あら、いらっしゃい。
このウォトカはサーヴィスだから、先ずはクイッと呑んで落ち着いてね。
おつまみは焼きたてのブリヌイよ。
実は作者がリアルでドジを踏んじゃって。
携帯端末のメールアプリをアンインストールしちゃったのよ。
この作品はメールアプリで管理していたから、書きかけの話はすべて等しく吹き飛んじゃったの。
これからの話が以前の話と細部で食い違っちゃうかもしれないから、そこんとこは気を付けてね。
まあ、肩肘張らずに読んでもらおうと考えてはいるみたいだから、大目に見てくれると助かるわ。
この狡猾極まりない嘘だらけの殺伐としたまがい物の世の中で、余裕を持って生きるって大切だと思うの。
ではご注文をどうぞ。
大本営は時折訳のわからないことをやらかす。
主に前線の提督の神経を大破させる方向性で。
だがしかしばってん。
今回の企画は軍人軍属政治家民間人の多くを歓喜させ、良識人の眉をひそませた。
そう。
『セクシー駆逐艦選手権』の開催である。
艦娘の艦種は複数に渡るが、最も多種なのが駆逐艦だ。
なにか景気のよくなりそうな提案をしたまえと大本営の会議室で言い放ってきた老害……もとい老練なお偉いさんたちに対し、函館の提督が戯れに『セクシー駆逐艦選手権』を提案した。
途端。
歓声に包まれる会議室。
アホや、こいつら。
万歳三唱するアホまでおる。
生産的な事柄は得てして亀の歩みの如く進行が遅いものだが、趣味嗜好に走った本気野郎どもが爆走暴走した場合は話が別だ。
あれよあれよという間に話が進む。
少数の白けた常識人たちを置き去りにし、『セクシー駆逐艦選手権』は大々的に宣伝されて日本国民の関心を多く集めた。
第一次予選会は体操着ブルマー仕様。
第二次予選会はスクール水着旧式仕様。
『敢えてレトロな仕様にして昭和に温故知新する』という惹句(じゃっく)は函館の提督が捻り出した。
適当に言ったにもかかわらず、これを聞いた人々の大半は『深みがある』とか『含蓄がある』とか『リリン最高!』などと評価した。
妙なものに関わったと思うのは彼くらいで、全国各地の鎮守府や警備府、海外の泊地の提督たちは運営側へ参加したいとしのぎを削った。
彼の元へ問い合わせが殺到した程だ。
アホや。
みんなアホや。
一旦流れが決まると、それを押し返すのは至難の業だ。
軽空母の龍驤が何故か朝潮型の制服を着用して、私の業務を手伝っている。
「あのですね、龍驤さん。」
「あんな、提督。うち、龍驤ちゃうで。」
「はい?」
「うちは朝潮型航空駆逐艦一番艦龍潮や。」
「へっ?」
「そして、執務室へさりげなく玉子焼きを持ってきたのは、朝潮型航空駆逐艦二番艦の……。」
「なに言っとんの、キミたちは。」
「あの、提督。」
「鳳翔さん、なにやっているんですか?」
「あ、あの、私は夕雲型航空駆逐艦の夕翔です。」
「提督! 『セクシー駆逐艦選手権』で行われる、とびっきり可愛い那珂ちゃんの特別コンサートの優待券を持ってきたよ!」
「ちょっとアンタ。審査員との応対の練習をするから、付き合いなさい。」
「特型雷装駆逐艦一番艦の北雪様だよ。」
「あの、北上さん、かなり恥ずかしいんですけど。」
「可愛いよ、大井っち……じゃなくて、特型雷装駆逐艦二番艦の大雪っち。」
執務室は混沌に陥った。
ちなみに『セクシー駆逐艦選手権』自体は大いに盛り上がったが、失格者続出でこれに怒った選手らの爆撃や開幕雷撃などで会場内は一時騒然となった。
朝潮型制服や夕雲型制服を着た別のなにかな艦娘たちが鉄拳やハイキックなどの徒手戦闘を繰り広げ、もはや選手権どころではない状態に陥った。
そして、それを見たとある提督は呟いた。
「ダメだ、こりゃ。」