真選組
江戸の治安を守る武装警察。
局長の近藤をはじめ、副長の土方、一番隊隊長の沖田などは言わずと知れた者たちである。
そんな3人が揃って江戸の町を歩いていた。
「それにしても、本当に人っ子一人いやせんねィ。」
「あの万事屋までもが攫われるとはな・・・。」
「お妙さんまでも攫うとは許せん!」
一人事件とはずれた事を言っているが、そこはスルーしておくことにした。
「・・・にしてもだ。これだけ大規模な人さらいが起きてっるてェのに、足取りがちっともつかめねェのはなんでだ?」
「そりゃあ土方さんが能なしだからじゃねえですかィ?お前が攫われろよクソ土方。」
「うっせぇ。お前が攫われろこのドSヤロー。」
「あれれ?『能なし』のところにはツッコマねェーんですかィ?さすが土方さん。自分が役立たずのニコ中マヨだってこと自覚してたんですねィ。」
「・・・ッチ。」
「まぁまぁ二人とも。しかし、俺達3人が揃って一日中巡察してるってのに足取りどころか髪の毛一本も見つかりゃしねえ。昨日だってまた10人くらい攫われたって言うし・・・。」
「しかも、歌舞伎町で、だ。」
そう、この3人は1週間前から起きている事件について調べている真っ最中なのだ。
その事件というのは
『神隠し』
江戸の人々はこの事件をそう呼んでいる。
一週間前、歌舞伎町のある一部の地域で忽然と人が消えた。
それからというもの、そこを台風の目としてどんどん謎の人々の消失は広まり、今に至る。
さらに不可解なことに、消えているのは歌舞伎町に住まう人々のみ。
しかも、この事件を恐れて歌舞伎町から離れた人までもが攫われているのだ。
これだけ大規模な事件にも関わらず犯人は一切証拠を残していないため、真選組も頭を悩まされていた。
「なあ二人とも。」
「なんだ?近藤さん。」
「何ですかイ?」
「いやあ、あくまで俺の仮説なんだけどよぉ、これって万事屋が絡んでるんじゃねえかなって。」
「!?」
「だってよ!最初に人攫いが発生したのって万事屋の周囲だろ?そのあとも万事屋が仲良くしてた人達が狙われてただろ?」
「・・・確かに。言われてみりゃあそんな気がしまさァ。」
「そりゃつまり・・・、万事屋を狙ったって事か。『白夜叉』であるあいつを・・・。」
「・・・ああ。」
そう、彼らは先日変な帽子によって銀時の過去を覗いてしまったのだ。
そんな彼らからすれば、この事件に銀時が絡んでいるという事が打倒に思えた。
「でもおかしくねェですかイ?これが旦那を狙って起きたものだとしたらもうとっくに捕まえてるはずですぜィ?なんでまだ攫う必要があるんですかねィ?」
「・・・もしかして。」
「ああ。あいつァ捕まってねえ。」
「って事になりますねィ。」
「はあ、全くどこに居るんだか。万事屋は。」
すると、突然横道から人影が現れた。
相手がもうダッシュしていたのと、こちらが考えにふけっていたこともあり、双方とも勢いを抑えられぬまま衝突した。その時見えた銀色に、衝突を免れた沖田は大きな目をさらに開いた。
「いっつ~「だ、旦那!?」ッはあ!?」
反射的に目を瞑っていた土方は、総悟の驚いた声と紡がれた単語に、すぐに目をカッと見開いた。
「万事屋・・・お前、なんで・・・?」
「はあ、はあ、はあ、ひじ、かたか。」
肩を上下に挙げて息をする銀時を見るからに、相当走ってきたのだろう。
しかし、ふと目があったその目には切羽詰まった色が浮かんでいた。
いつもならすぐにいつものように飄々とした死んだ魚のような目に戻るのだが、今日はその色が消えなかった。
「旦那大丈夫ですかィ?」
そう言って背中をさする総悟も、いつもと雰囲気が違う銀時に戸惑っているようであった。
銀時は未だに乱れる息を整えながら、大丈夫。と一言つぶやいた。
すると、いち早く思考が再起した近藤が問いかける。
「万事屋、おまえ今までどこに居たんだ?」
その声に土方も正気を取り戻す。
「はあ、はあ。なあ、お前ら。」
「「「?」」」
ふせていた顔をあげて自分を囲んでいる3人に語りかける。
そこでフッと思った。これはもしかしたら、もしかしなくても俺のせいで起こっている事。
正確には『白夜叉』のせいで。
なのにこいつら真選組に助けを求めたりしても良いものだろうか。いや、そんなことできない。
しかし、こいつらなら何か情報を持っているかも・・・
そう思って3人の顔を見て戸惑った。
近藤は心配そうにこちらを覗きこみ、沖田は珍しく瞳が揺れていた。そして土方は眉をひそめてこちらをうかがっていた。
あ~あ。今の自分の顔が相当ひどいことが容易に想像できる。
こいつらにこんな姿、いつまでも見せてらんねェ。
ふと顔を上げた銀時の目を見れば、一瞬揺れたものの、いつも通りの真の通った目に変った。
「なあお前らさ、ガキどもしらねぇか?ってか、ババァ共もみんな。俺一週間も音沙汰なしではなれてたからさ、さすがに心配して捜索でもしてくれてんのかなぁとか思っちゃったりしてんだけど。」
気だる気な様子でそういう銀時はうそをついているようには見えなかったため、こいつは本当になにも知らないのかと呆れてため息が出た。
近藤に視線を送ると自分の意図を察してくれたようで、大きくうなずいて見せた。
「ここ最近人攫いが起きてんだ。万事屋の周りはほぼ全員拉致られてる。」
とたんに厳しくなる瞳を感じながらなおも話を続ける。
「俺達も総力を挙げて捜索してるが犯人の人物像どころが何の手がかりも見つかっちゃいねえ。攫われた奴らがどこに居るのかも、なぜ歌舞伎町で、『万事屋の近くで』人攫いが起きているのかも、な。」
どこか含みを持った言い方で土方は銀時を睨んだ。
そんな土方の目を銀時はさらりとかわし、着物についた砂をはたきながら立ちあがった。
「ふーん。じゃあとっとと犯人捕まえてくれや。おまわりさん?それとも、俺を餌に敵さん捕まえる?」
「ふん。分かってんじゃねえか。テメェが狙われてるって。」
「・・・じゃあね。」
しばらく互いににらみ合った後、銀時は振り返りゆっくりとした足取りで歩き始めた。
「どこに行く気ですかィ・旦那ぁ。」
「思い当たる場所でもあるのか?」
沖田と近藤の呼びかけには答えず、銀時はただ手をひらひらと振って去っていった。