バカップルぶりが加速化しているような、松輪泊地の提督と漣の続きです。
好評っぽいので再び書いてみました。
こういう漣が初期艦だったら、個人的にはとても充実した日々を過ごせそうだと考えます。
【今話の元ネタ】
◎魁!!男塾
◎聖杯戦争
◎装甲騎兵ボトムズ
◎機動警察パトレイバー
◎電撃ネットワーク
他
『おさかな鎮守府』みたいな雰囲気は好きなのですが、ああいう感じの話はなかなか書けないです。
じゃこさんの内包される人徳が滲み出ているのでしょう、おそらくは。
個人的には、昭和三〇年代後半から昭和四〇年代ぽい感じがしました。
『昭和のやさしい理想的世界』、といったところでしょうか。
細かなところがよく描けていて、あれを文章でなんとか醸し出せないかと考えてしまいました。
それと、篠房六郎さんの描かれた天龍がとても恰好良かったです。
今回は二八四〇文字あります。
「ご主人様、このザンギ、めっちゃおいしいですよ。はい、あーん。」
「うん、おお! めちゃウマッ! この鶏の唐揚げ、めちゃウマッ!」
「鳳翔さんのおいしさと私のあーんとで、おいしさ三倍増しですね。」
「なんであんたが加わると、おいしさが三倍増しになっちゃうのよ。」
「おやおや、ぼのたん、それは嫉妬ですかな。そいつぁイケねえな。」
「イケてないのはあんたの方よ。」
「あんらまあ、こいつは厳しい。」
「ははは、一本取られたな、漣。」
「いやはやまさにまさにで御座るよ。」
「「あははは。」」
「そこのボンクラ主従。」
「「曙ちゃん、酷い!」」
「なんで、松輪泊地のあんたらが函館にいるのよ。」
「俺はここの提督に艦娘補充の件で相談しに来たんだ。あっちから連絡すると盗聴されるし。防諜措置ってとこだな。」
「私は愛するご主人様の性奴隷兼秘書艦兼護衛で。論理的に当然の帰結ですね。私のおけつはご主人様のモノですが。」
「なんで性奴隷なのよ。」
「あっれー、知らないの、ぼのたん。異世界に行った人見知り系主人公は、性奴隷を買うことでしか彼女を作れないことが多いんだよ。女の子と付き合ったことが無いから、隷属させて言うことを聞かせる。悲しい展開だよね。そういうやり方でしか、人間関係を構築出来ないんだから。」
「危ないネタは止めなさい。いろんな人から怒られるわよ。」
「誰に?」
「即席提督が関わっている民明書院の編集の人とか、言峰書店の愉悦社長とか。」
「ええ、なに、ライトノベルの編集者とかがここに押し掛けて来るっていうの?」
「鎮守府内には入れないわ。」
「脅かさないで、ぼのたん。」
「盗聴器を仕掛けている、という噂はあるのよね。」
「「え?」」
「なーんてね、冗談よ、冗談。で、何時までいる気なの?」
「松輪島って、今の時期もかなり寒くなったりするんだ。」
「五月の今頃でも氷点下になっちゃうことがありますし。」
「けっこう寒いのね。」
「二月なんて、めちゃめちゃ寒い日が普通に続いたりしてな。」
「そんな時に哨戒任務をしなきゃならないなんて大変ですよ。」
「だから、帰投してきたら甘酒を呑ませてやるんだ。」
「ご主人様とお風呂に入って、一緒に眠るんですよ。」
「はいはい、あんましのろけない方がいいわよ。ここは愛にさ迷う艦娘たちの、硝煙と火薬にまみれた吹きだまりなんだから。ほら、何名かあんたたちを睨んでいるでしょ。」
「ウドの街?」
「バトリングなんてしないわよ。」
「珈琲を飲んで苦いとか言うんでしょ、その可愛い顔で、その可愛い顔で!」
「瞳孔を開いたままで言わないでよね。」
「提督を喰う艦娘、提督に喰われる艦娘。そのおこぼれを狙う艦娘。牙を持たぬ艦娘は生きていかれぬこのセカイ。あらゆる欲望を有した艦娘が集う街、函館。ここは百年戦争が生み出し……。」
「じゃあ、漣。俺は執務室に行くから。」
「お名残惜しゅう御座いますわ、ご主人様。」
「はいはい、小芝居はそこまでよ。」
「「ぼのたんが冷たい。」」
「ぼのたん言うな、あんたら。」
「ねえ、曙。」
「なに、漣。」
