提督がいないと艦娘は狂うのです、とその駆逐艦は言った。
狂うかね、と聞き直したら、必ず狂いますときつく言った。
それでは提督に依存しているのかと聞いたら、違うと言う。
依存しているのではなくて、共存しているのだと言われた。
共存しないと駄目かと聞いたら、駄目になりますと言った。
共存とはなんだと聞いたら、ケッコンすることだと言った。
ケッコンしないと駄目かと尋ねたら、気持ちの問題と言う。
気持ちはそんなに大事かと聞いたら、人間と同じと言った。
提督は必要かね、と聞いたら、必要ですと軽空母は言った。
指揮能力や作戦立案能力が提督より上の者さえいるだろう。
そう言ったら、有能なだけが提督の条件でないと返された。
有能でなくていいのかと聞いたら、状況次第だと言われた。
状況とはなんだと聞いたら、人柄も大事なのだと言われた。
人柄が状況に影響するかねえと言ったら、無言で微笑んだ。
男前の方がいいだろうと聞いたら、特に拘らないと言った。
醜男よりも美男子がいいだろうと、更に詳しく突っ込んだ。
男は顔じゃないでしょうと哀れむような顔で切り返された。
そんなにあの男がいいのかと、憮然としながら聞いてみる。
苦笑いしながら、焼きもちですかと女のようなモノは言う。
ふざけたことを抜かすな、女ですら無い癖にと嫌味を言う。
女ではありませんが、女のようなものですと彼女は言った。
提督がおられるからこそ戦えるのだと戦艦が女の顔で言う。
提督がいないと駄目かねと訊ねたら、勿論ですと即答した。
無能な提督だと困るだろうと言ったら、大丈夫ですと言う。
なにが大丈夫だ、と聞いたら、私たちが守るからと言った。
つまらぬ男でも守るのかねと聞いたら、当然だと言われた。
惚れたからかと聞いたら、女はそのために死ねると言った。
男にはわからぬと言ったら、女の為に死ぬ男もいると言う。
口が減らんなと言ったら、腹は減りますよと切り返された。
姉妹愛に生きているのです、と軽巡洋艦は夢心地で言った。
そんなに姉妹艦は大事かと聞いたら、勿論ですと断言する。
引き離されたらどうすると聞いたら、ニヤリと無言で笑う。
提督に興味は無いのかと聞いたら、時と場合によると言う。
興味を感じない提督の時は無視するのだと彼女は断言した。
そいつに口説かれたらどうすると聞くと、撃ちますと言う。
空砲かね、と聞いたら、実弾の方がいいですけどと言った。
そんなに提督は嫌いかねと聞いたが、そうでもないらしい。
なら何故あんなことを度々やったと聞いたが、微笑むだけ。
提督とケッコンするのは私だけですと、潜水艦は自信満々。
キミだけかね、と聞いたら、そりゃあそうですよと言った。
そんなに彼はモテないのかと聞いたら、逆ですよと言った。
モテるのにキミとだけケッコンするのかと怪しく思い聞く。
過去の醜聞を散々暴かれて、貰い手がいないのだと言った。
誰が暴いたのかねと尋ねたら、とある艦娘の名を洩らした。
そんなことをしてどうなると言うが、仕方ないですと返す。
そこで思い出す。
あの鎮守府は、とっくになくなっていたよなということを。
【最速駆逐艦閑話】
「島風、ちょっと聞きたいんだがいいかな?」
「かまわんよ。なんだ?」
「そこの連装砲たちだが、どうやって動かしているんだ?」
「サイコミュ。」
「え? 本当?」
「だったら、いいな。」
「まあ、そうなるな。」
「他になにかあるか?」
「動かし方が謎だとしても、まあ多分脳波制御とか、独立駆動系のなにかなんだろうなあ。」
「そこは妖精の謎技術で。」
「それ、便利な方便だな。」
「砲撃以外でなにに使っているんだ?」
「ワイヤーの端と端を二体に持たせて、敵の足に引っ掛ける。」
「引っ掛かる?」
「引っ掛かる。」
「初見殺しか。」
「島津並だよ。」
「その、パンツ丸見えはなんとかならないかな? まあ、外では陽炎型スパッツを標準装備させているけど。」
「これは余の見せパンだ。」
「そうなの?」
「そうだよ。」
「それにしてもだな……。」
「そもそも提督の趣味で、ああいうスパッツを履かされているし……。」
「ちょっと待て。個人的趣味じゃない。下着丸見えを防いでいるんだ。」
「スパッツを履いていたら、その中は履かなくていいのか? その場合はこの見せパンとどう違うんだ?」
「……え?」
「冗談だ。陽炎型はスパッツの下にTバックを履いているようだがな。」
「お、おう。」
「提督、駆けっこをしよう。」
「お前でもそういうことを言うんだな。」
「中身は外見に引っ張られるものさね。」
「そういうものか?」
「そういうものさ。」
「私は走るのが全然早くないぞ。」
「提督と走れるのが嬉しいのさ。」
「そうか。」
「では提督が負けたら俺の言うことを聞く、俺が負けたら提督にエッチなお仕置きをされる、ということで。」
「は?」
「ヨーイドン!」
「ちょ、待てよ! 大淀! 吹雪! 島風を確保してくれ!」
「提督、あくまでも仮の話なんだがいいかなかな?」
「なんだ、なんでも言えばいい。私たちの仲だろ。」
「その、提督を分割して皆に配る場合、どうやったら一番公平かなと思ってな。」
「……え?」
「あ、いや、その、会合でちょっと猟奇的な話になってなんだか盛り上がって。」
「なにそれこわい。」
「その、本当にバラバラにするつもりは無いんだ。単純に分けたらどうかなと。」
「ちなみに最も競争率の激しい箇所はどこですかいのう、なあ最速駆逐艦さん?」
「それを言うのは恥ずかしいな。」
「もしかして……。」
「う、うむ。」
「目玉?」
「う、うーん。」
「ホルマリンや瓶が沢山いるね。」
「まあ、そうなるな。」
【ちょいオマケ】
「金剛さんのあのフレンチクルーラーみたいな髪型って、毎日結われているんですか?」
「オー、あれはウィッグだよ。」
「成程……。では隼鷹さんは、あの髪型をどう管理されているんですか?」
「あれは、部分的にほっそい針金状の形状記憶合金を仕込んでいてね……。」