はこちん!   作:輪音

216 / 349
CCⅩⅥ:霞ママとしんむす会

 

 

しんむす会。

堅苦しい正式名称にすると、信州退役艦娘会。

長野県飯綱(いいづな)町の定食屋で働く元艦娘の霞を代表とし、主な活動は霞をひたすら愛でることである。

多くの大きなお友達の熱烈系会員が在籍する会だ。

中の人がおっさんである罵倒系駆逐艦は散々抵抗し遅滞戦術まで用いたが衆寡敵せず、已む無く招き猫役と相成った。

しんむす会の中心的活動家は、長野駅で荒事専門職として配置されている三名の元艦娘だ。

長野県には後方支援型鎮守府と銘打った建物に居住している面々を除き、現在二〇名弱の艦娘甲種乙種が暮らしている。

中にはケッコンガチしている艦娘乙種もおり、素材的に考えるとおそろしいものさえあるけれども、当人同士が幸せそうなのでこれはこれでいいのかもしれない。

アッチョンプリケ。

 

ある晴れた日。

霞は黒いフリフリのゴシックロリータ系ドレスを着せられ、黄色い声を上げる元艦娘たちから激写されまくっていた。

そこには甲種も乙種も無い。

場所は長野市に点在する洋館のひとつ。

雪の中、職業写真家もその中に混じって撮影している。

霞は、長野県公式広報誌に掲載されるまでの知名度を有するようになっていた。

飯綱町名誉町民である彼女は地元での買い物が常時三割引となっており、お小遣いをちゃっかり貯めている身としては町や県からの依頼を断りにくい。

おまけに、人に頼られると断れない気質は既に他者から見抜かれていて、幾ら罵倒系の言葉を用いてもやさしさが滲み出てしまう結果となっている。

今回の撮影もおいしいものが食べられるという、食い意地の張った霞の急所を的確に掴んだしんむす会会員の力を示していた。

 

 

 

やれやれ、やっとご飯ね。

今夜はお洒落なイタリア料理店で食事。

撮影に応じたら奢ってくれるというので受けたけど、これでよかったのかしら?

貸切りだから気兼ねなく食べられるし、これはこれでいいかも。

 

先ずは林檎酒で乾杯。

地元で作られたシードル。

爽やかな酸味と甘やかさが、喉を伝って余韻が膨らんでゆく。

手作り万歳!

やっぱり林檎は長野産よね。

ベリーニやミモザも悪くないけど、地産地消って大事だと思うわ。

 

ブルスケッタ。

バケットを焼いてニンニクとオリーブ油を塗っただけなのに、とってもおいしい。

他の料理も期待出来そうで、わくわくする。

 

前菜盛り合わせ。

みんなで分けて食べる形式。

隣の子がわざわざよそってくれた。

顔が赤いけど、大丈夫なのかしら?

自家製ハムにソーセージ、茸に新鮮な野菜。

ドレッシングもさっぱりしていて、どんどん食べられるのがいいわね。

 

アクアパッツァ。

アンコウとトマトを使った蒸し煮。

単純に見えるけど、奥行きを感じるわ。

アンコウは大洗(おおあらい)から仕入れたっていうから本格的ね。

 

大きな籠に入れて出されたパンはすぐさまあちこちから手が伸びて、あっという間に無くなってしまう。

あたしの分は、隣の子が確保してくれていた。

あっさりした感じで自家製バターによく合う。

 

自家製チーズが盛られた皿を持った女の子が来た。

五種類もある。

それだけ自慢なのね。

ありがとう、って言ったら彼女は真っ赤になった。

 

パスタは娼婦風のなんとかっていう辛くておいしいのと、浅蜊とパセリの出汁がよく効いたおいしいものだった。

自家製パスタがモチモチしていて、歯応えがいい。

ずいぶんこだわっているわね。

 

デザートのドルチェはティラミスにカッサータにエスプレッソ。

代用珈琲じゃなくて、本物の珈琲だ。

麦でもタンポポでもなくて本物だわ。

ティラミスはチーズの風味と珈琲の深みが巧みに融合されていて、見事な協奏曲を奏でているわね。

カッサータはアイスクリームの中にお酒に浸けた干し果実が入っていて、まさに大人のデザートね。

 

おいしかったわ、と微笑んだら途端に撮影されまくった。

ホント、あんたたちも好きね。

 

 






