高鳴る鼓動
リズムよく鳴るお囃子太鼓の音
ほんのりと香るりんご飴や綿菓子の甘い匂い
賑わう人々の声
どうして祭りはこうも気持ちが高ぶるのだろう
「やっぱりいいですね。お祭りって。ね!銀さん神楽ちゃん!」
「祭りじゃぁああああ!甘味じゃぁああああい!!!」
「やっほぉおおおおいい!!!銀ちゃん小遣いおくれヨ!」
「そうだな。ほれ、500円」
「えーこんだけアルカぁ?もっと弾めヨ!」
神楽は銀時の腕にしがみつき、懇願する。
それに負けた銀時は懐に手を入れ、もうひとつ手に握りしめた。
「んー仕方ねッ!600円な!その代わり新八は300円だから。」
「やっほー!銀ちゃん太っ腹ネ!」
「おおおーーーいい!!!なんで僕だけ300円なんですか!僕だって600円欲しいです!って言うか折角人が風流を解していたのに台無しじゃないですか!ッと言うか!変だと思ったんですよ!銀さんが無駄口叩かず手際よく準備するなんて!やっぱり甘味か!甘味のためだったのか!」
「あったりめェだろうがパッツァン。祭りと言ったらりんご飴に綿菓子だろ。」
「んなもん駄菓子屋にあるでしょーが!いつだって食べれますよ!」
「それじゃあダメなんだよパッツァン。駄菓子屋のモンなんかなあ、こっちと全くちげえんだよ。作りたてのほかほかの綿を口に入れた瞬間溶けちまう綿飴が。全面に塗られた飴に隔たりがあってちょいと不格好なりんご飴がいいんだよ。つまりは祭り独特のこの甘味たちがいいんだろーが!」
「長すぎですよ!分かりずらすぎですよ!」
「伝えたい言葉がありすぎて伝わらない事ってよくあるよな。うん。」
「なに甘味ごときでかっこつけてんですかああああ!!!」
腕を組んでうんうん、とうなずきながら涎を啜る銀時にさすがの新八も引き気味・・・
「ねえ銀ちゃん!私射的がしたいよ!」
「射的なんて神楽ちゃんいつもその傘で同じような事してるじゃない?」
「あほアルな新八。」
「まあまあこんなあほはほっとけ。よっし神楽!射的屋の景品全部根こそぎ取ってこい!」
「ルージャ!!!」
「そういうことかぁぁぁあ!」
ああ、だれかこの馬鹿どもを懲らしめてやってください。
「きゃっほーーーう!銀ちゃんやったアル!」
「よっしゃナイスだ神楽!」
「ってホントにやっちゃったのかぁぁぁああ!!!ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
ショックのあまり石化してしまっている店員に何度も土下座を繰り返す新八であった。
「あら。銀さんじゃない?新ちゃんも神楽ちゃんも来てたのね。」
「姉上ぇ~。助けてください~」
「あらどうしたの?新ちゃん。そんなに汚れて?」
そう。新八はあれから数店の射的屋を潰しまくる二人のせいで土下座のオンパレードを披露し、最終的にスライディング土下座というかなりの高等技術を習得したのだ。
「姉御も来てたアルカ!」
「おうお妙。ウゲッしかもその後ろにはババア共もかよ。」
先程までに獲得した景品を手にいっぱい持ち、さらにお菓子をぼりぼりとむさぼりながら二人はやってきた。
「何だいその反応は?というか銀時。その袋は何なんだい?」
やはり目が行くのは二人の手にアルパンパンの袋達。
さすがの銀時もこれはお登勢に叱られるのでは、と思ったのか、あーとかえーっとなどと言って言い淀んでいた。
そこに目を付けた新八が仕返しだと言わんばかりにお登勢に駆け寄った。
「あッ!新八お前ッ!」
「あのですねお登勢さん!実は「あッ!旦那達じゃねえですかィ?」
