Charlotte〜乙坂有宇と9人の女神〜   作:黒髪ワタル

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七月分の投稿ですm(_ _)m


第5話 予感

 

───────転校初日、放課後の学校案内。健全たる男子諸君なら、そこにはこれからの学校生活の希望と期待を感じさせるに十分すぎる天国を想像するだろう。

その学校がなぜか美少女揃いで、しかも自分以外全員女子の学園ともなればなおさらである。

 

 

 

そんな男子の妄想のすべてを具現化したような状況の中、僕は……

 

 

 

 

 

 

 

穂「ゆ〜う〜く〜ん!はやくはやく〜〜!!」

 

 

有「…ちくしょぉぉ!!」

 

 

……4人分の荷物を持ちながら学校中を連れ回されていた。

 

 

 

有「くそ…本当なら今頃は天国ハーレムを形成しているはずだったのに…」

 

三つの背中を追いかけながら思わず毒づく。彼女達に追いつくために少し歩くスピードを上げながら、僕はニ時間前のことを思い出していた。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

有「はぁ…」

 

 

二時間前、転校初日の自己紹介で盛大にやらかしてしまった僕は、当然誰からも声をかけられることもなく(目線だけで言えばやらかす前より強い気がする。痛いけど)放課後に突入し、教室に座ったまま大きくため息をついていた。当然、僕の周りには生徒は1人も立っていない。それどころか半径2メートル以内には誰も入ってこなかった。すわ新しい能力でも目覚めたかと思ったほどだ。

 

 

 

いつまでもむやみに傷つく必要も無いか……。僕はカバンに貰ったばかりの教科書をつめると立ち上がった。

 

 

 

有「…帰ろう。」

 

 

?「えっ!もう帰っちゃうの??」

 

 

有「!?」

 

 

 

独り言に返事があった。

 

 

 

驚いて声のした方に振り向くと、そこには僕の天国ハーレムをぶっ壊した張本人、高坂穂乃果が立っていた。

 

 

穂「せっかく転校してきたんだから校舎見ていけばいいのに…。あ!そうだ!ちょうどいいから穂乃果達が学校案内してあげる!」

 

 

有「は?いや、僕は…。」

 

穂「いいからいいから!海未ちゃん!ことりちゃん!行こ!」

 

 

高坂はそう言うと僕の腕をつかんでぐいぐい引っ張り始めた。隣にはいつの間にか昨日会った2人も来ている。

 

穂「それじゃあ練習場所探しにしゅっぱーつ!」

 

 

有「は?いや、練習場所探しってどういう……いや、その前に腕を離せ!痛いから!かなり無理な方向に引っぱってるからそれ!いや、ちょ、だから……人の話を聞けぇーー!!?」

 

 

 

 

僕の叫びは無慈悲にも午後の空に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

有「や、やっと追いついた……。」

 

 

荷物を背負ったり持ったり首にかけたりしながら歩いてなんとか追いつくと3人はなにやら空き教室の前で何かを話している。それを遠巻きに眺めながらぜぇぜぇやってると、少女の中の1人が僕に気づいてとてとてと寄ってきた。

 

 

?「大丈夫ですか?申し訳ありません。今日は少し多めに教科書を持っていたものでして…。」

 

 

有「あ、じゃあこれが君のなんだ。」

 

 

僕は四つのカバンのなかでも最も重量のあるそれを持つ右手を掲げる。確かに中々の重量だ。

 

 

僕「でもこんなに重いものを持てるなんてすごいね。なにか部活でもやってるのかな。ええと……」

 

なんと呼ぶべきか悩んでいると、少女はそう言えば自己紹介がまだでしたね、と言うと改めて僕に向き直って言った。

 

 

海「はじめまして。園田海未と申します。お察しの通り弓道部に所属しております。」

 

 

そして深々と頭を下げてくる。その美しいとまで言える丁寧なお辞儀に思わず僕も頭を下げそうになりながら言った。

 

 

有「へぇ、弓道部なんだ。よろしく。えっと…園田……さん、かな。」

 

 

海「言いにくいようでしたら呼び捨てでも特に構いませんよ。」

 

