はこちん!   作:輪音

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CCⅩⅩⅧ:こんにちは、愛しい天龍

 

 

 

『努力よりほかにわれわれの未来をよくするものはなく、また努力よりほかにわれわれの過去を美しくするものはないのである』(幸田露伴)

 

 

 

僕は小学生にして、奈良鎮守府の提督になることが決まった。

前線配置ではなく、後方支援型鎮守府のお飾りの象徴らしい。

艦娘とはなんだろう?

よくわからないな。

僕の妻になる天龍は美しい。

だが、彼女はとても恥ずかしがり屋で、僕がちょっと触ると初々しく猛々しく反応する。

それすらも可愛いと思うのはここだけの話にしてもらいたい。

僕が男になる時は彼女の助けが必要だ。

僕はまだ童貞状態から脱していないのだから。

 

 

僕の伴侶たる天龍は恥ずかしがり屋だ。

僕が夫婦として触れ合おうとすると、即座に拒絶してしまう。

彼女は言うのだ。

 

「ガキが色気づいてんじゃねーよ。」

 

もちろん、なにも納得していない。

今だってそうだ。

妻に触らない夫などいないだろう。

そういうことだ。

僕はその時彼女に反論しなかった。

それは正しくなかったのかもしれない。

或いは正しい選択をしたかもしれない。

 

 

僕は酷く腹を空かせていることに気づいた。

これはあくまでも僕の考えだが、それは和食でも満たされるし、洋食や中華料理でも満たされる。

即席料理でも可能だけど、そういうことでないと言いたい。

オーケー、認めよう、僕は天龍が作った手料理を食べたい。

彼女はなにか手の込んだものを作ってくれるかもしれない。

それとも、出来合いの惣菜を組み合わせるのかもしれない。

フェルメール・ブルーのような、空の下。

僕はぼんやりと彼女を想う。

 

 

少し暖かい日。

妻の天龍は日帰り出張とかで、京都の舞鶴鎮守府へと出掛けてしまった。

僕が渡した、我が手作りのシウマイ弁当をどのように食べるのだろうか?

冷めてもおいしいご飯からだろうか?

それとも意外にアンズからだろうか?

携帯型魔法瓶に入れた柳生茶は口に合っただろうか?

あの魅惑的な唇を可愛らしくもきゅもきゅ動かしながら、他所の天龍にからからわれるのだろう。

それを思うと胸が高鳴る。

届け届けよ、この気持ち。

あれは正に我が渾身の愛妻向け弁当。

ハートが多すぎたかもしれないけど。

ちょっとしょんぼりする。

彼女は生真面目過ぎるし、元が男だったことにこだわり過ぎているように見える。

そんなことは気にしないのに。

今が、今こそが僕らの夫婦生活を推進する現実世界なのに。

僕は酷く虚しい気持ちになり、スーパーの雷栄でハムとレタスとチーズとトマトと一ダースに斬り刻まれた食パンと幾らかのおやつを買い、ひとりぼっちで建設中の後方支援型鎮守府へ戻った。

建築妖精たち全員に菓子を配る。

彼らは不思議な踊りをおどった。

気配り目配り心配りが大切だと妻は言う。

誠にその通りだと思う。

だから、僕の愛に応えて欲しいと切実に感じる。

チューチューくらい、させてくれたらいいのに。

下穿きのにおいを嗅いだくらいで、拳骨を落とさなくてもいいだろうに。

あんなに真っ赤になっちゃって。

可愛いったらありゃしないなあ。

がらんどうの厨房にて極めてシンプルでプリンシパルなサンドウィッチを作り、和歌山県産の蜜柑果汁水でそれを胃袋へ流し込んだ。

さて、ポトフを作り始めるか。

例え艦娘が何者だろうと、好むと好まざるとにかかわらず、僕は、いや僕を含むすべての提督は彼女たちと付き合わなくてはならない。

いろいろなモノを剥いたり剥かれたりしつつ。

本音を言えば、大歓迎だ。

そして天龍は素晴らしい。

あらゆる天龍は実に魅力的だが、僕の天龍が中でも最高だ。

彼女に僕の初めてを注ぎ込みたい。

あの美しく整った顔を歪ませたい。

彼女は僕を熱烈に愛してくれるかもしれない。

それとも、僕を愛してくれないかもしれない。

わからないな。

彼女に無理矢理迫ることは許されないし、だからと言って他の男に渡すくらいならばロミオとジュリエットになることさえいとわない。

 

 

彼女は僕のものだ。

誰にも渡すものか。

 

 

そして僕は、帰ってきた天龍に手製のポトフを振る舞い、パン・ド・カンパーニュのブルーチーズ添えを一緒に食べ、共に入浴して添い寝する。

何故、胸を掴んだくらいで怒られるのか?

僕にはよくわからないな。

風の吹く音を聞きながら、僕は彼女に交渉するもことごとく失敗した。

身持ちの固いところは僕の好むところにあるものだから、それを否定する気持ちにはなれない。

失敗はセイコウの元。

けっしてくじけてはならない。

奈良鎮守府だけに。

 

僕は、本当の意味で艦娘たちと心が通い合っているかどうかがわからない。

わからないが、天龍を愛し抜いていこうと思う。

彼女は何故、僕が揉んだら怒るのだろう?

こんなにも愛しているのに。

脳裏で『ホテル・カリフォルニア』を流しながら、彼女と夢を貪った。

共に同じ道を歩めると信じながら。

共に同じ夢を見てると信じながら。

 

 

 

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