「うし。着いたぞ。」
「…………ここが、イザヨイの家?」
彼女が見上げた先には、イギリスの何処にでもあるような、普遍的かつ質素なマンションだった。
「どうした?急に黙って?」
「いえ、あの、もっと凄い豪邸とかに住んでるんじゃないかと思ってたので……………」
「ん?ああ。そりゃあそんだけの金はあるさ。」
「だったら_____」
「カムフラージュだ。俺は殺し屋だぞ?色んな奴から怨みを買うのは至極当然。だから、こんな何処にでもあるようなとこに居を構えるわけだ。」
「へぇー。」
「ほら、行くぞ。」
「あ、ちょっと!」
十六夜は背にかかる声を無視し、スタスタと階段を登っていく。
そして階段の頂上へと至ると、登った正面にあるドアに手をかけ鍵を開ける。
「ただいま。」
「お邪魔します。」
「いいか?絶対に俺より前に出るなよ。」
「どうして?」
アリスがそう聞いてきた刹那、ヒュンッ!
「!」
何かが飛来したような音がしたと思ったら十六夜が手を横に薙ぐ。
キィィン!という音が響く。
見ると、十六夜の手には軍人が使うようなサバイバルナイフが握られていた。
更にアリスは壁に何かが突き刺さっているのが見えた。よく見ればそれは、十六夜の持っているものと似通ったナイフだった。
「お帰りなさい。」
ふと、そこに幼い少女が立っていた。
黒く長い髪が特徴だ。
そして真っ黒のワンピースを着ている。
「ただいま、クロナ。で、だ。客がいるときくらいこの出迎え止めてくれねぇ?この前も、一人怪我させてるんだからな、お前。」
「悪気はない。けど、そうしろと言ったのはイザヨイ、あなたじゃない。」
「来客時までやれとは言ってない。お前、表に気配があるといつも窓から確認してるだろ?てか、さっき目が合ったよな?」
「…………ごめんなさい。ところで、また女ですか?」
「おい、またって何だ?俺が普段から女引っ掻けて遊んでるみたいな言い方すんなよ。」
「イザヨイが気付いてないだけ。」
「あの………………」
「ん?ああ、悪いなアリス。こいつはクロナ。俺の義妹だ。」
「初めまして。アリスさん…………でしたっけ?イザヨイの妻のクロナです。」
「え、えええええええええ!?」
「ちょっ、違う!違うって!誤解すんなアリス。お前も、誤解を招くようなこと言うんじゃねぇよ!クロナ!」
「冗談ですよ。」
「あぁ、ビックリした…………まさか、最強の殺し屋さんがロリコンなのかと____」
「黙りなさい小娘。」
「え?」
ピタッ。
アリスは何をされているのか、見えなかった。
クロナはアリスの喉元に先程と同じ型のナイフを突き立てていた。
「ひっ____」
「イザヨイを愚弄するなんて烏滸がましいのよ。あなたに、彼の何が解ると言うの!!!!」
今にも喉笛を掻き切る剣幕でアリスに迫る。
「クロナ。止めろ。」
「でもこの娘が!」
「止めろと言った。」
ゾクッ!
身の毛もよだつ殺気に、二人とも戦慄する。
「クロナ…………俺がお前にナイフを与えたのは……………そうやって他人を脅すためか?」
「……ち………がいます」
「お前が今やっているのは何だ?」
「……これは………その………」
「……………もう二度と、無闇矢鱈に、武器を出すな。俺がお前にそれを与えたのは、あくまでも自衛のため、護身のためだ。」
「ごめんなさい…………」
「………解ればもういいさ。すまなかったな。きつく言って。」
そう言って十六夜はクロナの頭を撫でる。
「さて、お前もすまなかったな。まあ、上がってくれ。」
「は、はい。」
アリスは震える足で踏み出した。
更新遅くなりました。見てる人には申し訳ないです。