 

有「じゃあ……海未?」

 

 

 

ふざけてそう言うと、園田さんは「んなっ…!」と言うとさっきのお辞儀より更に深く顔を俯かせた。髪の間から見えている耳や顔は面白いほど真っ赤だ。

 

 

 

海「そ、それはちょっと恥ずかしいので…できればほかの呼び方で……」

 

顔を真っ赤にしたまま言ってくる園田さん。

 

 

有「いいじゃないか別に。綺麗な名前なんだし。」

 

 

実際、透き通るような白い肌とその凛々しいまでの立ち姿に海未という名前はとても似合っていた。

 

 

海未「き、綺麗だなんて……。」

 

 

園田さんは益々顔を俯かせるとそれきり黙ってしまった。よほど恥ずかしいのか、少し涙目になっている。

 

 

 

 

……ヤバイ、Sに目覚めそう。

 

 

 

 

 

 

 

?「こ〜ら。」

 

 

 

コツン、と。

 

 

さらに園田さんを虐め…もといもっとお話をしようと僕が口を開こうとしたところで甘い声と共に小さな握りこぶしが僕の頭に当てられた。

 

 

声の主の方に振り向くと、そこには腰に手を当て、ぷんすかといった表現がよく当てはまるような少女が立っていた。

 

 

こ「海未ちゃんはすっごい純情さんなんだから、あんまりいじめちゃダ〜メ!」

 

 

そう言って手でバッテンを作る。その仕草はとても可愛らしく、女の子らしい、という第一印象がさらに加算される。

少女はバッテンの作った手の片方をそのまま僕の前に出して言った。

 

 

こ「私の名前は南ことり。よろしくね、乙坂君♪」

 

 

有「こちらこそよろしく。南さん。」

 

 

その手を握りながら答える。

 

 

こ「私も呼び捨てで構わないよ?なんなら名前呼びでも♪」

 

有「いや、同学年とはいえみんなは一応年上だからね。そういうわけにもいかないよ。」

 

 

南さんのありがたい申し出を断る。正直さん付けはなれていないので嫌なのだが、一つ下の男子に呼び捨てにされると怖がってしまう子が出てしまうかもしれないしな。ちなみにその時「なぜ私にはその気づかいがなかったのでしょう……?」とか聞こえてきた気がするがスルー。

 

 

こ「まぁ、でも私たちなら大丈夫だよ☆それにしてもすごいよねー。私飛び級なんて初めて見たよ〜」

 

 

海「そうですね。私もそれなりに勉強はしていますが、一つ上の学年にいくなんて考えもつきません。」

 

 

有「あーいや……」

 

 

手放しに褒められ思わず言い淀む。確かに僕の前の学校の成績は良かったが、それは能力によるカンニングによるものだし、そもそも今回の飛び級は高坂の監視のためだ。

 

 

穂「ホントだよね!穂乃果は成績があんまり良くないから羨ましいよ!」

 

 

いやなんでお前まで事情を知らないんだよ。

 

 

 

いきなり話に入ってきた高坂に思わずツッコミそうになり慌ててこらえる。きっと今のは2人に監視のことがバレないようにするための高坂の演技なのだろう。案外色々考えるやつだ。

 

 

穂「ねぇねぇ〜勉強しなくてもテストで点を取る方法ってないの〜?」

 

 

有「……。」

 

 

あかん、これ素や。

 

 

色々考えてしまった自分がアホらしくなった僕は話を変えることにした。

 

 

有「…じゃあお言葉に甘えて呼び捨てで呼ばせてもらうよ。よろしくな、高坂、園田、南。……ところで今は何をしてる途中なんだ?」

 

 

高「え?だから練習場所探しだよ?」

 

 

僕は最初学校案内してあげるって言われて(無理やり)連れ出されたんだけどな…。

キョトンとしたように可愛く首を傾げる高坂に思わずツッコミたくなったが話が進まなそうなのでやめておいた。

 

 

有「…その練習場所探しってのがどういうことかって話だよ。お前ら何の練習するつもりなんだ?」

 

 

