千日紅   作:夏(。・ω・。)

32 / 47
たとえば君が傷ついて崩れそうになった時は必ず僕が傍にいて支えてあげるよその肩を

 

 

真っ暗な空に星が瞬く

 

そんな夜。

 

草原の真ん中に立っている。

 

ここはどこだろう。

 

そんな事を考えながら歩き出す。

 

しばらく歩くと、ひとの気配があった。

 

長い髪の毛を風に揺らしながら星空を眺めるその姿は、あの人を連想させた。

 

同じく揺れる銀色に気付いたその人がこちらに目をくべる。

 

『銀時、なのですか?』

 

先生?先生なのか?

 

『本当に銀時なのですね。・・・けれど、どうしてこんなところに?』

 

わかんねぇよ。気付いたらここに居たんだから。ってかここどこ?

 

『銀時。戻りなさい。』

 

は?なんで?ってかここどこだっつの。

 

『あなたはここに居てはいけない。』

 

 

有無を言わさぬ、少し怒ったような恩師に戸惑う銀時。

 

しかし、今も昔も、あの人の言葉に逆らう事は出来やしない。

恩師に背を向け歩き出す。

一歩一歩が酷く重たい。

もう一度だけ、最後にもう一度だけあの人の顔を見たい。

思い出の中のあの人は顔がかすんでいて良く解らなくなってしまった。

だから、もう一度・・・

だけど、

 

『銀時。あなたは、生きなさい』

 

 

大きく一歩を踏み出した。

一歩、また一歩。

気付くと走っていた。

振り返るなんてこと、できるわけがない。

男として、あの人の弟子として。

 

先生。

あなたの顔を忘れかけている俺を薄情だと思いますか。

あなたの教えを破った俺を情けなく思いますか。

 

 

『銀時。あなたは生きなさい。』

 

 

 

「せんせぃ」

 

「銀時!?」

 

 

涙が一粒落ちた。

なんだか久しぶりに息をした気がした。

僅かな光りが照らす薄暗い部屋を見渡すと、ここが病院であると分かった。

己に繋がれた管が自分の動きと一緒に揺れる。

どっと汗を掻いているが、なんだかとても寒い。

しかし、右手に残る暖かい感触。

そっと振り向くと、うざったい黒髪の長髪頭が手を握っていた。

 

ウゲッと思いながら視線を合わせて驚いた。

桂があまりに変な顔をしていたから。

 

嬉しいような、悲しいような、驚いているような、怒っているような、安心しているような・・・

 

そんな顔をしていたから。

そして、そんな桂に握られた右手から伝わる温度に安心している自分に気付いたから。

 

 

そう言えば、自分は捕えられて、相当な怪我をしてしまったんだっけ、と思い出し、心配をかけた事に少しだけ申し訳なく思った。

そして、昔と変わらず己を気にかけてくれる桂に、むずがゆくも嬉しく思った。

 

 

でも、やっぱり恥ずかしいから、

 

「きもい。離せ。ヅラ。」

 

と、ぶっきら棒に言ったら、いつもの桂に戻るかと思ったのに、一向に離そうとしないどころか、俯いてフルフルと震えだしたので、顔が引きつった。

 

「え、なに?泣くの?泣くのかヅラ!!!」

 

「・・・が・・・」

 

「なに?」

 

「誰が泣くか!このバカ者が!」

 

ポカっと頭を殴られたが、全く痛くない。

ハハっと苦笑を洩らす。

 

「大体貴様はなあ!「はいはい!今から説教とかマジ勘弁!」

 

 

桂は自分の気も知らないで、とも思ったが、月明かりに照らされる銀時の顔が真っ青だったためため息を吐いた。

 

 

窓の方へ映る桂を眺める。

 

「もう行くのか?」

 

「ああ。・・・なあ銀時。」

 

「んあ?」

 

「よく生きていてくれた。」

 

「・・・」

 

「怪我、ちゃんと直すのだぞ。」

 

「・・・ん。」

 

頭の後ろを掻く銀時に満足したように微笑む。

 

「・・・お前の隣に居る者達に感謝するのだな。」

 

「ん。・・・ん?」

 

 

桂はやわらかく微笑んだ後、窓から外へ飛び出していった。

部屋に一人になった銀時は、クスッと笑った。

先程まで、桂と話していたり、まだ感覚が鈍っているという事もあって、感知しきれなかった気配が七つ。

愛しくて仕方がない、己の大切なもの。

 

 

「護れた。」

 

 

ぐっすりと眠る子供らしい寝顔の二人の頭をそっと撫でる。

ずり落ちている毛布を全員にかけなおしてやり、自分もまたベットへもぐり込んだ。

 

 

 

 

 

もう少し、生きるよ。

 

先生。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。