「松輪に来ない?」
「なに、その松戸に来ない、みたいな軽いノリ?」
「ぴーなっつ最中にピーナッツサブレーにピーナッツバター、それと落花生のおおまさりを付けるから、ねえ?」
「確かに千葉県松戸市には落花生を使ったお菓子があるけど、それが松輪泊地に転属する理由にはならないわ。」
「今なら、第二夫人になれるよ!」
「なにそのハーレム推奨表現は。」
「提督は基本的に重婚しないと。」
「日本の法律上、重婚はダメよ。」
「なに、法律を変えればいいの。」
「そんなの出来る訳ないでしょ。」
「ふふん、大淀さんに頼むもの。」
「え、大淀さんて、権力者なの?」
「バールのようなモノで、ねえ。」
「あんたなにさせる気なのよ!?」
「ちょっと、そこのあんぽんたん主従。」
「「曙ちゃん、酷い!」」
「なにこのチラシ。」
「勧誘用のチラシですがなにか?」
「うん、このチラシに問題ある?」
「函館でこういった勧誘は禁止。」
「「えええっー、なしてさ!?」」
「許可したらあちこちから煩(わずら)わしいのが大挙してやってくるでしょ。退去させるのに往生するんだから。」
「「往生せいやああ!!」」
「それなんて、俺に銃を撃たせろ的な巡査なのよ。兎に角、こういう勧誘は禁止。わかったわね。駆逐艦三名、軽巡洋艦一名、軽空母一名の着任がおじゃんになったらとっても困るでしょ? いいわね。」
「「うう、なんも言えねえ。」」
「漣! 大変だ!」
「どうしましたご主人様、なにも着ていないじゃありませんか!」
「ここの艦娘たちは、提督が入浴していると乱入してくるんだ!」
「成程、それでそこが、そんなにも元気なんですね。」
「信じてくれよ、漣。俺はお前が初めてだったんだ!」
「大丈夫ですよ、私がご主人様を襲ったんですから。」
「そこのなにも着ていない変態提督。はよ服を着ろ。」
「曙ちゃんが冷たい。」
「ぼのたんがデレたら、そりゃあもう可愛いですよ。」
「おお、そうか。」
「電撃ネットワークじゃないんだから、身を張ったギャグなんて早死にする要因になるわよ。」
「いや、流石に洗剤は飲めないよ、俺。」
「あそこに紐を付けるのはやりました。」
「暴露話はいいから、さっさと別の風呂に行きなさい。」
「「ほいさっさー!」」
「異世界で剣士として認められたいんなら、現世でも少しは剣術をたしなんでおけよ!」
「なに怒ってんのよ、漣。」
「今まで剣を握ったことも無くて剣術をたしなんだことも無くて、それで異世界に転移したら剣の達人という展開に納得出来ないだけですうっ!」
「別にいいじゃない。虚構なんだから。」
「虚構だからなにやってもいいと違う!」
「ほら、怪談で実話だって言いながら、僕には霊感がまったく無いけど幽霊やお化けに出会ってしまう話がいっぱいあるじゃない。本当だ本当だ、って強調しなかったらいいのに、頭がそこまで回らないのね。」
「ぼのたん、そういうのも読むんだ。」
「即席提督がね、隠し芸でいつも怪談をやるのよ。」
「へえ。」
「それが殆ど実体験でね。妙にすとんと話が終わるから、余韻というかなんかゾクッとすることがあるのよ。『図書館』はこわかったわね。」
「ええと、眠れなくなると困るのでそろそろ失礼いたしますです、曙ちゃん。」
「丁度いいわ。即席提督に怪談をやってもらいましょう。」
「あ、あの……ちょ、ちょっと……。」
「おやー、どうしました、ご主人様。」
「あ、いや、ちょっと夢見が悪くて。」
「この漣の夢でもご覧になりました?」
「そうだな。」
「キタコレ!」
「お前は絶対に失わない。絶対絶対。」
「ああ、そういう方向性の夢ですか。」
「俺は、お前がいないとダメなんだ。」
「もーっとギュッとしていいですよ。」
「済まない漣。弱い俺を許してくれ。」
「はい、漣のすべてはご主人様の為。」
「漣……。」
「ご主人様……。」
「おうコラ、ぽんこつ主従! そういうのは松輪島に帰ってからやりなさい! みんなが集まる朝の食堂でやるな!」
「「ぼのたん、厳しい!」」