僕がずっと聞きたかった疑問を口にすると、園田は「まだ言ってなかったんですか!?」と高坂に詰め寄り、南は「あ、あはは〜」と苦笑いをする。

 

2人に目線を向けられた高坂は「あ、そう言えばまだ言ってなかったかも……?」と言うと力なく笑った。3人はそのまま何か話しているようだったが、しばらく待つと高坂が僕の前に出てきて言った。

 

 

 

穂「じゃあ改めて言っとこっか!ゆうくん、私達ね!スクールアイドルを始めようかと思ってるの!」

 

 

 

全力で、「驚いた?驚いたでしょ??」という顔をしてくる高坂に僕はたった一言────

 

 

 

有「……すくーるあいどる?」

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

有「…廃校を阻止するために学校の代表としてアイドルを、ね……。」

 

 

穂「うん!私達がうーーーーんと頑張って、この学校のこともっともっと知ってもらえば、きっと音ノ木坂に来たい!って思ってくれる人はたくさんいると思うんだ!確かに色々難しいこともあるだろうけど……やってみなくちゃわからないしね!」

 

 

時間は流れ、夕方、僕と高坂は校門前で部活の持ち物を取りに行った園田と生き物のエサやりがあるという南を待っていた。

あの後、僕は結局練習場所探しに付き合い学校中を歩き回り、その結果練習場所は屋上に決まった。どうやら彼女らはそこでアイドルを目指して練習するらしい。その活動を通して学校のアピールし、廃校を阻止しようとしているらしいが……。

 

 

 

有「…まだグループの名前も決まってないとはな……。」

 

 

僕の呟いた言葉に高坂がビクッ、と体を震わせた。

 

 

穂「いいじゃん!大切なのは中身だよ!」

 

 

有「…その中身、まだ曲もないらしいな。」

 

 

穂「ヴッ!」

 

 

さらに追い打ちをかけると高坂は何かに刺されたように身をよじる。

 

 

穂「な、中々痛いところをついてくるね、ゆうくん……。」

 

 

 

 

弱点が多すぎるんだよ。

 

とは、さすがに言わなかった。

 

 

有「…なぁ……そもそもなんで廃校を食い止めようと思ったんだ?」

 

 

────代わりに、初めてあった時からずっと聞きたかった疑問を口にする。高坂は少しだけ目を開くと、校門についている【音ノ木坂学院 】と書かれたプレートに手を添えながら話し始めた。

 

 

 

穂「私ね、お母さんもおばあちゃんもこの学校に通ってたんだ。」

 

 

 

すっかり夕日に包まれた校舎を見あげ、続ける。

 

 

 

 

穂「だからかな、私ここにいるとなんだか家にいるみたいで…すごく、心があったかくなって、安心して……」

 

 

 

 

 

 

彼女はプレートに触れていた手を離し僕の方に向き直ると───

 

 

 

 

 

 

穂「…だから私、この学校が、ここの人たちが大好きなんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

───────そう言って、笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

その儚げな笑顔に、僕は何も言えず固まってしまう。これまで見たことのないような高坂の綺麗な笑顔を僕はただ黙って見ることしかできなかった。

時間が止まったんじゃないかという錯覚するほどの静寂が流れる。心臓のいつもより少し速い音だけが聞こえていた。

 

 

 

 

 

穂「…あっ!海未ちゃーん!ことりちゃーん!」

 

 

 

 

 

 

───どのくらいそうしていただろうか。高坂の声にハッと顔を向けると用事を済ませたらしい園田と南がこちらに向かって歩いてきていた。2人に手を振りながら走り寄っていく高坂の背中を目で追う。僕はホッとして…少しだけ残念に思いながらそちらに歩き出した。

 

 

 

穂「あっ!そうだゆうくん!」

 

 

少し進んだところで高坂が僕の方に振り向いてきた。そのまま走ってきた道を戻ってくる。みれば、園田と南も僕のもとへ向かってきていた。

 

 

有「なんだ?」

 

 

穂「え、えーっと……」

 

 

