はこちん!   作:輪音

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艦娘
それは妖精たちの産み出した
人型妖精兵器
深海棲艦
それは世界の産み出した
怨念の塊
大抵はそう思っている
共にブラックボックス多き存在
提督たちは
得体の知れないもの率いて
得体の知れないもの倒せり
しかして
艦娘は笑い泣き怒り恋もする
人となにが違うのか
戸惑いながら司令官たちは
戦場へ少女たちを送り出す
幾人もの提督を失いながら
戦争は続く

Not even justice,I hope to get to truth.
真実の灯りは見えるか





ⅩⅡ:教官は元提督

 

 

 

インドの山奥……もとい、千葉県某所の提督候補生促成教育機関にて。

即席でもなんちゃってでもインスタントでも育てられる彼らは提督。

 

三〇代半ばと見える教官が、提督候補生相手に熱弁を振るっていた。

 

 

「さて、君たちはこれから各地の鎮守府の責任者たる提督として着任する訳だが、艦娘とは何者かをある程度知っておかねばならない。」

 

「彼女たちは一言でいうと『人のようなもの』だ。妖精の作り出した人型妖精兵器というのが、艦娘の本質だ。但し、笑うし泣くし怒るし恋もする。君たちはある意味、得体の知れないものを率いて得体の知れないものと戦うことになる。」

 

「艦娘は基本的に建造で産まれる。建造装置は一種の子宮だ。そういう意味では、君たちは彼女たちの父親母親とも言える。他に海域回収、いわゆるドロップで戦闘後の海域にて艦娘を得られることもあるが、その原理は今もわかっていない。深海棲艦の変化した姿が艦娘だという説もあるし、艦娘が轟沈して深海棲艦になるという説もある。現段階の研究では不明とだけ伝えておく。」

 

「一時期、簡易型艦娘とも呼ばれる量産型艦娘が建造・運用されていたが、今ではその非人道性から行われていない。主に拙速な作戦遂行のための捨て艦戦法に多く用いられたらしいが、詳しいことは判明していない。本来の艦娘よりも経費は安く済んだらしいが、艦種問わず初戦での轟沈率が高過ぎた。正確な運用人数は不明だが、五〇〇〇人を下ることはないだろう。」

 

「艦娘の体格は基本的に一種骨格、二種骨格、三種骨格の三種類に大別される。一種骨格の殆どは駆逐艦だが、陽炎(かげろう)型や夕雲型のように比較的発育のよさそうな娘たちは一種骨格ⅡやⅢという風に分けられる。軽重巡洋艦や軽空母辺りが二種骨格だ。それ以上の艦種が三種骨格に当たる。ただ、軽空母の龍驤(りゅうじょう)や正規空母の大鳳のように、同種艦の体格と異なる者も存在する。気にしている者も存在するので、発言には充分留意するように。特に背丈や乳房の大小に言及することは死を招くことがあるので注意されたい。事実だからなにを言ってもいい訳ではないし、死が代価では高すぎるだろう。」

 

「艦娘の基本仕様だが、吹雪型駆逐艦で平均握力二〇〇キログラム、二〇メートルの高さの塀を飛び越え、一〇〇メートル走は五秒を切り、時速六〇キロメートルで五時間は走れる。その力は意識的に制御されているが、彼女たちが諸君に鉄拳を振るう破目に陥らないようにすべきである。おふざけも大概にしないとあの世逝きだ。これは冗談ではない。実際に提督が即死した案件は過去に何件も発生している。」

 

「艦娘は燃料やボーキサイトを経口摂取して栄養を取るため、本来的には食事が不要だ。しかし、食事は古来より兵士の意欲を維持するために必要不可欠だ。それが嗜好品だとしても、大いに考慮されるべきである。よって、彼女たちの食事には十全に配慮するように。ちなみに摂取されたものは体内で完全に消化され、排泄は一切ない。アイドルの那珂ちゃんがトイレに行かないのは事実だ。」

 

「彼女たちの体には子宮がなく、生理も妊娠もない。よって、結婚したとしても子供は持てない。一部の鎮守府では工作艦の明石を主任として妊娠出産を可能にしようと研究してはいるし、私の妻たちも子供を望んでいるが、現段階では見通しさえ立っていない。」

 