※読まれなくても一切問題ありません。


【リアリティってなんやねんな】

『艦隊これくしょん』は整合性の面に於いて矛盾だらけの作品です。
公式設定ががばがばのゆるゆるなのも、設定しないのではなくて設定出来ないのだと愚考します。
『海軍』を当たり前のように使われている二次創作作品が大半ですが、ではその『海軍』ってなんでしょうか?
これは皮肉でもなんでもなく、最大級の矛盾のひとつだと愚考します。
『艦隊これくしょん』は並行世界の日本が舞台、が合理的解答ですか?
よくわからないので、『はこちん!』に於いての大本営は自衛隊と政府その他による第三セクター方式を採用しています。
擬似民主主義国家である日本社会は未だに男根思想が根強く、高い地位にある男性陣からの女性への蔑視的思考は未だ根深いものがあります。
そうした意識が息を吸う如くに巣食っている日本のお偉いさんたちの多くは、差別意識を指摘されたら驚くか怒るか戸惑うことでしょう。
それが、この国の現状です。
戦前戦時中の人のようなことを平気でのたまう人たちが、しばしば決定権を持つ国。

五〇年ほど昔、女性は一人で喫茶店に入ることが出来ませんでした。
居酒屋などに女性が一人で入れるようになったのも近年のことと思います。
こうしたことを言うと、「そんな昔のことを言うなんて。」と仰られる方も存在しますが、それは違います。
たかだか半世紀前まで、女性は一人で喫茶店にすら入れない社会だったんです。
戦前戦時中を舞台にしたドラマを観たりすると、おかしなところが出てきます。
女性の権利なんて、ろくになかったんです。
なんちゃって中世ヨーロッパ風異世界を舞台にした小説も、そうした観点で考えるとおかしなところがいろいろあります。
第二次世界大戦以前と以降では、世界的にも女性の権利がだいぶん変わっています。
未だにそうでない国もけっこうありますけれども。


▲権威主義
▲残業大好き
▲差別大好き
▲滅私奉公大好き
▲同調圧力大好き
▲国際感覚は欠如
▲威張るの大好き
▲怒鳴るの大好き
▲否定する俺恰好いい
▲二重規範三重規範は当たり前
▲『男のなんとか』が大好き
▲「女子供にはわからない。」が口癖
▲わからないものは兎に角否定する
▲『偉い人』が褒めたら無条件肯定


軍隊が太平洋戦争で無くならずに生き残っている設定の話も見受けられますが、その場合の艦娘に対する差別はかなり酷いものになるだろうと考えられます。
戦後生き残れたとしても、よくて飼い殺し悪くて他国の紛争地帯などに派遣されて磨り潰されるのが目に浮かぶようです。
下級貴族の三女四女くらいの扱いか、女性冒険者的な扱いか。
元帥が見識のある人物ならば、なんとかなる可能性もなくはないでしょうが……。


なんらかの事情によって戦後日本に軍隊が健在で艦娘が現れた場合、たぶん公式的な『艦これ』にはならないと思います。
男女平等には程遠い社会でしょうから。
女性差別が日常的な社会でしょうから。
軍隊を批判するような人物が提督として着任した場合、諜報員的な人物は冷戦時代の如くに多く存在するでしょうし、ぬるい人物の場合はおそらくハニートラップの回避が難しいでしょう。
提督を半ば軟禁状態にでもしない限り、接触する方法はいろいろありますし。
艦娘自体がハニートラップ要員の可能性すらあり得るでしょう。


また、自衛隊を無かったことにしたがる方もちらほらおられますが、その場合の日本社会は軍事国家です。
それはかなりキツい社会でしょう。
『差別』を無いことにしている作品も散見されますが、現在の日本社会でも差別がまだまだ健在なのに軍事国家で女性の権利が如何程有るものでしょうか?
水木しげるさんの戦争漫画を読まれたことはありますか?
あれに近い社会でしょう。
軍部上等の社会はおそろしいです。
暴力は日常的でしょうし、上下関係を考えると酷い展開は普通に起こると考えられます。
殴る蹴るが当たり前の社会は厭過ぎです。
それに近い思考の人が野球などでそういうことを言われると、気持ち悪いです。
『そんなの当たり前でしょ』、という考えが正直こわいと考えます。
わたしは『非国民』的な発想の持ち主なので、そういった社会では暮らしたくないです。
明るい未来は考えにくいのですが、暗いセカイが大好きな方々にとってはたまらない魅力があるのでしょう。
個人的には嬉しくないセカイですが。
女性差別が横行する社会はやだなあ。
昔の資料を読むとうんざりすることが多々ありますが、案外そうした亡霊は今も社会上層部で脈々と生きていたりして、日本社会が国際化する時代は当分来ないことが容易に理解出来ます。

