はこちん!   作:輪音

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CLⅩⅥ:刹那、夢みて

 

 

艦娘がまた総入れ替えだ。

みんな、轟沈しちまった。

大型作戦がある度、こうなっちまう。

折角せっせと鍛錬させ、関係を育み、慈しみあった結果がこれだ。

提督は変わらず、艦娘たちが替わり行く。

なんのために提督なんざやっているんだ?

みんな死ぬみんな死ぬみんな死ぬみんな。

俺だけが無様に生き残って采配している。

新兵たちがやって来る、地獄の一丁目へ。

死なないよう、死なないよう教育を施す。

彼女たちも死なないために必死で覚える。

 

そしてまたその努力は徒労に終わる。

 

「先週建造されたばかりで、全艦『未開封』の『無垢』状態です。駆逐艦八、軽巡洋艦二、軽空母一、重巡洋艦一、並びに基本兵装と予備部品を確かに納品しました。こちらに受領印をください。」

 

忌々しい気持ちで、補給艦の担当者から手渡された書類へ乱暴にサインした。

事務用ボールペンがバキッと折れ、若い担当者はその顔を引きつらせている。

こわばった顔でなんとかぎこちなく笑ってみせたら、奴は顔を真っ青にした。

ちっ、たまなしめ。

今頃はこんな奴ばかり目につく。

正直、こうした現状にムカムカする。

納品?

受領?

モノじゃねえんだぞ、モノじゃ。

へっぴり腰の担当者が乗り込んだ補給艦が見えなくなってから、かぶっていた帽子をコンクリートの床に叩きつける。

バカ野郎どもめっ!

なんの反応も示さず、無表情の艦娘たち。

建造後の反動で無気力症になっているようだ。

艦娘もどきたち。

中身はおっさん。

俺の同類である。

人を魔女の釜でチンしたらあっという間に艦娘が完成だ。

学徒動員でないだけ、マシだとでも言うつもりだろうか?

隣の国の鐵媛(てつひめ)とどっこいどっこいの性能か。

まだまだこんなことを続けてゆくつもりなのか。

これからもこんなことが延々と続くのだろうか?

俺は捨て艦戦法を行うために、彼女たちを鍛えてんじゃないぞ。

時間物資労力の無駄の極みだぜ。

一時は無くなっていたのによう。

合成酒みたいに復活しやがった。

非合法と合法の境界線的存在だ。

灰色娘だろ。グレーゾーン的な。

灰色狼だと、恰好いいのによう。

大本営が大反抗作戦を狙っているとかいないとかは、この辺境でもかそけく漏れ聞こえてくる。

基幹戦力や決戦戦力は温存し、田舎の戦力を酷使するのか。

大手企業を優遇して、中小企業の苦しみはほったらかすか。

人でなしどもめ。

裾野を磨り潰せば潰す程、自縄自縛になりゆくというのに。

バカ野郎どもめ。

バカ野郎どもめ。

バカ野郎どもめ。

 

二艦隊分の艦娘たちに、俺ご自慢のカレーでも振る舞おう。

それくらいしか出来んからな。

頭がいてえ。

漁協の建物を流用した昭和の遺物みたいな基地へご案内だ。

 

何時までだ。

何時までこんなことを繰り返せばいい?

何時までもこんなやり方じゃダメだろ?

こちらの意見書は全然通りそうに無い。

因果は巡るのを知らないというのかね?

果てしない自問自答を繰り返していたら、駆逐艦の内の一名がそっと手を握ってきた。

無表情のままだが、その手は温かい。

 

もろい硝子細工を扱うように彼女の手を握り締めながら、俺たちは食堂へ向かった。

きっと。

きっと。

きっと!

彼女たちを生き残らせる!

心の底でそう誓いながら。

 

 






※読まなくても一切問題ありません。
以下の論は、ゲーム本編を現実的な存在として考えた際の妄想です。
本編を否定するものではないことを予め明記しておきます。

【大本営民間軍事会社説】

鎮守府は、もしかしたら傭兵団のようなものではないでしょうか?
艦娘は傭兵で、提督は団長。
嗚呼、エリア88!
マッコイ爺さんに頑張ってもらわないと!
その傭兵団を管轄する大本営は軍隊ですらなくて、民間軍事会社のような存在かもしれません。
『軍隊を持てない』日本の二律背反性を考えると、この辺が落としどころではないでしょうか?
いざとなったら、トカゲの尻尾斬り!
国は関与していません、彼らの独断ですとお偉いさんたちは戦後言い放ち、深く考えずマスメディアの言葉を鵜呑みにしてしまう人たちが艦娘たちや提督たちを弾劾し、怒り狂った彼女たちは武装蜂起して首都警
警備部特殊武装警備大隊通称『特機隊』と連携し、都内重要施設を次々制圧下に置いて革命政府を樹立……あれ?

え?
艦娘は兎も角、軍事に詳しい連中をどのように掻き集めるのか?
やだなあ、日本には世界的な軍事組織があるじゃありませんか。
そこから引っ張ってくればいいんですよ。

で、篠原重工や東亜重工や豊和工業などの軍事産業が関わってレイバーを……もとい、艦娘関連事業に関わる訳ですな。
元々二足歩行型作業用大型ロボットの開発をしていた人類は、妖精たちの技術を吸収しながら深海棲艦との激しい戦いに立ち向かうのであります。
そこへ内海と名乗るシャフトの……。



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