IS<インフィニット・ストラトス> IS学園の異分子君   作:テクニクティクス

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第33話

午前中の競技が終わり、昼食の時間となった。

学園の中庭で芝生にシートを敷いている子も居れば、備え付けのベンチに腰かけている子も。

思い思いの方法で皆わいわいと楽しそうにしている。

弁当を持ったまま、うろうろとしつつどこで食べようかと考えていると

背中に何かが負ぶさってきた。

この先程まで感じていた重さと柔らかさは鈴だ。

 

「見つけたわよ、猛♪ 一緒にお昼食べましょ」

「それは別にいいけどいきなり飛びかかってこないでよ。驚くじゃん」

「そういう割にはびっくりした様子は見せないわよね」

 

鈴をおんぶしたまま指さす方へ歩いて行くと

レジャーシートを敷いて座っているいつものメンバーが。

 

「猛見つけてきたわよー」

「それはいいんだが、何故背中に負ぶさっているんだ」

「いいじゃない別に。結構大きくて安心するのよね猛の背中って」

「……僕もおんぶされてみたいなぁ」

「シ、シャルはちょっと勘弁してもらいたい」

「ねぇ、なーんであたしはよくてシャルロットはマズイのよ? ん?」

「り、鈴は体重軽いから」

 

藪蛇する前に、鈴を背中から降ろし猛もシートに座る。

箒、鈴、シャルロットに簪、そこに珍しく楯無の姿もあった。

 

「あれ、楯無さんも居るんだ? 珍しいですね」

「お姉ちゃんは私が誘ったの。だめだった……?」

「そっか、簪が呼んだのか。皆で楽しく食べる方がいいから俺は構わないよ」

 

にっこりと笑うが、待ちきれないと腹の虫が抗議の声をあげている。

気恥ずかしげに頭を掻くが、温かく微笑む箒たちとお弁当を広げる。

各々が工夫を凝らした弁当はどれも美味しそうに見える。

 

「ほら、猛。これ食べてみてよ、鶏肉とカシューナッツの甘辛炒め」

 

自分の弁当箱からおかずを箸でつまむと目の前に差し出してきた。

ここで恥ずかしがったりすると、逆にヒドイ目に遭いそうなので素直にあーんと口へ入れる。

唐辛子のピリリとした辛さと生姜、胡椒がよく効いていてご飯が進みそう。

ただ、甘酢より辛みの方が少し強いため目じりに涙が浮く。

 

「どう? あたしの自信作なんだけど」

「うん、美味しいよ。ただちょっと唐辛子の量が多いのか舌がひりひりする」

「えー、そうかしら。んぐんぐ……あたしには普通なんだけど」

「鈴は辛党だからね。でも美味しかった。ありがとう」

 

料理の出来を褒められてふにゃっと微笑む鈴と、ずずいっと猛の傍へ弁当を持って寄ってくる皆。

 

「鈴のばかり食べてないで、わ、私のから揚げも食べてみてくれ!」

「ぼ、僕のものも食べてほしいな」

「蓮根のきんぴら……食べてほしい」

「わ、分かったから順番にね」

 

とりあえず差し出されてきたものは一通り食べていく。

箒のは前と味付けを変えていて、柚子こしょうが絶妙に効いて美味しい。

シャルロットのキッシュは、おやつのパイとはまた違っていてひき肉や野菜の味が濃厚で良い。

簪のきんぴらはしゃきしゃきした触感も然ることながら、しっかりとした味付けが好みだ。

どれもそれぞれ美味しいのだが、そこへそっと差し出された五目おにぎり。

視線を向けると少し顔を赤くしつつ猛を見つめている楯無が。

 

「これ、貰ってもいいんですか」

「う、うん。感想聞かせてほしいかな」

 

受け取ったおにぎりをほおばると、鶏肉、ゴボウ、しいたけの旨味と軽く焼いてあるのか、醤油のいい香りがふんわりと漂う。

 

「うわ、これ凄く美味しいです」

「そ、そう? 作ってみた甲斐があったわ」

 

普段の胡散臭さがない笑みを浮かべた楯無とちょっとだけ良い雰囲気になりかけたせいで箒たちはもっと別のおかずも食べさせようとするが、流石にこれ以上は時間が無くなってしまう。

少し急ぎつつお弁当を平らげながらお昼休みは過ぎていく。

 

「とはいえ、皆からそれなりにおかず貰っていながら自分のお弁当も食べきっちゃうなんて男の子よね」

 

