千日紅   作:夏(。・ω・。)

4 / 47
あきれるほどはしゃいだ僕らで過ごしたあの場所

目の前に広がるのはどこまでも広がる田んぼと畑。

 

風は心地よく吹き、空気は澄んでいる。

 

まず、江戸ではない。

 

 

「ここ、どこなんでしょうか。というか、銀さん大丈夫かな。あんなに苦しんでたのに・・・。」

 

 

「あの帽子は未知の代物だからな。どんなことが起きても不思議じゃねぇってことだ。」

 

 

「お前ラ銀ちゃんのとこ帰ったら覚えとけヨ。」

 

 

「なんか人が来ますぜィ。話しかけろよ土方コノヤロー。」

 

 

各々がまだ現状を読み込めないまま騒いでいると、前方の田んぼと田んぼの間の細道を人が二人歩いてきていた。

 

 

「あれァガキじゃねえか?」

 

「あ!こっちに気付いたアル。」

 

「え・・・なんかめっちゃ走ってきてますよあの子たち。なんか、めっちゃ早いですよ!!」

 

「うっさいアルナぁ。黙れヨ。メガネ」

 

「今メガネ関係ないィィィィイイイイイ!!!!」

 

 

「お前ら何者だ!!!!」

 

 

あっという間に土方たちの目の前に現れた二人の少年はズイと詰め寄った。

 

 

「いやぁ。おじさんたちは~えーっとぉ。」

 

 

「旅してんだ。」

 

 

自分たちが状況を飲み込めていない中、他人に説明なんて無理であった。

そんな時、さすがはフォローの土方。一行はここは土方に任せることにした。

 

 

「旅?そんな軽装でか?」

 

「怪しいな。」

 

「あっちに車があるからそこに荷物は置いてんだ。」

 

「車に?ここは車が休みに来るようなところではないぞ?歩いて来る旅人はよくいるが。」

 

「なに言ってるアルカ?車が休むなんて馬鹿アルカ?」

 

「ちょっ!待て。なあお前ら。ここはどこだ?元号は?」

 

「おいトシ!どーした?」

 

「黙っててくれ近藤さん。俺の間違いならいいんだが・・・」

 

「よくわからぬが。ここは萩で今は天保だが。」

 

「「「「天保!?!?!」」」」

 

「天保?何アルカ?それ??」

 

「つまりね神楽ちゃん。元号は日本の古い年代の言い方で、それが天保ってことは・・・」

 

「俺たちは今、過去に居るってことだ。」

 

「タイムスリップってやつですかィ。」

 

「まじカヨ!」

 

「オイ!お前ら叫びだしたかと思えばなにこそこそ話してんだよ!」

 

 

二人の少年のうち、目つきの悪いいかにもガキ大将のような少年が尋ねた。というよりも、八つ当たりした。

 

 

「ああ、悪い。俺たちは確かに車でここまで来たんだが、休憩するといわれて散歩してたら、荷物全部持って逃げられたんだ。」

 

 

ここでもフォローが炸裂する土方に、全員頭が下がった。

あの少年たちも気の毒だという感じで何やら話していた。

そして、話がまとまったのか、高いところで髪を結っている少年が前に出た。

 

 

「それは大変だ。おぬしら先生のところへは来ぬか?」

 

「先生?」

 

新しく出た人の名前に、新八が聞くと、今度は目つきの悪い少年も前に出てきた。

 

「そうだ。ここらで有名な松下村塾の先生だ。」

 

「うむ。先生はとてもお人がよろしいから貴様らのこともなんとかしてくれるだろう。」

 

 

土方、近藤はさっきの少年の言葉に目を見開いた。

その言葉というのは『松下村塾』。松下村塾と言えばかの有名な大物攘夷浪士『桂小太郎』、そして超過激派攘夷浪士『高杉晋助』を輩出したという現世でも有名な塾である。

 

そこで土方はある事を考え始めた。

あの目つきの悪い少年は現世のある者に似てはいないか・・・?

あの高く髪を結った礼儀正しい少年は現世のある者に似てはいないか・・・?と。

 

 

「なあ、お前ら名は何だ?」

 

「人の名を聞く時は自分から言えや。」

 

「馬鹿者!お前は目上の人に口を利くときは敬語使いなさいと先生に言われておるだろう!」

 

「いってッ!」

 

バシッと言ういい音を出してはたかれた目つきの悪い少年は顔をムスッとさせ、そっぽを向いた。

 

「しかし、こ奴のいうこともまた然り。先生も言っていたからな。『人の名を訪ねる時はまず自分から名のりなさい。』とな。」

 

「ああ、すまなかった。俺は土方十四郎だ。」

 

「近藤勲だ!よろしくな!」

 

「沖田総悟でさァ。」

 

「志村新八です。」

 

「神楽アル。お前らも名のれヨ!」

 

一通り名のり、次は二人の少年だ。

土方は生唾をゴクリと飲んだ。

 

 

「俺は桂小太郎と申す。こっちの目つきが悪いのは・・・」

 

「高杉晋助。」

 

 

全員に衝撃が走った。

 

あの大物攘夷浪士の過去。

これは、案外来て良かったと真選組3人は仕事魂が燃えた。

しかし、子供たち二人は、特に神楽が、あのいつもなんだかんだで仲良くしている桂のかわいい姿に目をキラキラさせている。そして、あの狂気に笑う獣のような高杉のあり得ないほどかわいい姿に驚いていた。

 

 

 

「おい。行くぞ。」

 

「先生のところはこちらだ。」

 

 

 

5人は一度顔を見合わせてから、二人の小さな背中を追いかけた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。