Charlotte〜乙坂有宇と9人の女神〜   作:黒髪ワタル

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今月分の投稿ですm(_ _)m


第2話 転校

一瞬、周りが静まり返った。僕はもちろん、友利や穂乃果という少女、高城や黒羽も何も言わない。学園の部活動の掛け声すらずっと遠くで聞こえた気がした。……その静寂を破ったのは二人同時だった。

 

 

穂・友「「ダメだよ(です)」」

 

 

 

…正直驚いた。反対されたことがではない。元々僕の能力を知っていて、それでいてこの案を出さなかった友利は賛成するはずがないことくらいはわかっていた。その理由は知らんが。しかし、まさか本人にも反対されるとは…。思わずまじまじと見つめると、少女は恥ずかしそうに身をよじった。

 

 

 

穂「…い、いや、そりゃあ気持ちは嬉しいけど…でもあなたに迷惑かけちゃうし、それに……。」

 

 

 

そこで少女は黙ってしまった。が、言いたいことはなんとなくわかった。おおかた(そんな危険な能力を他人に背負わせてはいけない)とでも思っているんだろう。

全くこんな状況で人の心配ができんのかよ…。つくづく善人の考えは理解出来ない。が、そう悪いもんじゃないな、と思える自分がいた。

 

 

 

有「その心配はいらない。いやまあいらないというわけじゃないが…。…さっき話した妹の能力も僕が奪った。つまり僕にはすでに崩壊の能力が備わっているんだ。だから今更一つや二つ増えても大きな問題は無い。」

 

 

 

実際には能力を抑えるための条件が増えるが今わざわざ説明する必要はないだろう。絶望するほど打ち込んでる何かとかないし。歩未に何か起こったりしない限りは今までと変わらないはずだ。

 

 

 

穂「でも…」

 

 

 

なおも迷うような素振りをしながら何か言おうとする少女を僕は手で制し、ゆっくりと首を振った。

 

 

 

有「いいんだ。そもそも実際的なリスクがないというならそこから先は僕の気持ちの問題だ。君が何かを思ったり言う必要はない。その能力を必要とするなら別だけどな…。」

 

 

 

僕がそう言い切ると少女は不承不承といった顔で一歩下がった。それを横目に僕は友利に向き直って言う。

 

 

 

有「これを踏まえた上で聞くぞ?友利、この状況で僕の提案を却下とする理由はなんだ?」

 

 

 

我ながら中々いい提案だと思う。デメリットはほとんどないし、双方の要望を聞き入れている。だからなぜ友利が反対するのか僕にはよくわからなかった。

 

 

 

友「……っ」

 

 

 

友利は俯きしばらく固まっていたが、やがて珍しくボソボソといった形で話し始める。

 

 

 

友「……………らです」

 

 

 

 

有「あん?何だって?」

 

 

 

 

小さくてよく聞こえなかったので聞き返すと友利はキッと僕を睨み付けるように顔を上げると叫ぶように言った。

 

 

 

 

 

 

友「あまり能力を奪いすぎると、あなたの脳に深刻なダメージがいきかねないからです!!」

 

 

 

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

有「……………は?」

 

 

 

 

……思わずたっぷり数秒も惚けてしまった。……つまり、なんだ?

 

 

 

 

 

有「お前も僕の心配をしてくれてた…のか?」

 

 

 

 

友「うっさいバーカ!」

 

 

 

 

 

僕が思わず口に出してしまった言葉に友利はそれだけ言うと僕から思いっきり顔を背けてしまった。

 

 

 

…まずい。ダメだとわかってても顔がニヤけてしまう。まさかコイツが僕のことを心配する日が来るなんて…。僕は顔をできるだけ厳格に見えそうな形に戻してから言った。

 

 

 

有「そ、そうか。それはありがたいがそういうことなら返す言葉は同じだ。僕が良いと言っていることにお前が口を出す必要は──友「あの子とは事情が違います」──。」

 

 

 

少女をいなした時と同じように言いくるめようとした僕のセリフを友利は途中で遮った。僕の方に向きなおるとそのまま続ける。

 

 

 

友「同じ能力を持っているからもう一つ持ってもリスクが変わらない──それにも言いたいことはいくつかありますがまぁそれはいいでしょう。ですがこれは違います。私が言っているのは崩壊という能力自体のリスクではなく、あなたが能力を増やすことに対するリスクの話をしているんです。」

 

 

 

 

有「…何だって?能力を増やすことに対するリスク?そんなものがあるのか?」

 

 

 

 

友「当然でしょう。基本的に能力者は一人ひとつの能力を持っています。それに対し理由はわかりませんがあなたは二つの能力を持っている。そのうえ片方の能力で他人の能力を奪い続けているんです。…おそらく脳の負担はハンパないでしょう。いつか記憶力に深刻な問題が生じる…それどころか兄のように言葉も話せなくなってしまう可能性すらあります。」

 

 

 

 

