「おい。あれが、白夜叉・・・・」
「真っ白だ。」
「でもあれが真っ赤に染まるんだろ?気味が悪い。」
「ああ。目見ろよ。あの目は獣の目だ。早く殺したくてうずうずしてんだよ。あれァ。」
「おっかねーおっかねえ。あれが味方で良かったよ。」
「知らねえのかお前。白夜叉は味方でも邪魔な奴は切り捨てるんだぞ。」
「そんな。それじゃあ本当に・・・・」
『夜叉』じゃないか。
桂や高杉は眉をひそめた。
何も知らない者たちは初め銀時を恐れる。
ありもしないうその噂を並べて、恐怖をつのらさえる。
そんな声では俺達には聞こえてしまうということも知らずに。
しかし、一番気に食わないのは銀時だ。
こいつはどんなに卑劣な言葉を浴びせられても顔色一つ変えない。
それどころか笑うのだ。
どこまでも自分に無頓着というか、優しいというか、自分たちはそういう銀時にいつも悩まされていた。
つらい時にはつらいと言ってほしい。
泣きついてほしい。八つ当たりしてほしい。そして、笑ってほしいのに・・・。
「銀と「銀ちゃん!!!!」
桂の声を遮ってやってきたのは神楽だった。
今日から出陣する銀時を見送りに来たのだろう。
その後ろからは銀時と何らかの関わりを持った者たちが続いてきた。
「なんだ?神楽。」
神楽は下を向いたまま、銀時の前で立っていた。
銀時はいつまでも顔を上げない神楽を不思議に思い、覗きこんだ。
すると・・・
「どうした?神楽?」
さっきよりも優しくそういう銀時に、神楽の涙はさらに溢れた。
先ほどの者たちの会話を聞いてしまった神楽は、自分の大好きな銀時が、仲間に恐れられていることに悲しくなったのだ。とても優しい人なのに…と。
「銀ちゃんは誰よりも優しい奴ネ。」
「…。」
「銀ちゃんは強いネ。でも、心はとっても弱いって私知ってるヨ。」
「うん。」
「だからね、銀ちゃん。」
「ん?」
「辛くなったらこれ見るヨロシ。」
そう言って手渡されたのは、色鮮やかな糸で作られたミサンガ。
「お守りアル。銀ちゃんが無事に帰ってこれるように。銀ちゃんがさびしくないようにって。」
「神楽ちゃん一人で作ったんですよ。銀さん。」
隣から新八がやってきた。その後ろには見知った顔が並んでいた。みんな優しく笑っていた。
「昨日、銀さんが戦に出るって言ってから、神楽ちゃん寝ずに作ったんです。」
そうか。だから昨日神楽を見かけなかったのか。
てっきり神楽は己が戦に出ることに怒っているのだと思っていた。
そうか。そうか…
「ありがとな。神楽。」
そう言って頭をいつもよりも優しく撫でると神楽はグンッと頭を上げた。
大きな藍色の目には涙が溜まっていた。
必死にこらえようと口が堅く結ばれる。
しかし、口を開くと涙はポロポロと落ちた。
「銀ちゃん。帰ってくるよネ?私、銀ちゃんが居なくなるなんてイヤヨ。」
「神楽・・・。」
「私、信じて待つアル。だからネ銀ちゃん。約束頂戴ヨ。『絶対に生きて帰ってくる』って・・・。」
「神楽。大丈夫。俺は死なねえよ。約束する。」
「嘘ついたら針千本のますアル」
いつもより大分弱弱しく抱きついてきた神楽を力強く、慈愛に満ちた表情で抱きしめた。
そんな銀時を見た先ほどの者たちは、自分が放った言葉を恥じた。
こんなに優しく笑う夜叉など居るわけがないと。
そして、つられて心が暖かくなるのだった。
「てかなんでこの衣装なの?銀さんすっごく恥ずかしいんだけど!」
「多数決で決まったのだ。」
「いつものおちゃらけた格好よりましだろうが。」
「は?多数決?お前ら作戦会議で何してんの!?この戦本当に大丈夫かコノヤロー!あといつものあれはオシャレですぅ~!誰にも真似できない最先端ですぅ~」
「一番盛り上がったぞ。良かったな銀時。」
「真似できないじゃなくて、真似したくねぇんだろ。」
「嬉しくねぇし!もう帰る!銀さん帰る!」
神楽と銀さんの親子的な関係が大好きなのです。
あ、お久しぶりです。
待たせてしまい本当に申し訳ありません…。