Charlotte〜乙坂有宇と9人の女神〜   作:黒髪ワタル

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9月ぶんの投稿ですm(_ _)m


第7話 疑問

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有「講堂の使用許可を取りに行く?」

 

 

 

穂「うん!新入生歓迎会の後にね。宣伝させてもらおうと思って!」

 

 

 

 

 

朝練のあと、処刑を何とか生き延びた僕は園田、南、高坂のいつもの3人組と学校へ向かう道を歩いていた。静かで車の通りもほとんどない道を4人連だって歩きながら会話を進める。

 

 

 

有「宣伝って何するつもりなんだ?」

 

 

 

 

穂「そりゃあもちろんライブだよ!実際に踊ってるところを見てもらうのが1番だと思うし!」

 

 

 

言いながら目を輝かせ、拳を突き上げる高坂。しかし、僕がなにか言うよりも早く、横から厳しい声が飛んできた。

 

 

 

 

海「ちょっと待ってください。ライブをするとはまだ誰も言ってないでしょう!とりあえず借りてみるだけです!そもそも、曲もないのにどうやってライブをするつもりですか!」

 

 

 

穂「やっぱりそれが1番の問題だよねぇ〜。」

 

 

 

 

ため息をつきながら手を戻す高坂。いや、メンバーにライブやる意志がないヤツがいるってのも結構な問題だと思うが…。

それにしてもそうか。スクールアイドルは歌や振り付けまで全部自分たちのオリジナル。歩未はそれも魅力の一つだと言っていたが、そもそも普通の女子校生に作曲や衣装作りなんかはかなりハードルが高いだろう。

 

 

 

 

穂「衣装はことりちゃんが作ってくれてるし…。歌詞もあるし後は曲を付けてくれる人さえ見つかればなぁ…。」

 

 

 

 

言いながらガックリと肩を落とす高坂。

 

 

 

有「すごいな。衣装や歌詞は出来てるのか。」

 

 

 

こ「うん!衣装はまだ制作中だけどね。歌詞はもう完成してるよ♪」

 

 

 

 

南がそういうと高坂が僕にキレイに折りたたまれた紙を渡してきた。顔には大きく「読んでみて!読んでみて!」と書いてある。ふむふむ。これが歌詞カードという事か。

 

 

 

 

海「ま、待ってください!」

 

 

 

 

 

早速みせてもらおうと開きかけた僕の手を園田が掴む。

 

 

 

有「なんだ?見ちゃダメなのか?」

 

 

 

海「い、いえ。そういう訳ではないのですが…。」

 

 

 

 

そう言いながらも決して腕を離そうとしない園田。すると高坂がじれったそうに口を挟んできた。

 

 

 

 

穂「もう!海未ちゃんまだ恥ずかしがってるの?これ曲できたらみんなの前で歌うんだよ?」

 

 

 

 

海「そ、それは分かってますけど…」

 

 

 

 

高坂に言い返しながらもだんだん俯いていく園田。いや、何がなんだかサッパリ分からないんだが…。

 

 

 

 

 

 

こ「…その歌詞ね、海未ちゃんが書いてくれたの。海未ちゃん、中学の時ポエムとかよく書いてたから…。」

 

 

 

全く話についていけない僕を見かねてコソッと耳打ちしてくれる南。なるほど…この歌詞は園田が書いたのか。そりゃあポエムと同じようなノリで書いたものが人に見られるのは恥ずかしいだろう。

 

…それはそうと耳打ちされると息がかかってこそばゆいしあんまり近くにこられるといい匂いがして焦るから出来ればもう一回……じゃなくてやめて頂きたかった。」

 

 

 

 

穂「ゆうくん……。」

 

 

 

こ「あ、あの…ご、こめんね。次からは気をつけるね」

 

 

 

有「!?」

 

 

 

……しまった声に出てた

 

見ると高坂はドン引きといった表情で僕から少し距離をとり、南は逆に顔を真っ赤にして固まってしまっていた。

 

 

有「ち、違うんだ。ええと…」

 

 

 

 

どうにか言い訳をしようと口を開いた僕の腕から冷気が漂ってくる。これは……殺気っ!?

 

恐る恐る腕に視線を向けると、そこには当然ながら少し前まで園田だったものが立っていた。顔は深く俯けられ、表情は全く見えない。

 

 

 

海「乙坂君…どうやらまだお仕置きが足りていないようですね…」

 

 

 

 

先程までの女子と同一人物とは思えない程のその声は間違いなく今朝聞いてから絶賛トラウマ中の園田(鬼神化)だった。一瞬で生命維持の危機を感じ取った僕は必死に話題を変える。

 

 

 

 

有「…し、しかし、あの生徒会長が許可するか?」

 

 

 

穂「そーだよねぇ。なんか私達目を付けられてるっぽいし…。」

 

 

 

こ「なんだかスクールアイドル自体に反対!って感じだったよね…。」

 

 

有「?。何かあったのか?」

 

 

 

