Charlotte〜乙坂有宇と9人の女神〜   作:黒髪ワタル

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12月ぶんの投稿です。よろしくお願いしますm(_ _)m


第10話 真意

 

 

真「ん!」

 

西木野家へお邪魔した次の日の昼休み。僕はまた西木野のピアノを聴きに音楽室へやって来ていた。相変わらずの見事なピアノに耳を傾けながら乙坂家ビザソースサンドイッチ(体感的にはさっき自販機で買ってきたいちごオレより甘い)をむぐむぐやっていると、西木野は急にピアノを弾いていた手を止め、僕に何やら透明なCDケースを渡してきた。

 

 

有「…何だこれ?」

 

 

聞くと、西木野は呆れたような顔で言う。

 

 

真「昨日頼んできたでしょ!曲よ!曲!」

 

 

有「あ、ああ。そうか曲か。」

 

 

そう言えば元々CDを作り直して貰いに行ったんだった。僕はあわててそのケースを受け取る。

 

 

有「ありがとう。助かったよ。」

 

 

真「べ、別にもっかいやるくらい大した手間じゃないし…て、ていうか約束は守りなさいよ!?作る代わりにあの人達に曲作ったのは私ってことは言わない!」

 

 

有「はいはい…。」

 

 

真「何よその返事! バレたら許さないんだからね!?」

 

いや、バレバレなんだけどな…。もう相手するのもめんどくさいのでしぶしぶ頷く。

 

有「分かったよ。絶対にあいつらには言わない。」

 

 

誓いをたてると満足そうに頷く西木野。よほどバレたくないらしいな…。

まぁ僕はこいつの事をあいつらに言わないとしか約束してない。絶対言わないぜ!バレるかどうかはしらんけどな!などと汚い大人の思考をしていると、西木野が思い出したように聞いてきた。

 

 

真「そう言えば…アンタ昨日ママとなんか話した?」

 

 

有「なんかって?」

 

 

真「分からないけど…昨日アンタが帰ってからなんか妙に機嫌がいいのよね…。」

 

 

有「ふーん…。」

 

 

それは多分友達ができてないと思ってた娘が学校の同級生(実際は先輩)の僕を連れてきた(実際は勝手に訪ねただけ)と思ってるからだろうな…。僕自身もかなりもてなしてくれたしよっぽど娘が大事みたいだな。

そんな親心を知ってか知らずか、いや間違いなく知らないだろう西木野は、親子の情愛に微笑ましさと一抹の寂しさを感じている僕に、

 

 

真「…アンタまさか人の母親に手を出して無いでしょうね?」

 

 

とジト目で仰るのだった。

 

 

* * * *

 

 

有「えーっと…ハロハロ限定版ストラップ、と。これで全部かな。」

 

 

放課後。僕は高坂たちの練習を軽く覗いたあと秋葉原にくり出していた。目的は歩未に頼まれたハロハロの秋葉原限定グッズを買うためである。どうせ学校にいるんだし本人に貰えば良いんじゃないかと思わなくもないが、歩未に言わせるとそこはやっぱりファンのこだわりとして自分の金で手に入れたいらしい。と、言うわけで妹のためならタイムリープすらしてみせるがモットーのお兄ちゃんである所の僕は1人人生初の秋葉原巡りに出てきたのである。

練習を抜ける時に高坂が家がどうのまんじゅうがどうのと騒いでいたような気がするが…知らん!!!歩未のためなら同級生も仕事も平気で投げ出すお兄ちゃんだった。

 

 

有「ん?」

 

 

商品をもってレジに向かおうとしていたその時、見覚えのある顔のストラップを見つけて立ち止まる。見てみると先日歩未がテレビとともに熱弁していた大人気スクールアイドル、[A-RISE]のストラップが置かれていた。

 

 

有「スクールアイドルにグッズまであるのかよ…」

 

 

地元で人気のあるアイドルなんだし当然のことなのかもしれないが置かれている箱の中にあるストラップはラスト1個。物凄い人気だな…。

 

 

有「ふむ…どーするか。」

 

 

