IS<インフィニット・ストラトス> IS学園の異分子君   作:テクニクティクス

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第13話

 

さて、現在の臨海学校でお世話になっている旅館はあまり知られていないが

小さな別館。いや、館というほど大きくはないが戸建の建物がある。

文豪が居た頃から著名人がお忍びの避暑や原稿が出来上がるまでの缶詰に使われたそう。

故に小さな家風呂や簡易台所、果ては洗濯機までが各部屋にあり

本館に向かわずともそこで用事が済ませられる。

 

「……で、何で俺は両手足を縛られて転がされているんでしょうか?」

 

半逆エビ反りな恰好で布団の上に情けなく横たわっている猛。

その傍には、浴衣姿のシャルロットに鈴音。

 

福音撃破後に帰還した一夏たちは、静かに怒りをにじませる織斑先生の前で震えながら

三十分も正座をさせられ続け、最後に帰った後に反省文と懲罰用の特別トレーニングを科せられる。

のちに各員身体の検診を受け異常がないことを知り、ほっと一息。

猛は廊下を歩いて部屋へ戻ろうとしていた時、織斑先生に呼び止められる。

 

「ああ、塚本。少しいいか?」

「はい、何でしょう」

「…………ん」

 

不意に先生は外に顔を向けて声をあげる。

ついその視線の先を追ってしまった途端、軽い衝撃が顎に。

脳震盪を起こしゆっくり身体が崩れ落ち、床にぶつかる前に誰かに抱きとめられた。

そうして、目を覚ました現状がどこかの別室の布団の上に拘束されて転がされている。

 

「とりあえず、これ織斑先生からの伝言ね」

 

シャルロットが猛に見やすいよう手紙を目の前に差し出す。

 

 

 

たった一人で福音を止めに向かうとは馬鹿だ馬鹿だと思ってはいたが

ここまでどうしようもない馬鹿者だったとは私のお前の行動予想もずいぶん甘いようだ。

そういう訳で塚本、お前は特別にこの臨海学校中、謹慎・軟禁処分させる。

そこの別宅は必要なものは全部揃っているので外に出る必要はなく

一緒にデュノア、凰も居るから大丈夫だろう。

 

そして今、私が監督役となっているので”そこで何が起ころうが一切私は関与、認知しない”

腹上死などするなよ、後処理が面倒だ。――――少しは自分の身を大事にしろ、阿呆が。

 

 

 

「千冬さん……これ、まずいでしょうに」

 

手紙を綺麗に折りたたみ、机の上に置いたシャルロットはゆっくりと猛の傍に近寄り

同じように鈴音も近くに来る。

 

「織斑先生が言ってたんだよね。いざという時にはどんな手段を持っても猛を繋ぎ止めてくれって」

「泣いてお願いしても、強引に止めようとしてもあんた逃げ出すからね。もう最後の手段とるから」

「さ、最後の手段って……まさか」

「私たちの身体に猛の杭を打ち込んでもらって繋ぎ止める重りになるの。

 二つ分もあれば、勝手にふらふら飛んでいけないでしょ?」

「いやいやいや! 二人とも冷静になって、考え直そう! 女の子が身体を粗末にしたら駄目ー!」

「……これほどこの言葉が白々しく聞こえることもないわね。

 私も気安い覚悟でいる訳じゃないから、安心して? すっごく重い女の子になるから」

「女の子を傷物にして、居なくなっちゃ嫌だよ? 猛」

 

ぱさりと鈴音とシャルロットは浴衣を脱ぎ去ると

月光の中、まるで光っているような美しさの均一の取れた身体が目の前に現れる。

呆気にとられ、見惚れている猛を前後から挟み込むよう抱きついて

軽く呻くような声をあげて、最初は鈴が、続いてシャルロットが猛の口を塞ぐ。

頬、唇を重ね合い、髪を梳かれ、甘く濃密な匂いと吐息に浮かされて――理性の鎖が飛んだ。

 

好みの女性やもし初体験するならの願望など、リビドー溢れる話は同性の一夏には

話したりはするが女性の前ではひた隠しにしている猛。

そんなむっつり野郎の抑えるものが無くなったらどうなるか――

結果から言うなら、シャルロットと鈴音はいろいろと

本気で泣いてしまうことになった……愛され過ぎて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? たっくんのIS? あれ、ISじゃないよ」

 