園田の方を見ながら聞くと、さすがに答えないわけにはいかなくなったのか園田が鬼神化モードを解く。た、助かった…。

 

 

 

海「…実は昨日アイドル部の設立しようと生徒会にお願いをしに行ったのです。その時は五人集めないと部にする事は出来ないということで話は終わったのですが…。」

 

 

 

穂「その時になんで部を作りたいのかって聞かれたから「廃校を止めるためです!」って答えたら、そしたらもし五人連れてきても部を認める事は出来ないって言われちゃったんだよ…。」

 

 

 

 

有「ふーん…。」

 

 

 

そう言えば僕も初対面の時ものすごい敵意を向けられたんだっけ。まぁ、それは僕の経歴自体に問題があるから仕方ないのだが確かにそれにしたって随分と余裕が無いように感じられた。

 

 

 

 

穂「だから今から使用許可を貰いに行くのも実はドキドキで…あ、そうだゆうくん付いてきてよ!」

 

 

 

いいこと思いついた!とでも言うように顔を輝かせて言う高坂。

 

 

 

有「なんで僕が…。」

 

 

 

穂「だってゆうくん副会長と仲いいみたいだしもしかしたら助けて貰えるかもしれないじゃん!」

 

 

 

いや、東条先輩とはあの時初めて話したんだけどな…。とはいえ、確かにもう一人部員も増えているという事をわかりやすく示した方が説得はしやすいかもしれない。でもなぁ…。

 

 

有「いや、僕あの生徒会長苦手で────「ところで、乙坂君、ことりへのセクハラ発言のお仕置きについてですが」───でも他でもないお前らの頼みを僕が断るわけがないよな。よし、任せろ。」

 

 

 

園田が形のいい細い指をポキポキと鳴らし始めた瞬間、僕は反射的に頷いていた。命の危機に苦手がどうとか言ってられないよね!

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

穂「はぁーっ…疲れたぁ。」

 

 

 

有「何とか許可は貰えたけどな…。」

 

 

 

一時間後。何とか生徒会長から使用許可を貰うことに成功した僕と高坂は教室に戻ると緊張が一気に解けて机にヘナヘナと倒れ込んでいた。

 

 

海「いや、穂乃果はともかく乙坂君はずっと立っていただけのような気がするのですが…」

 

 

 

こ「あ、あはは…。」

 

 

 

そんな僕らを呆れるようにして見下ろす園田と困ったように笑う南。

 

 

…いやお前確かに僕はずっと立っていただけだったけどその間ずっと会長に睨まれつづけてたんだからな?射抜かれすぎて体に穴があくかと思った。もう視線で人が殺せるんじゃないかっていうレベル。

 

 

 

有「まぁ、でも東条先輩のおかげみたいなもんだったけどな…。」

 

 

僕の言葉にそうですねと頷く園田。実は最初は会長も渋っていたのだがその時一緒にいた副会長である東条先輩が口添えをしてくれて何とか許可を貰えたのだった。

話の後でこそ「またいつでも掃除、手伝ってな?」とか言って鬼神化園田を出そうとしていたものの、少なくとも今のところはあの先輩は僕らの味方をしてくれているようだった。

 

 

…それにしても…

 

 

 

有「何で会長にはあんなに目の敵にされてるんだ…?」

 

 

 

穂「謎だよねぇ…。」

 

 

 

真っ先に浮かぶのは僕がいるからだろうが、3人の話を聞く限り僕が関わる前からあたりが強かったらしい。コイツらが個人的な恨みをかったとは思えないし…となると……

 

 

 

有「…スクールアイドル自体と何か関係あるんだろうか?」

 

 

 

 

呟いた言葉は1時間目始業のチャイムと重なってしまい、誰にも届く事はなかった。

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

有「で、ここが音楽室、と…。」

 

 

 

昼休み。僕は1人で学校を回って教室の位置を確認していた。もちろん、昨日高坂のせいで出来なかった学校案内の続きである。

本当は責任を取って高坂に案内役をやらせようと思ったのだが購買のパンがどうのと逃げられた。アイツホントに自分のやりたいことしかしねえな……。

 

 

 

「ん?この音……。」

 

 

 

一通りの探検がすんだので教室に戻ろうとした時、中からピアノとそれに合わせて歌う声が聴こえてきた。心地よく体をすり抜けていくようなその歌の主が気になって、こっそりと部屋の中を覗く。

 

 

 

有「……うおお。」

 

 

 

中にいたのは器用にも、目を閉じたままピアノで音を奏でながら歌う一人の少女だった。ネクタイの色からして1年生だろう。とてもキレイな赤毛に少しカールがかかっている。 歌い、奏でているのはオリジナルの曲なのだろうか。歩未の趣味の都合上、色々な音楽を聴いたことのある僕にも何かわからなかった。少女はそれを高らかに、キレイに歌いあげる。