静かにそう告げてくる友利に僕はなにか言い返さなくては、と考えていた。しかし記憶を、言葉を失うかもしれないという恐怖が僕から思考力を奪う。僕は忍び寄ってくる恐怖を振り払うように、そもそもなぜ僕がこんなに必死になっているんだろう?という単純な疑問すら考えられずただやけっぱちのように叫んだ。

 

 

 

 

 

有「……っ!そ、それでもだ!例えそうだったとしても僕が良いと言っていることにほかの誰にも口を出す権利はない!」

 

 

 

 

───そう言い切った時、今まで冷静に話していた友利が大きく表情を歪める。彼女はそのまま不機嫌さを隠そうともせずつかつかと音をたてて歩み寄り、その細腕のどこにという力で僕の胸ぐらをつかみあげて叫んだ。

 

 

 

 

 

友「ホントにそう思ってるんすか!?あなたに危険が及ぶことが誰にも関係はないと!?」

 

 

 

 

 

その目は今まで見たこともないほど真剣な光を帯びていて、僕は思わず目をそらしてしまった。そのまま途切れ途切れの声を出す。

 

 

 

有「そ、そうだ!お前達には関係ないことだろ!」

 

 

 

友「ふっざけんな!!!」

 

 

 

 

友利は胸ぐらをつかんだ手を強く引き、無理やり僕を自分の方に向かせる。彼女の綺麗な瞳は僕を射抜くように睨み続けていた。

 

 

 

 

 

 

友「もしあなたの記憶がなくなってしまったら!言葉を話せなくなったら!周りがどう思うか想像もできねえのかよ!?歩未ちゃんは!?歩未ちゃんは兄が死ぬかもしれないとわかっててそれを許すと思いますか!?だいたい、ここまで話を聞いた彼女があなたに能力を奪われることを許すとでも!?……っ!」

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に叩きつけるように僕に怒りをぶつけ続けていた友利の声が一瞬途切れ、胸ぐらをつかんでいた手の力が緩む。顔を上げると友利の顔からさっきまでの怒りの形相が消えていて、代わりに浮かんでいたのは子供のような半泣きの表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

友「あなたに何か起こった時、私達が、何も思わないと、本当に思うんですか……っ!?」

 

 

 

 

 

周りを見渡すと高城や黒羽も真剣な表情でじっと僕を見つめていた。

 

 

 

 

有「……分かったよ。僕の言い方が悪かった。」

 

 

 

僕は力なくそう言うしかなかった。つかまれていた腕が下ろされ、友利が離れる。同時に溜まっていた緊張が解け、一気に体に疲れが押し寄せて来る。

 

 

 

 

……正直さっき言ったことの半分は、本音、と言って問題ないようなものだった。僕にもなぜ自分がそこまでしているのかはわからない。なんとなく、としか言いようがない。しかし、ここで少女を見捨てると後で絶対後悔する、そんな気がしたのだ。

 

 

 

 

 

 

でも、僕にはもうこの状況を変えるだけの力を持ったカードはない──。友利の言っていることは理にかなっている、希望の状況でのメリット、デメリットを提示し、その上で自らの正当性を伝えてくる。もう僕には彼女を言いくるめることは不可能だった。

 

 

 

 

──その時、誰もが守っていた静寂を破ったのは、言い負かされた僕ではもちろんなく、改めて説得にかかろうとした友利でもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

穂「……あのっ!」

 

 

 

 

 

 

よく通るその声には緊張や恐れの色こそあれ、絶望は全く感じられなかった。

 

 

 

 

友「……なんです?この状況でまだ何かあるんすか?」

 

 

 

 

友利は驚きを隠せなかったのか、一瞬だけ目を丸くしたがすぐに無表情に戻るとそう言った。

少女は友利に気圧されたように一瞬だけ視線を地面に向けたが、すぐに顔をあげて言った。

 

 

 

 

 

穂「……あなた達の話はよくわかったよ。ごもっともだし、正しいと思う。でも!それでも私は諦めたくない!!絶対に絶望なんてしない!!この学校は廃校になんかさせない!!!だから……」

 

 

 

 

 

彼女はここで1度言葉を区切り、僕達一人ひとりの目を見つめた後、学園中に響き渡る大声で叫んだ。

 

 

 

 

 

穂「……だから私はここから離れるわけには行かないの!!!!」

 

 

 

 

 

一瞬、よりもはるかに長い時間。誰もが言葉を失った。先程まで完全に場を支配していた友利すら何も言わない。いや、言えなかった。…友利は完全に正しかった。誰もが理解できる理にかなった説明をし、場を支配した。おそらく、誰がどんな理屈を持ってきても彼女はたやすく論破しただろう。

だが少女は、すべての理を捨て、ただやりたいからと、自分がやるんだと感情のままに叫んだ。

 

 

 

 

有「くっ……くははは…。」

 

 

 

 

思わず笑いが漏れてしまう。まさかこんな簡単な方法があったとはな……。だが、この流れに乗らない手はない。僕はどうにか笑いを静めると友利に言った。

 

