はこちん!   作:輪音

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吹き飛ぶ砲塔
捻れるバルジ
燃える装甲板
踏みしめる深海棲艦が
波乱の鼓動を伝えてくる
平和は未だ遠く
行軍は続く
メリケン艦娘を受け入れた函館
運命は提督を戦場へと導く

Not even justice,I hope to get to truth.
真実の灯りは見えるか





ⅩⅨ:北北西に進路を取れ

 

 

所々煙を出している艤装をまとった娘たちが六名、暗い海原を走っている。

 

彼女たちの装備はところどころ焼け焦げていたり穴が空いていたり捻れていたりして、損傷が随所に見られた。

彼女たちの衣類も破れ目が幾つもあって、大事なところが見えそうで見えない深夜アニメーション地上波放映版みたいになっている。

 

先頭を駆けるは戦艦。

艤装には英語で『ネヴァダ』と記されている。

マントを羽織った金髪碧眼ツインテール少女。

回転弾倉式拳銃に見える銃火器を両手に持って、油断なく周囲を見回している。

彼女は釘宮理恵みたいな声でぼやいた。

 

「まだ陸地は見えないの、ヨーキー?」

 

カウボーイハットをかぶり、露出度の多くインディアン風な衣裳をまとった巨乳娘が

新たに弓から矢を放ち、ぷるんと双丘を震わせた。

矢はプロペラ機へと変わり、空を舞う。

左肩に飛行甲板が取り付けられていた。

腰の矢筒にはCV-5と記されており、艤装には英語で『ヨークタウン』と記されている。

彼女は、佐藤利奈みたいな声で言った。

 

「偵察機は二〇分毎に飛ばしているけどね、どうやらホッカイドウに向かっているのは確かなようだよ、ネリー。」

「ま、考え過ぎないことも大切ね。さっきの連中は手強かったけど、きちんと撃退出来たじゃない。『彼ら』よりはずっと戦いやすい相手よ。」

 

小林ゆうみたいな声で明るくケタケタ笑う、ミニスカポリス的衣裳をまとった娘。

その圧倒的双丘が存在を主張するように震える。

両の手にはトンプソン短機関銃に見える銃火器。

その艤装には英語で『シカゴ』と記されていた。

 

「シーツーの言う通りよ、ネリー。焦っても結果は出ないわ。エリー、スッキー、二人とも調子はどう?」

 

ふんわりした雰囲気の娘が、皆口裕子みたいな声でにこやかに言う。その戦艦級艤装には英語で『ミズーリ』と記されている。

薄手の衣装は布地が少なく、たわわな双丘が存在を主張していた。

 

「大丈夫よ、ミリー。問題ないわ。」

 

青いドレスを着た、金髪碧眼の人形めいた美少女が阿澄佳奈みたいな声で答える。

その艤装には英語で『エドサル』と記されていた。

彼女は大きな肩掛け鞄を肩から提げて、お出掛けしているみたいだ。

だが、彼女が背中に差している長剣が戦士であることを示している。

 

「こっちも問題なし。なんだかお腹空いてきちゃった。」

 

水着姿の少しミステリアスな感じのおかっぱ頭の水着少女が、福園美里みたいな声で明るく返事する。彼女の跨がる魚雷状の主機には英語で『スカルピン』と記されていた。

 

「この海域は懐かしい感じがするわね。」

「私、大丈夫かしら? 昔、『彼ら』に激しい砲撃をその……。」

「ネリーはさ、考え過ぎるんだよ。もっと気楽にした方がいい。」

「昨日の敵は今日の友、よ。日本人は知性的民族だし、大丈夫。」

「日本かあ……スシ、テンプラ、スキヤキ、サムライ、フジヤマ、ニンジャ、ゲイシャだっけ?」

「日本ってどんな国?」

「とてもいい国よ。」

「そうだといいね。」

 

戦艦二名、空母一名、重巡洋艦一名、駆逐艦一名、潜水艦一名の混成艦隊は一路函館に向かっている。

 

それは意図的に企図したものではなかったが、なにかに惹かれるように向かっているのは事実だった。

 

 

 

暗い、豪華な調度のある広い部屋。

スーツ姿の眼鏡美人がひなびたおっさんに話しかける。

 

