兼松の屋敷へ入ると、途端に兼松直属の忍びたちが攻撃してきた。
腕が立つ者も、数人はいたものの、
やはり戦場を知らぬ甘ったれた者たちの集まりにすぎなかった。
なので、桂は忍びたちを部下に任せ、自分は一人で真選組が作成した地図を頼りに、銀時の救出に向かった。
しばらく走ると、警備員が二人立っている廊下についた。
怖面で堅の良い男だったが、桂は難なく二人を地にひれ伏せた。
「ここか。近藤が言っていた部屋は。」
ゆったりとした足取りで廊下を歩いていると、突然、叫び声が聞こえてきた。
『・・・さす・・・しろや・・・し・・・死ね。』
「ッ!?銀時!!!」
重い鉄の扉を開けると、そこにはフラフラと頼りなく立つ銀時と、拳銃を構える兼松の姿。
すっと懐に手を入れ、クナイを掴み、兼松めがけて放つ。
兼松が引いた引き金は空に放たれ、そのまま息絶えた。
急いで銀時に目をくべると、力なく、ぐったりと倒れていた。
その周りには、奇妙な色をした液体が残った注射器。
すぐさまそれが何かしらの作用を起こす薬だと察知した桂は、銀時に駆け寄った。
「銀時!しっかりしろ!銀時!!!」
素早く銀時を抱えると、ダッと部屋を飛び出した。
部下達が退路を確保してくれていたため、すぐに外には出れた。
部下達が何か言っていたようだが、俺はなにも聞かずに、ただある場所を目指して走った。
いま、己が、銀時を救う事が出来る場所に。
「銀時。死ぬな。」
後ろで揺れる鈍く光る銀色の髪が
「死ぬな。」
背中から伝わる、体温が
「頼むから、」
耳元に聞こえる、か細い呼吸が
「死なないでくれッ・・・。銀時ッ」
今すぐにも消えてしまいそうで
失ってしまいそうで
「やっと、やっと幸せになれたんだ!」
最後に見た、優しく微笑んで見送ってくれた恩師のように
「やっと、笑えるようになったのではないかッ!」
慈愛に満ちた、全てを慈しむ様な
「やっと、やっと・・・。」
この世界が銀色を受け入れてくれたのに。
目の前には真選組屯所の文字
脇目も振らずに奥の部屋を目指す
まだ夜が深いため、静まり返る中、一つの部屋の灯りに導かれるように桂は向かった。
バンッと勢いよく障子を開ける。
「ッ!?桂か???」
「土方ッ!銀時を、銀時を助けてくれ!!!」
そっと目線を桂の後ろに目を向けると、全身紅く染まった彼の人の姿。
ハッ、と息を吸い込んでしばらく驚愕した。
困惑気味の桂につられてあたふたとする口を一度結ぶとスーッと息をついて、すぐに救急車を手配した。
「落ち着け。今救急車を呼んだ。」
「・・・頼もしいな・・・。」
「・・・?」
「こういう時、攘夷志士である俺には何もできない。無力なのだ。」
「・・・フンッ。なーにが無力だよ。」
「?」
「お前はお前にしかできないやり方でこいつを助けた。それは事実だろ。人一人で誰かを救うなんざできるわけねえだろーが。人間ごときが自惚れんなっつー話だ。」
自棄になっていた桂の心に、土方の言葉はやけにスッと入ってきた。
遠くでなるサイレンの音に気付いた土方は、桂の背中の銀時を引き受けると玄関へと足先を向けた。
「ありがとうな。こいつを助けてくれてよ。次は、俺達が助ける番だ。」
そう、残し土方は桂に背を向け歩き出す。
遠ざかるにつれて暗闇に消えて行く土方に、小さく礼を言うと、音もなく消えた。