Charlotte〜乙坂有宇と9人の女神〜   作:黒髪ワタル

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8月分の投稿となりますm(_ _)m


第6話 朝練

 

 

 

有「……眠い。」

 

 

 

いつもより1時間以上早く起きる。元々学校が少し遠くなったせいで早起きなのに、さらにそれより早い時間に起きたので、頭はいつもの数倍ボーッとしていた。

 

 

「なんで僕が朝練なんか…。」

 

 

 

思わず毒づきながら顔を洗って眠気を払う。昨日、僕はあの後高坂たちと他愛もない話をしながら帰った。その分かれ道の直前、南に頼まれたのだ。自分達は明日の朝、神田明神で朝練をするから、できたら見に来てくれないか、と。

 

色々あってその時のテンションが異常だった僕はあまり深く考えずにOKサインを出したが、実際に起きてみると全てを投げ出して布団に帰りたくなるくらいは苦痛だった。高坂の笑顔?決意?何ソレオイシイノ?

後ろ向きになりがちな思考を変えるため、歩未の顔を見に行く。

 

 

 

さすがの歩未もまだ寝ていた。起こすのは悪いのでそっと扉を閉めようと思ったのだが、ちょうどそのタイミングで歩未は目を覚ましたようだった。

 

 

歩「…あれ?有宇お兄ちゃん今日はずいぶん早起きなのです?」

 

 

時計を見ながらそう言ってくる歩未。

 

 

 

有「ああ。実は今日から部活の朝練なんだ。」

 

 

練習するのは僕じゃないけどな。

 

 

 

歩「ええっ!?それは大変!すぐに朝ごはんの準備をするのですー!」

 

 

そう言って飛び起きようとする歩未を手で制しながら続ける。

 

 

 

有「いや、言ってなかった僕が悪い。今朝は何か適当に買って食べるよ。」

 

 

 

歩未はしばらく考え込むと、

 

 

歩「……有宇お兄ちゃんはいつごろお出かけするのですか?」

 

 

と聞いてきた。

 

 

有「んー、あと30分ちょいくらいか?」

 

僕が答えると歩未はパッと表情を明るくさせ、

 

 

歩「なら、大丈夫ですー!あゆは有宇お兄ちゃんと朝ごはんを食べたいのでござる〜!」

 

 

 

 

と、言ってきた。そうまで言われては是非もない。僕ははね起きてわちゃわちゃと布団をたたみ始める歩未に「ありがとう。」と声をかけながら扉を閉めた。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

有・歩「「いただきます。」」

 

 

歩未を起こしてから10分後、僕らは2人で食事の席に着く。献立はトースト2枚と目玉焼き、それにヨーグルトと牛乳だった。あの短時間で身支度を軽く済ませた後これを2人分用意するとは全くもってできた妹である────────

 

 

有「…甘い……。」

 

 

 

 

───────甘すぎるピザソースがこれでもかというほどトーストに塗ってなければ。

 

一口目から口いっぱいに広がる飽きるほどの甘さに思わず感想を口に出してしまう。不思議そうにこちらを見てくる歩未の視線を誤魔化すようにムシャムシャと残りのトーストを口に放り込んだ。

 

……確かにタイムリープ前に僕はこのピザソースには大切な思い出が詰まっているということに気づかせてもらえたが、この砂糖直接いれてるんじゃないかというような甘みだけはどうしようもなかった。

 

 

どうにかして歩未にコイツを使う頻度だけでも減らさせないとなあ。こうなったら僕が料理を作ろうかなあ。でも歩未は多分ピザソースが食卓に出なくなったら寂しがるだろうしそもそもやらせてくれないんだろうなあとか考えていると、歩未から声をかけられた。

 

 

 

歩「そう言えば有宇お兄ちゃん。何の部活動に入部したのですか?」

 

 

僕はこれまたピザソースがたっぷりと練り込まれているヨーグルトを口に含みながら答える。万能調味料すぎるだろ……。

 

 

有「あぁ……部活っていうかマネージャーみたいなものだよ。……スクールアイドルって知ってるか?」

 

 

 

僕が聞くと歩未はキラキラという音が聞こえそうなほど顔を輝かせると、

 

 

歩「もちろんでござるー!!」

 

 

と叫んだ。

 

 

 

 

……面倒なことになりそうな予感。僕の予想違わず歩未は興奮冷めやらぬと言った表情で、テレビをつけて話し始めた。

 

 

歩「スクールアイドルは今や新しい一つのジャンルとして確立された大人気のアイドルなのでござるー!!」

 

 

 

録画していたのだろうか、歩未がつけたテレビには「大人気!スクールアイドル特集!」というタイトルのニュースが流れていた。

 

歩「日本各地で次々と生まれ、自らで作った歌を歌う彼女達の勢いは今や既存のアイドル達に勝るとも劣らないものとなっているのですー!」

 

 

有「へぇ…自分達で歌を作っているのか。」

 

 

 

