秋の真っ赤な夕日が沈んだ後、真っ暗な空には星空が広がっていた。
しかし、その光りにも負けないほどの輝きを放つ江戸の町はまだまだ騒がしい。
そんな中、ひっそりとした暗い路地に数人の男達。
少し肌寒くなった風で長い髪が靡く。
「皆すまない。俺の私情のために。」
「いえ。桂さん。白夜叉さんにはいつもお世話になっています。それに、桂さんの幼馴染とならば、助けるのは当然です!」
「そうか。・・・ではこれから兼松という幕臣の屋敷へ突入する。今回はあくまで銀時の奪還が目的だ。死人は極力出すな。しかし、歯向かってくるようならば容赦はいらん。切り捨てろ。」
目の前の不気味に光る屋敷を見上げる。
「さあ。銀時を返して貰おうか。 下﨟共。」
――――――チャリン
鎖がすれる音
―――ピチャッ
血がはりつく音
光りを映さぬ虚ろな目
ピクリとも動かぬ指
うなだれる首
血まみれの手首
色をなくした唇
血でくすんだ銀色に近づく影が一つ。
ニヤリと顔を歪ませ首を掴み、催眠をかけるようにつぶやく。
お前は化け物
「おれは、ばけもの・・・ちがう!」
お前は人殺し
「おれは、ひと、ごろし・・・そんな、つもりじゃっ」
お前は血を欲している
「おれは、ちが、ほしい・・・うそだ!」
お前は鬼
『屍を食らう鬼だ!!!逃げろォオ!!!』『死んでくれ、この鬼子!!!』
「おれは、おに・・・?」
お前は私のモノ
「おれは、おれは・・・」
『あなたの名は銀時です。私の愛おしい子です。』
「せんせ・・・」
『銀時!お前は一人ではないぞ!これからは俺達が護ってやる!』『俺達が兄貴だ!ずっと、先生の分もお前のそばに居る!絶対だ!』
「ヅラ、しんすけ・・・」
『銀時は誰のもんでもねえ!銀時は銀時だ!』『勝手に俺達の弟をモノにするな!』
お前は私のモノだ!早く言え!!!
「おれは・・・」
『銀ちゃん、大好きアル~!!!』『僕だって!大好きですよ!まあ、マダオなのはたまに傷だけど・・・』
なぜだ!
なぜお前は落ちない!?
なぜだ!なぜだ!!!
「なぜだァァァアアアア!!!!!!!」
ガラ空きの腹を思い切り蹴る。血が噴き出し、着物をまたさらに紅く染めた。
「クッ、ソッたれが・・・。薬なんぞにこの俺が負けるか、ってんだ。」
「減らず口が!!!」
「たとえどんなに完璧な記憶を植えつけられても!俺は騙されやしねえ!俺の魂があいつらを忘れねえ限り!この手があいつらのぬくもりを忘れねえ限り!この鼻があの優しい香りを忘れねえ限り!俺は誰にも落とされやしねえんだよ!!!!」
足をがくがくと震わせながら立ちあがった銀時は、男の右頬に拳を喰らわせ、荒く息をつく。
不意打ちを食らった男はそのままふっ飛ばされ、そして、何かがブチッという音を立てて切れた。
「・・・ふふふ」
「?」
「・・・ふははははははは!さすがは白夜叉!しかし、手に入らぬのならもう要らん。死ね。」
バンッ
スローモーションのように力を失ってゆく身体。
かすむ視界の中、目の前の扉から溢れんばかりの久しぶりの光りを見た。
朦朧とする意識の中、俺は兼松の苦痛の叫び声と、己を呼ぶ懐かしい友の声が響いた。
そして、そのまま、光りは消えた。