「大統領、六名のシップガールは順調にハコダテへと向かっています。」

「わかった。軍事衛星ワカッテンネンからの監視は続けてくれたまえ。」

「はっ!」

「気になるかね?」

「ネヴァダがハコダテで幸せを得られるなら、それは私にとっても幸せですわ。」

「そうか。」

「同じ痛みを知っていますから。」

「……ところでハワイ攻略作戦の進捗状況はどうなっているかね?」

「各戦線への大量投入に伴った杜撰な扱いに抗議する、という駆逐艦と軽巡洋艦を中心としたストライキが明後日には解除予定ですから、その後進展予定です。」

「今までの強行策が裏目に出たか。」

「まさにその通りですね、大統領。」

「ハワイまでの航路上に建設中の海上要塞はどうなっている?」

「敵対勢力による多数の魚雷攻撃で、あえなく沈没しました。」

「これで三回目か。」

「はい、そうです。」

「戦いは数だよ、君。」

「承知しております。」

「人権団体の動きは?」

「相変わらずですね。」

「擁護団体の動きは?」

「それも同様ですね。」

「アラスカ方面はどうかね?」

「戦線は膠着した状況です。」

「大西洋方面はどうなった?」

「まだ安定はしていません。」

「南米の状況だが多少はよくなったか?」

「相変わらず批判が殺到していますね。」

「ペンシルヴァニア。」

「はい、大統領。」

「我が国は強くなくてはならない。」

「仰る通りです。」

「ならば、わかっているな。」

「はい。ただ……。」

「なんだね?」

「明日から旧式戦艦・航空母艦連携型ストライキが無期限決行予定です。ちなみに率いるのは第六軍団第三任務艦艇群のアリゾナです。複数のアーカンソーやニューヨークたちも参加を表明しています。」

「オーマイガッ! ペンシルヴァニア、酒を持ってきてくれ。バランタインの三〇年があっただろう。」

「大統領。あまりお酒は……。」

「酒でも呑まなきゃやってられん。」

「ところで、大統領。」

「なんだね?」

「明日からの無期限ストライキには私も参加します。」

「な、なんだって?」

「業務の引き継ぎは、第一軍団第四任務艦艇群の駆逐艦のショーに行いました。」

「あの子はとてもいい子なんだが……いかんせん平和主義過ぎてだな、君……。」

「すみません、大統領。私の業務時間が終了しました。失礼します。」

「ペ、ペンシルヴァニア! ま、待ってくれ! 私の話を聞い……。」

 

無情に閉まるマホガニーの扉。

遠雷が聞こえてきた。

風が強くなってゆく。

雨が激しく降りだす。

うつむく最高権力者。

どうやら、物量作戦は当事者たちからすると不評のようだ。

 

 

 

強い風が吹いた翌日。

函館は晴天快晴の天気。

やや冷たい風が心地よい。

 

「私は戦艦のネヴァダ。貴方がハコダテのアドミラル? 私たちは海で産まれてなにがなんだかよくわからないままに敵対勢力と交戦して、ここまで来たの。保護を求めると共に相応の待遇を要求するわ。」

 

入渠を終えて身だしなみを整えた、金髪碧眼の美少女が挨拶してくれた。

 

メリケン艦娘来日す、という情報は瞬く間に全国津々浦々を駆け巡り、おっとり刀でやってきた在日米軍を含めて多数の人々が函館へと訪れる結果になった。

メリケンの人々大喜びである。

構成する面々は以下の通りだ。

 

戦艦のネヴァダ。

戦艦のミズーリ。

航空母艦のヨークタウン。

重巡洋艦のシカゴ。

駆逐艦のエドサル。

潜水艦のスカルピン。

 

大本営から訪れた長門教官が、ネヴァダと懐かしそうに会話をしている。

私の教官殿は屈託なくメリケン艦娘と交流していた。

流石だ。

彼女が普通に接することで、文句を言いにくい雰囲気を作り上げている。

しかも、在日米軍の高官も一緒だ。

やり方が上手い。

 

「私は何度も函館への転属希望を出しているのだが、悉く慰留されていてな。ここに着任出来るネヴァダが羨ましいよ。」

「ふーん、パッとしない指揮官みたいだけど。」

「その内わかる。わかった頃にはもう離れられなくなる。」

「なにそれこわいわ。冗談でしょう?」

「さて、どうかな。自分自身の目で確かめるといい。」

 

メリケン艦娘は社交家揃いのようで、鎮守府の面々や報道陣などにも明るく接していた。

 

と。

右腕に柔らかなものが押し付けられる。

 

「これからよろしくね、アドミラル。」

 

警官の服装に似た、露出度満点の服を着た娘が腕を絡めていた。

名はシカゴだったか。

 

「はい、よろしくお願いいたします。」

「堅苦しい人ね。」

「ははは、すみません。」

「ふふふ、日本人らしい反応だわ。」

 

賑やかな夜が更けてゆく。

その後、メリケン艦娘たちに捕まって質問攻めにされた。

 

 

 

翌朝、憲兵の國江さんによる林崎流抜刀術の模範演技が行われ、メリケン艦娘や在日米軍の面々に特に大好評だった。

我が教官もしきりに感心している。

長門教官が私の左側、ネヴァダが私の右側という布陣。

う、動けない。

食事の時もこの布陣。

大本営から来てくれた間宮とうちの鳳翔が次々に料理を運んできて、私の口へと運んだ。

やめて欲しいと二名に頼んだのだが、何故かにこやかに拒否をされた。

確かに絶品だが、とても恥ずかしい。

面白がって撮影する全国の青葉たち。

在日米軍の面々の視線がややこわい。

 

 

 

これからどうなるのだろうか?

そうそう、近日呉から転属する艦娘たちの受け入れ体勢も整えないといけない。

毎日ドタバタだ。

やれやれ。

 

 

 

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