僕が呟いた独り言に、歩未は「もちろんなのです!」と食いつく。

 

 

 

歩「曲だけでなく、歌詞、振り付けまで全て自分達で考えだされそれぞれに大きな個性を持っていることもスクールアイドルの魅力の一つなのでござる!」

 

 

歩「…そしてそのスクールアイドルの頂点に立つ存在が────」

 

 

ここでずっと僕の顔を見て語っていた歩未がテレビの方に視線を向ける。僕もつられてそちらを見た。

 

 

歩「秋葉原UTX学園所属、優木あんじゅ、統堂英玲奈、綺羅ツバサの三人組ユニット系アイドル、A-RISEなのですーー!!!」

 

 

ニュースには「大人気!A-RISEの秘密に迫る」といった見出しで、画面はステージに三人で立って踊っている少女達とその周りでものすごい盛り上がりを見せる観客達を映していた。

 

 

盛り上がる観客達、そしてなにより中央で踊る少女達のオーラに圧倒されている間にも歩未の語りは続く。

 

 

歩「甘いボイスと素晴らしいプロポーションで観客の目を虜にする優木あんじゅ。凛々しい声とキレのあるダンスで女性からの人気も高い統堂英玲奈。そして、それら2人をも圧倒するほどの存在感を放つリーダーの綺羅ツバサ。今のスクールアイドルの爆発的人気はこの3人によって生まれたと言っても全く過言ではないのでござるーー!」

 

 

 

──────ニュースキャスターの話すスクールアイドルについての概要、それどころかいつの間にかなくなっていた朝食さえも僕には遠い出来事のように感じられた。歩未の興奮気味の声が遠ざかっていくのを感じながら、僕は画面で流れ続けるライブの映像を眺め続けた。

 

 

 

* * *

 

 

 

穂「も、もうダメ…死ぬ……。」

 

 

 

こ「もう足が動かないぃ…。」

 

 

 

有「な、なんだこれは……?」

 

 

 

1時間後、A-RISEのライブ映像に魅入ってしまい集合時間より少し遅れてしまった僕が見たのは、神社の前で礼儀も何もなくへたり込む2人の女子高生だった。

 

 

有「朝からここまでキツイものやんのかよ……。」

 

 

海「いえ、そこまで厳しい物でもないはずなのですが…。」

 

 

声がした方を向くと、ひとり涼しい顔でストレッチをしている園田がいた。

 

 

海「毎日2回、ここを5往復しているだけですし。」

 

 

神社の前の階段を見ながら言う園田。そこにはなかなかの長さとかなりの角度を誇る階段がまっすぐ伸びていた。

 

 

有「へ、へぇ〜。5往復…ね。」

 

 

……弓道部パネェ。そりゃ何もしてなかった女の子がいきなりこの長い階段を5往復しだしたらそうなるわ。

 

…どうやらここを歩いて登ってきただけで少し息があがってしまったことは言わない方が良さそうだ、と思いながら話を進める。

 

 

有「でも、スクールアイドルに体力なんて必要あるのか?」

 

 

僕が質問すると園田は「もちろんです!」と食い気味に言ってきた。

 

 

海「そもそも、何曲も連続で踊りながら歌っているのです。体力が必要ないはずがありません。しかも、アイドルはそれを全て笑いながらこなしている。そう考えるとかなりの、それこそ運動部並の体力が必要と言っても過言ではないでしょう。」

 

 

有「へぇ……。」

 

 

そりゃそうか。A-RISEが全員歌い終わった後も涼しい顔していたから気づかなかったが、普通の女子高生ならあのキレのあるダンスを踊っただけで息があがってしまうだろう。

 

 

海「そんなわけでトレーニングにちょうどいい階段があるこの神社で朝練をしているのです。ほら2人とも!そろそろダンスの練習を始めますよ!」

 

 

園田が呼びかけると南は「ふぇえーん…。」と言って立ち上がる。高坂も「海未ちゃんの鬼〜!」と言いながら体を起こした。

 

 

海「あまり休んでると学校に遅れてしまいます。はい!まずは軽くでいいのでもう1度ストレッチ!」

 

2人がしぶしぶ(というか疲労困憊)といった体ながらもしっかりと体を伸ばし、その後3人で踊り始めるのを僕は遠巻きに眺めていた。

 

 

へぇ…案外ちゃんとやってるんだな。

 

 

 

?「フムフム、なかなか眼福な光景やなぁ。」

 

 

 

有「!?」

 

 

──────思考が先読みされた─────じゃなく、僕では考えもつかないようなことを平然と言ってのけた主に目を向けると、そこには巫女服を着てホウキを持った綺麗なお姉さんが立っていた。

 

 

有「あれ?ていうか…。」

 

 

その顔に見覚えがあった。確か昨日理事長室で生徒会長を止めてた…

 

 

希「お。覚えててくれてたん?そう、ウチは東条希。音ノ木坂学院の副会長や。」

 

 

そう言って見せた笑顔は、昨日思わず見とれてしまったそれに間違いなかった。

 