「艦娘と肉体関係に陥る状況は極力避けるように。駆逐艦たちは好奇心旺盛で、それが性的な方向に向かうと、時として悲劇が訪れることがないでもないからだ。私も今の妻たちと出会った頃はそんな馬鹿なことがあるものかと考えていたが、実際積極攻勢を受けた者として言っておく。小さな子だから大丈夫だと慢心しないことだ。駆逐艦は深海棲艦に対して勇敢に近くまで突っ込んでゆくが、それは恋愛に於いても同様だ。おそれを知らない者をおそれよ。」

 

「艦娘たちと出会った時、彼女たちは処女ではないかもしれない。だが、それは少女たちの価値を下げるものではないと断言しておく。私が出会った時の妻たちはいずれも非処女だったが、それは些細なことだ。諸君には愛の本質をよく知って欲しい。処女信仰も程々にしないと、あの世逝きだ。実際、何件も死亡事故が発生しているので注意されたし。」

 

「艦娘が自分自身の意思で指揮官を選ぶという点に於いて、彼女たちは戦国時代の武士に近い。艦娘は滅私奉公の武士ではないことを諸君の意識に留めて欲しい。彼女たちの指揮官として恥ずかしくない対応をここに求めるものである。また、転属を求める艦娘を拒む権限は諸君にはない。まあ、適切に扱わないと逃げられるよ、ってことだ。逆に言うと、評判がよければ腕のいい艦娘が転属してくる可能性があるということでもある。」

 

「なにかあったら、細かいことでも管轄する提督たちに相談するように。提督の死亡率や行方不明率や駆逐艦との駆け落ち率が依然として高く、大本営も事態を憂慮している。慢心は禁物だ。諸君には世界の海を救う自覚を持って、真面目に提督業に勤(いそ)しんでもらいたい。」

 

「実際の駆逐艦の恋愛攻勢? そうだな。自重する駆逐艦はあまりいない、というのが実情だ。添い寝混浴当たり前で、夜討ち朝駆けも日常的だ。執務中に膝の上に乗るのはまだいい方で、しょっちゅう抱きついてきたり甘えてこられると業務に支障をきたす。大変だったよ。桃色映像作品の真似事をした時は流石に説教した。結局何名か引き取って、毎日てんやわんやだ。私のようにならないよう、各員の健闘に期待する。おう、磯波に三日月か。迎えに来てくれてありがとう。では諸君、暁の水平線に勝利を刻めるように頑張ってくれたまえ。」

 

 

 

 







説明回です。
リアリティってなんだろうと書く度思うのですが、程々にしておいた方がいいのかしらんとも思うのです。
二次創作作品で社会的なことを徹底して書かれる方は少数派ですが、自分でやってみるとその複雑さに辟易します。
書きすぎると必然的に暗い話になるので、どこまで書くかは難しいです。

この世界では自衛隊が存在しますし、艦娘との関係も良好です。
通常兵器は深海棲艦に通用しますが、的が小さいので当てるのは大変です。
艦娘は人間ではありませんし(量産型艦娘除く)、どちらかというとフリーダムな子が多いみたいです。
艦娘に人権はありませんが、その分保護者である提督の権限は強めです。但し、正規の提督となんちゃって提督との間ではかなりの格差があります。呉第六鎮守府の提督のように頓着しない人はちらほらいます。

なるべく救いのある方向性にしたいです。

リアルにおっさん提督が艦娘と共同生活すると、そんなに恋愛要素はないのではないかと思えないでもないです。
あくまでもおっさん側の意見としては、ですが。
そんなおっさん提督を好きになっちゃう奇特な艦娘が何名も現れて、作者困っちゃうで御座る。
登場人物たちはなんだかフリーダムな子が多いです。何故だ!?
提督は今後、艦娘側からの猛攻にどう対処するのだろうと作者的にも不透明な状況です。
おっさん提督からしたら、おしゃまでいたずらっ子な艦娘が益々色気づいてきたなあくらいの意識だと思われます。
或いは、姪っ子に振り回される叔父さんくらいの感覚かもしれません。


お気に入りにしてくださる方がどんどん増えていて、とても嬉しく思っています。
そして、評価をくださった方々にも感謝します。

どこへ向かっているのか今一つ作者にもわかっていない作品ですが、なにかしら楽しんでいただけましたら幸いです。



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