食べ盛りの男子高校生の喰いっぷりに皆微笑ましく思っていた。

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

午後の部最初の競技は『コスプレ生着替え走』だった。

あまりにヒドイ種目に一夏は絶句している。

 

「何なんですか、この競技!?」

「え、そのまんまの競技なんだけど」

「いいんですか!? そ、その倫理とか……いろいろと」

「ん? ん? もしかして一夏くん女の子の着替えで興奮しちゃうから?」

 

意地の悪い笑みを浮かべて広げた扇子で口元を隠す。その表面には色欲の二文字。

 

「一夏くんのえっち」

「違いますよ!」

「じゃあスケベ」

「同じじゃないですか!」

「はいはい、漫才はそのくらいにしてさっさと実況に戻ってよね」

 

黛のつっこみにあっさりと流れを断ち切り、競技の説明に移る楯無。

各チームの代表が用意した衣装を各々が抽選で引き当てて、着替えゾーンで着替える。

その際チームメイトに着替えを手伝ってもらうことになり、カーテンで隠されているとはいえライトアップされボディラインはくっきり映り込む仕様だ。

もちろん参加メンバーからは大ブーイングだが、今までの差を覆す得点にしぶしぶながら飲み込んだ。

そして今までで一番落ち込んでいる黒一点が、物凄い重圧オーラを醸し出して同じ男子として同情を禁じ得ない一夏。

 

「……何でこの競技にも俺が出なくちゃいけないんだ」

『だって一番美味しいんだもの。出さなきゃ損よ』

『ほ、骨は拾ってやるぞ……』

 

流石に可哀そう過ぎるので手伝いメンバーは外されているが、先ほどから箒たちや観客の目が光っている気がする。

涎を啜る音なんで聞こえない、ああそうだ気のせいなんだ……。

走者と補助メンバーの紹介があり、中には胸やお尻を強調する子もいて目のやり場に困っている一夏を楯無が冷やかしつつスタートラインに並び立つ皆。

ピストルの音が鳴り響いて十三人が一斉に駆けだす。

箱の中からクジを引いて用意された衣装に騒いだりやじが飛び交う中、専用ボックスを撹拌し続ける猛。

 

「ええい、ままよ! これだぁ!!」

 

ようやく選んだ紙を広げたが、ゴルゴンと視線でも合ってしまったかのように石化してしまう。

怪訝な表情を浮かべるが競技に負けるわけにはいかぬと、カーテン・サークルに走っていく女子たち。

悪戦苦闘の声が聞こえるなかようやく吹っ切れたようで猛も着替えゾーンに向かう。目じりから流れたのは心の汗だ。

だぼだぼのドレス姿の鈴に、いろいろ収まり切れず下着が見えているチャイナ服の箒がカーテンから飛び出していく。

 

しかし、一番遅く入ったはずの猛はすぐさま飛び出してきて一瞬の間が空いた後に黄色い大歓声が地を轟かせる。

 

『き、来たああぁぁぁあああ――! まさかこれを引いてくれるとは!!』

『ああ……強く生きろよ猛……』

 

彼の姿は密林の王者、闇の魂世界の持たざる者、自由人(フリーマン)なHERO。言ってしまえば腰ミノ一つだけの恰好だった。

 

「いくらなんでもこれはヒドくないですか、楯無さん!? 他のもロクでもないんでしょ!」

『いやいやそんなことないわよ? 異能持った仮面の騎士団総統とか心を盗む怪盗団のリーダー、太陽賛美の人とかも入れてたわ。

 でもまさかそれを引き当てるとは……猛くん持ってるわね』

 

本人はいたってそんな裸体を晒す趣味はないのだが身体ネタで弄られることが多くてほんのり悲しくなる。

黛のシャッターを切る音が今までにない速度で響いており、現像焼き増し代で新聞部はほっくほくになるだろう。

これなら地球が俺に輝けと言うようなハードでクールな素肌ジャケットの方がと黄昏るところに箒と鈴が傍に来た。

 

「その、あんまり落ち込まないようにな? わ、私は悪くないと思うぞ?」

「そ、そうそう! 今回の競技限りなんだから割り切っちゃえばいいのよ」

「ふ、二人ともありが……、う、うん、慰めてくれて嬉しいんだけどちょっと離れてほしい。

 一応防具は情けで付いてたけれど……マズいことになるから」

 

幼馴染みズの気遣いは嬉しくてもピッチピチでいろんな所がはみ出しているチャイナ服の箒に、ぶかぶかで胸の先端が見えてしまいそうなドレスを着ている鈴。間違いなく視線を少し動かすだけで、股間の紳士は臨戦形態になる。