岬の先端の柵に腰かけて足をぶらぶらとさせている束。

何気なく問いかけたつもりで、返ってきた答えに表情には出ないが内心驚いている千冬。

 

「どういうことだ、束」

「どうもこうも、あれ私が作ったものじゃないってこと。登録されていない

 というよりISコア自体がない。

 この生みの親である束さんのハッキングすら跳ね除けている防壁。

 第二形態移行もしていないのに単一仕様能力を発動させていて、それを除いても多彩過ぎる武装。

 ある意味あれも第四世代、それの発展・進化型みたいだよね」

「……怒らないのか?」

「なんでさ」

 

上半身を捻って千冬に顔を向けた束は何故そんな必要があると

疑問が少し浮かんだ笑みを浮かべている。

 

「ISの皮を被って、第一世代にも劣るシロモノなら完膚なきまでにぶっ壊したと思うよ。

 けれど、まだ私にも分からない理論で組まれててさ、未知の領域に踏み込めるのが

 何だかすっごい楽しいんだよちーちゃん」

「お前ですら分からないのか」

「うーん、分からないって言うより方程式が理解できてないってこと。

 例えるなら9割は理解できてるんだけど

 あと一つ、xに入れるものが分からないから答えが導き出せないって感じかな?」

 

うーんと伸びを入れて束は海原を見つめて、千冬も同じく彼方を見る。

 

「それにしても、惜しかったなぁ。箒ちゃんに華々しい晴れ舞台を用意したのに

 全部たっくんに持ってかれちゃったし」

「何か報復でもするつもりか」

「んー、まだそれはいいかな。箒ちゃん、ちーちゃん、いっくんよりかは順位落ちるけど

 たっくんもあれはあれで面白いし。

 あはは、初めて会った時、手ひどい対応したのに「そうなんですか。で、それが何か?」って

 態度も変えずに相変わらずつき合うもんだから、束さんの方が受け入れちゃったし」

 

ひとしきり笑うと、次はどんな面白いことしようかなと独り言を呟きつつ、こともなげに崖の方へ身を躍らせる束。

軽い風切音がしただけで、何かが水に落ちた様子もなく忽然と天災は姿を消した。

後には月を眺めている千冬だけが残された。

 

 

 

 

 

 

「ね、ねぇたけちー? 大丈夫? おりむーもお疲れみたいだけど、たけちーは……色素が薄い?」

「あ、あはは……気にしないで布仏さん。休めばたぶん大丈夫になるから」

 

暴走した獣は美女二人を美味しくいただいてそのまま眠ってしまい、朝食の時間ぎりぎりまで皆起きなかった。

白くべたつくなにかと赤い染みがついたシーツを洗濯機にかけて急いでシャワーを浴び

着替えて朝食を食べたら即撤収作業。少し動きがぎこちないシャルロットと鈴のフォローに猛は駈けずり回った。

 

バスに乗り込んでほっと一息ついているが、遠くに見えるシャルロットが

時折顔を赤らめて身をよじっているのを誰かにつっこまれないか少しヒヤヒヤする。

そこに見知らぬ女性がバスに乗り込んできた。金色の髪にブルーのカジュアルスーツ。

見事なプロポーションな彼女は周囲を見渡すと猛の前に立つ。

 

「あなたが塚本猛君?」

「はい、そうですがどちら様ですか」

「私はナターシャ・ファイルス。銀の福音のパイロットよ。あの子を止めてくれてありがとう、これはお礼ね」

 

頬に軽くキスをするとヒラヒラと手を振ってバスから降りていく。

アメリカンな人だなぁとぼんやり思っていると、いつの間にか隣に座っているシャルロット。

 

「あははー、何? 猛も歩くフラグメイカーになったの? 許せないなー、ホント許せないなー。

 ……鈴にも言いつけないといけないかなー」

「OK、シャル。落ち着こう、これは不可抗力なんだ。

 だ、だから、く、首を絞めるのは止めて……!」

 

ドス黒い紫オーラを纏って、あははと壊れた人形のように笑いながら

猛の首に手をまわして締め上げてカクカクと揺さぶっているシャルロット。

何があったのか知らないが、止めに入ってあの紫鬼の牙がこちらに向くと思うと

しり込みするのか、見ないふりをする一組メンバー。

学園に帰るまで、嫉妬の炎は消えなかった。




境ホラや終わクロみたいな、18禁にならないエロが書ければなぁ

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