千日紅   作:夏(。・ω・。)

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弱り目に祟り目

 

 

ピッ―――ピッ―――

 

という電子音が規則正しく響く真っ白な部屋。

その部屋の前には『集中治療室』という文字。

その中に横たえられている銀色は、これまた真っ白なベットの中に沈んでいる。

僅かに出ている首には痛々しく包帯が巻かれている。

 

そんな中に、全身真っ黒な男が一人。

何やら悩ましげに眉をひそめながら、銀色を見つめていた。

 

その男、土方は先程手術が終わり、医師に呼び出されて言われた言葉を思い出していた。

 

 

 

 

「土方さん。手術は成功しました。外傷は刀傷、浅黒く変色した打撲、骨折などいろいろでしたが、命にかかわるようなものはありませんでした。」

 

「そうか。良かった。」

 

「しかし、」

 

「?」

 

「こんな身体で生きていられるなんて不思議でならない・・・。」

 

「・・・どう言う事だ?」

 

「身体の内側がね、ひどかったんだよ。内臓が焼かれたようになってたり、切り刻まれたみたいにところどころズタズタでね。正直最初に見た時は助からない、とさえ思ったほどだ。」

 

「ッな、んで?」

 

「それは私にも分からない。ただ、血液から未知の物質が検出されてね。おそらく天人製の薬を投与されていたものと思われるよ。」

 

「治るのか?あいつはちゃんと治るのか!!」

 

「手術は成功した。・・・しかし、禁断症状による発作や、意識が戻らないという事も想定しなければならない。それに、後遺症が残る可能性も、ゼロとは言えない。」

 

 

 

 

 

術後、すぐに近藤に連絡を入れ事情を説明した。

そこで交代で銀時の見張りをすることに決めたが、二人とも仕事が忙しく、それほど長くは入れないため、総悟や山崎にも知らせ、内密に動いてもらうように頼んだ。総悟も銀時の姿を見て苦しそうな顔をしながらも素直にうなずいてくれた。

それから銀時は何度も何度も禁断症状による発作を繰り返した。

意識はないにもかかわらず、大声をあげて苦痛の声を上げた。

バタバタと暴れるため、そのたびに見張りである己たちは力ずくで抑え込み、発作が止むのをただただ待った。

そうこうしているうちに1週間が過ぎた。

相変わらず銀時は目を覚まさない。

栄養剤を投与してはいるが、やはり、少し痩せた。

 

そして、最近一番問題なのはほかにある。

子供たちだ。

ここ二、三日何か感づいたらしい二人は屯所に来ては『銀時に会わせろ』などと言って暴れまくっている。

今日などは、近藤さんを迎えに行ったとき妙に、見回り中にお登勢達に、ホームレスのおっさんに、オカマの大群に、ホステス達に、とにかくいろんな人々に聞かれまくり、参っていた。

 

桂にも聞かれたが、そこには素直に教えた。礼を言うとさっさと帰ってしまったが。

 

なぜ他の人にも教えてやらないかだって?

そりゃあ、俺達だって教えてやりたい。

あんなに心配しているのだから。

 

しかし、見せるのが少し不憫でならないのだ。

 

というのも、この男はいつも自分の弱みを隠して生きていた。

他人の弱みや悲しみにはすぐに入りこんでくるくせに、自分の事となると、途端に強く拒絶してくる。

そんな男が、意識はないとはいえ非常に弱っている。

禁断症状で情けなく暴れまくっているのだ。

最初に見た時は自分も酷く絶望した。『こんな姿、見たくなかった』と本気で思った。

 

 

ふと、いつか見たこの銀色の過去が頭に流れ、涙が出そうになるのを必死でこらえた。

 

 

 

 

銀時が生きているあかしである機械音だけが響く中、遠慮がちに聞こえたドアを開ける音に振り向くと、そこには沖田がいた。

 

 

「土方さん。交代ですぜィ。」

 

「ああ。頼む。」

 

「ヘイ。」

 

 

席を立とうと力を込めた瞬間、ピッピッと安定した電子音が、急に危険を知らせる音へと変わった。

それと同時に暴れだす銀時。

二人は無意識のうちに駆けより、手足をベットに押さえつける。

そのすぐ後に医師が駆けてきた。

 

 

「先生!クソッなんて力だッ!!!」

 

「なんか、いつもより抵抗強くねえですかィ!?」

 

「ああ、ったく。どこに、ンな力あんだよ!」

 

 

突如医師の顔が曇る。

それを鋭くとらえた土方は医師に疑心の目を向ける。

それに気付いた医師は、重々しく告げた。

 

 

「土方さん。坂田さんは、今夜が峠です。」

 

「「ッ!!」」

 

「この爆発的な発作が終われば血圧はぐんと下がり、心拍数が落ちます。そして悪く行けば、そのまま・・・」

 

「・・・なんつーこった。」

 

「そんな・・・旦那。」

 

「坂田さんにご家族は?すぐに呼んであげてください。」

 

 

スッと力が抜けた。

すると医師の予言通り血圧がどんどん下がり、呼吸が弱くなる。

頭から血の気が引くのがわかった。

沖田を見れば、同じように真っ青な顔をしていた。瞳は不安げにゆらゆらと揺れている。

医師達が忙しなく動いているが、スローモーションのようだった。

 

 

はっきりとしない意識の中、土方は部屋を出て、近藤に事情を言い、自分は病院に止めてあったパトカーに乗り込み、歌舞伎町を目指した。

 

 

彼らを連れてくるために。

 

 

 

 

 

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