「司令官、お風呂が出来ましたよ。」
「おお、済まんな、吹雪。じゃあ、とっとと入るか。」
「そうですね、ちゃっちゃとさっさと入りましょう。」
「ちょっと待て。」
「どうされました?」
「なんで君も脱いでいるの?」
「司令官と一緒に入るためです、決まっているじゃないですか。」
「あのさあ、一応俺はこの鎮守府もどきの責任者。わかるよね?」
「ええ、勿論です。」
「その責任者が部下と混浴するだなんて、公序良俗に反するぞ。」
「日本では最近まで、混浴出来る温泉が全国各地にありました。」
「はあ。」
「艦船の魂を持つ私たちにとって、司令官との混浴は普通です。」
「はあ?」
「お湯がどんどん冷めますから、司令官、早く入りましょうね。」
「ま、いっか。ところでなあ、吹雪。」
「なんです、司令官? やりますか?」
「やらねえよ。」
「残念ですね。」
「あ~あ。」
「どうされました?」
「普通の吹雪が欲しかったなあ。」
「私のおっぱいは普通の標準の吹雪より二センチも大きいんですよ! 二センチも! 触ってみます?」
「触らんわ。」
「うぶですねえ、ふふふ。」
「これがモノホンの艦娘だったら、うふふきゃっきゃなんだが。」
「あこがれます?」
「部下と不適切な関係を持ったとして、処分対象になるだけさ。」
「その時は一緒にどこまでも逃亡しましょう。」
「お前と関係を持つのが前提なのな。」
「え、司令官、まさか何名もの艦娘と関係を持ちたいんですか?」
「そんな訳ないだろ、一名でもてんてこ舞いなのに。」
「私って、罪な女ですね。」
「錯乱してるんじゃねえ。」
「完全体ですよ、完全体。」
「不完全体の間違いだろ。」
「お背中洗いますね。」
「マイペースな奴だ。」
「おっと、手が滑ってしまいました。」
「やめれ、やめれ、やめんと怒るぞ。」
「ここはもうとっくに怒っていますよ。」
「ただの生理現象に過ぎないのである。」
「よーし、私がやっつけちゃうんだから!」
「なにをやっつけるつもりだ、お前はよ。」
「なに、ってナニに決まっているじゃないですか。」
「当たり前のように言ってんじゃないぞ、駆逐艦。」
「司令官は照れ屋さんですね。」
「歳上のおっさんから言われるとゾッとするわい。」
「今は可憐な美少女の姿じゃないですか、司令官。」
「ただし、外見に限る。」
「その内、中身も好きになりますよ。」
「さりげなく、くっつくんじゃない。」
「おお、このアジのカルパッチョは実に旨いな。」
「私が釣ってきて、絞めて、調理しましたから。」
「中身が俺より歳上のおっさんでなければなあ。」
「何事も慣れですよ、慣れ。」
「地味に厭なことを言うね。」
「明日はお好み焼きにしますね、司令官。」
「いいねえ、そうだ。たまにはそばを載せたお好み焼きを食べて……。」
「はい?」
「あ、その、ええと……。」
「なあ、司令官はん。」
「あ、ああ。」
「ワシもな、こないなことになっとるから、司令官はんになんと言われようとかまわんのですわ。」
「す、すまんな。」
「ええんです、実らぬ恋と知っておるさかい。でもな、お好み焼きにはそばを入れんもんなんです。」
「えっ、でも広島の……。」
「あかん。それ以上言うたらあかん。そないなことを言われたら、ワシは司令官はんを……。」
「わ、わかった。お好み焼きにかやくご飯は付くのかな?」
「はい、司令官。にゅうめんも付けましょうか?」
「おう、頼むよ。吹雪の作る飯は旨いからなあ。」
「任せてください!」
「あはは。」
「うふふ。」