 

自分がいない間にこんなことになっているなんて・・・と口惜しいが、今はそんなことは言っていられない。どうにかして奴らのアジトを、さらわれた人々の居場所を探さねば。

 

そう思い、銀時は走り出した。

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