はこちん!   作:輪音

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『はこちん!』が、とうとう三〇〇回を迎えました。
そして、艦これ小説を断続的に書き続けて三年以上。
我ながら、これだけよく続いているものと感じます。
これもひとえに、皆々様のご厚意あってのことと存じます。
ここに深く感謝申し上げます。
艦これ小説の中でもひたすら異端を突っ走っている作品ですが、今後ともご愛顧いただけましたら幸いです。

今回はほんのりエッチです。
今話の本編は五〇〇〇文字ほどあります。
Cパートは、一四〇〇文字ほどあります。

SCP的に考えると、エレキングの幼体はオブジェクトクラスがSafeなんじゃないかなと思えなくもないのです。



海の彼方から
激動の深海棲艦が呼んでいる
胸の高まりをラッパの音に変えて
艦娘は船出する
いろいろなものを捨ててきて
いろいろな仲間と別れてきた
デボヤ海記に曰く
彼の地が我らに望むものはなに?
彼の地が我らに恵まんとするものはなに?

Not even justice,I hope to get to truth.
真実の灯りは見えるか







CCC:穿いていないのは、いけないと思います

 

 

 

執務室の水槽にて呑気に泳ぐエレキング。

皆からはエレちゃんなどと呼ばれている。

体長二〇センチメートル、体重五〇〇グラム。

これはメトロン星人から貰った宇宙怪獣の幼体で、目の部分にレーダー状の回転する角を持ち、機嫌がいい時はそれをぐるぐる回している。

白い体に黒いまだら模様が特徴だ。

人懐っこい個体のようで、うちの艦娘にもよく慣れている。

成長すると、けっこう強くなるらしい。

口の部分は半透明で、半月状の高圧的放電光線を吐けるのだとか。

物騒だが、今のところはそんな振る舞いをすることなどない。

尻尾で相手を締め上げて、放電攻撃することも出来るそうな。

 

現在の私は鹿島と吹雪に抱きつかれて、締め上げられているようなものだが。

鼻息が荒く、目付きが怪しい。

鼻からオイル漏れもしている。

書類作業が進まないので、もう少し離れてくれたらありがたいのだけど。

穿いていないから大丈夫ですとかのたまっているけれども、そういうのはとってもいけないと思うのであります。

大淀は新しい下穿きを買ったとかで私にちらちらとその黒い一部を見せてくるし、君たち、いい加減にしなさい。

おっさんの自家発電が見たいだなんて、そんなの絶対おかしいよ。

 

 

 

ようやく雪が降らなくなったと思っていたら、松輪島から来た主従が延々と寒さについて語るのを聞かされた。

 

「あの島は、今の時期でも氷点下になったりするんだよ。通年、暖房が必要なんだ。それと、何故だかロシア軍基地はどんどん女性兵士が増えてんだよな。」

「そうなんですよ、川崎さん。」

「漣(さざなみ)、ネタが古いぞ。」

「わっかんないかな?」

「わっかんないだろうなあ。」

「なに、昭和のコントをやっているんですか、お二方。」

「いやあ、あんだけ寒いとやることが無くてさ。ついつい、昭和に傾倒してしまうんだよ。ところで、今回も補充の艦娘はいないのかな?」

「募集はかけているんですけどね。」

「ご主人様と私がラブラブだから、そこに食い込めないってみんなが断念しちゃうんですよ、きっと。」

「そいつぁ、だんねんだなあ。」

「とっても、だんねんですね。」

 

結局、主従は今回も増員無しで島へ帰った。

しおしおのパーとか言いつつ。

様々な分野の買い物を行って。

 

哨戒艦隊を増やしてあげるか。

乙種だと着任即轟沈だろうし。

誰を送り込むかが高難易度だ。

艦選って、けっこう難しいな。

 

 

 

業務終了後、初雪や望月とセガ・サターンのテレビゲームで遊ぶ。

アトランティス社のテロメアサマナーは難易度が高いのだけど、ハマると癖になる味わいがあるのだ。

仲魔と呼ばれる悪魔たちと彼女たちを従える召喚師との、艱難辛苦を乗り越えて紡がれる成長物語だ。

それは、提督と艦娘との付き合い方にもなにかしら通じる部分があるのではないだろうか?

