銀時は新八や神楽、お登勢やタマ、キャサリン、妙を連れて、これから始まる戦争の避難場所となっている吉原に来ている。そこには江戸中から避難してきた人々で溢れていた。
というのも、先日黒夜叉との戦いで負傷した銀時はそのまま気を失ってしまい、倒れた。
その日のうちにあらゆる人たちが集められ、将軍と話し合いを行ったらしい。その結果、天導衆との戦争に踏み出すことに決めたようだ。その決定に江戸の者はみな賛成した。また、その集められた人たちの中には桂もいたらしいが、今回の戦争を仕切るのも桂になったらしい。
そして、江戸は戦場となってしまうため、こうやって避難勧告が出されたのだ。江戸を出る者もいれば江戸は墓場だというような生粋の江戸っ子もいた。そんな江戸っ子のための避難場所となったのがここ、吉原になったのだ。ただし、今回の戦争はあくまで天導衆との戦い。江戸好きな天人もここ吉原に集まっている。
「あ、旦那ァ。」
「ーーーッチ。万事屋か。」
「お妙さあああああああん!!!」
声がした方を振り返ると、そこには真選組がいた。
「近づくんじねぇぇぇぇぇぇぇえええ!ゴリラああああ!!!」
バキッ!メキッ!という音を放ちながらお妙は攻撃を繰り出した。近藤は血を流して、しかし、微笑みながら地に伏した。銀時と土方はいつものように口喧嘩が始まった。どうやら土方の傷はもういいらしい。さらに神楽と沖田も戦闘が始まっていた。
相変わらずの出来事に新八はため息をつきながらも、少しホッとする。
「やあ新八君。君たちもやっと避難所に来たんだね。」
「あ、山崎さん。はい。もうすぐであそこは戦場になっちゃいますからね・・・。真選組はどうするんですか?今回のこの戦争で・・・。」
「俺たちは将軍茂茂公に仕えている身だからね。」
「それじゃあ・・・。」
「うん。戦争に参戦する。」
真選組とは腐れ縁でいつものように平和・・・とは言えないこともあったが、そんな日々を送ってきた。そんな彼らが、戦争に出るということに新八は純粋に『嫌だ』と思った。そして、口喧嘩から暴力喧嘩をしだした銀色を見つめた。もしかしたら彼も・・・・
銀時は昔攘夷戦争に出ていた。しかも、伝説の武神と言われ、その中でも最強と謳われたあの白夜叉として。
「銀さん・・・。」
「新八君?」
「あっ!いえ、なんでもないです。あの、こんな時なんて言えばいいかわからなくて・・・。」
「はははっ。いいよそんな堅苦しいのは。いつものようにさ、こうして、喧嘩してふざけ合ってる方が僕らは何倍も勇気が出るんだよ。きっと局長も副長も沖田隊長も。」
そういって山崎は上司三人を見た。新八もつられて見る。みんな顔にはあまり出ていないが、やはり少し、穏やかだった。
ようやくけりが着いたのか、または持ち越しになったのか。とにかく銀時、神楽、土方、沖田は戦闘をやめ、戻ってきた。
「近藤さんもうすぐ時間だ。」
「うう・・・・。」
「だめでさァ。近藤さんあまりのショックにのの字書き始めやしたぜ。」
「・・・おい山崎!」
「へい!」
「近藤さん引きずって連れてこい!俺は先に行っていろいろ準備しとく!」
「はいよ!」
そういうと、土方は走り出し、沖田と山崎は近藤を引きずりながら『それじゃあ』といって去って行った。
真選組と別れた後、一行は避難中生活する大広間にやってきた。そこにはすでに来ていた長谷川や柳生家、西郷、源外など万事屋として関わったたくさんの人がいた。
「お~銀さん!やっと来たか。」
「おう。」
「銀時」
ふいに名前を呼ばれ振り返るとそこにはここ、吉原のトップ。日輪とその息子、晴太。それから百華の長、月詠がいた。長谷川は絶世の美女を前に目を見開き、お登勢はこんなところにはこいつは知り合いがいるのかと、呆れていた。
「よお。久しぶりだな。」
「銀さん!神楽姐!新八兄!久しぶり!!!」
「おおー晴太!元気だったアルカ?」
「お久しぶりです。日輪さん。月詠さん。晴太君。」
「久しぶり。あたしらはみんな元気さ。それより、上は大変なことになってたんだね。」
「ああ。まあ、いずれかこうなるって分かってたことだろ。」
「そうかい。」
「そういえば銀時。いや、おぬしだけでなくそこの後ろの男共は皆広間に行かなくてよいのか?」
「は?なんだそれァ。」
「なんだ、知らぬのか。今男共はそこの広場に集められているのだ。」
「あの桂小太郎と高杉晋助が演説するんだって!」
奴らもここに居るのか・・・。
それもそうだ、今回は幕府、といっても天人が乗っ取ってしまった幕府を敵にする戦争。初めから幕府を倒すつもりでいた彼らがこの戦に手を出さない訳がなかった。
「演説って何アルカ?」
「大勢の前で自分の意見を主張するのさ。そして、その意見に賛成の者たちを集めて自分の仲間にするのさ。まあ今回は戦争の参加、不参加を問うための集まりだろうねぇ。」
「ふーん。・・・」
「わっち等は男共をそこに案内するようこと使ったのだ。だから銀時。おぬしらも早く行け。」
「ッチ。めんどくせえなぁ。」
そういいながらもその広場へ向かおうとする銀時を誰かの手が引く。
「神楽?」
銀時の着物の裾を掴み不安そうに大きな目を揺らす神楽。
銀時は頭を掻いた。
「行ってくる。」
優しく微笑みながらそう言うと、神楽は少し目を見開き、それからキッと目を強くすると、いつものような憎たらしい口調で見送った。
「早く帰ってくるヨロシ!バカ息子!」
「お前の息子になった覚えはねえよ!」
残された女たちは去っていく男たちの背中を見つめ続けた。