 

 

 

有「聞いてのとおりだ友利。どうやらこの子は向こうに行く気が全くないらしい。やはりここは僕が能力を奪うべきだろう。」

 

 

 

 

 

相手にまったく譲る気がないのならこちらから折れるしかない。そしてこの場合の折れ方はどう考えても僕が能力を奪うことだろう。

 

友利はしばらく黙って僕の顔を見つめていたが、やがて何かに当たるように長い溜息を吐くとヤケクソ気味にそう言った。

 

 

 

友「……はぁーーーっ!わかりましたよ!高坂さんがここに残ることを認めましょう!」

 

 

 

 

 

 

穂「ほ、ホントに!?あ、でも……」

 

 

 

 

 

少女はそう言って喜びから一転、困ったように僕の方をチラチラと見てくる。おそらくさっきの話を気にしているんだろう。

 

 

 

 

有「まぁそっちは気にするな。まさかいきなり記憶がなくなったりはしないだろ。何か異変が起きない限りは気にしなくていいはずだ」

 

 

 

 

とりあえずそう言ってみたものの少女は納得していないようだった。困惑気味に僕と友利の間で目を動かす。このままだと話が進みにそうにない。少女を言いくるめるためにさらに口を動かそうとした僕をまたしても友利が遮った。

 

 

 

 

友「待ってください。私は高坂さんがここに残るのを認めただけで、あなたが彼女の能力を奪っていいとは一言も言っていませんよ?」

 

 

 

 

 

 

有「……は?」

 

 

 

 

一瞬また惚けてしまった。何を言ってるんだコイツは?

 

 

 

 

 

 

 

有「つまり能力を残したままここに残すってことか?…正気か?」

 

 

 

 

 

 

友「はい。高坂さんは1年間限定でこの学園に通う事を認めます。もちろん監視は付けさせていただきますが。」

 

 

 

……監視だと?

 

 

 

有「…でもこの能力には監視なんかつけても意味無いんじゃないか?」

 

 

 

 

基本能力者が能力を使わないように見張るのが監視の役割であり、無意識に起こってしまう崩壊に監視をつけても意味がない。そもそも、崩壊の能力が発動した時点でよほどの場所でない限りジ・エンドだ。しかし、友利は全く臆することなくこう続けた。

 

 

 

 

友「いるじゃないですか。崩壊が起きてもそれを抑えこみ、それどころか周りの人々を避難させることまで出来る人物が。」

 

 

 

 

有「……?」

 

 

 

 

 

崩壊を抑えこみ、周りの避難までさせられる人物。…そんなやついただろうか?不思議に思って周りを見渡すと高城と黒羽、友利がじっとこちらを見つめていた。

 

 

 

 

 

有「……え?僕?」

 

 

 

 

思わず呟いてしまった言葉に友利が大きく頷く。

 

 

 

 

友「ええ。あなたなら崩壊を念能力で抑え、その間に浮遊能力で周辺の人々の避難を済ませることもできるでしょう?」

 

 

 

 

有「……いやいやいや。ちょっと待て」

 

 

 

 

僕は慌てて言葉を繋ぐ。頭の中では嫌な予感サイレンが大きく鳴り響いていた。

 

 

 

 

有「ここ、女子高だぞ?そのうえ僕にはお前のように1人にすら姿を隠すことができない。ただ監視するだけならともかく、崩壊の能力を止めるまで四六時中近くにいるというのはどう考えても無理だ。」

 

 

 

 

多分やろうとしたら監視すらできない。それどころか管理人に1発で見つかって敷地内に入ることすらできないだろう。本当にお巡りさんのお世話になってしまう。しかし、友利はそれすらもあらかじめ予想していたというように大きくうなずき話を続ける。

 

 

 

 

友「わかっています。だからあなたには堂々と彼女の横で監視をしてもらいます。」

 

 

 

 

有「……どういうことだ?」

 

 

 

 

そこまで丁寧に言われてもまだ分からない僕に、友利はいつもの意地の悪い綺麗な笑顔で告げた。

 

 

 

 

 

友「だーかーらぁー。彼女がうちの学院に来るんじゃなくて、あなたがこの学院に転校して1年間彼女の監視をしてください☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有「………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日何度目かの僕の間抜けな声は、あっという間に夕暮れの空に溶け込んでいった。

 

 

 

 




あとがきの前に二つほど謝らせてください……ラブライブファンの皆様!みんなの出番が少なすぎてごめんなさい!次回!次回こそはμ'sと有宇君とが本格的に絡む(予定)です!
……Charlotteファンの皆様!友利がデレすぎでごめんなさい!完全に作者の趣味です!!ホンマすんません!!
……とまあここまではCharlotteの方を割と強めで書かせていただきました。次話からはラブライブのアニメに沿っていく形になると思います。もしかしたら進み具合によっては五月中に投稿させていただくかもです()。それでは拙い文章ですが、読んでくださった方々ありがとうございましたm(_ _)m
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