そんな少女の歌声やピアノもさる事ながら、何かに導かれるように音楽を奏で続ける手、そしてそれを気持ちよさそうに歌う少女は、それ自体が1枚の絵のようで、僕は目と耳の両方で魅了されてしまう。演奏が終わった時、僕は思わず手を叩きながら教室に入っていた。驚く少女に構わず話しかける。

 

 

 

 

 

有「オリジナルの曲なのかな?とてもいい歌だった。」

 

 

 

少女はしばらく黙っていたが、やがて呆れたように呟いた。

 

 

 

真「またなのね…。」

 

 

 

有「また?」

 

 

 

 

真「昨日もいたのよ。演奏を止めた途端にいきなり手を叩きながら教室に入ってきてオマケに「アイドルになって私たちに曲を作ってくれませんか!!?」って言ってきた人が。」

 

 

 

有「へ、へぇ……。それは変な人だね。」

 

 

 

ものすごく心当たりがあるが同類にされたくないので黙っておこう。曲はどうするのかは全く決まっていないのかと思ったら一応目星はつけてあったらしい。

 

 

 

有「それで…その人たちの曲、作るの?」

 

 

 

真「作らないわ。」

 

 

 

即答。予想していた答えだったが、その声に微かに嫌悪感が含まれている気がして違和感を覚える。

 

 

 

有「…どうして?廃校のためなんだし作ってやるのもいいんじゃないのか?」

 

真「…あなたあの人達の友達かなにか?」

 

有「…いや、クラスメイトでそんな話が聞こえてきただけだよ。」

 

思ったより低く出てしまった声に少女は一瞬だけ怯むような表情を見せたが、すぐに顔を戻すと吐き捨てるように言った。

 

 

 

 

 

 

真「…軽いからよ。なんか歌ってる人も聴いてる人もチャラチャラしてる感じがして…。」

 

 

 

 

軽いから。その理由は僕にもわかる、というか同意できると言ってもいいものだった。確かに、一部のアイドル達は自分たち自身を魅せるということにかなり重きをおいている。それは大切なことで、必要なことだからそこに真剣に取り組んでいることには違いないのだろうが、歌を歌っているなら音楽で勝負しろという意見が出てくるのも分からなくはない────────

 

 

 

 

 

有「……それは違う。」

 

 

 

 

────────だから、知らずのうちに出ていた自分の声にはかなり驚いた。少女が驚いている間にも僕の無意識の話は続けられる。

 

 

 

有「確かに、アイドルのような人達の歌っている歌は軽いと言われても仕方ないのかもしれない。でも、軽いからこそその歌は多くの人に届く。音楽に詳しくない人でも、その歌を楽しむことが出来る。それに……」

 

 

 

 

 

──────いつの間にか、無意識でなく自分の意思で言葉を紡いでいた。僕は語る。

 

 

 

 

有「…それに、本当にチャラチャラしているだけの人達は本当にごく一部だ。大抵のアーティストは自分たちの歌やパフォーマンスに誇りを持っている」

 

 

 

 

 

 

────────転校先の自己紹介で、芸名を使ったやつの事を思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

有「そしてその人たちを馬鹿みたいに真剣に応援するファンがいる。」

 

 

 

 

 

 

────────今朝もA-RISEに鼻血を出しかけていた妹や、かつてどんなに周囲に引かれても自分の好きなものを通し続けた馬鹿のことを考えながら。

 

 

 

 

 

有「……そしてその歌は、誰かの夢や希望になりうるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────僕に向かってそれまで見せたこともないような素直な表情で夢を語ってくれた、一人の少女を思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ昼休みも終わる時間だ。僕は少女に向き直ると言った。

 

 

 

 

有「君の歌、僕はもっと聴いてみたいって思ったよ。それに、僕だけじゃない、沢山の人に聴いて貰いたいってな。」

 

 

 

 

少女の大きく見開かれた目を見ながら僕は右手を差し出した。

 

 

 

有「2年の乙坂有宇だ。よろしくな。……曲作りの件、もう一度考えてみてもいいんじゃないか?」

 

 

 

真「……西木野真姫よ。そこまで言うならもう一度考えてあげるわよ。答えは変わらないと思うけど。」

 

 

西木野はそう言って顔を背けながらも手を握り返してきた。背けられた横顔から見える頬が少し赤く染まっている。

 

 

 

彼女が高坂達の作曲を引き受けるのもそう遠くはないだろう。そんな不思議な確信を持ちながら僕はもう一度右手に少しだけ力を入れた。

 

 

 

 

 

 

 




……まずはいつもより投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。少々受験に向けて本格的に死にそうになってまして……。もしかしたら来月以降は2ヶ月分として一気に二話投稿したり少し不規則になってしまう事があるかもしれません。まぁでも1ヶ月1話以上というのは(多分)変えないのでご安心を!
そんなこんなで第7話疑問でした。ちょっと分かりにくいから何が疑問なのか疑問に思った人はもう一度見返してみようね!(寒い)
それではここまで読んでくださった方々どうもありがとうございましたm(_ _)m
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