忘れもしないあの日
初めて俺をこの世界に引き入れてくれた
なにもなかった俺に感情を仁義を道理を愛をくれた
こんなにも世界は美しいのか
この人が居る世界は、この人と見る世界は特別だった
そんな大切な人が殺された日
忘れられるわけがねえ
真っ赤に染まったあの部屋で見た
忘れられるわけがねえ
高杉の左目を奪い傷つけた
忘れられるわけがねえ
「忘れられるわけねえだろうが。なぁ、黒夜叉さんよォ。」
血が滴る掌を腰にかけてある木刀にかぶせ、臨戦態勢に入る。
いつもと全く雰囲気が違う銀時に戸惑いを隠せないながらも敵から注意を逸らさず刀を構える真選組。
そんな両者を見た黒夜叉はフッと息をふきだすとニタリと釣り上げた口を開いた。
「今日はお前の相手などしている暇はないんだ白夜叉よ。」
「何ッ!」
「今日は貴様に話をしに来た、将軍。」
将軍に身体をむけなおした黒夜叉。
その目はこの薄暗い中で不気味に光っていた。
その視線から将軍を護るように立ちはだかった近藤が口をはさんだ。
「ちょっ!ちょっと待ってくれ!いや、待ってください。あなたの名は黒夜叉でしたよね?」
「ああ。」
「ならばなぜ将軍を狙うんだ!あなたは天導衆。将軍とは対等な存在。そんなあなた達がなぜ!」
「だから、話をしに来たと言っているだろう。真選組局長。将軍。われわれ天導衆はある決定を下した。」
「・・・その決定とは。」
「我ら天導衆は今日を持ってお前ら地球人との交流を断絶する。」
「「「「「ッ!!!?」
「そして、この地球を我等の支配下に置くことに決めた。そこで将軍。貴様に選択権を与えよう。我等の下につき地球人を生かすか、我らに歯向かいお前の大切な愚民共を見殺しにするか。さあ、どちらがいい?」
「・・・そのような事、」
ふざけんな
「期限は三日。それまでに返事が出せなかったら、その時は戦争の始まりだ。」
「そ、んな・・・。」
ふざけんなッ
「戦争・・・だと。」
ふざけんなッ!
「ふざけんじゃねェェェエエ!!!!」
思い切り振り下ろした銀時の木刀は見事に黒夜叉の頭部に当たった。
日食もだんだんと終わりをつげているのか、次第に明るくなる辺り。
しかし銀時の醸し出す殺気があたりの温度を下げる。
銀時はなおも攻撃を繰り返す。
首に腹に脚に腰に腕に、まるで鉄の塊のような打撃を黒夜叉に繰り出す。
「お前は、お前はぁああ!!!俺がここでッ!!!!」
銀時が一際大きな殺気を放ち腕を振り上げた。
「ぬるい。」
「旦那ァァアアア!!!!!!」「「万事屋ァアア!!!!」」
黒夜叉の強力な腕力により銀時は吹き飛ばされた。
「ぬるい。ぬるいぞォガキィ!あのころの勢いはどうした!もっと俺を楽しませろ!そんな木の棒っきれでは俺は切れんぞ!」
「はあ、はあ、うっせェェえええ!!!!」
「悲しいものだな!あの白夜叉もこのザマ!伝説とまで謳われた貴様がなぜ今までのうのうと生きていた!なぜ自ら牙を折った!」
「はあ、はあ、」
「今の貴様は恐れるに足りぬ!」
黒夜叉の強烈な蹴りが銀時の脇腹に入る。
銀時は血を噴き出しながらもなお立ち上がる。
もう、その紅い眼には黒夜叉以外映ってはいない。
「今の貴様が吠えたところでなにも変わらぬ。残念だ白夜叉よ。牙の折れた夜叉などただの弱い人間だ。・・・死ね。」
黒夜叉が手にかけた刀が銀時に振りかざされる。
目の前が真っ赤に染まった。
あの日のように、紅く。
最後に見たのは、あの日と同じ。
俺が一番嫌いな色。