ストラップの前で一人呟く。どーするかとはもちろんこれを買うかどうかだ。別に歩未に頼まれている訳では無いが昨日あれだけ興奮していたんだ。持って帰れば喜ぶだろうことは目に見えている。……それに僕もちょっと興味あるし。

 

 

有「買っていくか。」

 

 

最近生徒会の手伝いで金も溜まってきている。友利もこっちの任務中も生活費は保障すると言っていたので問題はないだろう。僕は買うことが決定している数々のグッズにそれを加えるべく手を伸ばした―――

 

 

「「あ」」

 

 

―――というところで、お約束。誰かと同時に商品を掴んでしまったらしい。しかし、譲るわけにはいかない。こういう時は最初の印象がものを言う。歩未のために心を鬼にして睨みつけた目線の先には―――

 

 

メ「あ、あのぅ…こんにちは。」

 

 

―――戦意の欠片もない、どころか食べられる直前の子猫みたいな表情で目に涙を溜めた美少女、メガネっ子ちゃんが今にも倒れそうに立っていた。

 

 

* * *

 

 

メ「あの…ありがとうございました。ホントに良かったんですか?」

 

 

有「構わないよ。元々それを買うために来たわけじゃないし。」

 

 

10分後、先輩スキルを発動させてストラップを譲った僕は、途中まで帰りが一緒らしいメガネっ子ちゃんとともに秋葉原街道を歩いていた。きらびやかな街並みをいつもより気持ち遅めを意識しながらメガネっ子ちゃんの1歩先を歩く。ちょこちょことついてくる少女を横目で確認しながら僕は口を開いた。

 

有「アイドル、好きなんだ?」

 

花「は、はい…。」

 

緊張しているのか元からなのか、聞き取れるかどうかの声をだす少女。

まずは(多分睨みつけてしまったせいで)生まれた警戒を解いてもらわないと…。僕は笑顔をつくるとできるだけ気さくにみえるように話しかけた。

 

有「あ、えっと…そう言えば言ってなかったな。僕は乙坂有宇。音ノ木坂学院転校生で2年生。」

 

 

少女は目をぱちくりさせると慌てて自己紹介を返してきた。

 

 

花「え、えっと小泉花陽。1年生です。」

 

 

有「小泉、か。この前はありがとう。お陰で西木野に会えたよ。」

 

 

 

花「い、いえ。教えたのは凛ちゃんですし…。」

 

有「凛ちゃん?」

 

 

花「あ、星空凛ちゃん。あの時一緒にいたショートカットの女の子です。」

 

 

有「ああ…」

 

語尾猫ちゃんのことか。

 

有「星空に小泉ね。二人は仲いいの?」

 

 

花「はい!小さい頃からずっと一緒で…元気で明るくて自慢のお友達です!」

 

 

ぐっと拳を握って言う小泉に微笑ましさを感じて笑みをこぼす。見るからに活発そうな星空と話してるだけで周りをにこやかにする小泉。きっと二人はいいコンビなのだろう。

 

話しているうちに緊張も解けてきたのか、その後に口を開いたのは小泉だった。

 

花「乙坂先輩は、高坂先輩たちの…。」

 

有「ん?ああ…マネージャーみたいなものだよ。あいつらの基礎練の手伝いしたりダンス見て意見言ったり。」

 

実際はヤジを飛ばしているだけだが。

 

有「あ、それと先輩は付けなくていい。敬語も使わなくていいし。」

 

花「え?でも…。」

 

有「僕はちょっとした事情で2年生になってるけど歳は小泉と変わらないから。変に敬語使われるよりむしろ気が楽だ。」

 

小泉はそれでも迷っていたようだが、僕が「頼む」と言うとコクンと頷いた。

 

 

花「えっと…じゃあ乙坂くん、は高坂先輩たちμ'sのマネージャーって事なんだよね?」

 

有「ああ。」

 

花「それで…なんで二人して西木野さんを探してたの?」

 

有「ああ…西木野には作曲をお願いしてたんだ。」

 

花「作曲?」

 

