二人の少年。桂小太郎と高杉晋助に連れられてやってきた土方たちは例の塾の前にやってきた。
なんでも、塾は講師の吉田松陽の自宅と連なっているらしい。
今日は塾は休みだという二人は、自宅の玄関の方へ歩いて行った。
「松陽先生!いらっしゃいますかー?」
「せんせー!変な奴ら連れてきたー!」
『変な奴らって・・・((汗』と思いながらも二人が玄関に入って行くのを後から追う。
すると、そこには目を疑う光景があった。
「だれ?こいつら。」
この子供特有の高い声で殺気をバンバン放つ少年。どこかで・・・
というか、絶対に間違いない。
こんなに白い奴は自分たちが知っているあの人以外居ない。
神楽は先ほど桂たちを見たときよりも目をキラキラと輝かせ、新八すらもとっても笑顔で銀時を見つめている。沖田は嬉しそうに目を見開き、近藤は『おお~!』とわけのわからない歓声を上げていた。
しかし、土方だけは他とは様子が違っていた。
あの桂と高杉と共にいた。たとえここが過去とはいえ、奴は桂と高杉とつながっていやがった。しかし、現世の奴は胡散臭い仕事をしてはいるが、歌舞伎町、もしくは江戸でも名の知れる男で、信頼も厚い。何より、子供たちから年寄りまでに慕われているのが証拠だ。しかし、あの強さ。かの戦に出ていたのは言うまでもないだろうと踏んでいた。ではなぜ現世の奴はこの二人と共には居ないのだろうか。
と、さすがは鬼の副長。と言いたいところだが、ここでも仕事の方に頭が働く自分に土方はあきれた。
「銀時お前今起きただろ。寝癖すげえぞ。」
「うむ。銀時!ちゃんと早起きしなさいと言ってるだろう。もしかして昨日は遅くまで起きていたのか!ちゃんと早寝しなさいって言ったであろう!」
「うるせェエエエエ!!!お前は俺の母ちゃんか!!!」
「それも良いかもしれぬ。」
「おやおや。どうしたのですか。三人とも。というか、後ろの方々は?」
「あっ!先生おはようございます!」
「おはようございます!松陽先生!!」
二人から先生と呼ばれた男は、色素の薄いきれいな長い髪を下ろした、とても優しそうな人だった。
「はい。おはようございます。銀時も、おはよう。」
「うん。」
「おい銀時!朝はおはようございますだろ!」
「そうだぞ銀時。あいさつは一日の始まりを表わすのだぞ!ほら!」
「ではもう一度。銀時、おはようございます。」
「お・・・おはよう・・・。」
「よくできました。」
そんな微笑ましい家族のようなやり取りを見ていた5人に桂は「そういえば!」と思いだし、松陽に事情を話した。すると、松陽はあっさりと5人を家に入れ、松陽の部屋で全員腰を落ち着かせた。
「本当に皆さん大変でしたね。私は、ここで私塾を開いている吉田松陽と申します。旅の準備がまた整うまでは、どうぞこちらでごゆっくりして行ってください。」
「いや~。本当にありがとうございます。俺は近藤勲です。今後よろしくお願いします!」
「土方十四郎だ。よろしく。」
「沖田総悟でさァ。よろしくお願いしやす。」
「志村新八です。よろしくお願いします!」
「神楽アル!よろしくネ!それよりもお前銀ちゃんのパピーアルカ?」
神楽は、今はここにいないが、奥からガヤガヤと騒ぎ声が聞こえる子供の声の一人、あの銀色の事が気になって仕方がなかった。4人は少し反応したが、気になるということは同じようで、黙って松陽に顔を向けた。
「銀ちゃん?・・・ああ!銀時ですね。」
「そうアル!銀ちゃんの銀色めちゃくちゃキレーネ!目もふわふわの髪の毛も全部かわいいアル!!」
「ふふ。そんなこと言ってもらえるなんて、私も嬉しいです。しかし、あの子はわたしの子ではありません。」
「しかし、さっき高すっ・・・晋助君が『今起きたのか』と・・・・」
「ええ。あの子はここに住んでいるんです。あの子はわたしの子ではありませんが、息子のように思っているんです。」
「と言うことは、銀さ・・・銀時君の両親は?」
「わかりません。あの子は私が拾ったのです。少し、あの子について話しましょう。なんだか、あなた達には話ておくべきだと思うので・・・。」
それから、松陽から聞いたことは、自分たちが思ってもいなかった壮絶なものだった。
銀時は生まれてすぐに親に捨てられ、森の中で生きていたという。
しかし、銀時を見たある村人が銀時の容姿に驚き『鬼だ!』と村中に叫びまわったそうだ。それからは、『森には鬼がいる。』と人々は信じ、鬼を殺そうとした。銀時は襲いかかる大人から逃げ、生きるためにその人間達を殺し始めた。鬼退治に行った村人が死んだと聞き、とうとう村人たちは鬼を追い出すため、賊や人身売買関係者たちを雇い、殺そうとした。
そんな時だった。松陽は隣町までちょっとした用事があり、来ていた。そこで興味深い噂を聞いた。『鬼が出る』と。松陽は好奇心に負け、その『鬼が出る』という荒れ地に来た。そこには、先ほど息を引き取ったのだろう数人の男たちの上で握り飯を食らう銀色の髪を持った子供がいた。松陽はとても強い衝撃を受け、子供をなんとか説き伏せて自分の家へ連れて帰った。それが銀時なのだ。
「最初は感情も言葉も何も知らなくて困ったものです。今では言葉も知ってあんなふうに小太郎や晋助達と喧嘩ばかりしていますがね。」
そういうと、松陽は本当にうれしそうに笑った。
新八達は、あのいつも飄々としている雲のように掴みどころがない銀時にこんな壮絶な過去があったのかと、複雑な思いだった。