そんな社会での『艦これ』小説は書きたくないです。
ただ、他の書き手や描き手の方々を批判するつもりはありません。
それはそれ、これはこれです。
『軍隊』が普通に存在する社会を描くとどうなるか、リアルに書かれておられる方も存在します。わたしは書きたくありませんが。
トンデモ妄想小説上等。
妄想こそが小説家の燃料なのですから。
誉め言葉と受け取っておきましょうか。

自衛隊が壊滅した後、改めて海軍を作る話もありますが、どれくらい時間がかかるのでしょう?
数年じゃ無理な気がします。
他国と一切やり取り出来ない状況で一から軍隊を作る?
……それ、本気ですか?
一体、何年かかるのでしょう?
えっ?
何十年も深海棲艦と戦い続けるんですか?
それだと、人類の負けじゃないんですか?

シーレーンが破壊されて何年も経過した日本社会は、おそらく国家として復興出来ないかもしれません。
数年石油が輸入出来なくなった日本は、オシマイ或いは人口激減する可能性が高いです。
何年も鎖国状態だった日本が普通に復興する話を見かけますけれども、あれは極めて難しい気がしないでもないです。
備蓄分の石油の配分でも揉めそうですし、輸送費や物価は高騰しますし、第一次から第三次に至る殆どの産業が壊滅、冬期ならば低体温症で亡くなる方が続出し、とエグい展開が目白押しの筈です。
具体的に書けば書く程鬱展開です。
故に皆さん、そうした点を排除されるのでしょう。

自販機は壊されているか撤去されているか錆びて動かなくなっているか。
コンビニエンスストアみたいな店舗はかなり復興していないと営業出来ないでしょうし、ショッピングセンターは……維持出来るのでしょうか?
時間限定などで対処可能?
甘めに設定しないと、けっこう絶望的な話になりそうです。
甘過ぎるとリアリティどこへ行った的な話になりそうです。


提督一人きりで何名もの艦娘と箱庭で暮らす状況は、民主主義国家もどきの社会でも危機感を感じられてしまうのではないでしょうか?
軍国主義が横行する社会だと、そんなことはさせないでしょう。
子供っぽい人物が提督の場合は危機的可能性が極めて大きくなりますから、現実的には補佐役や監視役が重要人物になります。

その『正義』にどれくらい正当性があるのか?
独り善がりな『正義』がどれくらいこわいか。

提督一人が国の防衛を担って艦娘たちと奮闘する話もありますが、国としては首輪を嵌めたがることでしょう。
それは国家として当然の考え方です。
それに該当するのが、おそらくは大淀と明石なのでしょう。
もしくは憲兵。
大本営から送られてくる艦娘も……。
彼女たちを大本営の犬とか黒幕とかと蔑まれる方もおられるようですが、逆にいないと別の方式で大本営やら政府筋やらからがんじがらめにされる可能性はあります。
それが悲惨な状況を生み出す可能性は大きいです。
彼らの介入が無いと考える方が不自然に思えます。
やりたい放題など不可能なのですから。
陸軍艦娘が監視役に該当する作品もあります。
監視役と程よくやり取りするのは提督の義務です。
現実に鎮守府を運営するとしたら、雑居系鎮守府を設立し、複数の提督がそれぞれ二、三もしくは四、五艦隊程度の戦力で海域解放に向かうのが落としどころかもしれません。
その鎮守府には提督の補佐官なり副提督なりがいて、事務課があって、売店のおばちゃんがいて、食堂のおばちゃんがいて、工廠には特車二課のような整備員たちがいるのかもしれません。
勿論、彼らは徹底的に背後関係を洗われていることでしょう。


密室的状況で戦う艦娘たちの戦後は暗いでしょう。
戦争しか知らない娘たちが、戦後社会を切り抜けられるでしょうか?
ヴェトナム戦争で国に貢献した、勇敢な兵士たちの戦後をご存じですか?
報道を鵜呑みにする人が未だ多い現代社会ですが、軍事国家ならばその傾向に拍車がかかることでしょう。
嗚呼、大本営発表!
ネットも利用するかもしれません。
大声を出す人の言葉によくよく注意しなくてはなりませんが、得てして我々はその声が正しいと誤認識しがちです。
否定する俺恰好いいとか辛口な俺恰好いいとか思っている方々も、付和雷同の傾向はあります。
一定の『正義』に追随しているようですから。
その『正義』が常に正しいとは限らないのですけれども、誰それが唱えたから正しいという方は少なくありません。
『正義』とは一体なんでしょうか?


訳のわからない『正義』に、艦娘たちが振り回されないようにしたいものです。
妄想まみれになりつつ、今宵も四苦八苦。
トンデモ妄想パワーよ、来たれ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。