有「ああ。高坂がスクールアイドルをやるって決めた次の日…まあその時は僕はまだ転校してきても無かったんだけど、アイツが西木野の歌に惚れ込んだらしくてさ。」

 

 

花「高坂先輩が…。」

 

有「けどあいつ「アイドルとか興味ありません!」って感じだったらしくて毎日勧誘してたってわけだ。僕が来た後も。」

 

考えてみるとあんな面倒なのに何日も付きまとわれてたのか。西木野もたいへんだったな…。

 

 

花「へえ…。」

 

 

有「それで君達とこの前会った日、ようやく作曲のOKが貰えたってわけだ。勧誘は残念ながらダメだったけどな。」

 

花「えっ!?入部してもらえなかったの!?」

 

有「?う、うん。」

 

 

花「そ、そっか…。」

 

それっきり黙り込んでしまう小泉。西木野がアイドル部に入部しなかった事がそんなに意外だったのだろうか?あいつは別にアイドル好きって訳じゃなさそうだしむしろそういう派手な方にばかり目がゆきがちなものは苦手そうに見えるんだけど…。

しばらく会話なしに歩いてると、下を向いていた小泉が顔を真剣なそれにして言った。

 

花「乙坂くん、西木野さんのこと…もう1度だけ説得してみてくれない、かな?」

 

有「へ?」

 

花「何となく、なんだけど…西木野さんホントは音楽が、アイドルがやりたいと思うんだ。」

 

有「そう…かな?いやまあどっちにしろ説得は高坂が続けるんだろうけど…。」

 

 

喋りながら考える。

 

西木野が実はアイドルをやりたがっている。と、いうのを僕が全く考えていなかった訳では無い。当たり前だ、あのツンデレの言葉をいちいちそのままの意味でとってたらキリがない。そもそも曲作りに協力をしてくれている時点で今はアイドル活動を悪くは思っていないはずだ。

 

それに―――

 

―――『あの子、家では全くピアノに触らなくなってしまったの…』―――

 

――それに、アイツが今自分でピアノを使って作曲しているこの状況を悪く思っているはずがない。元々今度隙をみて作曲だけでも続けてもらえるよう頼むつもりだったが…。

 

有「もしかして…西木野からなにか聞いてるの?」

 

花「う、ううん…。ホントに、何となくなんだけど…。」

 

 

有「そ、そうか…。」

 

それにしちゃ結構力強く断言してた気がするけど…。まあ気のせいなのだろう。またはアイドル好きの勘か。とりあえず納得することにして僕は会話を変えることにした。

 

有「ありがとう。今度もう1度誘ってみるよ。…ところで西木野のことで相談があるんだけど…。」

 

花「?」

 

キョトンと首を傾げる小泉に向かって僕は両手を合わせ頼んだ。

 

有「知ってるだろうけど…西木野のヤツ、まだクラスで話せる友達がいないみたいでさ。小泉、アイツの友達になってやってくれないか?」

 

花「友達…。」

 

有「うん。口は悪いけど根は悪いやつじゃないんだよ。多分。」

 

小泉はしばらく目を丸くしていたがやがてゆっくりと頷いた

 

花「分かり、ました。私も西木野さんともっとお話したいって思ってたし…。1度凛ちゃんと話しかけてみたんですけど上手くいかなくて…でも、もう1度、話してみる。」

 

 

有「そうか…。ありがとう。」

 

お礼を言いながらため息を吐くと、小泉がクスクス笑いながら言った。

 

花「随分優しいんだね。西木野さんに。」

 

 

有「―――!」

 

瞬間。息が詰まり、歩いていた足が止まってしまう。急に立ち止まった事で怪訝そうにこちらを見る小泉に僕はどうにか笑みを返しながら言った。

 

有「…別に。何となく、だよ。」

 

一瞬窺うようにこちらを見てきた小泉だったが、僕が笑顔を見せると不思議そうながらも頷いた。

 

花「?そっか。」

 

有「ああ。」

 

そう答える僕の声は、言ってて思わず笑ってしまうくらい、空々しい響きを滲ませていた。

 

* * *

 

有「…っと。ここが分かれ道、かな?」

 