最近はテルミナシリーズが人気のようだけれど、こうした作品の続編が出てくれたら個人的に嬉しい。

両名がファミコンで『狂王の試練塔』に挑戦する姿を眺めた。

さりげなく触ってこようとしたので、おいたはダメだとやんわり注意する。

おいちゃんのケツなんて触り心地がさほどよくないだろうに。

それに穿いていないのはよろしくないぞ。

その後、ハッチーモッチーステーションの打ち合わせをした。

けっこう苦戦する。

二名はかなりフリーダムなので、調整がなかなか難しいのだ。

でも、聴衆からは割りと高い評価を得ているらしい。解せぬ。

 

 

 

大湊(おおみなと)の提督から電話がかかり、その流れから戦後元艦娘によるプロ野球球団を設立するという与汰話で盛り上がった。

本拠地は青森にしたいと言われたのでそれを快諾し、盗塁王は島風で決定する。球団名だが、青森ワルキューレなんてどうじゃろか?

 

 

 

とある提督が憲兵隊に逮捕されたという。

部下の艦娘たちに手を出したからという。

嵌められたのか、或いはハメたのか。

いつかはヤるだろうと思っていたが。

菊門専門だと思っていたが、どうやら異なるみたいだ。

呉の先輩から身元保証人を頼まれる。

大淀や島風や吹雪らを引き連れ、大本営に乗り込むか。

やっぱ、最後は肉体言語が必要となるのだな。

私は武闘派じゃないのに。

……是非も無し、か。

ええっと、バールのようなもの、バールのようなもの。

 

 

 

本日は雲龍が第二秘書艦として、書類業務を手伝ってくれている。

ちなみに第一秘書艦の大淀は、大本営でのアレの後始末であちらに居残っていた。

しかし、その、なんだ。

性欲に負ける提督が続出しているのも、わからないでもない。

もし中学生や高校生で提督になってしまったら、溢れる欲望の制御に大変困難をきたすものと思われる。

無邪気に美人の艦娘に抱きつかれたら、どの程度正気を保てるだろうか。

個人的にもめがっさヤバい。

駆逐艦は、まあ、妹的な感じで耐えられるけれども。

混浴やら添い寝やらと、SAN値を削られる日々だ。

それ故に欲望の発散は秘して行わねばならないのだ。

難しいものである。

と。

美しき秘書艦が不意に目の前に近づいて来た。

 

「提督。」

「なんでしょう?」

「吸う?」

「……あの、雲龍さん、いきなりポロリをやらないでください。」

「困っていたようだから。」

「それは否定しませんが。」

「それとも、私が吸おうかしら。」

「それも困りますね。」

「だって、苦しそうに見えるわ。」

「それを耐えてこその提督です。」

「耐えなくてもいいんじゃないかしら?」

「一度戦端を開いてしまったら、もう後戻りは出来ません。そして内ゲバに至り、鎮守府は崩壊です。」

「私は側室でかまわないわ。」

「好意はありがたいですよ。」

「かまってくれないと、エロい実力行使をしちゃうわよ。」

「間宮さんのところで、苺パフェなど如何でしょうかね?」

「それはいいわね。」

 

そういうことになった。

 

 

 

夜中。

外した時間に入浴したつもりだったが、三教官のジェットストリームアタックでトリプラーなアテナエクスクラメーションを喰らう。

密着すれすれというのは大変困るぞい。

長門教官、加賀教官、妙高教官。

にこやかに微笑みながら、包囲網を狭めてくる。

いずれも魅力溢れる方なので、むっちゃ困るぞ。

剥き出しのたわわな豊潤が、お湯にぷかぷか浮かんでいる。

おう、モーレツ。

好意はわかるのだが、現状では非接触を貫かざるを得ない。

むむむ。

 

 

 

今日の補佐役の艦娘たちは曙と霞。

大淀は大湊へ打ち合わせに行った。

朝の作業が一通り終わった頃、何故か彼女たちは執務室の鍵を掛けた。

曙と霞が真っ赤な顔で私に近づく。

 

「と、ところで、即席提督。そ、その、提督の、じ、自家発電の手伝いをしてあげてもいいのよ。」

「なにを言っているんですか、曙さん。」

「な、なんちゃって司令官の、じ、自家発電を手伝う子がいたっていいじゃない。こ、こちらからだったら不味いけど、そちらからなら合法よ、合法。曙や叢雲(むらくも)と一緒に、三名で手伝ってあげるわよ。今、む、叢雲を呼び出すから。」

「やめてください、霞さん。しんでしまいます。」

 

龍驤と龍田と島風が執務室に雪崩れ込んできたので、どうにかこうにか危機は脱した。

 

 

 