やっと、というところで言葉を遮られてしまった新八は声の主を恨めかしくおもい振り返った。
「おお!沖田君!いいところに来てくれたよホント!」
「はぁ?なんかあったんですかい?」
「そっ一大事になるところだったよ~」
「相変わらず変なお方ですねぃ。旦那方は日食見に来たんですかィ?」
「うーん。ま、そんなとこ。」
うそつけッと新八は心の中で呟いた
「おいサド!なに普通に銀ちゃんと会話してるアルカ!ドッか行けヨ!」
「うっせクソチャイナ!」
「あら沖田さん。今日はあのゴリラはいないんですか?それともとうとう動物園にでも搬送されました?」
「いや。今日はゴリラも来てますぜ。土方のクソヤローもねィ。」
「誰がクソだってぇ?総悟」
沖田の背後からこの祭りに似合わないまがまがしいオーラがにじみ出ていた。
そのオーラを発している当の本人はまさしく鬼の形相で沖田を睨みつけていた。
普通の人が見れば誰もが震えあがるような顔ではあるが、なに分今目の前にいるのはなんだかんだで付き合いが長い腐れ縁達である。そんなもので震えあがるようなものではない。
特に沖田はウザいのがきた、というような顔で土方を見た。
「別に本当の事を言ったまででさぁ。」
「そうそう。沖田君はなーんにも間違ったことはないよ大串君。」
「こんのドSコンビがッ!っつーか総悟!近藤さんをゴリラ呼びするな!」
「あれ?俺そんなこと言ってやしたか?」
「無自覚かよ・・・まあいい。戻るぞ総悟。」
「おいおい。警察が優雅にお祭り満喫ですかー」
折角鬼さんが自ら立ち去ろうとしてくれたというのに、この銀髪はふざけた顔をして言葉を投げかけた。
最悪な事態が予想されたが、予想に反して土方はゆったりとした動きで半身をこちらに向ける。
「こちとらあるお偉いさんの警備で来てんだよ。」
「あ?お偉いさん?」
銀時たちはあたりを見回しそれらしき人物をさがし始めた。
「おい。お前らには関係ねえんだからさがすな!」
「あ!・・・あの、銀さん。あの人じゃあ・・・?ってか、あの人・・・」
「・・・しょーぐ「ああーーーー!!!言うな!それ以上言うな!御忍びなんだよ!」
「いやいや。あれ忍べてねえって。やんごとなきオーラ出しまくりだって!」
「そもそもなんでショーグ「だから言うなぁぁぁああ!!」
「じゃあなんて言えばいいんですか!」
「聞くな。なにも聞くな。以上!じゃあな!」
よほど将軍が来ている事を隠したいのかもうなにも質問されたくはないと思った土方はスタスタと言ってしまった。
「この祭り。あのやんごとなき御方が提案したんでさァ。」
「へえ~。物好きだね~ショー・・・あの人も。」
「全く出さあ。そのせいで俺達は朝っぱらからずーっと護衛でさぁ。」
「まあいいんじゃない?一緒に日食見れるじゃん?」
「あほですか旦那?そんなのんびり日なんか見てたらそれこそ護衛の意味ないですぜ。」
「あ、そっか。」
「そうでさぁ。それじゃあ俺そろそろ行きやす。」
「お~頑張れよー。」
沖田を見送った後、少し遠くではしゃいでいた女どもの方へ行くと、何やら興奮した神楽がぴょんぴょん跳ねていた。
その目には銀色のシートがはられた変なサングラス、もとい日食グラスがかけられていた。
ふと、空を見上げると、空がだんだん暗くなっていた。
ざわざわとしだす会場
銀時は、ふと後ろに嫌な雰囲気を感じて振り返ったがそこには人だかりがあるだけ。
そっと将軍の方へ目を向ける。
「なにもなけりゃいいがな。」
「銀さん?」
「・・・いや。新八、俺にもグラス。」
「はい。」
目に映った太陽は半分以上が欠けていた。