花「うん。ストラップどうもありがとう。」

 

有「…いや。じゃ、西木野のこと、宜しくな。」

 

花「うん。じゃあまた学校で。」

 

そう言って小さく手を振りながら歩いて行く小泉を見送る。姿が見えなくなったところで軽くあげていた手を下ろすと溜めていた独り言がため息と共に吐き出された。

 

有「何となく、か…。」

 

有「…」

 

方向転換をして元来た道を歩き始める。どれだけ無心で歩き続けようとも、思考を止めることは出来なかった。脳裏に先ほどの小泉の言葉が蘇る。

 

 

―――『随分優しいんだね。西木野さんに』

 

 

有「…っ!!!」

 

 

瞬間、僕は駆け出した。目的もなく、前も見ずがむしゃらに走り続ける。

けれど、どこまで走ろうと、呼吸が乱れようと足が動かくなくなろうと、一度始めた思考を消すことは出来ない。頭の中から容赦ない糾弾の声が聞こえる。これは…あの時の声か。高坂たちを見た時、彼女達といる資格はないと僕を責めた、心の声――。

 

 

《 …何となく?違うな、割に合わない行動の理由を言葉で誤魔化していただけだ。》

 

 

有「…違う。」

 

気づくと僕は今まできたことのない橋の上に立っていた。手すりに手をかけ、荒い呼吸を整えながら反論するも声は止まらない。

 

《じゃあなんだ?親子の愛に感動したから?バカ言うな。そもそもいつものお前ならあの家に行こうともしなかったはずだ。》

 

有「…。」

 

《分かっているんだろう?そうして必死に消そうとしているのが何よりの証拠だ。》

 

 

有「…黙れ。」

 

 

僕は弱々しい声を搾り出してその続きを拒絶する。心の中の僕がにやりと獰猛に笑った、気がした。

 

 

《お前は西()()()()()()()()()()()()()()()()()。 そうしてあの学園で友利を救うことも、手を伸ばすことすら出来なかった罪悪感を塗りつぶそうとしているんだ。》

 

有「黙れ!」

 

指摘された瞬間、頭にカッと熱がのぼる。声が大きくなる、呼吸が荒くなるのを止められない。

 

《そうして自らの罪悪感を消し、自分は善良な人間だと思い込みさえする。全く大した偽善者っぷりだよ。》

 

有「黙れ!黙れ!!」

 

 

―――ダメだ。熱くなるな。冷静になれ。

 

《結局お前は何も変わっちゃいない。》

 

有「黙れ!黙れって言ってんだろ!」

 

―――やめろ。正気 を失えば、発動してしまう。

 

《所詮お前に変わることなんて無理だったんだよ。 》

 

有「やめろ!黙れ!」

 

―――自意識で止めることすら許されない、周りを巻き込む自滅能力。

 

《お前の頭の中は自分のことでいっぱい。あの頃のままだ。》

 

有「黙れ!黙れよ!!!」

 

―――崩壊の、能力が。

 

 

《やっぱりお前に高坂たちの傍にいる資格なんて ―――》

 

 

有「黙れぇぇええ!!!!!!」

 

 

ピキッ、という音が自らの足元から鳴るのと、

 

有「ぐはっ!?」

 

バキッ、という音ともに、まるで()()()()()()()()()()()()()()()かのように僕の身体が吹っ飛んだのはほぼ同時だった。

 

有「な、なんだ…?」

 

ぶつけた頭をさすりながら、顔を上げた僕の目線の先には、

 

友「ったく、なにをやってるんですか貴方は…。」

 

“誰か一人に対して姿を消すことが出来る”能力者であり、星ノ海学園の生徒会長、友利奈緒が呆れた顔で立っていた。

 




どうも、最近寒くてポケモン GOが出来なくなってきた黒髪ワタルです。今月もまたギリギリになってしまって申し訳ありません。ま、まあ来月こそできますよ!(恒例)。
さて、次回ですがお正月特別編をお届けしたいと思います。(元旦には投稿できないと思うけど)
それではここまで読んでくださった皆さまどうもありがとうございましたm(_ _)m
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