 

 

有「…おはようございます。東条先輩。えっと、僕は…」

 

 

希「乙坂有宇くん、やろ?聞いてるよ。2年2組に転校してきた、ウチの学院初の男子生徒。」

 

 

僕のプロフィールをペラペラと話す副会長。まぁそりゃ知ってるよな。昨日話してたし。

 

 

 

希「なんやエリチは色々と警戒しとるみたいやけど…ウチは歓迎するで。ようこそ、音ノ木坂学院へ。」

 

 

そう言って出された右手をぎこちなく握り返す。エリチ、というのは昨日も言ってた生徒会長の名前なのだろう。

親しいのだろうか。そんなことを考えながら言葉を繋げる。

 

 

有「東条先輩はここで何を?」

 

 

希「アルバイト。ここで毎朝掃除させてもらっとるんよ。どや?巫女服、結構似合っとるやろ?」

 

 

その場でくるりと1周する東条先輩。

 

 

有「いやまぁ…もちろん似合ってはいるんですけど…。」

 

 

 

ちょっと女子高生ではありえないレベルで主張の激しいものがあるような……。

 

和服ってそういう主張がしにくい服だと思うんだけどなぁと思いながら見ていると、東条先輩は二ヤっと笑って話しかけてきた。

 

 

希「あら〜?乙坂くん今どこ見てたんかな〜?」

 

 

有「べ、別にどこも見てませんよ!」

 

 

僕が慌てて否定すると東条先輩はさらに笑みを深くして続けた。

 

 

希「別にええんやで〜?男の子なんやし。そや!乙坂くんこのままここの掃除ちょこーっとだけ手伝ってくれへん?」

 

 

有「掃除……ですか?」

 

 

脈絡のないお願いに思わず聞き返すと東条先輩は満足そうにうんうんと頷く。

 

 

希「そう。もし手伝ってくれたら、ちょーーーーっぴりイイこと、あるかも知らへんで?」

 

 

そう言いながらホウキを差し出す東条先輩。こ、これは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海「…乙坂くん?」

 

 

 

──────────ほとんどホウキをつかみかけていた僕の手を掴んだ人物に目を向けると、そこには今が春とは思えない冷気と、ここが日本とは思えないほどの殺気を放つ園田だったものが立っていた。

 

 

有「えーっと…園田さん?どこから聞いて……?」

 

 

海「副会長が「今どこ見てたんかな〜?」と言っていた辺りからですね。」

 

 

 

有「それ1番ダメなとこからですよねえーーーー!!?」

 

 

僕が思わず叫び声をあげたのとほぼ同時のタイミングで、

 

 

希「あら残念♪ほなな乙坂くん♪」

 

 

と言いのこして東条先輩が逃げていった。つーかアンタからならコイツが来るの絶対見えてたよねえ!?

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

有「………」

 

 

 

お互いなにも喋らず、場には長い静寂が流れる。いつもなら美少女と2人きりというドキドキのシチュエーションだが、もちろん今の僕は別の意味でドキドキだった。

 

 

 

海「…乙坂くん────────」

 

 

ようやく顔を上げる園田。その表情はいつもと何も変わらない、とても魅力的な笑顔だった──────たった一つ、目の光彩さえ消えていなければ。園田はその綺麗すぎる笑顔のままこう告げた。

 

 

海「──────私の見たところ乙坂くんもかなり運動不足のようですし、ここはひとつ、基礎体力トレーニングをしてみてはいかがでしょうか?20往復ほど☆」

 

 

……死刑判決だった。

 

 

 

有「いや、あの園田さ「なにか文句が?」今すぐ行ってまいります!」

 

 

今までの倍以上の殺気を感じた僕は超ダッシュで駆け出す。あと3秒判断が遅れていたら間違いなく殺られていた。

 

 

海「あ、そうそう。あまり遅くなると学校に遅れてしまうのでタイム制限を設けておきます、遅れる事に1周追加していくので頑張ってくださいね☆」

 

 

 

有「こんのアクマがぁぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

─────もう2度と美人巫女服のお姉さんには近づかない。そう固く誓いながら僕は目の前の階段を必死に往復し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




…いややっぱり園田さんってドS。そんなわけで第6話朝練でした。希のキャラについては作者がこっちののんたんが大好きなのでいきなり加入後のテンションを出してみました。落ち着いてるのんたんが好きな人ごめんなさい。本当はもう少しお話を進めたかったのですが、キリどころが見えなくなりそうなのでここで1度止めることにしました。次回はいよいよμ'sの作曲担当のあの子が登場します!(たぶん!)お楽しみに!




…それと今回ついに!!UAが1000件を突破いたしました!!!!嬉しすぎて叫びそうになりました!皆さんのおかげです!本当にありがとうございます!!!!そしてなんとご感想もまたまたいただくことができました!プリエステスさん本当にありがとうございます!!

それでは拙い文章ですが、最後まで読んで下さった方々ありがとうございましたm(_ _)m
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