千日紅   作:夏(。・ω・。)

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サヨナラは言わないよ泣き叫ぶ風息が止んだころにもう一度出会えるから

遠慮もなく入ってくる足音が一つ。

ギシッ、ギシッ、と少しづつ近づいて来る。

銀時は理解できぬ恐怖に震えた。すると突然身体が浮いた。

松陽が銀時を担いだのだ。

 

 

「ちょっ、せんせッ!!!おろせ!!!!」

 

 

銀時の制止の声も聞かずに松陽は部屋へと入り、手近にあった襖を開ける。

その手前に銀時を下ろすと、自分も銀時の目線に合わせてかがんだ。

真正面から見た松陽はいつものように、優しく、微笑んでいた。

 

 

「銀時。」

 

 

じっと銀時を見つめる松陽。

銀時も見つめ返す。

そんな間にも謎の足音は近づいている。

 

 

「これから最後の授業をします。」

 

 

 

 

“最後”

 

 

 

 

その言葉に銀時はすべてを察した。

 

松陽は死ぬんだ。

 

きっと、いや。確実に。

 

 

どうにかして助けたいと思うが『どうすることもできない』と、脳は案外冷静に理解していた。

 

それでもイヤだイヤだと心が叫ぶ。

 

なにもできない、動くことも、松陽の手を引いて少しでも逃げることも、声を出すことも、なにも。

 

それでも心は叫ぶ。

 

何とも言えない感情が渦巻く中、松陽の声は、スッと身体中に響いた。

 

 

 

 

「人は誰しもいつかは死んで行きます。その死に方はそれぞれですが、それは自然の道理なのです。避けることはできない。逆らってはいけない。」

 

 

 

ギシッギシッ。

足音が近づく。

 

 

 

「でもね、銀時。それは決して悲しいことではないのですよ。」

 

 

 

スー、襖の開く音。

畳が軋む音。

また、襖の開く音。

畳が軋む音。

 

 

 

「死んでも人は生き続けられる。ここ、でね。」

 

 

 

そう言って松陽は自分の胸をトントン、とたたいた。

 

 

 

「だから銀時。どうか寂しく思わないで。一人だと思わないで。あなたには仲間がいる。そして、私もあなたの心の中で生き続ける。ずっと、ずっとです。ですから、これだけは覚えていてください。

 

これからはあなたが思う道を歩んでいきなさい。自分を抑えすぎてはいけませんよ。あなたはすぐに自分の胸にいろんなものを抑え込んでしまうから。小太郎や晋助を大切にするのですよ。あの子達はあなたが道に迷った時、きっと帰り道を灯す明りになってくれるでしょう。だから、銀時もあの子達が道に迷ったら、照らしてあげなさい。そして、最後に。銀時。これからもずっとその刀をふるいなさい。『敵を斬るためではない。弱き己を斬るために。己を護るのではない。己の魂を護るために。』」

 

 

 

ギシッギシッ。

隣の部屋から聞こえる足音。

 

 

松陽は最後に銀時を抱きしめると襖の中に押入れ、つっかえ棒で封じ込めた。

 

 

銀時は松陽がいなくなってしまう恐怖と一人になってしまった孤独感とで震えた。

幼い銀時には襖を開けようにも開けることはできない。

刀は外に置いてきた。

必死に襖をたたき松陽を呼ぶ。

 

 

ギシッギシッ。

 

 

部屋の前で止まった足音。

 

スーッと襖が開く。

 

かと思ったら、次の瞬間には金属が交わる音が聞こえた。

 

 

 

 

いやだ。いやだ!いやだ!!いやだ!!!イヤだ!!!!嫌だ!!!!!

 

襖をたたく。襖をほるように抉る。指は血ににじみ始めた。それでも手は止めない。

 

 

怖い。

 

 

ただ、それだけだった。頬に冷たいものが伝った感覚がした。そんなことにも構っていられない。

 

 

 

外から人が倒れこむ様な音が聞こえた。

訪れる沈黙。

何か喋ってるようだが聞こえない。

 

 

はやく、助けなきゃ!!!

 

そう思いさらに手を力強く襖に押しつける。

しかし、一向に開く気配はない。これではらちが明かないと、暗闇に慣れてきた目で中を見回す。

すると、わずかに光を放つものを見つけた。

針だった。

これしかない。そう思い針を鷲掴みすると襖に叩きつける。

 

 

すると、一つの小さな穴が開いた。

小さな穴を何個も開けなんとか光が分かるほどになった。

久しぶりの明りに銀時は目を細めた。

襖に血だらけの手をくっつけ、目を凝らして外をのぞく。

 

 

そこには真っ赤な血を流しながらうつむく松陽と、刀を振り上げ今まさに松陽に振りかざそうとしている大柄な男。

 

 

「せんせ・・・」

 

 

やっと音となった銀時の声はむなしく響いた。

 

大柄な男の目がこちらに向く。しかし、銀時の視線は松陽に向かっており気付かない。

 

男は口元を下品に釣り上げると振り上げた腕に力を込めた。

 

 

 

 

 

 

 

最後に銀時が映したのは、

 

 

もっとも愛する者の

 

 

真っ赤な血。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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