NG間違っちゃった世界で   作:仙儒

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4話

「杏子、お粥持って来た。起きれるか?」

 

 そう問いかけると深紅の髪に釣り目の少女が

 

「だ、大丈夫に決まってんだろ!」

 

 と強気な答えが返って来る。

 だが、上半身を起こした途端、勢いよく起きたためか、ふら付いて、また倒れそうになるのを片手で抑える。

 

「そら見た事か。強がるんなら、この熱が収まってからにしろよ」

 

 そう言うと杏子のおでこに自分のおでこを当てて、確認する。

 まだ熱いな。

 

 心なしか顔が更に赤くなったような気がする。

 

「ば、てめー何すんだよ!」

 

「何って、熱があるか確認しただけだよ」

 

 それ以外に何があるって言うんだ?

 

「か、勘違いしたじゃねーかよ、ばか」

 

 何が勘違いなのかはわからないが、杏子にお粥を渡して部屋を出る。

 

 食べさせてやろうか?と申し出たがその位自分でできると意地になっていた。

 

 扉を完全に閉めて思う。

 から元気も元気のうち。

 

 実は杏子が家に来てから体調を壊すのはこれが最初では無い。

 子供と言うのはストレスに弱い。

 この家に来て戸惑い、そして熱を出しているのだろう。

 いわゆる、ストレスからくるものだ。

 

 まぁ、杏子は特別な事があったから余計にだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が杏子に出会ったのはたまさか、散策ついでに隣町まで行った時の事だった。

 えらく人が所狭しと教会に押し寄せているのを発見した。

 教会の外まで押しかけている。何かのパーティー…、にしちゃ奇妙だな。

 

 そこで微かにだが魔力を感じた。

 その魔力を辿っていくと辿り着いたのが杏子だったわけだ。

 側にはインキュベーターもいた。

 

 インキュベーターは奇跡をもたらすが、その代償に二つの絶望を与えると紙に書いてあった。

 そのインキュベーターの近くには紅い髪の女の子だった。

 がりがりに痩せていた少女を見た俺は迷わずにダッシュでマ○クに行ってハンバーガーと温かい飲み物を買って戻ってきた。

 そこにはまだ少女が居た。

 その少女に俺は買ってきたそれを渡すと、戸惑いはした物の、凄い勢いでがっつき始めた。

 

 涙を流しながら口いっぱいにほうばる少女に話を聞いてみた。

 始めこそ口を開こうとしない彼女の隣に座り、彼女が口を開くまで待った。

 

「ばっかじゃねーの」

 

 開口一番にそれかいと苦笑いしながら

 

「よく言われる」

 

 そう返した。

 これ以外にもっと効率のいい手段があったのかもしれない。

 それでも、不器用な自分にはこんなことしか思い浮かばなかったのだ。

 

 そうすると語ってくれた。優しかった父親の事を。

 食うのに苦労した事。

 そんな父親の話を聞いて欲しいと願い、奇跡は起こされたこと。

 その奇跡の代償が親に捨てられたと言う事。

 

 頭に来ていた。

 アスラン事態似たような境遇にあった同情を差し引いても有り余る怒り。

 

 次の瞬間、俺が少女の静止も振り切って教会へと走り出した。

 

 人ごみをかき分けて、大勢の前で盛大に自分の思いを語る屑に怒りの炎が強くなる。

 

 綺麗ごとや御託を並べたところでてめーの犯した罪はかわんない。

 

 その後、殴り飛ばして倒れたところを、マウントポジションを取る。

 

「幾らきれいごとを並べてもお前の犯した罪は変わらない!答えろ、どうしてあの子を捨てた!あの子の願いでここに人が集まったんだぞ!」

 

 そう言うと

 

「違う此処にいる人々は、私の長年の嘆きに賛同したから此処に来ているのだ。それにあの子は捨てたのではない!魔に手を出した罪深き者に神の意向を示したのだ!」

 

 こいつ…、性根が腐ってやがる。

 

「それが、神の意志か…、だったらあの娘、要らんと言うなら俺が貰い受ける!」

 

 幾ら話しても今のこいつじゃ平行線なのは目に見えていた。それなら此処でこうした方が良い。

 思いっきりぶん殴った後、「異教徒だ、悪魔に味方する異教徒だ!」そう言う声が響く。このままだと暴動が起きかねないので足早に外に出たら、入口にさっきの子が居た。

 

「行くぞ」

 

 そう言って手を握って足早に見滝原に連れ帰ってきたわけだ。

  

 

 

 

 恨めしいと思いながらもインキュベーターにはペットフードをやる。

 見た目はかわいい猫?だもんな~。

 因みにこいつ、俺の事をじーっと観察しているだけで一言もしゃべらないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全く何やってんだあたしは。

 未だにアスランと接すると途端に真逆の事を言ってしまう。

 行動もしてしまう。

 頭をガシガシとかいてはぁ、と溜息をつく。

 

 家族に捨てられたあの日、もう二度と他人のために魔法は使わないと決めていたのに、アスランの為にだったら魔法を使ってもいいかもしれない…、そう思った。

 

 ここにきてまだ日が浅いが、彼があたしを裏切るとは到底思えなかった。

 無理なのを承知で親父に説教して、あたしを引き取って。

 書類も手配してくれて、飯も三食ちゃんと出て。

 アスランは何時もあたしを気にかけてくれて、このお粥だって、使用人に作らせればいいのに態々アスランが手作りで持ってきて。

 

 

 奇跡には代償がある。でも、その代償の先に奇跡が待ち受けていた。温かい奇跡が。

 お粥を口に含む。ほんのりと濃い味付けだが心にしみわたる。

 それに涙が流れた

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