とりあえず一番最初に来た高坂に訪ねてみると、彼女は珍しく少し言い淀む素振りを見せる。結局質問に答えてくれたのはあとから来た園田だった。

 

 

 

海「実は、乙坂君に私たちのアイドル活動のお手伝いを頼みたいんです。」

 

 

 

有「お手伝い?」

 

 

 

こ「うん、私たちだけだと衣装とか歌とかどうしても女の子よりになっちゃいそうだから…。男の子の意見もあるといいねってみんなで話してたんだ♪」

 

 

 

穂「あとはライブの準備とかにちょっとだけ手伝ってもらったりとか…ダメかな?」

 

 

 

有「……。」

 

 

少しだけ目を伏せ、僕の顔を見上げるようにして頼んでくる3人を見ながら考える。昨日までの僕なら間違いなく断っていただろう。たとえ任務上それを断るわけにはいかないとわかっていても、渋っていたであろう事は間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

でも、僕は高坂の決意を聞いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

あの笑顔を見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

この子達の成長をそばで見守っていたいと…そう願ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有「…あぁ、いいよ。」

 

 

 

 

その言葉は驚くほど自然に出てきていた。

 

 

 

穂「ホントに!!?良かったぁ〜。断られたらどうしようかと思ったよー。」

 

 

ふぅ〜と長いため息を吐き、全身の力を抜く高坂。他の2人もさすがにそこまであからさまな事はしないものの、表情はどこか嬉しそうだ。

 

穂「あーあ。安心したらお腹空いてきちゃった!みんな!帰りになんかお菓子買ってこうよ!」

 

 

そう言って歩き出す高坂に、園田が「ダイエットはどうしたのですか?」と言いながら付いていく。南も高坂の横でニコニコ笑いながら歩いていた。

 

 

 

 

 

…相変わらず仲のよろしいことで。

 

 

 

 

 

 

それを眺めながら追いかけようとした僕に、唐突に一つの思考が浮かんできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────僕なんかがあの3人の中に入る資格などあるのだろうか?

 

 

 

突然浮かんできた思考に僕は思わず歩きだそうとした足を止めてしまう。いや、それは心の声かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

ずっと人を騙していたお前に人を助けることなどできるのかと。

 

 

 

 

 

 

 

自己中心的に生きてきた僕に、いまさら彼女達の隣に立つ資格などあるのかと。

 

 

 

 

 

責めるようなその声に何も言い返すことが出来ない。

 

 

 

 

……そうだ、僕は元々自分のことしか考えられない人間だ。目的のためなら平気で人を犠牲にし、蹴落としてきた人間だ。

 

 

 

 

……そんな僕に学校のために頑張る彼女達の手助けなんて─────

 

 

 

 

 

穂「おーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

────顔を上げると、高坂が不思議そうに僕に手を振っていた。

 

 

 

 

 

穂「どうしたのー?はやくおいでよー!」

 

 

 

 

 

 

─────相変わらず、間の抜けたような、悩んでいることが馬鹿らしくなるようなその声。

 

 

 

 

 

 

 

気づくと僕は笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

《 行くのか?》

 

 

 

 

 

有「ああ。」

 

 

今度こそしっかり聞こえてきたその声にノータイムで返事を返す。

 

 

 

《 どうして。邪魔になるかもしれないのに?彼女達の迷惑になるかもしれないと思わないのか? 》

 

 

 

 

有「ああ。だって…」

 

 

 

 

 

それでもしつこく責めてくる声に僕はニヤリと笑いながら言ってやった。

 

 

 

 

 

有「()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂「おーい!はーやーくー!」

 

 

有「…あぁ!今行く!」

 

 

そしてもう一つのしつこい声、高坂の方に僕は駆け出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

────もしかしたら僕も、こいつらに会って少しずつ変わっていってるのかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな思考は、暖かく体の中を吹き抜ける風と共に、空高く飛び上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




そんなこんなで第5話 予感でした。いやあ全然話が進まない!あと数話でどうにかしてファーストライブまではもってきたいと思ってるんですがどうなることやら……。

それでは、拙い文章ですが読んでくださった方々ありがとうございましたm(_ _)m
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