ラブコメる三人の横を内心面白くないまま、ドイツの軍服に身を包んだシャルロットと着ぐるみねこパジャマを着た簪が抜けていく。

 

「っと、ぐずぐずしている場合ではないな!」

 

ゴールに向かう途中にはさまざまな障害物が設置されていて、とび箱や何やらと間違いなく下着が見えてしまうものが大量に。

派手に動けば間違いなくポロリが発生しそうな箒、セシリア、鈴は尻込みをしている間にも

そういった心配のないシャルロット、簪、そしてもうどうにでもな~れと達観してしまった猛が突き進む。

きりりと引き締まった雄の身体に見えそうで見えない腰ミノチラリズムに、きゃーきゃーと会場は沸き立つが彼の心は荒目のヤスリでごりごりと研磨されている。

衣装が乱れるのは諦めるとして三人も障害物に挑むが、手を放した途端に脱げそうになってまた黄色い声援があがる。

 

先頭の三人のうち誰が一位になるかという最中、最後尾のビキニアーマー姿のラウラがISを展開し一気にトップに上り詰めるが当然反則なので失格。

激高した彼女がカノン砲を呼び出すが山田先生が綺麗に砲を撃ち抜いて攻撃を阻止され、あっけなく撃墜して大きな衝撃と突風を巻き起こした。

 

「あいててて……。もうちょっと穏便に済ますことは無理だったのかなぁ」

 

急な風に煽られて地面に倒れ込んでしまった猛。

大きな怪我はしていないが上手く起き上がれない。

砂埃が舞う中、どうやら一緒に吹き飛ばされた誰かが上に乗っかっているらしい。

段々と視界が晴れていくと目の前には黒いズボンに包まれた大きくて肉づきのいいお尻があった。

まるくて、エロい、まさに尻神様のご神体に一瞬目を奪われるがぼーっとしていてまた楯無や新聞部のネタにされたくはない。

急いでシャルロットをどかそうとするが、その前に彼女の方が意識を取り戻したらしい。

 

「う、ううん……。いったい何が……? あぁ、ラウラが落ちた時の風圧で飛ばされちゃったのか」

「シ、シャル! ちょっと待って! 今身体を起こされたら――」

 

猛の上半身の方にシャルロットの下半身があり

彼女が上体を起こし始めればいったいどうなるのか。

慌てている猛の顔に向かって柔らかそうなお尻が近づいていって――豊満なヒップで顔全体を圧迫された。

すごく柔らかく何かいい匂いがするお尻に包まれるというある意味男の夢、幸せなシーンなのかもしれないがこんなことで窒息なんてことになったら目も当てられない。

必死になって手を振り、腿やお尻を叩いて気づいてもらおうと奮戦する。

 

「ん……、あれ、今僕……。ななな、何してるの猛っ!?」

 

初めは呆けてぽーっとしていたが、正気を取り戻したシャルロットはどんな状態なのかを気づいて顔を真っ赤にしながら猛の上からどいてくれた。

だが時はすでに遅かった。煙の晴れたグラウンドではラッキースケベの一部始終が公開されていた。

 

『おおーっと!! これは予期せぬハプニング! シャルロットちゃんったらその自慢のヒップで悩殺するつもりだったのね!』

 

テンションマックスの楯無に白い目が向けられる一方、観客は大きな熱気に包まれていた。

 

「シャルロットさん、またやってしまいましたねぇ」

「やはりフランス代表候補生」

「あざとさにかけては右に出るものはおりませんな」

 

 

 

「ううぅ……、好きでやってるわけじゃないのに」

「泣くな、シャル。俺だって毎回こういうイベントではイロモノ扱いだし」

「あっ、えへへ……うん、元気もらえた♪」

 

半分涙目になりつつあるシャルロットの頭をぽんぽんと優しく叩くと、あっさり笑顔になる。

そんな二人を見つつ、簪と本音はぽつりと呟く。

 

「やっぱりフランス代表はあざとい……。これはケジメ案件」

「たけちーも十分あざといよね~。ピロリロリンとか好感度上がる音しそう~」

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

その後つつがなく体育祭は終了したのだが、結果発表の時に目隠し、耳栓までされていったい誰が優勝したのか分からない猛。

部屋に入って初めて同居する人が分かった方がわくわくするじゃないと楯無に笑顔で無理に押し通られてしまった。

祭りの片付けをこなし、寮に戻って自室の前に立つ。大きい荷物は明日入れ替えることになっており、もう先に誰かは中に居るらしい。

ふぅと軽く息を吐くと、鍵を開けて入室する。

 

