穂「…嫌です。私はこの学校を離れたくありません。」
意外にもしっかりとした丁寧な言葉遣い。しかしそこから出た言葉は僕達の要請─────つまり、あなたには能力が芽生えてしまっていて、このままでは研究者達から実験材料として捕まる可能性が高いので、この学校を転校し、その能力が消えるまでの青春時代を研究者達から隠れることが出来る自分たちの学校に来てほしい────という話だ。を、ハッキリと拒絶した。
その言葉を一番間近で聞いた友利の表情に驚きはない。ある程度予想していたのだろう。…当然だ。僕だって予想できていたようなことなのだから。
あんなに明るく友達と話していた少女。あんなに真剣にダンスに取り組んでいた少女。聞けば、この学校は今重大な危機に立たされていて、もしこの1年で生徒を集められなければ廃校してしまうらしい。なぜそれでダンスをしていたのかはよくわからないが、きっと彼女なりに考えて出した結論なのだろう。あの表情を見ればわかる。
そんな女の子が、親友を、学校を放って自分だけ他のところへ行けるはずがない。しかし、残念ながら僕らはそれを許すわけにはいかなかった。
友「あなたにも事情があることは理解しています。ですが、もしあなたが捕まってしまったらその結果被害を被るのはあなただけではありません。…例えば、妹さんがいらっしゃいますよね?」
少女がビクンと肩を震わせる。どうやら本当らしい。どうやって調べたんだ…。
友「姉妹、兄弟で片方が能力者の場合、もう片方にも能力が目覚める可能性は高い。研究者は間違いなくあなたの妹さんも捕らえるでしょう。」
自身の過去を思い出したのかそこで声は途切れてしまう。しかし友利は気丈にも少女から目をそらすことなく続けた。
友「……それでもあなたはここにいたいですか?」
先程より優しく、だからこそ辛い問いかけ。少女は一瞬だけ悔しそうに目を伏せた。
しかし上がってきた顔には固い決意の色が浮かんでいた。少女は友利の目を真っ直ぐ見つめながら言った。
穂「でも!それなら私がその能力を使わなければいいんでしょ!だいたい私にどんな能力があるの!?私はあなた達みたいな特殊な力はないよ!?」
段々と追い詰められていることに焦りを感じているのか、声を荒げ、叫ぶように言う少女。
……限界だな。僕は少女に一歩近づく。できれば彼女に自身の能力を伝えたくはなかった。ヘタに刺激を与えるのがマズイというのもあるが、見たくなかったのだ。彼女が悲しむ姿を。
あんなに明るく笑顔を振りまいていた少女の泣き顔を見たくなかった。自分があの子を泣かせてしまうのがたまらなく嫌だった。…だがこれ以上隠し続けても意味は無い。僕は腹に大きく息を吸い、彼女に最悪の真実を告げた。
有「…君の能力は、崩壊。特徴は君自身の意志とは関係なく君が絶望した時に周りの物をすべて破壊する。どのくらいの力かはわからないが…同じ能力を持っていた僕の妹は数人の生徒を巻き込んで校舎を半壊させたよ……。」
穂「そ、そんな…っ!」
僕の話を聞いた少女は唇を強く噛んで深く俯いた。キレイな色をした目に涙が貯まっていく。きっと大好きだから、わかってしまったんだろう。自分の能力がどういうものなのかを。もしかしたら大切な友人や、大好きな校舎を深く傷つけてしまうかもしれないということを。
友「…もう1度聞きます。それでもあなたはここにいたいですか?」
友利が再度問いかける。少女は俯いた姿勢のまま動かない。その姿は僕の心をまたどうしようもなく揺さぶるのだった。彼女もわかってはいるのだ。この状況がどうしようもないことを。彼女は迫り来る廃校の危機に何もできず、ただ僕達と安全と保身のために過ごすしかない。この状況でなぜ能力が発動しないのか不思議なくらいだ。彼女は深く俯いたままで表情が見えない。
…何も答えず地面の1点を見続ける彼女は一体何を考えているのだろう。
この状況にただ子供のように駄々をこねているのか、それとも────この状況になってもなお
有「……なぁ友利。」
────そう考えた時、
有「…僕の能力で彼女の能力を奪っちゃダメか?」
僕の口は勝手に動いていた…。
プロローグと第1話は別かなと思ったのでとりあえず今月分の話を上げておきます。切りどころに迷ったので短いですが読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m