千日紅   作:夏(。・ω・。)

29 / 47
莫逆の交わり

 

 

兼松の屋敷へ入ると、途端に兼松直属の忍びたちが攻撃してきた。

腕が立つ者も、数人はいたものの、

やはり戦場を知らぬ甘ったれた者たちの集まりにすぎなかった。

なので、桂は忍びたちを部下に任せ、自分は一人で真選組が作成した地図を頼りに、銀時の救出に向かった。

 

 

しばらく走ると、警備員が二人立っている廊下についた。

怖面で堅の良い男だったが、桂は難なく二人を地にひれ伏せた。

 

 

「ここか。近藤が言っていた部屋は。」

 

 

ゆったりとした足取りで廊下を歩いていると、突然、叫び声が聞こえてきた。

 

 

『・・・さす・・・しろや・・・し・・・死ね。』

 

 

「ッ!?銀時!!!」

 

 

重い鉄の扉を開けると、そこにはフラフラと頼りなく立つ銀時と、拳銃を構える兼松の姿。

すっと懐に手を入れ、クナイを掴み、兼松めがけて放つ。

兼松が引いた引き金は空に放たれ、そのまま息絶えた。

 

急いで銀時に目をくべると、力なく、ぐったりと倒れていた。

その周りには、奇妙な色をした液体が残った注射器。

すぐさまそれが何かしらの作用を起こす薬だと察知した桂は、銀時に駆け寄った。

 

 

「銀時!しっかりしろ!銀時!!!」

 

 

素早く銀時を抱えると、ダッと部屋を飛び出した。

部下達が退路を確保してくれていたため、すぐに外には出れた。

 

部下達が何か言っていたようだが、俺はなにも聞かずに、ただある場所を目指して走った。

 

いま、己が、銀時を救う事が出来る場所に。

 

 

「銀時。死ぬな。」

 

 

後ろで揺れる鈍く光る銀色の髪が

 

 

「死ぬな。」

 

 

背中から伝わる、体温が

 

 

「頼むから、」

 

 

耳元に聞こえる、か細い呼吸が

 

 

「死なないでくれッ・・・。銀時ッ」

 

 

今すぐにも消えてしまいそうで

 

失ってしまいそうで

 

 

「やっと、やっと幸せになれたんだ!」

 

 

最後に見た、優しく微笑んで見送ってくれた恩師のように

 

 

「やっと、笑えるようになったのではないかッ!」

 

 

慈愛に満ちた、全てを慈しむ様な

 

 

「やっと、やっと・・・。」

 

 

 

 

この世界が銀色を受け入れてくれたのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には真選組屯所の文字

 

脇目も振らずに奥の部屋を目指す

 

まだ夜が深いため、静まり返る中、一つの部屋の灯りに導かれるように桂は向かった。

 

バンッと勢いよく障子を開ける。

 

 

「ッ!?桂か???」

 

「土方ッ!銀時を、銀時を助けてくれ!!!」

 

 

そっと目線を桂の後ろに目を向けると、全身紅く染まった彼の人の姿。

ハッ、と息を吸い込んでしばらく驚愕した。

困惑気味の桂につられてあたふたとする口を一度結ぶとスーッと息をついて、すぐに救急車を手配した。

 

 

「落ち着け。今救急車を呼んだ。」

 

「・・・頼もしいな・・・。」

 

「・・・?」

 

「こういう時、攘夷志士である俺には何もできない。無力なのだ。」

 

「・・・フンッ。なーにが無力だよ。」

 

「?」

 

「お前はお前にしかできないやり方でこいつを助けた。それは事実だろ。人一人で誰かを救うなんざできるわけねえだろーが。人間ごときが自惚れんなっつー話だ。」

 

 

自棄になっていた桂の心に、土方の言葉はやけにスッと入ってきた。

 

遠くでなるサイレンの音に気付いた土方は、桂の背中の銀時を引き受けると玄関へと足先を向けた。

 

 

「ありがとうな。こいつを助けてくれてよ。次は、俺達が助ける番だ。」

 

 

そう、残し土方は桂に背を向け歩き出す。

遠ざかるにつれて暗闇に消えて行く土方に、小さく礼を言うと、音もなく消えた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。