「あ、やっときた。遅いわよ猛」

 

そこには今しがたシャワーを浴びていたのか、肩にタオルを掛けて水を飲んでいた鈴音の姿があった。

いつもの特徴的な大きなリボンはほどかれていて、背中の真ん中ほどにまで降ろされた髪が普段の鈴とは印象が変わる。

 

「そっか、今回は鈴の勝ちだったんだ。……ってそれ俺のシャツじゃん」

「えへへー、パジャマ代わりに貸してもらったわよ」

 

小柄な鈴だと、猛のシャツなら身体は覆い隠せるし袖丈が余って腕まくりしないと手の先も出ない。

どことなくクラスメイトの本音っぽく見えるが、のほほんとは程遠い鈴である。だがそれがいいのだけれど。

猛もシャワーを浴び、部屋着に着替えて椅子に座ると対面に居る鈴がにこにことしながら口を開いた。

 

「なんか、猛と二人きりでずっと一緒に居るのって新鮮に感じるのよね」

「鈴は二組だし、中学の頃は家に遊びに行ったとしても弾か一夏が一緒だったからね」

 

昔は一夏に振り向いてもらうために、空回りすることもあったが一途に追いかけ続け猛はそのフォローなどもしていた。

そんな鈴が今はお互い想い合う仲になるとは、世の中どう動いていくかは分からないものだ。

 

「ふぁぁ……、今日はいっぱい身体動かしたから流石に疲れちゃった。早めに休みましょう」

「そうだね。って鈴、そこ俺のベッドなんだけど」

「んふふ~。一緒の部屋になったらやりたいことあったのよね。箒やシャルロットとは一緒に寝たんでしょ?」

 

目を細めて、艶めかしいポーズをとる鈴。

ぼすっと勢いよくベッドに飛び込んだせいで裾がめくり上げられ、すらっと引き締まった足と愛らしいおへそに水玉模様の下着が露わになる。

 

「……いかがわしい言い方するのは止めなさい、添い寝したと言え。それと流石に今日はそういうことはしないぞ」

「え、いやいや、ちょっとタンマタンマ! こ、この間のあ、あ、アレで十分満足しているから……しばらくはおあずけでもいいわ。で、でも傍に来て……添い寝はして?」

 

自分から誘うようなことをしておいて、いざ傍に来られるとあっさりヘタれた鈴。

掛布団を捲って中に入り照明の明るさを落とす。薄明りの寝室で隣に寝転ぶ鈴の姿にちょっと鼓動は速まる。

 

「……箒が小さい頃、離ればなれになる前には二人きりでいる機会が多く合ったのって本当?」

「んー、まぁ篠ノ之神社で一夏や千冬さんと一緒に剣術を学んでたからね」

「それだけじゃないんでしょ? 二人きりで天体観測みたいなのしてたの聞いたし」

「天体観測と言うほどちゃんとした望遠鏡とかなかったし、ただ夜空を見上げながら話してただけだよ」

 

シャルロットや箒と歓談している際、箒がぽろっと漏らしたことに鈴の胸奥がちくりと痛んだ。

猛の胸板におでこを押し付けて寄り添う。

 

「なんか同じ幼馴染でも、少し嫉妬しちゃう。あたしの思い出だと皆でバカやってたことしか覚えてないし」

「けれど、強く印象に残ってるし結構楽しかったよ。鈴と一緒に大騒ぎするの」

「ん……そっか。ありがと」

 

あどけなく微笑んだ鈴が背中に腕を回して抱きつき、自然に唇を重ねあわせる。

 

「ん、ふ……、あむ、ん……んぅ、ふぁ……っ」

 

密着させた身体を切なくくねらせ、愛らしいお尻が時折ぴくっと跳ねながらキスを続ける鈴。

彼女の身体からシャンプーのいい香りに混ざって甘酸っぱい匂いが立ち上り、心を優しく満たしていく。

 

「はぁ……、明日からはクラスも一緒だしデートとかもいっぱいして今までよりもっとたくさんいい思い出作るわ。……こ、これ以上キス続けると、お、収まりつかなくなっちゃうからお終い! お、お休み!」

 

唇を離して耳まで真っ赤にした鈴が布団で顔を隠すようにしながら反対側に身体を捻る。

しばらくすると、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえて本当に眠ってしまったようだ。

彼女の吐息をBGMにしながら、苦しくならないように鈴をそっと抱いて猛も微睡んでいった。

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