朝食で李さんの中華粥を食べようと思ったら、何故か鳳翔間宮のフレンチトースト対決に巻き込まれた。

何度めになるのか、もうわからない程である。

右に鳳翔、左に間宮。

密着する両名の吐息が荒木又右衛門じゃわい。

紅茶の入ったカップを持って既に臨戦態勢だ。

その勢い、まさに最終決戦仕様。

命捨てがまるは今ぞ、という雰囲気を醸し出している。

……勘弁して欲しい。

その上、大鷹や大本営の瑞鶴などが乱入してきてめちゃめちゃになった。

そんなに食べられんわいな。

ローマやネヴァダなどの海外艦や投降系深海棲艦勢が面白がって掻き回してきたので、混乱は更に激しくなった。

君たち、当分添い寝はなしやで。

そんな状況でも、料理上手たちは平然としている。

鳳翔間宮は通常運転なのだった。

小さく切り分けられた黄金色の食べものが美しく皿に並べられている。

一口大なので、素手でどうぞと言われた。

口に入れると、ふわりと広がる慈味深さ。

甘過ぎず、くどすぎず、丁度よい塩梅だ。

どちらも味わいがよく、奥深く余韻も感じられる。

甲乙付けがたい。

代わる代わる紅茶を飲ませてもらいつつ、絶品のフレンチトーストを食べてゆく。

真剣極まる周りの眼が、ガリガリと我が理性を削っていった。

完食したが、私の感性では判定出来ない。

むむむ。

指が汚れましたね、と両名に咥えられる。

あっ、その手があったか、と誰かの声が聞こえてきた。

広報の青葉が興奮しながらパチパチ撮影するので、メッとしておく。

彼女たちに自重を覚えさせないと……。

 

何故か翌朝、大量のパイが食堂を満たしたのだった。

一体、誰が作っているのだろう?

……まっ、いっか。

食いねえ、食いねえ、パイ食いねえ。

あまりに多かったので、函館に寄港した艦娘全員に漏れなく進呈した。

陸海双方の自衛隊や海上保安庁の人々にもお裾分けし好評を得られた。

 

 

 

本日の第二秘書艦は龍田。

先日は助けてもらえてよかった。

でも、なんだか少し変な様子だ。

私を見つめる目付きがとてもエロい。

休憩時間から、更に変になってきた。

上目遣いで私を色っぽく見つめてくる。

豊かなバルジを使って、えへへと嗤う。

 

「提督さん、挟みますか? こんな感じで。」

「筆箱で遊んではいけませんよ、龍田さん。」

「あら、ムラムラして大変なんじゃないですか?」

「それとこれとは別です。」

「誰にも言いませんから。」

「言う言わないの問題じゃないんです。」

「ではこんなのはどうなんでしょうか?」

「そういう手つきはしないでください。」

「こっちの方がいいですか?」

「具体的な仕草をされると困りますよ。」

「むしろ誰かとヤっちゃって黙っていた方が、効率的じゃないですか?」

「そういう問題じゃないです。」

「今穿いていないんですけど、見ます?」

「エッチなのは、いけないと思います。」

 

嗚呼、鼻から牛乳が出てきそうだ。

結局他所の天龍たちがやって来て、事なきを得た。

 

 

 

龍驤と休憩時間中に馬鹿話をする。

 

「あんな、提督。」

「はい、なんでしょう?」

「ウチが提督とこで添い寝するやろ。」

「そういう時もありますね。」

「においをかぐのは、問題ないわな。」

「その辺を言い出したら、きりがないですからね。」

「寝ぼけてつい触ってまうのも、しゃあないわな。」

「場所によりけりです。」

「あの一パーセントんとこはダメか。」

「一パーセントのとこはダメですね。」

「こっちがムラムラしてどないしようもなくなったら、触ってもええんか?」

「そういう時は、波しぶきを浴びつつ海に向かって吠えたらいいんですよ。」

「出したい時はいつでも手伝うたるから、安心してな。」

「爽やかな顔で、下品な動きをしないでくれませんか。」

「今穿いとらんのやけど、どう思う?」

「とてもよろしくないと思いますね。」

「見たくはないんか?」

「そうではないです。」

「ほな、見せよか。」

「それはダメです。」

「ええやん、減るもんでもないし。」

「私の理性値が確実に減りますよ。」

「いつでもなんでもしたるから、ムラムラしたら遠慮なしにゆうてな。」

 

 

1919プロダクションという芸能事務所に所属するセクシーな女の子たちが、道南紹介番組の件で我が鎮守府にやって来た。

その人数、八人。

昭和の深夜放送的湯けむり旅情的うさぎちゃん的なノリで、温泉を紹介もしたりするそうな。

マニアックやね。

湯の川温泉での混浴を要求されて困惑するも、放送コード的理由から水着着用必須で安心ですと、密着してきた美人プロデューサーに熱く激しく説得されて渋々了承する。

大本営が何故許可を出したのかが、よくわからない。

 

浴室に入って、ヤられたのを知った。

……謀ったな、シャア。

めっさ面積の小さな布切れのみを装着した女の子たち及びプロデューサーにぴったりくっつかれ、ファイター形態からガウォーク形態を経てバトロイド形態に素早く変形した。

柿崎ーっ!

