「んで?何のようなわけ?まさか、謝りに来ただけ?」
ようやっと3人のバカ騒ぎが終わったかと思うと、銀時が切り出した。
その言葉に二人はああ、そう言えば。というような顔をした。
「お前も知っていると思うが、俺達はこの戦を仕切る幹事になった訳なのだ。そこで、銀時。貴様に頼みごとをしに来た。」
「・・・。」
「銀時。もう一度俺達と共に戦ってはくれぬか。あの時のように。」
吉原のある一つの部屋。そこは桂に割り振られた部屋だ。
そこに桂と高杉の二人は居た。
桂は開け放たれた窓から見える吉原の町並みを眺めていた。
高杉はその後ろで煙を吹かせていたので、そこから桂の表情は見えない。
「やはり、銀時はもう戦いたくはないのだろうか。」
『もう一度共に戦ってくれぬか』
桂のその一言に銀時は一切触れず、のらりくらりとかわしながらその場を立ち去ってしまった。
いつもそうだ。
銀時は人々からは飄々としていてなにも考えていない、自由な男だと思われがちだが、実は真逆だ。
一人で必死に空っぽの頭をフル回転させて誰も傷つかない策を導き出して、自分が犠牲になって心が救われる。そういう奴だ。『護る』という事に異常な執着心を見せ、『失う』という事に異常な恐怖を抱いている。
これは、銀時のこれまでの人生の中でそうならざるを得なかった。
だから今回も一人考えようとしているのだろう。
前回の戦で、銀時は多くの犠牲を見てきた。
それは、ただ単に仲間を庇うためだとか、大人が子供を守るだとかそういう仁義を重んじるものであり人情だった。
しかし、銀時に対しては違った。
それは、希望だったり、尊敬だったり、聞こえはいいが、要するにただの押し付けがましい命という重荷の産物だった。
銀時がいれば勝てる。銀時がいればきっと未来は切り開かれる。白夜叉がいれば勝利は掴める。
そうやって銀時をどんどん孤独にしていった。
まるで永遠の命を授かった一人の人間が大切な人にどんどん置いて行かれてしまうように。
銀時が実際に孤独を感じていたのか、それは全く知らないが、少なくとも、失わなくてよかった命があったとは思っているだろう。
しかし、それでもやはり、銀時はきっと共に戦ってくれるものだと、勝手ながら思っていた。
それは、幼馴染という特権が有効だと思っていたからだ。
一度は離ればなれになってしまったが、この関係はやはり特別なのではないか、と。
だからこそ、あんなにぐれてしまった高杉も今己の後ろに座っているのだと。
「知るかよ。」
思考の渦にのまれていると、高杉のぶっきら棒な返事が聞こえた。
「・・・そうだな。分からん。」
「なんだあ?考えるのも億劫になったかぁ?」
「いや。ただ分からんだけだ。本当に。」
「・・・そりゃねえぜ。何年一緒に居たと思ってんだよ。」
「そうだな。俺達は長い事一緒に居た。しかし奴は変わった。」
「・・・?」
「なあ高杉。俺達は過去を引きずってばかりで、未来を見ようとする銀時の脚をひもでくくりつけていたのかもしれん。あやつの自由を、あやつだけの幸せを奪って、3人だけの不幸に閉じ込めていたのやも知れぬ。」
「ッ!」
「俺達も死んでいったかつての同志達と、なんら変わりはないのかも知れぬな。」
振り向きざまにそう言った桂の顔は、力なく笑っていた。
そんなこと、
「そんなこと、ねえよ。絶対。」
そんなことはない。
銀時に何十年も重荷を背負わせ続けたなんて事はない。
「ねえよ。っざけんな・・・。」
「そうだな。」