先日、関東圏最大級都市の横須賀にある大本営へ行った時のこと。
なんかおもろいもんないんかと呉の先輩から言われ、こんなんどうですかねと三〇秒程で描いた落書きが『いかお』として製品化された時は驚いた。
函館と言えば烏賊(いか)。
それを適当に戯画化してさらさら描いたら、まさかまさかの根付けやキーホルダーやストラップ化。
それは瞬く間に函館鎮守府所属の艦娘の標準装備と化し、函館へ静養や休暇に来ている艦娘へも伝播し、何故かは分からないが道南及び青森県の女子中学生や高校生たちから欲しいとの要望が殺到し、更には私が試供品で沢山貰ったステッドラーの加工用粘土で作り上げオーブンで焼き上げた不細工なモノが、プレミア価格で流通するという異常な状況にまで発展した。
なにこれ?
急いで粘土製『いかお』を増産し、公式サイトで販売したら即時完売。
沈静化するまでは毎晩夜鍋仕事である。
なんてこったい!
更にはノートやメモ帳まで作ろうとの悪ノリまで発生し、北海道の物産展に急遽依託参加したところ即日完売したそうな。
アジャパーッ!
訳がわからん。
放送局や新聞や雑誌編集部やデイリーポータルなんちゃらなどからの取材が相次いだが、どれも断ってもらった。
めんどくさい。
『いかお』人気はネット上で加熱し、過熱の様相さえ見せていた。
先輩とこの地元企業であるセーラー万年筆が限定版でいかおボールペンやいかお万年筆などを製造したいと呉鎮守府へ打診してきたそうで、地元愛の強い先輩からの要請を断れる筈も無く仕方なしに受諾したら文房具会社の人や食品会社の人などが函館鎮守府へ続々押し掛ける事態へと発展した。
オーマイガッ!
いかせんべいを作っている会社群の陳情は無視出来ず、程々にしないと在庫過多になりかねませんよと老婆心ながら助言した上で許諾した。
まさか、熊本のあの人気ゆるキャラみたいにはなるまいて。
転売屋の横行を防ぐため、函館駅構内売店や仙台横須賀三宮大阪博多でも粘土製『いかお』が入手出来るように増産を頑張る。
本体は私が作り、足は駆逐艦たちに作ってもらう。
本宮ひろ志方式で、この状況を乗りきるんだがね。
公式サイトでは、出品即完売の状況が続いている。
何時までもこんな状況が続く訳ない筈だから、今を乗り越えればなんとかなる。
消費者は気まぐれなのだから、何時までもひとつのモノに囚われる人は少ない。
『なめ猫』みたいにはなるまいて。
少しなりかけているみたいだけど。
パチもんまで現れたが、大淀が物理的に解決した模様である。
電脳上では造形についての造詣が深い考察も散見されるとか。
そんなことより増産だ。
そげに考えてこれをつくりょうりゃあせんのじゃ。
まあ、数ヵ月で音沙汰が無くなるだろう。
たぶん。
「提督!」
「なんでしょう、大淀さん?」
「オランダやドイツなどの業者から、美濃柱さん経由で問い合わせが来ています!」
「はてさて、欧州方面に今なにかありましたっけ?」
「『いかお』を今すぐ売ってくれ、とのことです!」
「はい?」
「『いかお』人気が欧州方面へ飛び火しています!」
「な、なんだってー?」
どうやらまだまだ騒動は続きそうだ。