…………いろいろとあやういところだった。

何故か周囲で静かに観察しつつギラギラする艦娘たちの視線に、とってもまいっちんぐだった。

 

 

かぶりつくように

あの重々しき

視線で提督を見つめる

艦娘たち

故国を守る誇りを

厚い装甲に包んだ

鋼鉄乙女たちの

ここは鎮守府

無数の娘たちの

ギラつく欲望に

晒されて

混浴温泉に引き出される

函館の街の提督

魂なき戦乙女たちが

ただ己の生存を賭けて

激突する

 

開催されるはバトリング

回る砲塔から、おっさん提督に熱い視線が突き刺さる

 

 

 







先月まで雪がちらついていたこの街も、今では花々が咲き乱れる季節になってきた。
廊下にうずくまる艦娘が一名。
彼女は貴重な夕雲型駆逐艦だ。
その名は早霜。
恋する駆逐艦。
ぼんやりと窓越しに淡い月明かりを眺めていた彼女は、気だるい感じで立ち上がる。
彼女は、体内を駆け巡っていた波動の余韻をじっくり味わっていたのだ。
かなり高かった熱量が落ち着き始めた。
スカートの後方が湿っているみたいだ。
ハンカチを口元に当てると濡れている。
よだれだ。
はしたないとも思ったが致し方ない。
蛇口もどうやら締まったかに思える。
オイル漏れの量がけっこう多いようだ。
廊下に他の艦娘の気配は感じられない。
夜警は別の場所を見回っているようだ。

先程まで、彼女は提督の爪切りと耳掻きを行っていた。
蒸しタオルで爪を温め、越後の匠が鍛え上げた爪切りでやさしくやさしく愛する人の爪を切ってゆく。
それは彼女にとっての愉悦。
喜び。
生きる糧。
金属製のフィルムケースに入った、あの人の爪もだいぶん溜まってきた。
あの、振った時にかさかさと聞こえる音がいとおしい。
遠慮なくあの人の指を触れるのは、実に素晴らしいわ。
咥えたらどんな味がするのかしら?
先日のアレを思い出す。
いつかやってみせるわ。
理由はどうにでもなる。
早霜はにんまりとした。
耳掻きに至っては、提督の頭が自分自身の膝の上にあるのだ。
しかも、合法的にあそこの至近距離へと頭を置いてもらえる。
これに興奮しない艦娘がいるだろうか?
いや、いない。
穿いていないところへ、布切れ一枚越しにあの人の頭があったのだ。
ぞくぞくする。
背中から尾骨に向かって、電気が走ってゆくような感覚をまたもや感じた。
あっ、と小さく吐息が漏れる。
癖になりそう。
顔が赤かったのであの人に心配されたが、そのまま添い寝を要求する訳にもいかなかった。
今宵は別のおんなたちの番。
彼女の番は当分先であった。
でも、自分にはこれがある。
手元の道具箱は古い漆塗り。
提督の実家の蔵にあった品。
それは早霜にとっての宝箱。

特別枠を維持する秘訣は、すべてを得ようと欲張らないこと。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
今頃は、別のおんなたちが提督の両脇で悶えているのだろう。
不思議と、悔しいという気分にはならなかった。
だって、私はあの人の特別だもの。
そう思えるからこそ、嫉妬も覚えない。
彼女は小走りで駆逐艦棟へ向かってゆく。
提督のにおいを思い出しながら。
あのにおいは癖になる程のモノ。
それは艦娘全員に共通する感覚。
艦娘にとって、好きになった提督のにおいは猫にとってのマタタビみたいなモノだ。
故に、提督に執着する艦娘が続出するのは当たり前のこと。
よくあること。
顔とか体格とか、アレの硬度や寸法や砲撃可能回数とか、そういったことが決定力ではない。
そうじゃないのよ。
あの、提督に包み込まれるような感覚。
それが、艦娘が追い求めるものの一つ。


試験装備の実験に加わっているため、現在大湊の清霜は姉艦と同じ部屋で過ごしている。
無邪気で努力家で可愛い妹艦。
早霜がそっと部屋に戻った時、彼女はぐっすり眠っている最中だった。
よく寝ているわ。
姉は天真爛漫な妹に向かって、やさしく微笑んだ。
素早く着替えてスカートの染みを丁寧に拭い、蒲団の中に入った時、隣から声が聞こえてきた。

「早霜って、とってもエッチなんだね。」

それはかそけき声だったが、早霜に充分届く音量の声だった。



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